• 更新日 : 2023年3月29日

決算期とは?会社の決算時期は3・9・12月が多い?決め方から変更方法まで解説!

法人には個人と違って「事業年度」があり、自社の定款に事業年度を記載するのが一般的です。事業年度の最終日が決算日となり、決算日の次の日から新たな事業年度が始まります。
3月決算の法人が多いようですが実際はどうなのでしょうか?
この記事では事業年度の決め方や、決算時期変更における注意点などついて解説します。

決算期とは

法人を設立した場合、いくら利益があったのか、資産がどれくらいあるのかを計算します。これを「決算」といいますが、その決算をするための区切った期間を「事業年度」といいます。

事業年度は、例えば「4月1日から3月31日まで」などと決めます。そして、事業年度の「最後の月」、この例えで言えば3月を決算期または決算月と呼びます。決算期になれば、その事業年度の決算書を作成して、その後株主総会や申告納税などが続きます。

事業年度は英語で「Fiscal year」と表しますので、2021年度の3月決算は「fiscal year ending March 2021」となります。事業年度は会社法法人税法で用いますが、「会計期間」の表現方法はいくつかあり、2021年度であれば、「fiscal year 2021」、「fiscal 2021」、「FY 2021」などと表します。

会社法435条では「株式会社は、法務省令で定めるところにより、各事業年度に係る計算書類及び事業報告並びにこれらの附属明細書を作成しなければならない」としています。また、法人の定款においては、株式会社の「事業年度」は任意的記載事項であり、必須ではありません。

しかし、税務署に提出する法人設立届書には必ず事業年度は記載することとなっており、定款に事業年度を記載するのが通常となっています。そして、一旦、定款に事業年度が記載されれば、事業年度変更の際には、定款の変更手続き(株主総会の特別決議)が必要となります。

法人の決算期は3月・9月・12月が多い?

法人の決算期は、3月が多いと言われますが実際のところはどうでしょうか?

国税庁の令和元年度のデータより傾向を見てみますと、次のようになりました。

決算月
法人数
割合
1月
100,1723.6%
2月
180,6316.6%
3月
502,06018.3%
4月
195,0047.1%
5月
227,5928.3%
6月
268,1929.8%
7月
210,1097.7%
8月
240,7608.8%
9月
299,29110.9%
10月
134,2624.9%
11月
102,3043.7%
12月
285,43610.4%
合計
2,745,813100%

上の表を見ると、決算期を3月とする法人が全体の18%程度であり、次に9月が11%程度と続いています。

では、決算期と会社の規模は関係があるのでしょうか?上の表を資本金1億円未満と1億円以上で分けてみますと次のようになります。

決算月
1億円未満の法人数
割合
1億円以上の法人数
割合
1月
99,6103.7%5621.9%
2月
179,4006.6%1,2314.2%
3月
486,75517.9%15,30552.2%
4月
194,4717.2%5331.8%
5月
226,7278.3%8653.0%
6月
266,7789.8%1,4144.8%
7月
209,5227.7%5872.0%
8月
239,9738.8%7872.7%
9月
297,41010.9%1,8816.4%
10月
133,7584.9%5041.7%
11月
101,7993.7%5051.7%
12月
280,31710.3%5,11917.5%
合計
2,716,520100%29,293100%

資本金1億円で分けてみると、大企業では、半数以上の法人が3月を決算期としていることがわかります。そして、9月期よりも12月のほうが多いことがわかります。

海外の企業は一般に12月を決算期とするところが多いため、海外取引が中心となっている法人などは12月決算にするメリットはあるかと思います。

法人の決算期の決め方

決算期をどのように設定するかは、繁忙期を避けたり、逆に繁忙期の売上高の多い月に持ってきたりする方法があります。他にも、資本金が1,000円以下の法人であれば消費税の免除期間がなるべく長くなるような考え方もあります。

ここでは、資金繰りに猶予を与えるという観点から消費税の免税期間を長くすることを狙って、新たな法人の決算期を考えてみましょう。

まず、次の2点を押さえておきましょう。

  • 法人設立時の資本金が1,000万円未満で、かつ、大法人の子会社などとなっていない法人は、設立第1期及び第2期目は消費税については免除されます。
  • 法人の場合、消費税は基準期間(前々年度)の課税売上高が1,000万円超えた場合という要件以外に、特定期間(前事業年度)の課税売上高が1,000万円超えた場合に課税事業者となります。

以上の2つから、新設法人の設立第1期目の月数によってたとえ売上高が同様であっても、免税期間が異なってくるのです。

例を挙げて見ていきましょう。

 法人A
 法人設立にあたり決算期を検討中
 設立当初の月間売上高を170万円と想定
 資本金1,000万円
 他の法人との親子関係はない

【パターン1】法人Aの設立第1期目が8ヵ月以上ある場合

第2期目において、設立事業年度である前事業年度の特定期間は事業開始から6ヵ月間です。
したがって、特定期間の売上高は170万円×6ヵ月=1,020万円となり、1,000万円を超えますので第2期目から課税事業者となります。

【パターン2】法人Aの設立第1期目が7ヵ月半ある場合

設立事業年度の開始日が月の半ばであった場合の特定期間の考え方は、納税者にとっては少し有利になります。

例えば、8月15日に事業開始したとすると、特定期間は事業開始から6カ月後の前月の末日、つまり1月末までの5ヵ月と15日が特定期間となります。したがって、特定期間の売上高は170万円×5.5カ月=935万円(推定値)となり、1,000万円を超えませんので、第2期目から課税事業者となりません。

【パターン3】法人Aの設立第1期目が7ヵ月以下である場合

設立事業年度が7ヵ月以下であった場合の特定期間の考え方は納税者にとってはもっと有利になります。この場合、前事業年度が7ヵ月以下であるため、この期間が特定期間に該当しないこととなります。したがって、前事業年度の課税売上高による判定の必要はありません。

以上より、法人Aが最も免税期間が長くなるのは、設立事業年度を7ヵ月と設定することでしょう。この場合、7ヵ月と25日と設定したほうがより有利となる場合もありますが、売上高が変動すれば課税事業者となる可能性も出てくるからです。

これをチャートで表すと次のようになります。
特定期間における判断

決算期の変更に必要な手続き

決算期は変更できます。

変更理由はさまざまですが、決算期変更によって変更前の事業年度は12ヵ月が経過していなくても、決算、申告納税という手続きとなります。決算期変更のメリットとしては、例えば大きな売上の波が同じ期に2回きたため、ある期だけ著しく売上か多くなる場合には決算期変更により節税につながったり、資金繰りを助けたりが可能になります。

決算期の変更手続きは次のとおりです。

  • 定款を変更する
    定款における事業年度を変更する必要があり、株主総会の特別決議が必要となります。
    株主総会の特別決議は普通決議より重要度が高い決議とされ、議決権の過半数にあたる株主が出席する株主総会において、議決権の2/3以上の賛成による決議のことです。
  • 税務署等へ異動届を提出する
    届出書や更新後の定款と共に株主総会の議事録を提出します。
    所轄税務署以外に、都道府県税事務所、市役所などへも届出します。

なお、決算期変更に伴うデメリットもあります。決算期の変更は「ある期間を短くして調整」するものです。決算期を早めることにより決算事務が繁忙となるほか、後々まで財務諸表を期間比較する場合は、常に決算期の短い事業年度について判断基準を設けないといけません。

決算期は会社にとって非常に重要!決定する際は慎重に

個人事業主から法人成りをする場合には、12月を決算期とするケースが多いかと思います。しかし決算期は、通常の取引以外に残高確認等、決算のための手続きもありますので、できるだけ繁忙期は避けたいものです。また、決算期変更は、定款変更を伴う手続きとなって手数も費用もかかります。

法人設立の際は、決算期の決定をできるだけ多くの視点から検討し、慎重に決定したいものです。

よくある質問

決算期とは?

事業年度の最後の月を決算期または決算月といいます。

会社の決算時期は3・9・12月が多い?

全体で見ると決算期を3月とする法人が18%程度あり、大企業では半数以上の法人が決算期を3月としています。

決算期の決め方は?

繁忙期に合わせる方法のほか、消費税の免除期間を考慮した決め方もあります。


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