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  • 作成日 : 2020年11月2日

企業会計原則とは?基礎となる7つの一般原則と考え方は?守らなかったらどうなる?

企業会計原則

企業会計原則とは、会計時に守らなければならい基準のこと。公正な会計処理を行うために作られおり、決算書財務諸表)の監査をするときにも使われています。この記事では基礎となる7つの一般原則をわかりやすく解説しています。

企業会計原則とは

企業会計原則は、1949年(昭和24年)に、旧・大蔵省の経済安定本部・企業会計制度対策調査会(現在の金融庁・企業会計審議会)によって公表されました。

企業会計原則は、企業会計実務で慣習として発達した中かから、一般に公正妥当と認められる基準を要約したものとされます。決算書(財務諸表)作成においてに守るべき原理原則という位置づけですが、法令ではないため、法的な強い拘束力はもちません。しかし、法令でなくても、大企業、中小企業問わず、会計上順守するべき原則として、今日まで伝わってきました。企業だけでなく、会計監査においても従うべき原則とされています。

公表当初は重要な位置づけにありましたが、2001年以降は、企業会計基準員会によるさまざまな会計基準も重視されるようになりました。さらに、2008年にアメリカのワシントンで開催されたG20のサミット以降、国際基準へのコンバージェンスが図られるようになったことにより、以前ほど企業会計原則が重視されることはなくなっています。

しかし、企業会計における原則的なものですので、企業会計のベースとして知っておきたい知識です。企業会計は「一般原則」、「損益計算書原則」、「貸借対照表原則」、および重要性の原則などについて記された「企業会計原則注解」から構成されています。決算書のうち、キャッシュ・フロー計算書に関する原則ついては企業会計原則の中にありません。

一般原則は7つの原則からなりたつ

企業会計原則は、「一般原則」、「損益計算書原則」、「貸借対照表原則」の3つの原則から成り立つと説明しました。損益計算書原則は損益計算書に、貸借対照表原則は貸借対照表に、それぞれ対応したものです。

一般原則は、損益計算書、貸借対照表のいずれにも共通するもので、企業会計原則の最高規範とされています。企業会計原則の中でも重要な原則であり、覚えておきたい内容です。

一般原則は、以下に箇条書きで示したように、7つの原則で構成されます。頭文字を使った覚え方もあるようですが、語呂合わせができないので、頭にくる漢字の順に覚えるのも良いかもしれません。この項では、企業会計原則のうち、重要度の高い一般原則をわかりやすく解説していきます。

  1. 真実性の原則
  2. 正規の簿記の原則
  3. 資本取引・損益取引区分の原則
  4. 明瞭性の原則
  5. 継続性の原則
  6. 保守主義の原則
  7. 単一性の原則

1:真実性の原則

一 企業会計は、企業の財政状態及び経営成績に関して、真実な報告を提供するものでなければならない。

一般原則の一にあたる「真実性の原則」は、企業会計原則の中でも頂点にくる原則で、不正や不当な利益操作などのない、真実な決算書(財務諸表)の作成を要請しています。

この、真実性の原則において「真実」とされるのは相対的真実です。企業会計では、会計処理について複数の方法が認められているケースがありますし、時代の流れによって会計の目的などは変化していく可能性があります。そのため、真実性の原則では、絶対的な1つの真実は追求されていません。1つの真実ではなく、企業会計基準に合った適切な真実、つまり相対的真実が求められています。

相対的な真実の例としてあげられるのが、固定資産の減価償却法の選択(定額法や定率法など)、固定資産の耐用期間の見積もりなどです。固定資産の例で見るように、企業は状況に合わせて減価償却方法などの選択、資産の状況にあった減価償却ができます。たとえ、同じ固定資産において、企業ごとに違う減価償却が行われていたとしても、真実性の原則における適切な真実を満たしているのであれば、その会計処理は認められることになります。

2:正規の簿記の原則

二 企業会計は、すべての取引につき、正規の簿記の原則に従って、正確な会計帳簿を作成しなければならない。

一般原則の二「正規の簿記の原則」が要請するのは、正確な会計処理による、正確な会計帳簿の作成です。これを、一部ではなくすべての取引に要請しています。

ここでの正確な会計帳簿とは、網羅性、検証可能性、秩序性の3つを備えた会計帳簿のことです。具体的には、すべての取引を網羅して記録すること、検証可能な客観的な証拠により記録すること、秩序をもってすべての取引を記録することです。複式簿記による記録とは明記されてはいませんが、正規の簿記の原則を実現する記録は、実務上は複式簿記が該当します。

3:資本取引・損益取引区分の原則

三 資本取引と損益取引とを明瞭に区別し、特に資本剰余金利益剰余金とを混同してはならない。

一般原則の三「資本取引・損益取引区分の原則」では、資本取引と損益取引の区分、資本剰余金と利益剰余金の区分を要請しています。

資本取引とは、株式発行などによる増資や剰余金の配当など、資本を直接増減させる取引のことです。損益取引とは、商品売買など収益や費用の生じる取引のことをいいます。資本取引と損益取引を明確に区分するように一般原則で要請しているのは、投下資本と成果としての利益を分けるためです。

また、資本取引・損益取引区分の原則では、資本剰余金と利益剰余金を混同することのないようにとも要請しています。資本剰余金は、資本金に組み込まれなかった株主など出資者からの払い込み分(払込資本)です。利益剰余金は、営業活動などで獲得した資本増加分(留保利益)に該当します。

同じ資本であっても、資本剰余金は維持拘束しなければならないもの、利益剰余金は分配可能なものであって、利益の特質が異なることから明確に区別することが要請されます。決算書において、資本にあたる部分に、資本金、資本剰余金、利益剰余金の区分があるのはこのためです。維持しなければならない資本が取り崩されないように、また、利害関係者や投資家に適切な情報を与えられるように、原則として定められています。

4:明瞭性の原則

四 企業会計は、財務諸表によって、利害関係者に対し必要な会計事実を明瞭に表示し、企業の状況に関する判断を誤らせないようにしなければならない。

一般原則の四「明瞭性の原則」は、理解しやすい明瞭な表示、貸借対照表や損益計算書だけではわからない情報を注記することによる適正な開示を要請しています。明瞭性の原則があるのは、企業の状況について詳細に知り得ることのできない企業外部の利害関係者が、決算書の情報から判断を誤らないようにするためです。

明瞭性の原則は、例えば以下のような例として適用されています。

  • 重要な会計方針の開示(企業会計原則注解 注1-2)
     有価証券の評価方法や評価基準、固定資産の減価償却方法など、重要な会計方針の注記を要請しています。
  • 重要な後発事象の開示(企業会計原則注解 注1-3)
     火災などによる重大な損害の発生、企業の合併や重大な営業の譲渡など、貸借対照表日後発生の事象で、次期以後に重大な影響のある事象の注意を要請しています。

このほか、明瞭性の原則に基づいているのが、損益計算書の営業損益区分などの区分表示、一年基準を適用した貸借対照表の科目の分類、決算書の総額表示といったものです。

5:継続性の原則

五 企業会計は、その処理の原則及び手続を毎期継続して適用し、みだりにこれを変更してはならない。

一般原則の五「継続性の原則」は、一度採用した会計方針について、原則、毎期継続して適用することを要請しています。継続性の原則が適用されるのは、2つ以上の会計処理を選択できる場合です。代表的な選択適用の例としては、固定資産の減価償却方法の選択(定額法や定率法など)があげられます。

会計処理の継続適用が原則として定められているのは、やはり、企業外部の利害関係者に判断を誤らせないようにするためでしょう。
例えば、選択適用が可能な会計処理について、毎期変更して適用すると、経営者側による利益操作が可能になります。固定資産の減価償却費の例でいうと、利益を抑えたいときに取得したばかりの固定資産の減価償却費を定率法に変えて費用を多く計上するといったことです。継続性の原則では、このような経営者側の恣意的な利益操作は認めていません。

さらに、会計処理の継続性がないと、その都度、会計処理が変わる可能性があり、企業の決算書を期間比較することも難しくなります。継続性の原則があるのは、利益操作を排除し、決算書を適切に比較できるようにするためです。

しかし、会計処理については、どうしても変更が必要な場合も存在します。変更が必要な場合については、正当な理由があれば変更しても良いとされています。継続性の原則は、毎期の継続適用を求めるものですが、選択適用できる会計処理の変更を際限なく制限するものではありません。

6:保守主義の原則

六 企業の財政に不利な影響を及ぼす可能性がある場合には、これに備えて適当に健全な会計処理をしなければならない。

一般原則の六「保守主義の原則」では、適当に健全な会計処理=保守主義による会計処理を、一定の条件の下、要請しています。保守主義による会計処理とは、収益は遅く少なめに、費用は早く多めに見積もる会計処理のことです。

例えば、検収基準を採用して収益を遅めに認識する、固定資産の減価償却費を定率法にして費用を大きく上げる、貸倒引当金を多めに計上して負債額を大きくする、といったことが保守主義に該当します。

注意したいのは、いつでも保守主義の原則が認められるわけではないことです。利益操作につながりますし、一般原則の頂点にある真実性の原則をゆがめることにもつながりかねませんので、企業財政に不利な影響があると認められる場合に限られます。また、例えば会計上、保守主義の原則を適用して貸倒引当金を多めに計上したとしても、引当金の繰入額について税務上の損金として認められないケースもありますので、過度な保守主義には注意が必要です。

7:単一性の原則

七 株主総会提出のため、信用目的のため、租税目的のため等種々の目的のために異なる形式の財務諸表を作成する必要がある場合、それらの内容は、信頼しうる会計記録に基づいて作成されたものであって、政策の考慮のために事実の真実な表示をゆがめてはならない。

一般原則の七「単一性の原則」は、さまざまな目的で作成される決算書の形式が異なる場合であっても、もとになるのは1つの会計帳簿であって、事実を変えてはならないという原則です。なお、形式は異なっていても、もととなる事実は同じであるということを、実質一元・形式多元とも表現します。いわゆる、二重帳簿の存在を禁止している原則です。

単一性の原則で示されている「異なる形式の財務諸表」とは、企業外部に報告するための財務諸表、金融機関に提出するための財務諸表、法人税などを申告するための財務諸表などです。外部報告や金融機関向けの財務諸表は利益を大きく、反対に税金対策としては法人税申告のための財務諸表は利益を小さく見せたいところですが、このような都合の良い財務諸表の作成は認められていません。形式は目的に応じて変えられるものの、会計記録の内容まで変えてはいけないと明示した原則です。

企業会計原則を守らないとどうなる?

企業会計原則は、法令ではありません。あくまで、企業が守るべき企業会計の原則という位置づけです。企業会計原則だけでは法的な縛りがないため、企業会計原則の違反が、直接的に罰則に値するわけではありません。

しかし、注意したいのは、企業会計原則をはじめとした会計基準は、会社法や金融商品取引法、税法など、さまざまな法律と関係していることです。

例えば、上場企業などが対象となる金融商品取引法では、内閣総理大臣が認める一般に公正妥当な企業会計基準に従うこととあります。中小企業も対象の会社法も同様です。株式会社は一般に、公正妥当な企業会計の慣行に従うこと、解釈や規定の適用は一般に公正妥当な会計基準や慣行に配慮し適当に処理することが定められています。

つまり、企業会計原則を守らなかった場合、意図しなくても会社法など関連する法令を破る可能性があるということです。法令に違反した場合、状況によっては刑事罰や行政処分が下ることも考えられます。

まとめ

企業会計原則は、一般に公正妥当な企業会計の慣行を要約したものです。一般原則、損益計算書原則、貸借対照表原則の3つから構成されていますが、中でも重要なのが、最高規範に位置する一般原則です。
企業会計原則自体は法令ではありませんが、会社法や金融商品取引法など、さまざまな法律とリンクしています。関連する法律に違反しないためにも、適切な会計処理を心掛けましょう。

※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

監修:岩波 竜太郎 (公認会計士 / 税理士 / 経営学修士)

公認会計士・税理士・経営学修士。大手監査法人、ベンチャー企業を経て、2015年に独立開業。大手監査法人での海外経験や管理本部長としての幅広い経験を武器に会計アドバイザリー業務を主たる業務として行うとともに、東証1部上場企業である株式会社OrchestraHoldingsの社外役員をはじめ、経営アドバイザーとして複数の企業に関与。Webメディア等の記事執筆・監修業務も積極的に行っている。

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