- 更新日 : 2024年11月21日
経理のペーパーレス事例7選!実現に向けた課題や進め方、失敗事例も解説
経理におけるペーパーレス化には多くのメリットがあります。しかしながら、実施には多くの課題もあります。
目的意識があいまいなまま物事を進めてもうまく行かないように、ペーパーレス化においても計画性が重要で、法的・技術的課題もあります。
本記事では、経理におけるペーパーレス化実現に向けた課題とその解決について考えます。
目次
経理でペーパーレス化が進められている理由
経理のペーパーレスが進められる理由として、「電子帳簿保存法」や「テレワーク対応」が挙げられます。
「電子帳簿保存法」への対応
電子帳簿保存法は、経理関連書類の電子保存を認める法律です。
電子帳簿保存法は発足当初より条件が緩和され、多くの企業が電子保存に移行しやすくなりました。
紙で原本を保管する必要がなくなるため、保管スペースの削減や検索性の向上というメリットが得られます。
また、会計監査や税務調査の際においても、効率的な対応が可能です。
2024年より、電子取引データの保存が原則義務化されたことで、電子化が進んでいます。
テレワークへの対応
コロナ禍を境に、テレワークの整備も急速に進んだといえるでしょう。
従来の書面だけの経理処理では、担当者は出社により紙を確認する必要があり、テレワーク化の大きな壁となっていました。テレワークの整備は承認フローのデジタル化などとともに、経理のペーパーレス化に大きく貢献しています。
業務のデジタル化が進むことによって、確認すべき書類をクラウド上で扱えるようになり、勤務場所を問わない働き方が可能です。
業界別:経理のペーパーレス化の事例
ここで、各業界における事例として、実際にどのようなペーパーレス化がなされているのかをご紹介しましょう。
事例では、ペーパーレス化への「課題」と「効果」を中心にお伝えします。
【介護・医療】月次決算のペーパーレス化
【株式会社HITOMIOテクノロジーズ様】
課題として、月初に部員総出で集まった紙の書類を元に、数多い仕訳入力を実施し、月次決算がなかなか終わらないという悩みを抱えていました。
クラウド型の会計や経費精算システムの導入とともに経理業務の省力化が実現し、日々の計数確認が可能になった結果、月次決算は6営業日で対応可能となりました。
参考:https://biz.moneyforward.com/case/6636/
【陸運業】グループ153社の経理のペーパーレス化
【第一交通産業株式会社様】
従来は本社の経理部が毎月300の営業所からの紙の申請書を一括して処理し、2営業日以内に処理を終えることにしていました。電子帳簿保存法とインボイス制度の法改正に対応するためのシステムの導入検討を機に、試行錯誤の結果、法対応と業務効率化を同時に実現できるクラウド経費システム導入しました。
効果としては法改正対応だけでなく、紙の運用による業務負荷を軽減し、作業日数も5日から2日に短縮できました。
参考:https://biz.moneyforward.com/case/11046/
【製造業】請求書のペーパーレス化
【天藤製薬株式会社様】
請求書送付業務をすべて手作業で実施していましたが、販路の拡大により得意先が2社から数十社にまで増加し、請求書送付業務の見直しが課題となっていました。
請求書書式のカスタマイズができ、メール・郵送・FAXなど、得意先ごとに適した方法で請求書送付が可能で、初期費用が安価であるという3つの要件を満たすシステムを導入し、請求業務の負担を大幅に軽減できました。請求書業務のデジタル化による業務効果は大きいです。
参考:https://biz.moneyforward.com/case/10342/
【IT業】帳簿作成のペーパーレス化
【Chatwork株式会社様】
経理業務はインストール型の会計ソフトを利用していたため、特定の端末でのみの作業となり、さらに経営陣がMacを使用しているため経理データの共有に時間がかかっていました。
クラウド会計ソフトを導入した決め手としては、「システムがシンプルで使いやすい」ことと、「システムサポートが手厚かった」ことの2つです。
Macにも対応できるシステム導入により、スタッフの同時アクセスも可能になり、ペーパーレス化によって経理にかかる時間は月20時間ほど減りました。
参考:https://biz.moneyforward.com/case/134/
【飲食業】給与計算のペーパーレス化
【グルマンズ株式会社様】
年末年始に業務繁忙期を迎え、加えて年末調整業務も重なり、さまざまな働き方を反映した給与計算が大変になってきました。そのため、従来のアナログで時間のかかる給与計算、労務管理のソフトの見直しを決めました。
給与計算にクラウド型システムを導入したのは、担当者に経験があり、他システムでクラウドを利用していることに加えて、社労士事務所からのおすすめがあったからです。
導入後は、ペーパーレスによる大幅な作業時間の削減だけでなく、Web明細機能などによる費用削減も期待できます。
参考:https://biz.moneyforward.com/case/4282/
【建設・不動産】経費精算のペーパーレス化
【北王コンサルタント株式会社様】
経営陣主導でDX推進室を設置し、バックオフィスにおける効率化の柱を「キャッシュレス化」と「ペーパーレス化」の2点に絞って、新システム導入を検討しました。
コストより業務効率の改善効果と使いやすさを重視し、複数のサービスを比較した結果、クラウド型の経費精算システムを導入しました。結果として、キャッシュレス化とペーパーレス化の双方を実現でき、経理担当も申請者も作業負荷を大幅に削減できました。
参考:https://biz.moneyforward.com/case/10958/
【金融・保険】紙伝票のペーパーレス化
【SMBC GMO PAYMENT株式会社様】
従来の課題は、紙中心の非効率な業務フローで、リモートワークに対応できず、経費精算の申請プロセスもアナログで時間がかかっていたことです。
システムの導入はスモールスタートとし、システム連携、さらにはグループ企業のセキュリティ要件にマッチすることでクラウド型システムを導入しました。
結果として、ミス発生回数が圧倒的に減少し、業務時間約30%の削減やリモートワークへの対応が可能となり、懸念されていた経費精算も自動化されました。
参考:https://biz.moneyforward.com/case/9723/
経理のペーパーレス化で何が実現できるか
経理のペーパーレス化によりどんなことが実現できるのか、個々の例を挙げてみましょう。
テレワーク対応
経理書類のペーパーレス化により、自宅からでもクラウド上のデータにアクセスしての業務が可能になります。請求書発行や経費精算などのチェック作業も、時間や場所を問わず実施できるようになり、柔軟な働き方が実現します。
経理業務の時間短縮
データ検索が瞬時に行えるため、紙の書類を探す手間が省略できます。また、自動仕訳機能や電子承認システムの導入により、今までの入力作業や承認プロセスが効率化され、業務時間が大幅に短縮されます。
紙や郵送費のコスト削減
用紙の購入費、印刷費、郵送費などの経費が大幅に削減されます。請求書などの書類をペーパーレス化することで、郵送の必要性も低下し、通信費の削減にもつながります。
紙の保管スペースの削減
書類をペーパーレス化により、物理的な保管スペースが不要になります。社内のキャビネットや倉庫のスペースを他の用途に活用できたり、倉庫賃借費用が不要になったりと効率化が進みます。
人的ミスの削減
手作業による入力ミスや転記ミスなどの人為ミスが減少します。OCR技術やAIを活用した自動データ入力により、正確性が向上し、チェック作業の負担も軽減されます。最終的には業務品質の向上につながります。
データの一元管理
経理処理に必要な情報がデジタル化され、クラウド上で一元管理できるようになります。
一元管理によって、必要な情報への素早いアクセスが可能となり、社内外における情報共有や情報伝達もスムーズになります。
セキュリティの向上
デジタル化されたデータは、アクセス権限の設定や暗号化により、セキュリティが強化されます。紙の書類と比べて、情報漏洩のリスクが低減され、バックアップも容易になるため、災害時のデータ保護にも効果的です。
経理のペーパーレス化で気を付けたい失敗事例
経理のペーパーレス化を推進する中で、気を付けておきたいことも多くあります。成功例だけではなく失敗例も理解しておくことが大切です。
ITリテラシーの不足
経理、人事または総務担当者のITスキル不足は、ペーパーレス化を円滑に進めるには「障壁」となります。
従業員の間で、新しいツールに対する抵抗感が生まれたり、想定されていた効果的な活用ができなかったりする可能性があります。経理担当者にはITスキルを基礎とした経理業務の運用スキルが求められます。
業務フローの見直し不足
ペーパーレス化に伴い、既存の業務フローを徹底的に分析して、冗長な作業や重複するプロセスを洗い出す必要があります。単にデジタル化するだけで、非効率な業務プロセスが残るとペーパーレス化はうまく進みません。
デジタル化に適した新しい業務の流れを設計し、業務の「最適化」を考えましょう。
エクセルから会計ソフトなどへの二重入力
エクセルと会計ソフトの併用によるデータの二重入力は避けなければなりません。
二重入力によって、業務効率の低下や大きなエラーの原因ともなります。
デジタル化により、システム間におけるデータ連携を強化し、手入力のないシームレスなデータの流れとすることが重要です。
ユーザーサポートの不足
新たなツールを導入しても、十分なサポートがなければ利用現場の混乱や生産性の低下を招くことがあります。マニュアルの整備や定期的な研修の実施など、新ツールが定着するまでの継続的なサポート体制が必要です。また、利用者からのフィードバックには積極的に耳を傾け、システムの改善に活かす姿勢が大切でしょう。
保管が必要な経理関連の書類
電子取引に関する書類(請求書、領収書など)は原則として電子データでの保存が義務付けられていますが、電子帳簿保存やスキャナ保存については企業の任意で選択できます。
電子取引以外の書類や国税関係帳簿の保存については、次の通り保存方法に選択肢があるので、会社のルールに従い、「紙」か「電子データ」で保存します。
国税関係帳簿書類 | 作成方法 | 保存方法(どちらかを選択) | ||
---|---|---|---|---|
帳簿 | 自社で一貫してPCで作成 | 紙 | 電子データ | |
その他 | 紙 | |||
書類 | 発行控え | 自社で一貫してPCで作成 | 紙 | 電子データ |
その他 | 紙 | スキャンデータ | ||
受領 |
適切な保管方法を選択し、電子保存にする際はデータバックアップやセキュリティ対策にも十分注意を払う必要があります。
経理のペーパーレスの進め方
ペーパーレス化を推進するにあたって最も重要なことは、「目的」を確立しておくことです。
まず、ペーパーレス化の「目的」を明確にし、社内への周知が重要です。ペーパーレス化がなぜ必要で、どのようなメリットがあるのかを明確にすることで、ペーパーレス化へがスムーズに進む可能が上がります。
次に、ペーパーレス化を効果的に進めるに、会社に合ったシステムの選択が不可欠です。
業務にふさわしいツールを活用することで、スムーズな移行が可能になり、業務効率化が期待できます。
また、システム導入にあたっては、従業員のスキルに合わせた社員教育が必要となるでしょう。
経理のペーパーレス化はマネーフォワードがサポート
経理のペーパーレス化においては会社に合ったシステムの選択が不可欠です。
ここでは、マネーフォワード社で取り扱うクラウド型システムについて概要を説明します。
【マネーフォワード クラウド会計】
会計のペーパーレス化、電子化を考えるならまずは会計ソフトから着手しましょう。データの自動取得や自動仕訳により入力の手間を削減します。
【マネーフォワード クラウド請求書】
量の多い請求書のペーパーレス化・電子化を考えるならクラウド型請求書ソフトで効率化がおすすめです。
作成・送付・保管までを一元管理でき、インボイス制度等法令対応も、心配はいりません。
【マネーフォワード クラウドインボイス】
請求書の送付も受領も対応可能な、あらゆる請求書の業務を効率化し、それぞれの次の業務である債権管理、債務管理をスムーズにサポートします。
【マネーフォワード クラウド経費】
従業員立替金、小口現金などの経費業務のペーパーレス化・電子化には小回りの利くソフトで、時間の大幅削減が可能となります。
【マネーフォワード クラウド給与】
給与計算・勤怠管理のペーパーレス化には、勤怠集計データ・自動計算・Web明細発行に対応した給与ソフトがあります。外部サービスとの接続については、数多くの外部サービスと連携可能です。
【マネーフォワード クラウド勤怠】
人事給与担当の集計・管理が楽になる勤怠管理システムで、出退勤打刻から働き方改革対応まで簡単に実施できます。
「マネーフォワード クラウド」サービスはIT導入補助金にも対応
IT導入補助金とは、中小企業等の労働生産性向上を目指し、業務効率化やDX推進に向けたITツール導入費用の一部を国が補助する制度です。補助対象となる経費には、ソフトウェア購入費や最大2年分のクラウド利用料が含まれています。
マネーフォワード社の上記の各製品は、このIT導入補助金の対象となっています。
参考:IT導入補助金2024
ペーパーレス化を進めるには課題意識が大切
課題意識とは、「現状」と「目指すべき姿」とのギャップを見つけ、そのギャップを埋めるために必要な取り組みを見いだす姿勢のことを指します。
ペーパーレス化において、慣れるまでは紙の運用のほうが楽に感じることもあるかもしれませんが目指すべき姿が明確であれば、新たな取り組みへの解決策を探すことができるでしょう。
経理のペーパーレス化を社内に浸透させるには、この「課題意識」を重要視することが大切です。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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