- 更新日 : 2024年8月8日
土地購入時の仕訳・勘定科目まとめ
事業に利用する土地を購入した場合、経費に計上できます。その際の仕訳は仮契約時と本契約時、その後の不動産登記時に分け、支払い内容に合う勘定科目で記帳しましょう。また、土地付建物を購入した場合の仕訳は、建物利用が目的か、それとも土地を利用することが目的で建物は取り壊す予定なのかで異なります。
本記事では土地購入時の仕訳と勘定科目について3つの段階ごとに紹介し、土地付建物を購入したときの仕訳についても事例を分けて解説します。
目次
土地購入時の仕訳と勘定科目
土地を購入する際は、さまざまなタイミングで支払いがあります。それらの支払いごとに仕訳を行わなければなりません。ここでは、土地購入において仮契約時、本契約時、不動産登記時それぞれのタイミングで行う仕訳を紹介します。
仮契約時の仕訳
土地の購入では物件を確保するため、仮契約とともに手付金を支払わなければなりません。手付金のほかに印紙代も必要です。手付金は「前払金」または「前渡金」の勘定科目を使い、印紙は「租税公課」で仕訳します。
土地の手付金700万円を支払い、印紙代1万円を支払った場合、仕訳例は以下のとおりです。
本契約時の仕訳
本契約で支払う土地の購入代金は、「土地」の勘定科目で仕訳します。「土地」とは、事業のために所有・使用している敷地についての勘定科目です。事業における事務所や工場建設のために使用する敷地のほか、事業に付随する社宅などを建設する目的も含まれます。事業に直接関係ない、販売や投資目的の土地は含まれません。
土地は固定資産として扱われますが、経年劣化が起こらないため減価償却の計上はできません。土地の取得価額は土地の代金のほか、購入のために支出した仲介手数料や契約書の印紙代なども算入します。
また、土地の取得に際して立退き料などを支払った場合は、「土地の取得のために直接に必要な費用」として土地の取得価額に含めます。土地の造成のために必要な埋め立て費用なども、土地の取得価額に含めて問題ありません。
5千万円の土地を購入し、仲介手数料として10万円支払った場合の仕訳は以下のとおりです。
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不動産登記時の仕訳
土地の所有権は、法務局へ不動産登記の名義変更の申請を行い、審査で問題がないと認められてから移転します。不動産登記に関する費用は証明書発行費用と司法書士への手続き代行費などになり、「支払手数料」の勘定科目で仕訳します。
不動産取得税や登録免許税など、その他の登記費用は土地購入後の費用です。「土地」には含めず「租税公課」などの勘定科目で処理します。
証明書発行費用3,000円と司法書士への手続き代行費10万円、不動産取得税に3万円、登記関連費用に2万円を支払った場合、以下のように仕訳しましょう。
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土地付建物を購入した場合の仕訳
土地付建物を購入した場合の仕訳は、建物を利用する目的か、取り壊して土地を利用する目的かによって異なります。それぞれの処理について、みていきましょう。
建物の取得が目的の場合
建物の取得を目的として土地付建物を購入した場合、建物と土地のそれぞれを取得原価で計上します。
ただし、土地付建物の販売価格は土地と建物を合わせた額で記載されており、個別の価格は記載されていない場合がほとんどです。
そのため、帳簿に記載する際には土地と建物の価格が単体ではいくらなのかを調べる必要があります。
計算方法としては、土地に対して消費税が非課税という点を利用し、以下の計算式でそれぞれの価格を求めることが可能です。
建物利用の目的で土地付建物3千万円を購入し、土地代が2千万円、建物代が1千万円だった場合の仕訳は以下のとおりです。
土地代金 | ||||
建物の代金 |
建物は取り壊す予定の場合
建物を取り壊す予定で土地付建物を購入した場合は、建物の代金を土地代金に含めて仕訳します。建物の代金を土地代に含めるかどうかの判断基準は、国税庁の通達が参考になるでしょう。
通達では「土地とともに取得した建物等をおおむね1年以内に取り壊す場合において、それらの取壊し費用等は、その土地の取得価額に含めなければならない」と規定しています。
1年というのは厳密な基準ではなく、取り壊しが1年経過後であっても、初めから建物を取り壊すつもりで土地を取得した場合は、建物の代金や解体費用は土地の取得価額に含めることが一般的です。
反対に、初めは建物を事業に使用する目的で取得したが、その後やむを得ない理由により建物の使用ができなくなった場合、取得後1年以内に建物を取り壊したときであっても、建物の価額と解体費用は土地の取得価額に含めず、取り壊したときの経費に計上できます。
建物を取り壊す予定で土地付建物3千万円(土地2千万円・建物1千万円)を購入した場合の仕訳例は、以下のとおりです。
(建物は取り壊し予定) |
土地の購入代金は支払いのタイミングごとに仕訳をしよう
土地の購入は仮契約時、本契約時、不動産登記時それぞれのタイミングで支払いがあり、その都度仕訳が必要です。記事も参考に、正しい勘定科目で処理しましょう。
また、土地付建物の場合は建物を利用する目的か、取り壊して土地だけ利用する目的かで仕訳が異なります。建物と土地をそれぞれ計上する場合には、金額の算出にも注意してください。
よくある質問
土地購入時の仕訳のポイントは?
仮契約時と本契約時、不動産登記時に分けてそれぞれの支払いを仕訳します。詳しくはこちらをご覧ください。
土地付建物購入時の仕訳のポイントは?
建物を利用する目的か、取り壊す予定かで仕訳の内容が異なります。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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