• 更新日 : 2024年8月13日

軽減税率の導入における経費精算の注意点や仕訳例

2019年10月1日、消費税率8%から10%に移行したことにともない、軽減税率が導入されました。

これにより、消費税の課税対象の一部には軽減税率8%が適用され、対象外のものについては消費税率は10%となります。軽減税率の導入により経費精算はどのように変化したのでしょうか。この記事では、軽減税率導入における会計・経理上の注意点や仕訳例について解説していきます。

軽減税率とは

軽減税率とは、消費税の標準税率の割合を軽減した消費税率のことをいいます。2019年10月1日に実施された消費税率8%から10%への引き上げと同時に導入された制度です。現行では、標準税率10%、軽減税率8%となっています。

消費税はおおむね標準税率が適用されますが、飲食料品と定期購読契約により週2回以上発行される新聞の譲渡には軽減税率が適用されます。飲食料品のうち、スーパーなどでの食料品の購入などは軽減税率の対象ですが、酒類や外食、ケータリングなどの一部は軽減税率の対象外です。

このような軽減税率の導入は、会社の日々の取引や経理にも影響を及ぼしました。

軽減税率の導入で経費精算はどう変わったか

これまで一律の税率が適用されていた消費税は、品目によって適用される税率が異なるようになったため、経費精算にも影響を与えることとなりました。精算を求められた領収書請求書に対し、正しい税率が適用されているかを確認する必要が出てきています。

また、帳簿に記載する際も、税率ごとに区分した記帳が求められるようになりました。例えば、接待交際費などの同じ勘定科目に属する内容でも、軽減税率と標準税率が混合しているときは、軽減税率適用のものと標準税率のものとに区分した仕訳が必要です。総勘定元帳に転記する際も、軽減税率の対象品目がわかるように記載しなければなりません。

軽減税率導入における会計・経理上の注意点

軽減税率の導入により、経費精算にも影響があったと説明しました。軽減税率に対応した経費精算をするためにはどこに注目するべきか、会計・経理上のポイントをご紹介します。

税率の計算は正しいか

経費精算に関わる消費税額は、次のようなイメージで計算します。

標準税率の対象額の税込仕入額×10/110

または

軽減税率の対象額の税込仕入額×8/108

以上のように、標準税率と軽減税率では計算が異なってきますので注意しましょう。領収書によっては、消費税率と軽減税率が区分して記載されています(インボイス制度開始以降は区分して表示しなければなりません)ので、よく確認しておきましょう。特に手書きの領収書の場合は、消費税率の内訳の計算が間違っている可能性もあります。

適用税率は正しいか

軽減税率の導入により、標準税率のものと軽減税率のものが混在するようになりました。経費精算で領収書などを確認する際は、適用税率が正しいかよく確認しておきましょう。

特に注意したいのが、飲食物の経費精算です。会議や打ち合わせのためにスーパーマーケットなどで飲み物(酒類を除く)や菓子類を購入した場合や、テイクアウトや宅配を利用した場合は軽減税率の対象になります。しかし、ケータリングや飲食店などでの食事(外食)は軽減税率が適用されません。

また、食器+菓子類のように食品と食品以外の資産が一体となった「一体資産」を交際費などで経費精算する場合は、原則として標準税率が適用されます。ただし、一体資産の価格が税抜1万円以下、食品の割合が3分の2以上のときに限り、全体が軽減税率の対象になります。このように、飲食物は購入場所や内容、商品の状態によって税率が分かれますので、区分をよく確認したうえで、税率が正しいものか確認するようにしましょう。

使用している会計ソフトや経費精算システムは軽減税率に対応しているか

標準税率と軽減税率を区分して管理するためには、使用する会計ソフト経費精算システムが軽減税率に対応している必要があります。導入を検討する際には、軽減税率への対応の有無や対応する機能について、事前に確認しておきましょう。

すでにシステムを導入しており、軽減税率が導入される以前からインストール型のアプリケーションを使用している場合には注意が必要です。インストール型は軽減税率に対応する機能が追加されるようなアップデートが自動的に行われないため、自主的にアップデートを行っていない場合、軽減税率への対応ができない場合があります。

免税事業者や簡易課税制度を適用した課税事業者は、消費税を細かく管理する必要がない場合がありますが、今後インボイス制度の導入とともに会計処理の方法を変更することも考えられます。消費税の計算方法の変更に対応できるよう、軽減税率に対応しているソフトやシステムの導入をおすすめします。

消費税を含む取引の仕訳例

標準税率の場合、次のような仕訳を行います。

(例)取引先との外食(1人当たり6,600円)で社員が税込33,000円を支出した。社員が立て替えた交際費は後日、給与支払時に精算するもので未払いとなっている。
【税抜経理方式】

借方
貸方
接待交際費30,000円未払金33,000円
仮払消費税3,000円

※計算:33,000×10/110=3,000円(地方消費税を含めた標準税率の消費税額)

(例)取引先との外食(1人当たり6,600円)で社員が税込33,000円を支出した。社員が立て替えた交際費は後日、給与支払時に精算するもので未払いとなっている。
【税込経理方式】

借方
貸方
接待交際費33,000円未払金33,000円

次に、軽減税率が適用される場合です。基本的な仕訳の考え方は同じですが、消費税額の計算が異なります。

(例)取引先との打ち合わせのために、スーパーで飲食物(酒類以外)を税込5,400円分購入した。当該支出は交際費に該当するものではなく、社員が立て替えた額は後日、給与支払時に精算するもので未払いとなっている。
【税抜経理方式】

借方
貸方
会議費5,000円未払金5,400円
仮払消費税400円

※計算:5,400×8/108=400円(地方消費税を含めた軽減税率の消費税額)

(例)取引先との打ち合わせのために、スーパーで飲食物(酒類以外)を税込5,400円分購入をした。当該支出は交際費に該当するものではなく、社員が立て替えた額は後日、給与支払時に精算するもので未払いとなっている。
【税込経理方式】

借方
貸方
会議費5,400円未払金5,400円

税抜経理方式では、消費税の区分ごとに分けて計算を行い、それぞれの消費税額を算出して仕訳します。税込経理方式の場合は消費税額を分ける必要はありません。

なお、仕訳上は標準税率と軽減税率を分ける必要はありませんが、管理上は分ける必要があります。標準税率と軽減税率では、消費税率と地方消費税率の割合が異なるためです。軽減税率対応の会計ソフトで区分を付けるなどして適切に管理できるようにしておきましょう(※ただし、免税事業者や簡易課税制度を選択した事業者は会計処理上区分する必要はありません)。

マネーフォワード クラウドは軽減税率に対応

免税事業者や簡易課税が適用される課税事業者は、仕入れにかかる消費税を詳細に記帳し、会計処理をする必要はありません。しかし、領収書等に記載された適用税率を確認する必要はあるため、経費精算において一定の影響を受けます。

また、事業の発展にともない課税事業者として消費税の申告方法が変わることも予想されます。そのときになって慌てなくて済むよう、会計ソフトや経費精算システムは軽減税率に対応するものを選ぶのが望ましいでしょう。

マネーフォワード クラウド会計」や「マネーフォワード クラウド経費」、「マネーフォワード クラウド請求書」は、軽減税率による消費税の計算に対応しています。クラウド経費やクラウド請求書から取得したデータは、軽減税率を含め自動でクラウド会計に取り込み、仕訳を行うことが可能です。経費精算や会計処理の効率化を考えるなら、マネーフォワード クラウドの導入を検討してみてはいかがでしょうか。

▼マネーフォワード クラウド会計と軽減税率の対応についてはこちら

経費精算は軽減税率に対応したシステムで効率良く

軽減税率の導入は、消費税の申告を行っていた課税事業者のみならず、免税事業者の経費精算時にも影響を及ぼしました。すべての事業者で確認しておきたいのが、適用税率の範囲と税率の計算です。経費精算時は、その点に誤りがないか重点的にチェックするようにしましょう。

消費税を計上する会計処理においては、標準税率と軽減税率に区分を分ける必要があります。消費税率の違う仕入れを適切に対処するためには、軽減税率に対応した会計ソフトや経費精算システムを選択するのが望ましいでしょう。

よくある質問

軽減税率とは?

軽減税率とは、消費税の標準税率の割合を軽減した消費税率をいいます。詳しくはこちらをご覧ください。

軽減税率導入後の経費精算の注意点は?

適用税率は正しいか、税率の計算は正しいか、使用中の会計ソフトや経費精算システムが軽減税率に対応できているか確認しておきましょう。詳しくはこちらをご覧ください。


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