• 更新日 : 2024年10月15日

電子帳簿保存法の対応ポイント〜運用フェーズでのよくある課題と対策〜

2023年12月31日に、電子帳簿保存法(電帳法)改正後の宥恕期間が終了しました。これにより、所轄税務署長が「保存できない相当の理由」と認めるケースを除いて、電帳法に沿った帳票類の電子保存が義務となります。しかし、電帳法対応のために社内体制を変更したあとでも、新たな課題が見つかることがあります。

対応は済んでいるけれど、業務効率が悪化してしまった点、考慮漏れが発生していた点など、新たな運用課題が発生している企業もいらっしゃるのではないでしょうか。

自社が本当に電帳法に正しく対応できているかを確認し、不備がないかをチェックすることで、ガバナンス面でも効率面でも適切な経営が可能になります。本記事では、経費精算を例に、電帳法の運用フェーズでつまずきやすいポイントや適切な対応策について解説します。

電子帳簿保存法運用フェーズでつまづきやすいポイントと正しい対策

電帳法と対応システムの関係性や必要性

電帳法対応は1つのシステムで完結することが難しいです。対象書類や取得方法によって、複数のシステムを組み合わせて導入することも重要です。

電帳法と対応システムの関係性や必要性

電子取引保存

システムを利用しない場合、事務処理規定に沿った処置をするのに人手が介在するため、運用負荷が高く、品質にばらつきが生じる恐れがあります。結果、ガバナンスが低下する可能性が高くなります。保管については、対象データは検索できる状態で適切に保存することが必要です。メールボックスにあるだけではNGです。

スキャナ保存

紙の取引書類の受領後、最長2か月おおむね7営業日以内に処理しましょう。保管の際は日付、金額、相手先などの検索性の確保が必要です。スキャナ保存要件には「事務処理規定方式」が認められておらず、内容を改変できないシステムへのアップロードやタイムスタンプ付与、検索性の確保が必要になります。したがって、電子帳簿保存法に対応したシステムの導入は必須です。

電子帳簿保存法運用フェーズでつまづきやすいポイントと正しい対策

電帳法運用フェーズにおける経費精算でつまずきやすい4つのポイント

電帳法対応は、導入して終わりではありません。しっかり運用できているか定期的にチェックし、フローを適宜アップデートすることが大切です。以下に、経費精算に関わるつまずきポイントを紹介します。

1.半年前の領収書をスキャンした画像と申請が上がってきた場合

電帳法上、領収書等の重要書類については、最長約2か月程度の期間に電子化が求められています。これを超えたものは電子保存要件不備となるため、紙原本の保管が必要です。

2.添付された領収書の画像がモノクロの場合

領収書等の重要書類については、カラー画像による読み取りが求められています。モノクロでスキャンされた書類は電子保存の要件を満たしていないため、紙原本の保管が必要です。

3.PDFで受け取ったデータを印刷し、再度スキャンしたデータがある場合

電帳法上、電子取引に該当するデータについてはオリジナルの保存が求められています。ダウンロードデータはそのまま申請時に添付するように周知しましょう。

4.金額の記載がない納品書や契約書、見積書がある場合

金額の記載がない取引書類については、「取引金額」を空欄、または「0円」と記載すれば問題ありません。ただし、空欄にする場合は、空欄を対象として検索できるようにしておく必要があります。

電帳法対応をうまく進めるポイント

電帳法対応をうまく進めるポイント

電帳法対応で重要なのは、最初から100点を目指さないことです。すべての書類を完璧に電子化するのではなく、書類起点で優先順位を付け、重要書類から電子化を進めましょう。

1.書類を重要書類と一般書類に分類する

自社が取り扱う書類を洗い出し、国税関係書類の区分に合わせて、重要書類と一般書類に分類します。国税庁では、証拠性をもとに取引書類の分類をしています。分類は、重要書類と一般書類の2分類です。電子帳簿保存法におけるスキャナ保存の場合、重要書類と一般書類とで、電子化保存要件の厳しさが異なります。

2.優先対応すべき書類を棚卸する

洗い出した書類の分類をもとに書類棚卸表を作成し、現状の運用状況をチェックしたうえで、重要書類および一般書類の対応の優先順位を決定します。具体的には以下の手順です:

  • 電帳法対応予定書類棚卸表を作成
  • 対象となる国税関係書類を明確にする
  • 書類ごとの運用を確認し、対象とすべきかの判定をする

電子帳簿保存法運用フェーズでつまづきやすいポイントと正しい対策

現実的な電帳法対応例

電子帳簿保存法の対応には、購買プロセスで発生する書類に対して、入口側(見積書請求書の発生時点)から対応する方法と、出口側(請求書の登録・計上時点)から対応する方法があります。実際の対応例を挙げながら、2つのアプローチ方法の特徴をご紹介いたします。

購買プロセスの”入口”から対応

見積書を起点として電帳法に対応する場合は、見積が発生した時点で各書類を保存するアプローチをとります。保存するのは見積書の初版から最終版まで、および発注・納品・請求に使用する各書類です。

発生する都度、時系列に沿って書類をすべて電子化し、システムに保存していくため、手間がかかる一方でガバナンスを効かせやすいメリットがあります。見積書起点で対応する場合、ワークフローシステムと保存機能システムを連携させる社内システムを構築します。

購買プロセスの”出口”から対応

請求書を起点として対応する場合は、請求書の登録・計上時点で最終版の書類を保存するアプローチをとります。保存するのは請求書、および発注書納品書・最終版の見積書です。

ひとまとめにして月次処理などの形で保存するため、成立した取引に関する書類を効率よく保存できます。請求書起点でアプローチする場合は、電帳法に対応した会計システムを構築します。

現実的な電帳法対応例

経費精算で起こりがちなつまずきポイントを解消するために

適切な経費精算をするには、スキャナ保存と電子データ保存の双方に対応した経費精算システムを利用するのが非常に重要です。電帳法対応のために、システムの導入や運用フローの見直しを行い、ガバナンスと効率性を両立させることが求められます。

まとめ

電子帳簿保存法の運用フェーズでは、さまざまなつまずきポイントが存在しますが、適切なシステムの導入と運用フローの見直しを行うことで、これらの課題を解消することが可能です。最初から完璧を目指すのではなく、徐々にブラッシュアップしていくことが重要です。ナレッジの積み上げとテクノロジーの活用を通じて、効率的かつガバナンスの効いた運用を実現しましょう。

本記事で紹介した電帳法対応のポイントについて、さらに詳しく解説したホワイトペーパーを用意していますので、ぜひご参考ください。

電子帳簿保存法運用フェーズでつまづきやすいポイントと正しい対策

電子帳簿保存法運用フェーズでつまづきやすいポイントと正しい対策


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