- 更新日 : 2021年8月2日
総合課税で損益通算するには?

税制上、収入は性質ごと区分されています。そして、その区分ごとに課税の方法も異なります。
例えば、会社員が受け取る給料は「給与所得」に分類されます。収入が給与所得だけの場合には区分を意識することはないでしょう。
一方、いくつかの区分から収入を得ているなら、ひとつの区分からほかの区分の赤字が差し引けます。これは、利益と損失を相殺するので「損益通算」といいます。
この制度を利用すれば、余分な税金を払わなくてすむのですが、少し分かりにくいのが難点です。
総合課税と分離課税
所得税の課税方法は、「総合課税」と「分離課税」とに分けられます。
総合課税
利子所得・配当所得・不動産所得・事業所得・給与所得・譲渡所得(土地建物等・株式等の譲渡所得以外)・一時所得・雑所得。
分離課税
譲渡所得(土地建物等)・譲渡所得(株式等)・山林所得・退職所得・先物取引による所得。
譲渡所得は総合課税・分離課税双方にあるのでご注意ください。
どうして「分離」するの?
所得は、給与・配当・一時所得など、お金が入ってきた理由ごとに区別します。これにより、収入によって決められた算出方法で所得を決定します。
では、総合課税と分離課税の違いは何でしょうか?
一言でいうと、所得を合算したものに税率を乗じることを総合課税、個別に税率を乗じることを分離課税といいます。税制上の原則は総合課税です。しかし、例外である分離課税が存在するのには理由があります。
個別に税率をかける「分離課税」
分離課税は、土地や建物、山林の譲渡や退職所得など、高額になりやすい所得が多いことが分かります。所得が多いと税率も上がるというのが日本の税制です。
したがって、総合課税だけでは、住宅ローンが払えなくて自宅を売却した人に高額の税金がかかってしまったり、40年間働いた後の退職金が税金で大きく減ってしまったりという事態が生じます。そのような事態を避けるために、一時的な高額所得は分離して所得税を計算するようにしたのです。
損益通算の手順
先に述べた通り、利益から損を差し引く(通算)ことが「損益通算」です。
損益通算のポイントは、まず総合課税、分離課税各々のなかで通算するという大原則にあり、損益通算できるのは「不動産所得」「事業所得」「山林所得」「譲渡所得」の4つです。
その手順はいくつかの段階に分かれていますので、順番に見ていきましょう。
第一グループ:不動産所得と事業所得の損失。利子所得・配当所得・給与所得・雑所得から「不動産所得と事業所得の損失」を差し引くことができます。
第二グループ:総合課税の譲渡所得の損失。一時所得から「譲渡所得の損失」を引くことが可能です。ここでいう譲渡所得には、分離課税のものは含まれませんのでご注意ください。
第一グループと第二グループ内で通算した後、なお損失があれば、他グループとの通算できます。例えば、第一グループは300万円のプラス、第二グループは100万円のマイナスという場合には、2つを通算してプラス200万円とすることができます。
山林所得と退職所得:上記を集計した後もまだ損失があれば、山林所得、退職所得の順に通算できます。
損益通算の例外
「不動産所得」「事業所得」「山林所得」「譲渡所得」であっても、損益通算の対象外となる場合があるので注意してください。以下のようなものは損益通算できません。
総合課税の譲渡所得の例外
・生活に通常必要ない資産で、価格が30万円を超える資産(例:宝石・ヨット・絵画・ゴルフ会員権など)
・生活用動産を譲渡したことによる損失(車など、もとから非課税なもの)
・マイホーム以外の土地建物の譲渡損失
不動産所得の例外
・不動産所得のうち借入金利子
まとめ
損益通算の基本は、総合課税と分離課税を知ることです。そして、損益通算のポイントは順番で、グループ内で利益と損失を相殺した次に他グループで相殺し、最後には山林所得や退職所得と相殺する、という3段階の手順がありました。
また、通算できる所得であっても、譲渡所得の例外と不動産所得のうち、土地等の取得に要した借入金利子があることを覚えておきましょう。
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よくある質問
総合課税とは?
利子所得・配当所得・不動産所得・事業所得・給与所得・譲渡所得(土地建物等・株式等の譲渡所得以外)・一時所得・雑所得のことです。詳しくはこちらをご覧ください。
損益通算のポイントは?
総合課税、分離課税各々のなかで通算するという大原則にあり、損益通算できるのは「不動産所得」「事業所得」「山林所得」「譲渡所得」の4つということです。詳しくはこちらをご覧ください。
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