- 更新日 : 2026年7月27日
資本金の仕訳や勘定科目は?ケース別の例でわかりやすく解説
資本金の処理は会社設立時・増資・減資・支出時など、会社の節目ごとに勘定科目を使い分けて行います。
- 設立時の払込金は、発起人の口座等にある場合は預け金などで処理する
- 増資は出資の方法で勘定科目が変わる
- 減資はその他資本剰余金を経由して処理する
出資ルートや払込のタイミングを取り違えると、別段預金・預け金などの選択を誤りやすい点に注意します。
資本金の仕訳は、会社設立時に一度だけ済ませれば終わりというものではありません。設立直後の経費支払い、増資、減資など、会社の節目ごとに勘定科目を使い分ける必要があります。本記事では基本の仕訳から増資・減資、自己株式の処分まで、ケース別に実務で押さえたい処理をまとめます。
そもそも資本金とは?
資本金は、会社が事業を行うための元手となる出資金の総額で、貸借対照表の純資産の部に計上されます。仕訳を正しく行うためには、まず資本金の性質と、似た用語との違いを押さえておくことが入り口になります。
会社設立時の元手となるお金
資本金とは、会社の設立時や増資の際に株主から払い込まれた財産の額を指します。経営者自身の手元資金と、株主や投資家からの出資金がともに含まれます。会社法上は、株式会社の資本金の額は、設立または株式の発行に際して株主となる者が払込み又は給付をした財産の額とすると定められています。
借入金とは異なり、返済義務がないのが特徴です。企業規模や財務体力の目安として、金融機関や取引先からの信用判断の材料にもなります。資本金は1円からでも設立できますが、運転資金や取引先からの見え方を考慮して金額を決めるのが一般的です。
資本準備金との違い
資本準備金は、株主から払い込まれた金額のうち資本金として計上しなかった部分を積み立てておく勘定科目です。会社法第445条第2項により、払込額の2分の1を超えない範囲で資本金に計上しないことが認められています。
資本準備金として積んでおくと、業績悪化時に取り崩して欠損のてん補に充てるなど、財務の調整余地を残せます。設立時に「払込額の半額までを資本準備金、残りを資本金」とする設計がよく用いられます。
個人事業主の「元入金」との違い
個人事業主やフリーランスが事業用に投じた資金は、資本金ではなく「元入金(もといれきん)」として処理します。元入金は個人事業の貸借対照表で使う科目で、法人では用いません。個人事業における純資産に相当する勘定科目です。法人の資本金のように登記される金額ではなく、事業開始時に投入した資金や、過年度の事業損益、事業主貸・事業主借などを反映して毎期変動します。
したがって、元入金は法人の資本金のように一定額で固定されるものではありません。また、個人事業主の帳簿で「資本金」を使用したり、法人の帳簿で「元入金」を使用したりしないよう注意が必要です。
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資本金の仕訳に使う主な勘定科目
資本金の仕訳では、純資産・資産・経過勘定にまたがる複数の科目を使い分けます。場面ごとに登場する主な科目を整理しておくと、後段の事例が理解しやすくなります。
| 勘定科目 | 使う場面 |
|---|---|
| 資本金 | 出資された財産のうち、資本金として計上する金額 |
| 資本準備金 | 出資額のうち資本金に組み入れなかった部分 |
| その他資本剰余金 | 減資や自己株式処分差益などで発生する資本剰余金 |
| 別段預金 | 新株払込金など、一時的に銀行が預かる預金 |
| 新株式申込証拠金 | 新株発行時、払込期日前に受け取る出資金 |
| 預け金 | 発起人個人口座など、会社の正規口座以外で資金を一時的に保管している場合 |
| 創立費 | 会社設立までにかかった費用(繰延資産) |
| 開業費 | 設立後、営業開始までにかかった特別な費用(繰延資産) |
| 利益準備金 | 利益のうち配当に回さず内部留保した部分 |
| 繰越利益剰余金 | 過年度からの利益累計 |
会社設立時の資本金の仕訳
会社を設立して資本金を払い込んだときの仕訳は、払込先の口座によって借方科目が変わります。法人口座に直接払い込むのか、発起人の個人口座を経由するのか、別段預金に入れるのかで処理が異なります。
法人口座に直接払い込んだ場合
法人口座に直接払い込みを受けたときは、借方を「普通預金」、貸方を「資本金」とします。簿記の基本となる最もシンプルな形です。
【仕訳例】株式100株を1株5,000円で発行し、合計500,000円が法人口座に払い込まれた場合
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 普通預金 | 500,000円 | 資本金 | 500,000円 |
純資産の部に計上される「資本金」は、貸方に立てるのが基本動作です。資本金として全額計上せず半額を資本準備金に振り分ける場合は、貸方を「資本金」と「資本準備金」の2行に分けて記入します。
別段預金に払い込んだ場合
出資金を金融機関の別段預金口座に預けているときは、借方を「別段預金」として処理します。別段預金は、通常の預金に該当しない一時的な資金を金融機関が預かる口座です。新株発行の払込金や配当金支払資金などが代表例です。
【仕訳例】別段預金口座に資本金1,000,000円が払い込まれ、その後普通預金に振り替えた場合
①別段預金への払込時
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 別段預金 | 1,000,000円 | 資本金 | 1,000,000円 |
②普通預金への振替時
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 普通預金 | 1,000,000円 | 別段預金 | 1,000,000円 |
法人口座開設前に資本金を使ったときの仕訳
法人口座を開設する前に、発起人の個人口座へ入れた資本金から会社設立費用を支払うケースは少なくありません。資本金は会社のお金であるため、個人が立て替えた処理ではなく、「会社が発起人に預けているお金から経費を支払った」と整理して仕訳します。
会社設立費用を資本金から支払ったとき
発起人個人の口座にある資本金から創立費を支払ったときは、借方を「創立費」、貸方を「預け金」とします。これは会社のお金(預け金として計上した分)から会社の費用を支払ったという整理です。発起人の立替払いではないため、未払金は使いません。
【仕訳例】発起人個人の口座にある資本金から、定款認証や登録免許税など創立費200,000円を支払った場合
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 創立費 | 200,000円 | 預け金 | 200,000円 |
創立費は繰延資産に該当し、支出時に一括費用化することも、5年以内で均等償却することも可能です。償却するときは「創立費償却」を借方、「創立費」を貸方に立てます。
振込手数料が発生したとき
発起人の個人口座から法人口座へ資本金を移す際に振込手数料が発生したときは、会社が負担するか発起人が負担するかで仕訳が変わります。会社負担とした場合は、入金額から手数料を差し引いた金額が普通預金に着金する形になります。
【仕訳例】発起人口座から法人口座へ500,000円を移し、振込手数料756円を会社負担とした場合
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 普通預金 | 499,244円 | 預け金 | 500,000円 |
| 支払手数料 | 756円 |
発起人が振込手数料を立て替えた場合は、会社から発起人に対する立替金の返済義務が発生するため、借方に「支払手数料」、貸方に「短期借入金」を立てて処理します。
増資したときの資本金の仕訳
増資には、株主から新たに出資を受ける「有償増資」と、資本準備金や利益準備金など内部の資金を振り替える「無償増資」があります。有償増資はさらに、新株発行による払込と、自己株式の処分の2パターンに分かれます。
有償増資(払込による増資)
払込期間を設けて出資を受ける場合は、新株申込時には「別段預金」と「新株式申込証拠金」で受け入れ、払込期日に「資本金」へ振り替えます。払込期日前の資金は、株式割当数の調整などで返還する可能性があり、会社の運転資金として使えないためです。
【仕訳例】新株を発行し、申込期間中に7,000,000円の払込みを受けた場合
①新株申込時~払込期日前
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 別段預金 | 7,000,000円 | 新株式申込証拠金 | 7,000,000円 |
②払込期日到来時
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 新株式申込証拠金 | 7,000,000円 | 資本金 | 7,000,000円 |
| 普通預金 | 7,000,000円 | 別段預金 | 7,000,000円 |
払込総額のうち半額までは資本金に計上せず、資本準備金として扱うこともできます。
有償増資(自己株式の処分による増資)
自己株式を処分して資金を受け入れる場合は、処分差益が出るか処分差損が出るかで仕訳が変わります。処分価額と自己株式の帳簿価額の差額を、「その他資本剰余金」または資本金の調整で吸収する処理です。
【仕訳例1】募集株式100株のうち80株を新株発行、残り20株を自己株式処分で交付。払込総額2,000,000円、自己株式の帳簿価額は300,000円の場合
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 現金預金 | 2,000,000円 | 資本金 | 1,600,000円 |
| その他資本剰余金 | 100,000円 | 自己株式 | 500,000円 |
| その他資本剰余金 | 100,000円 |
その他資本剰余金に十分な残高がない場合も、処分時に資本金を減額するものではありません。会計期間末に不足額を繰越利益剰余金から減額します。
【仕訳例2】同じ条件で、自己株式の帳簿価額が500,000円だった場合(処分差損が発生)
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 現金預金 | 2,000,000円 | 資本金 | 1,600,000円 |
| その他資本剰余金 | 100,000円 | 自己株式 | 500,000円 |
自己株式処分部分の払込額400,000円が、自己株式の帳簿価額500,000円を100,000円下回るため、自己株式処分差損が発生します。この差額は、原則としてその他資本剰余金から減額します。新株発行部分に係る資本金1,600,000円は減額しません。
無償増資(剰余金等の振替)
無償増資は、資本準備金や利益準備金などを資本金に振り替える処理です。新たな出資を受けるわけではなく、社内の純資産項目の組み替えという位置づけになります。
【仕訳例】利益準備金5,000,000円を資本金に組み入れた場合
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 利益準備金 | 5,000,000円 | 資本金 | 5,000,000円 |
資本準備金から振り替えるときも、借方科目を「資本準備金」に変えるだけで考え方は同じです。
減資したときの資本金の仕訳
減資は、株主に金銭を交付する「有償減資」と、純資産項目の組み替えにとどまる「無償減資」に分かれます。会社法上、減資には株主総会の特別決議と債権者保護手続が必要なため、計画的な実行が前提になります。
有償減資(株主への配当を伴う減資)
有償減資では、まず資本金や資本準備金を取り崩して「その他資本剰余金」に振り替え、そこから株主に配当を支払います。資本金を直接配当原資にすることは認められていないため、一度資本剰余金を経由するのがポイントです。
【仕訳例】資本金500,000円と資本準備金500,000円を取り崩し、その他資本剰余金1,000,000円に振り替えたうえで、株主に1,000,000円を配当した場合
①資本金・資本準備金からその他資本剰余金への振替
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 資本金 | 500,000円 | その他資本剰余金 | 1,000,000円 |
| 資本準備金 | 500,000円 |
②株主への配当(源泉所得税控除あり)
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| その他資本剰余金 | 1,000,000円 | 現金 | 897,900円 |
| 預り金(源泉所得税) | 102,100円 |
「預り金(源泉所得税)」は、税務上配当とみなされる金額に対する源泉徴収分です。みなし配当の有無や計算は専門的な判定が必要になるため、税理士に確認のうえで進めると安心です。
無償減資(その他資本剰余金への振替)
資本金を減らしてその他資本剰余金を増やすパターンの無償減資では、借方が「資本金」、貸方が「その他資本剰余金」となります。株主への金銭交付を伴わないため、純資産の総額は変動しません。
【仕訳例】資本金10,000,000円を取り崩してその他資本剰余金に振り替えた場合
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 資本金 | 10,000,000円 | その他資本剰余金 | 10,000,000円 |
この処理を行う目的の一つは、税務上の中小法人に該当させて優遇措置を活用することです。資本金1億円以下の中小法人には、法人税の軽減税率や交際費の損金算入特例など複数の優遇規定があります。
無償減資(欠損補填のための減資)
欠損補填のための無償減資では、資本金の減少額は、まずその他資本剰余金に振り替えます。その後、その他資本剰余金を減少させて、繰越利益剰余金の欠損を填補します。最終的に貸方は「繰越利益剰余金」となり、過年度の損失を圧縮する処理です。
【仕訳例】資本金30,000,000円を取り崩して欠損のてん補に充てた場合
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 資本金 | 30,000,000円 | 繰越利益剰余金 | 30,000,000円 |
繰越利益剰余金は、過年度の利益累計に当期の損益を加算した金額です。欠損が圧縮されると金融機関への決算説明がしやすくなり、資金調達面の評価が改善する場合があります。
資本金の仕訳で押さえておきたい注意点
資本金の額や仕訳の精度は、税負担や決算書の見え方に直結します。実務で躓きやすいポイントを2つに絞って整理します。
資本金の額が税負担に影響することがある
資本金の額は、法人税の軽減税率や消費税の免税判定などに影響します。仕訳ミスで資本金の額が誤って計上されると、税負担の前提条件そのものが変わってしまいます。
資本金1億円以下の中小法人には、年800万円以下の所得部分に15%の軽減税率が適用されます(800万円超部分は23.2%)。この軽減税率は2027年3月期まで延長されています。資本金1億円超の大法人では所得金額にかかわらず一律23.2%となるため、資本金額の閾値が境目になります。
消費税については、設立1期目の期首資本金が1,000万円未満であれば、原則として初年度は免税事業者になります。2期目も、特定期間の課税売上高または給与等支払額の合計が1,000万円以下であれば免税が継続します。ただし、適格請求書発行事業者として登録した場合は、資本金にかかわらず課税事業者となる点に注意が必要です。
参照:No.6503 基準期間がない法人の納税義務の免除の特例|国税庁
資本金や仕訳の正確な処理で起業後の悩みを軽減
会社設立や事業開始に伴う資本金の設定、および増資や減資時の仕訳や勘定科目の処理は、正確さが求められる重要な業務です。マネーフォワードが会社設立の経験者を対象に実施した調査では、会社設立直後から1年後までに起業家が最も頭を悩ませたのは「資金繰り・資金調達」で、37.5%でした。次いで「取引先・販売先を探すこと、売上を上げること」が29.7%、「会計・経理業務」が21.9%と続きました。
会計・経理業務の負担を減らすために
調査結果からは、創業期の資金に関する課題に加えて、日々の経理処理が専門知識を持たない起業家にとって大きな負担となっていることが読み取れます。資本金に関する会計処理は複雑になりやすく、仕訳を間違えると決算等にも影響する可能性があります。日頃から適切な勘定科目を用いて正確に仕訳をすることで、経理業務の負担は軽減されます。会計ソフトなどを導入して作業を効率化することも、本来の事業に集中するための効果的な方法です。
出典:マネーフォワード クラウド、設立直後に起業家を悩ませたトップ3【会社設立の意思決定調査】(回答者:会社設立の経験がある方1,040名、集計期間:2024年1月)
資本金の増資・減資の会計処理は煩雑なため仕訳は正確に
資本金はビジネスを始める際の元手資金のことです。1円からでも可能ですが、資本金額は多い方が金融機関や株主からの信用を得やすくなります。一方、多すぎると税金の負担が大きくなるため、資本金額はよく考えた上で決めましょう。
事業開始後の増資・減資も可能でその際は仕訳が必要です。ひとくちに増資や減資といっても、有償・無償に分けられます。
有償のなかでも複数の調達方法・仕訳があるので、会計処理を間違えないよう注意が必要です。はじめのうちは覚えきれないと思うので、スマホやパソコンで本記事をチェックし、帳簿と照らし合わせて記帳するとミスを防げます。
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よくある質問
資本金とは?
起業やビジネスを始める際の元手資金のことです。詳しくはこちらをご覧ください。
資本金の仕訳のポイントは?
減資や増資の仕訳はパターンごとに会計処理が細かく分かれるため、勘定科目を間違わないことです。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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