• 更新日 : 2024年10月24日

倒産防止共済の別表10(7)の書き方・記載例は?掛金の損金算入に必要

倒産防止共済(正式名称:中小企業倒産防止共済制度)は、中小企業者等が取引先の倒産リスクに備えるための共済制度です。この共済掛金として会社等が拠出した金額は、法人税法上損金となり、確定申告ではこの拠出金に関して別表10(7)の提出が求められます。この記事では、別表10(7)の書き方や別表4や別表5などとの関係を解説します。

そもそも倒産防止共済(経営セーフティ共済)とは?

倒産防止共済とは、事業の取引先が倒産した場合、影響を受けた事業者が連鎖倒産や経営難に陥るのを防ぐための制度です。

条文としては、租税特別措置法第66条の11に次のように定められています。

(特定の基金に対する負担金等の損金算入の特例)

法人が、各事業年度において、長期間にわたつて使用され、又は運用される基金又は信託財産に係る負担金又は掛金で次に掲げるものを支出した場合には、その支出した金額は、当該事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入する。

…(中略)…

二 独立行政法人中小企業基盤整備機構が行う中小企業倒産防止共済法の規定による中小企業倒産防止共済事業に係る基金に充てるための同法第二条第二項に規定する共済契約に係る掛金

引用:租税特別措置法 第66条の11|e-Gov

この共済に加入する場合には無担保・無保証人であり、掛金の最高10倍(上限8,000万円)まで借入れできて、掛金は損金または必要経費に算入できるという特典があります。また、自己都合の解約でも12カ月以上掛金を納めていれば、掛金総額の8割以上が戻り、40カ月以上納めていれば、掛金全額が戻る仕組みです。

参考:経営セーフティ共済とは|中小企業基盤整備機構

倒産防止共済の掛金を損金算入するために必要な書類は?

倒産防止共済の掛金について損金算入するためには、法人税の確定申告書を提出する際に、別表1、別表4、別表5などとともに、当共済に関する明細書である別表10(7)を提出する必要があります。また、これとは別に「適用額明細書」の提出も必要となります。

別表10(7)特定の基金に対する負担金等の必要経費算入に関する明細書

この別表10(7)は、次のように4つのブロックに分かれており、倒産防止共済関連については、「Ⅲ特定の基金に対する負担金等の損金算入に関する明細書」に記載することになります。

倒産防止共済の掛金を損金算入 書類

出典:令和6年4月以降に提供した法人税等各種別表関係|国税庁、「別表10(7)」を加工して作成

適用額明細書

租税透明化法(正式名称:租税特別措置の適用状況の透明化等に関する法律)第3条には次のように定められています。

(適用額明細書の提出義務)

法人税申告書を提出する法人で、当該法人税申告書に係る事業年度において法人税関係特別措置(税額又は所得の金額を減少させる規定その他の政令で定める規定によるものに限る。以下第五条までにおいて同じ。)の適用を受けようとするものは、当該法人税関係特別措置につき記載した適用額明細書を当該法人税申告書に添付しなければならない。
引用:租税特別措置の適用状況の透明化等に関する法律 第3条|e-Gov 法令検索

このように法人税を減少させる規定等を受けるためには、上記の別表とは別に「適用額明細書」も添付する必要があります。これは、他に同様の規定を適用する場合にも利用します。

適用額明細書

出典:適用額明細書に関するお知らせ|国税庁、「事業年度分の適用額明細書」を加工して作成

倒産防止共済の別表10(7)の書き方・記載例は?

倒産防止共済について別表10(7)に記載する場合には、次のように記載します。全部で5項目あります。

Ⅲ特定の基金に対する負担金等の損金算入に関する明細書への記載事項

項目記載事項
1基金にかかる法人名独立行政法人中小企業基盤整備機構
2基金の名称中小企業倒産防止共済事業
3告示番号(空欄でも可)
4当年に支出した負担金等の額その年度に支払った掛金の合計額*
5同上のうち損金の額に算入した金額上記4のうち、損金の額に算入した金額

*1年以内の前納金を含みます。

一般に、上記4と5の金額は一致することが多いです。

参考:掛金を損金に算入するためには|中小企業基盤整備機構

倒産防止共済の適用額明細書の書き方・記載例は?

適用明細書は法人税の確定申告書の作成を完了してから転記するもので、租税特別措置法の他の規定を適用する場合にも利用できるようになっています。

倒産防止共済の適用額明細書2

出典:適用額明細書に関するお知らせ|国税庁、「事業年度分の適用額明細書」を加工して作成

① 期末現在の資本金の額又は出資金の額

法人税申告書別表5(1)「利益積立金額及び資本金等の額の計算に関する明細書」の「差引翌期首現在資本金等の額(項番4)」などから転記します。

② 所得金額又は欠損金

法人税申告書別表4「所得の金額の計算に関する明細書」の「差引計(最後尾、項番52)」等から転記します。

③ 明細欄

租税特別措置法の条項:「第66条の11第1項」と記載

区分番号:「00374」と記載

適用額:別表10(7)において、損金の額に算入した金額と同額を記載

参考:掛金を損金に算入するためには|中小企業基盤整備機構

倒産防止共済の掛金を損金算入する仕訳・勘定科目は?

倒産防止共済の掛金を支払った場合は損金に算入します。一般的には、損金経理といって支払った額が費用となるように仕訳をします。

例)倒産防止共済の掛金として15万円を支払い、損金経理方式で処理した。

借 方貸 方
保険料など150,000円現預金150,000円

会計上は前払費用となるような場合でも、申告時には税務調整して損金に加算してもよいとされています。

また、支払時の費用処理以外に資産計上する方法もあります。倒産防止共済の掛金については、損金経理(決算において費用として経理処理すること)が要件とされていないために、このような経理方法でも問題ないとされます。

例)倒産防止共済の掛金として15万円を支払い、積立金方式で処理した。

借 方貸 方
保険積立金など150,000円現預金150,000円

この保険積立金は資産の部に計上されます。資産計上する場合、税務上の特典を利用するためには法人税申告書別表4及び別表5(1)にて別途調整が必要です。それについては後述します。

倒産防止共済の掛金を損金算入する際の注意点は?

倒産防止共済について注意したい点を挙げておきます。特に、現在加入している事業者においては解約後の再加入に注意が必要です。

令和6年度税制改正で損金算入に関する制限が追加

倒産防止共済は令和6年の税制改正で変更があり、注目されました。令和6年10月1日以後に共済を解約して再加入した場合には、その解約の日から2年間の掛金について、必要経費又は損金の額に算入できないという制限が設けられたのです。

実際、この共済掛金を支払う事業者の多くは、本来の取引先倒産時の借入よりも「掛金支払時には損金算入ができ、かつ、40カ月以上で解約すると全額戻る」ことを利用した節税策をすることが多かったため、このような制限が設けられたようです。

参考:税制の特例に関する内容の変更について | 中小企業基盤整備機構

別表の添付漏れがあると損金算入ができない

法人においては、確定申告にて倒産防止共済の掛金を損金算入する場合には、別表10(7)に明細を記載して確定申告書に添付しなければなりません。

このことについては、租税特別措置法第66条の11第3項に次のような定めがあります。

確定申告書等に同項に規定する金額の損金算入に関する明細書の添付がない場合には、適用しない。ただし、当該添付がない確定申告書等の提出があつた場合においても、その添付がなかつたことにつき税務署長がやむを得ない事情があると認める場合において、当該明細書の提出があつたときは、この限りでない。

引用:租税特別措置法第66条の11 第3項|e-Gov

つまり、実際に拠出金を支払っており、税額も正しく計算されていたとしても、明細書の添付がないと損金算入は適用されないことになります。(やむを得ない事情を認めるには明らかな証拠が必要です。)

したがって、倒産防止共済に加入している場合は、確定申告で必ず別表10(7)を提出しましょう。

倒産防止共済の掛金を資産計上するために必要な書類は?

法人税の申告書においては、別表4と別表5を必ず提出します。会計における「損益計算書」に近いのが別表4であり、「貸借対照表」に近いのが別表5(1)です。会計同様、別表4と別表5は連動しています。

倒産防止共済の掛金を積立金方式で資産計上する場合には、会計上は費用になっていないため、税務調整にて減額することとなります。そのときに関係する別表が4と5(1)です。

別表4 所得の金額の計算に関する明細書

倒産防止共済の掛金を積立金方式で資産に計上したままになっているため、貸借対照表上に「保険積立金」などとしたその年度分の掛金合計を別表4にて損金に算入します。先に別表10(7)を作成し、調整すべき金額を確定させておきます。

別表4には加算欄と減算欄がありますが、減算欄に次のように記載します。

  • 区分:倒産防止共済掛金
  • 総額:別表10(7)において5項目目に記載した損金の額に算入した金額
  • 留保:同上

別表4の総額欄と留保欄に同額を記載することで、その金額について税務と会計の調整をしたことになります。「減算」欄の「留保」に記載されていることを確認しましょう。

別表5(1)利益積立金額及び資本金等の額の計算に関する明細書

別表5(1)は、「利益積立金額」を計算する部分と「資本金等の額」を計算する部分に分かれています。この調整は「Ⅰ利益積立金の計算に関する明細書」の欄を使います。

別表4において発生した「減算・留保」の調整は、原則として別表5(1)Ⅰで当期の増減欄のうち③欄にマイナスを付して記載する方法で調整します。(下図参照)

(当期の増減欄の”減”の列に記載しても同じ結果です。)

減算・留保の調整が行われた場合には別表5(1)Ⅰでは利益積立金を減少するように記載することになります。

利益積立金額及び資本等の計算に関する明細書

出典:令和6年4月以降に提供した法人税等各種別表関係|国税庁、「利益積立金額及び資本金等の額の計算に関する 明細書」を加工して作成

制度を上手に使って節税しよう!

倒産防止共済は、個人事業主でも法人でも使用できます。取引先の倒産時の備えとして、大いに利用できるほか、令和6年の税制改正で変更された点さえ注意すれば、節税対策として利用できます。会計方法は継続して適用することが原則のため、資産計上した場合には継続して適用するようにしましょう。


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