- 更新日 : 2024年8月8日
通販 ・ECサイトは軽減税率にどう対策するべき?
消費税増税にともなう軽減税率の対策は、通販・ECサイトも例外ではありません。顧客とその場で直接取引をする実店舗での対策とは異なってきますが、異なる2つの消費税で運用しなければならない余波は、通販・ECサイト各々の対策にも影響します。
それでは、通販・ECサイトではどのような対策を練るべきなのか、何を知っておくべきなのか、順を追って説明していきます。
目次
重要なのは軽減税率の対象をしっかり把握すること
通販・ECサイトではじめにやっておきたい対策は、軽減税率の対象を正確に把握することです。店舗販売との違いから、各消費税に該当する商品を確実に分ける必要性、注意点までを見ていきましょう。
通販・ECと店舗販売の違い
通販・ECサイトでの軽減税率の対象について知る前に、店舗販売との違いを簡単におさらいしてみましょう
まず、店舗販売はスーパーやコンビニなどリアルな接客を必要とした販売方法のことを指します。通販・ECサイトでの販売は、実店舗と違いリアルな接客を必要としない販売方法で、主にインターネットを利用した販売方法のことです。
通販・ECは店舗を必要としないため、人件費や建物などのコストを削減できますが、発送によって商品を届けるため実際に顧客の手元に商品が着くまでに時間がかかるのが特徴です。また、通販・ECは基本的にすべてネット完結であることが多くレジを必要としない代わりに、システムで対応しているケースがよく見られます。
消費税10%と8%の商品を確認する必要性
2019年10月、消費税が10%に上がるにともない、軽減税率といって一部消費税が8%に据え置かれるものも出てきます。これまでは、消費税は一律だったため商品ごとに分ける必要はほとんどありませんでしたが、軽減税率の導入によってより細かに商品を見ていく必要が出てきました。
店で販売しているものによっては、消費税10%と8%になるものが混在し、適正に処理するには、消費税の適用を商品ごとに確認して分けなければならないためです。
調味料や飲食物でも注意が必要な商品
軽減税率は主に飲食物に適用されますが、安易に飲食物だから軽減税率を適用すればよいわけではありません。
例えば、酒税法に該当する商品です。酒税法では、酒類はアルコール分1%以上のものと定義されています。そのため、アルコール分1%以上であればたとえ、みりんなどの調味料、酒入りのお菓子などであっても軽減税率対象外になります。
他にも、飲食物は人の飲食の用途であるということにも注意しなければならないでしょう。同じ商品、例えば同じトウモロコシでも、人の飲食用に販売していれば軽減税率適用、ペットフードなど人の飲食以外の用途であれば適用外として消費税を設定する必要があります。
単に商品の種類だけで分けず、実際の用途、酒税法にかかる商品でないかに注意して消費税は分けなくてはなりません。
仕入時に注意が必要な商品
販売時の消費税設定については上述した通りですが、適正な消費税精算のためには仕入時にも気を配る必要があります。販売時と仕入時では消費税率が違うものがあるためです。
例えば、商品の譲渡でトレーや袋などを用意する場合、必要範囲内と認められる包装は軽減税率に含められるため、飲食物と包装を一括して軽減税率を適用して商品ページに掲載できます。
しかし、飲食物と包装材とで仕入時が異なる場合、飲食物に付随しない包装材の消費税は軽減税率適用外になります。販売時には影響しませんが、後の消費税の計算、消費税の申告時に必要な情報なので、しっかり確認しておく必要があります。
送料の取り扱い
合わせて、通販・ECにはほぼ必須の送料についても注意が必要です。送料は飲食物に関わりのないものですが、譲渡に必要な費用でもあるため、これもまた判断に迷うところでしょう。
送料については、送料込みで飲食物を譲渡する場合は軽減税率適用、別途送料を設定する場合は適用外になります。
消費税増税後も円滑に通販・ECサイトを運用するための対策
軽減税率の導入によって、軽減税率が適用されるものと適用されないものを分けることの必要性、注意点などを説明してきました。商品ごとに区分ができたら、ほかにどのような対策をするべきなのでしょう。ここでは、4つの対策を説明します。
サイト上の商品の価格表示を準備する
各商品の消費税の区分が済んだら、サイト上の価格表示を変更しなくてはなりません。システム運用としては、商品ごと、あるいはカテゴリを設定してカテゴリごとに一括で変更できるようにしておくと便利です。なお、価格表示については軽減税率などをわざわざ表記する必要はありませんが、同じカテゴリの商品を軽減税率適用のものとそうでないものとで販売する場合は顧客を混乱させてしまいます。注意書きなどをしておいた方が親切です。
複数の消費税に対応したECカートシステムを取り入れる
価格表示とリンクする部分ではありますが、通販・ECサイト運営上、商品ページの価格のみならず、カートで決済する際の表示まで正確に反映できるようにしておく必要があります。適切に運用するためには、複数の消費税に対応したECカートシステムを取り入れる対策も必須です。なお、対応済みのECカートシステムについては、どのような設定が必要か、手続きは必要かも合わせて確認しておくと安心です。
消費税の区分が分かる納品書の準備をする
前述の部分と重なりますが、軽減税率の導入をスムーズにして顧客の誤解を招かないためには、納品書においてもしっかり消費税表示や計算を行うことです。またこうした理由だけでなく、税法の見直しによって、税区分が分かる納品書や請求書を発行することが求められるようになります。納品書は従来のものでなく、軽減税率かどうか消費税の区分が分かる様式のものを用意しましょう。
会計ソフトも複数の消費税に対応したものを準備する
クラウド型など自動的に適切にアップデートしてくれるものなら良いですが、そうでない場合は、軽減税率に対応した会計ソフトの用意も必要です。帳簿の保存についても消費税の区分が重要視されるため、古いソフトでもまだ使えると思わず、しっかり消費税と軽減税率対策の施された会計ソフトを用意しましょう。
購入日?発送日?どの時点から適用する?
店舗販売の場合は、商品を引き渡した時点で取引が成立するため、軽減税率や消費税増税が実施されるタイミングで適用を開始すれば問題ありません。しかし、通販・ECサイトはどうでしょうか。
譲渡は商品の発送日で判断
そもそも消費税や消費税の軽減税率の適用は、商品の譲渡によって発生するものです。そのため、商品の譲渡を基準に計算することが分かります。
商品が譲渡されたと判断されるのは、商品が購入されたときでもなく、実際に顧客の手元に着いたときでもなく、店側が発送した日、つまり商品を譲渡のため手放したときです。そのため、顧客が2019年9月30日に購入を済ませても、2019年9月30日中に店側が発送しなければ、新しい税率で計算されることになります。購入する側は日にちに余裕を持って購入した方が良いでしょう。
事前の告知などで対策
実際は、上述したように店舗の発送日に応じて消費税が適用されますが、この判断基準について知らない顧客も多くいるはずです。店側が正しい対応をしていても、断りがないと「9月30日より前に購入したのに消費税10%で計算された」とクレームが来てもおかしくありません。
店側は余計なトラブルを避け事業に支障をきたさないためにも、発送に時間がかかる場合は明記しておくこと、あるいは10月1日以降の発送になることを明示したうえで、消費税の取り扱いはどうなるかも合わせて告知しておくと親切です。
通信販売の経過措置について
このように、消費税増税と軽減税率の導入によって、トラブルが発生する可能性は以前から想定されていました。そのため、消費税の増税についてはいくつか経過措置が認められています。
通信販売も経過措置の対象で、その適用条件は2019年4月1日までに販売価格等の提示の準備を完了させていること。これにより軽減税率が適用されない一般商品の譲渡についても、一時的に古い消費税率で計算が認められます。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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