• 更新日 : 2021年9月10日

売価還元法とは?棚卸資産の評価方法や原価法、計算方法も解説

売価還元法とは?棚卸資産の評価方法や原価法、計算方法をわかりやすく解説!

主に販売を目的として所有する事業用の財産を、棚卸資産といいます。棚卸資産は貸借対照表上に記載される科目で、適切に評価するために毎期末どのくらい在庫があるか、価格の下落で損が生じていないかといったことを確認する必要があります。棚卸資産を評価する際の考え方に、原価法と低価法があります。今回は、原価法における棚卸資産の評価方法の一つである売価還元法について、計算方法を含めてわかりやすく解説します。

売価還元法とは?簡単に解説!

棚卸資産の評価方法はいくつかありますが、品目別に商品を評価する方法も多いため、多様な品目を扱う小売業などでは実務上多大な工数がかかります。そこで、小売業を中心に活用されているのが「売価還元法」です。

売価還元法は棚卸資産をグループに分け、それぞれの原価率を算出することで、売上原価や期末棚卸資産の額を計算する方法です。

売価還元法は、イオン株式会社(第96期有価証券報告書)、株式会社ローソン(第46期有価証券報告書)などで使用されています。

財務諸表の注記事項のうち、会計方針に関する事項の重要な資産の評価基準及び評価方法の項目で、棚卸資産の評価方法を確認できます。

イオン株式会社や株式会社ローソンのような小売業で売価還元法が広く利用されているのは、他の評価方法と比べて簡易であり、最終仕入原価法と比べて価格変動時の実際の価格との差が開きにくいからです。

棚卸資産の評価方法

棚卸資産の評価方法に、原価法と低価法があります。売価還元法は原価法の一種です。

原価法は、棚卸資産の取得原価をもとに棚卸資産を評価する方法です。原則は原価のまま評価を据え置きますが、棚卸資産の収益性の下落によって正味売却価格(販売価格に販売費用を含めたもの)が取得原価を下回ったときに限り、回収可能額を貸借対照表上に反映させるために正味売却価格(=回収可能額)まで帳簿価額を切り下げます。

低価法は、原価法を使って評価した棚卸資産の評価額と、期末時点の時価による棚卸資産の評価額を比較する方法で、低いほうの額を棚卸資産の評価額とします。

原価法と低価法については、以下の記事で詳しく説明しています。

原価法

原価法は、棚卸資産の取得原価を基準に評価する方法です。原価法に基づく在庫の具体的な評価方法には売価還元法のほかに、先入先出法、総平均法、移動平均法、最終仕入原価法、個別法があります。

先入先出法

先入先出法は、先に仕入れた商品を先に払い出すという考え方で棚卸資産を評価する方法です。古い商品から先に払い出されるため、期末棚卸資産には直近で仕入れた商品の額が反映されます。古いものから順に払い出すという考え方は、実際の棚卸商品の流れに近いため、合理的な方法といえます。先入先出法は、商品ごとの評価を前提にしています。

先入先出法については、以下の記事で詳しく解説しています。

総平均法

総平均法は平均法の一種で、棚卸資産の総受入額(期首棚卸額+期中の仕入額)を総受入数量(期首の棚卸数量+期中の仕入数量)で割って、棚卸資産の総平均単価を割り出す方法です。期末の棚卸資産は、総平均単価に期末の在庫数量をかけて算出します。先入先出法と同じく、商品ごとの評価を前提とした評価方法です。

総平均法のメリットは、計算が複雑でないことです。総受入額と総受入数量さえわかれば、簡単に総平均単価を割り出せます。商品の状況を定期的に知りたい場合は、1ヵ月ごとや半年ごとなど、期間を区切って総平均を出すこともできます。

ただし、締め切り日までの最終的な総受入額と総受入数量がわからないと計算ができないため、必要に応じて棚卸資産の額を確認できないことがデメリットです。

移動平均法

移動平均法も平均法の一種で、棚卸資産の受け入れのたびに平均単価を算出する方法です。先入先出法や総平均法と同じく、棚卸資産別の評価を前提としています。受け入れのたびに平均額を算出するため、リアルタイムで棚卸資産の額がわかることが特徴で、経営戦略を立てやすい方法といえるでしょう。一方、受け入れの都度計算が必要になるため、管理する棚卸資産の種類が多い場合は工数がかかるのが欠点です。

移動平均法については、以下の記事で詳しく解説しています。

最終仕入原価法

最終仕入原価法は、決算日に最も近い取得原価をもとに棚卸資産を評価する方法です。棚卸資産の価値をその都度確認することはできませんが、簡単な計算で棚卸資産の価値を割り出せます。

最終仕入原価法は税法上は認められていますが、企業会計原則上は棚卸資産の評価方法として認められていません。期中の取得原価のほとんどが最終取得原価に近い、重要性の低い棚卸資産である、といった特別な理由がない限り、上場企業などの有価証券報告書の提出が義務付けられている会社では使用できません。一方、有価証券報告書を提出する必要がない中小企業では、簡易に計算ができるため広く用いられています。

個別法

個別法は、棚卸資産を個別に評価することで、棚卸資産の受け入れと払い出しを対応させる方法です。個別法は、個別性の強い宝石や骨とう品、不動産などの取引で使用するべき評価方法とされています。大量仕入品などに適用すると、複数の単価から恣意的に選択できるようになるためです。

個別法については、以下の記事で詳しく解説しています。

売価還元法のメリット

売価還元法のメリットは、棚卸資産をグループ分けすることで、ある程度まとめて棚卸資産を評価できることや、原価率を使って計算するため、棚卸資産を受け入れるたびに計算する必要がないことです。簡単に計算できるため、商品ごとの管理が難しい場合や、小売業のように多様な商品を扱っている業種に向いています。受け入れのたびに再計算する必要がないため、先入先出法や移動平均法ほど工数がかかりません。

売価還元法のデメリット

売価還元法のデメリットは、棚卸資産のグループ分けが難しいことです。グループ分けは、商品の性質や種類、形状などの類似性ではなく、値入率の類似性などをもとに行います。値入率とは、商品ロスなどを考慮に入れない、売価に対する利益の割合のことです。グループ分けに基準はないため、会社でルールを決めて行うほかありません。そのため、同じ業種でもバラつきが生じることがあります。また、グループ分けに失敗すると実際の額との間に大きな差異が生じ、棚卸資産を適切に評価できない点もデメリットです。

【簿記受験者向け】売価還元法の計算問題と手順

売価還元法では、どのようにして棚卸資産を評価するのでしょうか。以下は、売価還元法の考え方と計算の流れを図式化したものです。
売価還元法の考え方と計算の流れの図
売価還元法では、棚卸資産をグループ分けした後、グループごとに原価率を出します。原価率の計算に必要なのは、受入原価合計と受入売価合計です。受入原価は、期首商品の原価と当期仕入原価を使って計算します。受入売価合計は、図の青色部分の合計額です。

※青色部分の用語の意味

  • 期首商品売価:前期末の棚卸資産の売価(販売時の価格)
  • 当期仕入原価:当期中の仕入原価の合計(=受入原価合計で使う当期仕入原価)
  • 原始値入額:期中のロスを考慮しない仕入原価に上乗せした利益額
  • 値上額:販売前の売価の値上額
  • 値上取消額:販売前の売価の値上取消額
  • 値下額:販売前の売価の値下額
  • 値下取消額:販売前の売価の値下取消額

期末商品売価の計算の図
原価率を算出したら、期末商品売価に原価率をかけて期末の商品原価を算出します。期末商品売価は、期末の棚卸資産の数量に売価を乗じれば算出できます。

売価還元法で原価率を算出してみよう

売価還元法の考え方をもとに、以下の数値を使って原価率を計算してみましょう。
原価率の計算の図

受入合計原価=1,500+30,000=31,500
受入合計売価=2,000+30,000+9,000+500-300-400+200=41,000

原価率=31,500÷41,000=76.829…%

原価率を77%とすると、

3,000×77%=2,310(期末商品原価)

棚卸資産の評価に売価還元法の理解は重要!

棚卸資産の評価には、さまざまな方法があります。売価還元法は、数ある棚卸資産の評価方法の一つです。売価還元法の特徴は、資産をグループ分けして、算出した原価率によって棚卸資産の評価を行うこと。棚卸資産を受け入れるたびに処理する必要はなく、棚卸資産を個別に計算する必要もないため、多様な商品を扱う小売業などでの棚卸資産の評価に向いています。棚卸資産の評価方法は、会社の実態に合わせて適切なものを選択することが重要です。他の評価方法との違いも含めて、特徴を理解しておきましょう。

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よくある質問

売価還元法とは?

棚卸資産をグループ分けし、算出した原価率をもとに棚卸資産を評価する方法です。詳しくはこちらをご覧ください。

売価還元法のメリットは?

原価率を使って簡単に計算できるため、多様な商品を扱う小売業などでは工数を大きく削減できます。詳しくはこちらをご覧ください。

売価還元法のデメリットは?

棚卸資産のグループ分けが必要な方法であり、グループ分けに失敗すると実際の額との差が大きくなり、適切な評価ができません。詳しくはこちらをご覧ください。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

監修:岩波 竜太郎 (公認会計士 / 税理士 / 経営学修士)

公認会計士・税理士・経営学修士。大手監査法人、ベンチャー企業を経て、2015年に独立開業。大手監査法人での海外経験や管理本部長としての幅広い経験を武器に会計アドバイザリー業務を主たる業務として行うとともに、東証1部上場企業である株式会社OrchestraHoldingsの社外役員をはじめ、経営アドバイザーとして複数の企業に関与。Webメディア等の記事執筆・監修業務も積極的に行っている。

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