• 作成日 : 2021年11月30日

貸倒金とは?仕訳例をわかりやすく解説

貸倒金とは?仕訳例をわかりやすく解説

貸倒金とは、取引先から売掛金や貸付金、未収入金などの回収ができなくなった場合の損失を計上する勘定科目です。貸倒引当金とは異なり、損失が確定した場合に計上します。

債務者が支払い免除になって債権が消滅した場合のほか、全額回収が不能と見込まれる場合など、貸倒金として計上できる場合の要件は具体的に定められています。

本記事では、貸倒金が計上できる3つの場合や、仕訳例についてパターン別に詳しく紹介します。

貸倒金とは

貸倒金とは、売掛金や貸付金など債権の回収が困難になった場合、損失を計上する勘定科目です。貸倒金の対象となる債権は主に取引先に対する債権で、売掛金や貸付金などがこれにあたります。

貸倒金と認められるには法律上回収不能になった場合など要件が定められており、しっかり判断しなければなりません。

ここでは、貸倒金の対象となる債権について紹介し、会計処理の消費税区分はどうするかについても説明します。

貸倒金の対象となる債権

貸倒金は、経営悪化や倒産などで債権が回収できなくなった場合に計上できます。貸倒損失ともいい、どちらで計上しても問題ありません。貸倒金の対象になるのは、主に次のような債権です。

売掛金とは営業活動による債権で、未収入金は固定資産や有価証券の譲渡など、営業活動以外の取引で発生した債権です。

受取手形は取引の相手から将来の入金を約束して受け取る証書であり、貸付金は決められた期日までに返済してもらうことを条件に貸し付けた資金のことです。

貸倒金は、これらの権利が回収困難になった場合に計上することになります。あくまで事業上の債権であり、取引先に対する債権でも個人的な貸付などの場合は貸倒金とはなりません。

参考:国税庁/No.5320 貸倒損失として処理できる場合

貸倒金の消費税区分

貸倒金の消費税区分は、本来なら受け取るはずだった売上の消費税区分と同じです。

例えば、商品やサービスの提供といった課税取引における債権が回収不能になった場合は課税として扱い、土地の譲渡や貸付、有価証券の譲渡といった非課税取引による債権の場合は非課税として扱います。

課税取引の対象だった債権が回収不能になった場合は、貸倒れが生じた年度の消費税額から差し引くことができます。一方、非課税取引による債権に貸倒れが生じた場合は、消費税の処理は発生しません。

ただし、消費税の免税事業者のときに発生した売掛金が課税事業者になったあとに貸倒れた場合、控除することはできないため注意してください。

貸倒金と貸倒引当金の違い

貸倒金と混同しやすい勘定科目に貸倒引当金があります。貸倒引当金とは、取引先の倒産などで債権が回収不能になる場合を想定し、事前に売掛金の一定額を経費として計上しておく際に用いる勘定科目です。

貸倒金とは回収できないことが確定したお金であるのに対し、貸倒引当金は確定してないものの回収できなくなりそうなお金という違いがあります。

貸倒引当金を計上する際、将来発生する損失額がどの程度であるのか算出する方法として、一括評価と個別評価の2つの計算方法があります。

一括評価の計算ができるのは青色申告のみで、売掛金、貸付金などの金銭債権が対象です。以下の方法で計算します。

  • 貸倒実績率法(原則)
  • 法定繰入率(特例)

法定繰入率は期末資本金が1億円以下の中小企業などに認められている方法で、業種ごとに繰入率が定められています。

個別評価は一括評価以外の債権が対象で、回収できなくなる可能性が高い場合に貸倒引当金として計上できます。計算は債権ごとに行い、認められる範囲はそれぞれ異なります。

貸倒引当金の計算方法については、以下の記事で詳しく紹介しています。ぜひ参考にしてください。

参考:国税庁/No.5501 一括評価金銭債権に係る貸倒引当金の設定

貸倒金が計上できる場合について解説

貸倒金を計上できるのは、以下のような3つの場合に限定されています。

  • 債務者が支払い免除になった場合
  • 全額回収が不可能と見込まれる場合
  • 一定期間取引停止している場合

これら3つのいずれかに該当していることが必要であり、要件をしっかり確認してから計上することが必要です。内容を順に見ていきましょう。

債務者が支払い免除になった場合

法律上の債権が消滅した場合は貸倒金として計上できます。会社更生法など法律の規定で債権が切り捨てられた場合です。

具体的には、以下の3つの場面となります。

  • 会社更生法等の規定に基づく更生計画で認可された債権
  • 民事再生法の規定に基づく再生計画で認可された債権
  • 会社法の規定に基づく特別清算の協定が認可された債権

また、債権者集会の協議決定や、行政機関などのあっせんによる協議に基づき、合理的な基準で支払いが免除された金額も貸倒金に該当します。

さらに、債務が多く履行できない状態が相当期間続いている場合で弁済を受けることができず、こちらから書面で債務免除をした場合も貸倒金となります。債務を履行できない期間は、一般的に3〜5年程度です。

ただし、災害による被害を受けた場合や、取引先の倒産が原因の場合、3〜5年よりも短い期間が認められる場合もあります。

債権の全額回収が不可能であると見込まれる場合

取引先の財務能力から債権の全額の回収が難しいと判断される場合、債権の一部を貸倒金にすることができます。事実上の貸倒れとされる場合です。債権の全額の取り立てが不可能というのが要件ですが、回収する努力もしなければなりません。

まず、債務者の財務諸表や借入状況など、取り立てができないことを証明する書類集めます。また、抵当権など債権について担保物がある場合は担保物を処分し、保証人がいる場合は保証人から回収することも必要です。

債務者と一定期間取引を停止している場合

債権者の財務状況が悪化し、一定期間以上取引を停止した場合は、貸倒金の計上ができます。形式上の貸倒れとされる場合です。売掛金や受取手形といった売掛債権に限られ、貸付債権などそれ以外の債権には適用されません。

一定期間とは、取引停止や最後の弁済があったうちの最も遅い時期から1年以上経過したときです。不動産取引など、たまたま取引をした債務者に対する売掛債権には適用されません。

貸倒金の仕訳例

貸倒金の仕訳方法について、具体的に見てみましょう。複式簿記単式簿記それぞれについて、事例をあげて説明します。

また、貸倒引当金を計上していた場合と計上していなかった場合の仕訳についても紹介しますので、記帳する際の参考にしてください

複式簿記の場合

貸倒れの要件に該当した場合は、貸倒金の勘定科目で計上します。貸倒金が計上できる場合について、具体的な仕訳を見ていきましょう。

2021年2月10日、A社に30万円の販売し、その後2021年12月20日にA社が倒産して売掛金が回収できなくなった場合の仕訳です。

まず、2021年2月10日の売上を計上します。

日付借方貸方摘要
2021年2月10日売掛金 300,000円売上 300,000円A社 掛売上

貸倒れとなった時点で、売掛金を貸倒金に振り替える処理を行います。

日付借方貸方摘要
2021年12月20日貸倒金 300,000円売掛金 500,000円A社 掛売上

売上の30万円はその年の売上に計上されたままですが、貸倒金として30万円が計上されることで、利益はゼロとなります。

単式簿記の場合

単式簿記での記入例も見てみましょう。複式簿記の場合と同じ事例で、まず2021年2月10日の売上30万円を記入します。

日付売上摘要
2021年2月10日300,000円A社 掛売上

貸し倒れが確定した2021年12月20日に、貸倒金の30万円を計上します。売上(収益)と貸倒金(費用)が30万円ずつ計上されることで相殺され、利益はカウントされません。

日付貸倒金摘要
2021年12月20日300,000円A社 倒産による貸倒処理

貸倒引当金を計上していなかった場合の仕訳例

貸倒金とはならない場合でも、事前に回収不能が予想されるときは貸倒引当金を経費として計上することができます。貸倒れの可能性が高い場合は、個別評価の計算で多く計上することが可能です。

それほど可能性が高いといえない場合は一括評価で計上することになりますが、それほど多くは計上できず、計上できるのも青色申告のみとなります。

まず、貸倒金が発生したが、貸倒引当金を計上していなかった場合の仕訳を見てみましょう。

2021年3月5日に取引先のB社が倒産し、売掛金20万円の回収ができなくなった場合の仕訳は以下の通りです。

日付
借方
貸方
日付勘定科目補助金額勘定科目補助金額
2021年3月5日貸倒金200,000円売掛金B社200,000円

損失となった売掛金を貸方にして減らし、貸倒金を計上します。

貸倒引当金を計上していた場合の仕訳例

事前に貸倒引当金を計上していた場合の仕訳も紹介しましょう。

2021年6月1日に取引先のC社が倒産して売掛金40万円の回収ができなくなったが、事前に貸倒引当金を10万円計上していた場合、仕訳は以下のようになります。

日付
借方
貸方
日付勘定科目補助金額勘定科目補助金額
2021年6月1日貸倒金300,000円売掛金C社400,000円
貸倒引当金100,000円

計上していた貸倒引当金により貸倒金が相殺され、残額のみを計上することになります。

貸倒金の計上を理解しましょう

貸倒金とは、売掛金などの債権が回収できないことが確定し、損失として計上する勘定科目のことです。計上できる場合は法律上の貸倒れなど3つの場合に限定されており、該当するかをよく確認しなければなりません。

貸倒れが生じたときに貸倒金(費用)の勘定科目で仕訳することで、計上していた売上(収益)が相殺され、利益はカウントされないことになります。貸倒引当金を計上していた場合はその分を貸倒金から差し引き、残った金額を貸倒金として処理しましょう。記事も参考に、貸倒金を正しく計上してください。

よくある質問

貸倒金とは?

売掛金や貸付金などの回収が困難になった場合に計上する勘定科目です。 詳しくはこちらをご覧ください。

貸倒引当金との違いとは?

貸倒引当金とは、売掛金や貸付金などの回収が困難になった場合を想定して計上しておく勘定科目です。損失確定前の勘定科目という点で貸倒金と異なります。詳しくはこちらをご覧ください。


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