• 更新日 : 2024年8月8日

消費税を徹底解説!10%になって何が変わった?軽減税率とは? #2

2019年10月に消費税率は10%まで引き上げられました。また、同時に日本では初めてとなる軽減税率の制度も導入され、一部の品物の消費税は8%のまま据え置かれることに。これにより全ての事業者が、消費税の引き上げと制度変更にともなう影響に対応することになりました。

本記事では消費税について、仕組みや歴史から新たに導入された軽減税率の対象までわかりやすく説明していきます。

消費税とは

消費税とは商品や製品を購入したり、サービスを受けたりする際にかかる税金です。消費をするときに消費をする人が平等に負担する税金であるため、誰もが馴染みのある税金といえるかもしれません。そのため税率が変わると、広く影響が及びます。

消費税の仕組み

商品や製品などは一般的に生産や製造をする業者、流通業者、小売業者の手を渡って消費者の手元に届きます。手から手に渡る中間の取引では消費税が発生します。消費税はこの中間の取引段階で、税が二重三重に累積しないような仕組みになっています。
具体的には事業者は売上げに係る消費税額から、仕入れに係る消費税額を差し引きその差額を納付するルールになっています。この仕組みを図解すると次のとおりです。
消費税の仕組み

上の図では卸売業者は製造業者から仕入れをする時に「5,000円+消費税500円」を支払っています。その後、卸売業者は小売業者へ「7,000円+消費税700円」で製品を売っています。
この場合、卸売業者は売上に係る消費税700円から仕入れに係る消費税500円を差し引き、差額の200円を納付することになります。

消費税の負担者と納税者

消費税の特徴として負担者と納税者が異なる間接税であるという点が挙げられます。最終的には消費者が負担し、法人や個人事業主などの事業者が納税します。
先ほどの図で見ると、消費者は10,000円の製品に対して1,000円の消費税を小売業者に支払っています。小売業者は売上にかかる「消費税1,000円-仕入れに係る消費税700円の差額300円」を納税し、卸売業者は同様に差額の200円、製造業者は仕入れがないため売上にかかる消費税500円を納税しています。
このように消費者が最終的に負担した消費税を、生産や流通、販売などを行う事業者がそれぞれ預かって、それぞれ納付する仕組みです。消費税以外の間接税では、酒税やたばこ税、印紙税などがあります。

日本の消費税の歴史

日本で初めて消費税が導入されたのは、1989年4月でした。このときの消費税率は3%です。
当時の日本は、世界に例を見ないスピードで高齢化社会へと進みだしたころでした。先細る歳入に対して、医療費や社会保障費は急速に増していくという見通しが、社会全体に強い危機感を与えていました。このような時代背景があり、医療や福祉のための財源確保を目的とした消費税が導入されました。
その後、消費税は1997年4月に5%、2014年4月に8%と時代とともに増え、2019年10月には10%(軽減税率8%)へと増税されることになります。
10%に増税された後の2021年4月からは、総額表示が義務化となりました。総額表示とは事業者が消費者に対して商品や製品の販売、サービスの提供などを行うときの価格の表示について、消費税を含めた表示を行うという制度です。例えば、本体価格「1,000円」の商品に値札をつける際や、チラシなどの広告に表示する際には「1,100円」といった税込み価格で表示します。
総額表示は2004年4月から義務付けられていましたが、2度目の増税の2013年10月から条件付きで税抜き価格を表示してもよいという特別措置法が施行されました。この条件とは「1,000円(税別)」というように、税別であることを明確化する総額表示でなくてもよいというものです。
2021年3月末にこの特別措置法が失効したため、再び総額表示が義務づけられ、全ての事業者が対応することになりました。なお、総額表示をするときの小数点以下の端数処理の方法として、切り捨てや切り上げ、四捨五入のどれを選択するかは、事業者に委ねられています。

課税対象となる取引とならない取引

日本国内で事業として対価を得て行う取引は、ほぼ課税の対象になります。ただし、消費税の性格と合わない取引や、社会政策的な配慮がされている取引など、非課税とされている取引もあります。

課税対象となる取引

日本国内で事業者が事業として対価を得て行う次の取引は、消費税の課税対象です。事業者は法人、個人事業主どちらも対象です。

  • 資産の譲渡
  • 売買や交換などにより、資産の所有権を他の人に移す取引を指します。

  • 資産の貸付け
  • 事務所の賃貸借や自動車のレンタルといった、形のあるものを貸付ける取引のほか、特許権やノウハウなど、形のないものを使用させることにより対価を得る取引も指します。

  • 役務の提供
  • いわゆる他人のために技術や技能、知識などを使って対価を得る行為を指します。いわゆるサービスの提供で、工事や運送、飲食、宿泊から、弁護士やスポーツ選手まで、すべて役務の提供が挙げられます。

また、外国から商品を輸入する取引も消費税の対象となります。この場合事業者であるかどうかは問いません。事業として行わない一般消費者も納税義務者になります。

課税対象とならない取引

課税対象となる要件に当てはまらない取引です。日本国外の取引、事業以外の取引、対価を得ずに行う取引は、課税対象には該当しません。

  • 給与や賃金
  • 労働の対価であり、事業の対価ではないため、課税の対象にはなりません。

  • 寄附金や祝金、見舞金、補助金
  • そもそも対価ではないため、課税の対象にはなりません。

  • 保険金や共済金
  • 資産の譲渡による対価ではないため、課税の対象にはなりません。

  • 株式の配当金やその他の出資分配金
  • 株主などの地位に基づいて払われるため、資産の譲渡、貸付、役務提供いずれにも当たらず課税の対象外です。

非課税取引

消費税の性格に合わない取引きや社会政策的な配慮がされている取引きは、非課税にされています。

消費税の性格に合わない取引

 

  • 土地の譲渡、貸付け(一時的なものは課税)
  • 株や債券などの有価証券
  • 紙幣や硬貨、電子マネー、仮想通貨などの支払手段の譲渡
  • 利子、保証料、保険料
  • 郵便局やコンビニで行う郵便切手、印紙の譲渡
  • 商品券やプリペイドカードの譲渡
  • 住民票や戸籍抄本などの行政サービスの手数料
  • 外国為替
  •  
    など

社会政策的な配慮がされている取引き

  • 社会保険が適用される医療
  • 介護保険サービスや社会福祉サービス
  • お産費用
  • 埋葬料や火葬料
  • 身体障害者用の用具の譲渡・レンタル
  • 小学校、中学校、高校などの授業料、入学金、入学試験料、施設設備費
  • 小学校、中学校、高校などの学校の教材用図書の譲渡
  • 居住用の住宅の貸付け(一時的なものは課税)
  •  
    など

免税取引

輸出と輸出類似取引と呼ばれる国外向けのサービスなどは免税取引とされています。ただし、輸出証明書を保管するなどの要件を備えておく必要があります。

  • 商品や製品の輸出
  • 旅客や貨物の国際輸送、国際郵便
  • 外国貨物の積み込みや取り卸し、運送、保管といったのサービスの提供
  • など

消費税の納税義務と免税事業者

課税期間の基準期間の課税売上高が1,000万円を超える事業者は、課税事業者となり納税義務者です。

課税期間とは法人の場合は事業年度を指します。個人事業主は1月始まりの暦年です。基準期間は法人の場合、事業年度の前々年度、個人事業主の暦年の前々年を指します。

この条件を満たさない場合でも、特別期間の課税売上高が1,000万円を超える事業者は、課税事業者となります。特別期間とは法人の場合、前年度の開始から6か月間を指し、個人事業主の場合は前年の1月から6月の6か月間を指します。

免税事業者とは、基準期間、特別期間ともに課税売上高が1,000万円以下の事業者のことです。法人の場合は、その課税期間となる事業年度。一方、個人事業主の場合、その年は納税の義務はありません。

例:法人で課税期間が2021年度(事業年度4月始まり)の場合 

  • 2019年度の売上が1,000万円以上 → 課税事業者
  • 2019年度の売上が1,000万円未満かつ2020年4月から9月の売上が1,000万円 → 免税事業者

法人の場合、課税期間の終了日の翌日から2か月までが納付期限です。個人事業主の場合原則として3月31日です。何らかの事情により確定申告の期日が延長される場合は、この限りではないようですので、毎年確認するとよいでしょう。

消費税納税額の計算方法

すべての取引を集計して計算する一般課税と、課税売上だけを集計して納税額を計算する簡易課税の2通りの計算方法があります。簡易課税は期間の売上高が5,000万円以下であることが条件で、事業年度開始前に税務署に届出をする必要があります。

一般課税は原則通りに「課税売上げに係る消費税額-課税仕入れ等に係る消費税額(仕入控除税額)」で計算します。仕入控除税額を計算する方法は「個別対応方式」と「一括比例方式」の2種類があり、事業者が選択することができます。一般的には、個別対応方式の方が手間がかかる分、税額に関して有利になることが多いようです。

簡易課税は「課税売上×みなし仕入れ率」で仕入控除税額を計算する方式です。

仕入れ率とは売上活動のタイプによってかかる経費の率を国が定めたものです。6種類の事業区分が設けられており、それぞれ40~90%の率が割り当てられています。ただし、事業者の売上活動全体ではなく、事業ごとに判断していくことになるため注意が必要です。

軽減税率制度とは

特定の商品や製品の消費税を、一般の商品の消費税より低くする制度です。2019年10月1日の消費税率10%への引き上げ時に、一部の商品や製品が8%に据え置かれました。
日々の生活の負担を軽減する目的があり、消費税の逆進性に配慮したものです。消費税はすべての人が均等に負担する性質があるため、所得の低い人にとっては、収入に対して消費税による支出が大きくなることから、このような配慮がなされました。

軽減税率が事業者に与える影響

軽減税率が始まったことにより事業者は、売上や仕入れに軽減税率の対象となる品目があれば、記帳時に税率ごとに区分して記載することが必要になりました。これにより、請求書の記載方法も変更が求められています。

これまでは請求額に一括して税率をかければ事足りましたが、軽減税率の導入により、2つの異なる税率を区分しておくことが必要になりました。その結果、軽減税率の品目を明記し、税率ごとの合計対価額を記載する方法が必須となったのです。これを「区分記載請求書等保存方式」と呼びます。なお、この方法もいわゆる経過措置です。

2023年10月1日からは、より厳格な「適格請求書等保存方式(インボイス方式)」が適用されることになっています。課税事業者は請求書にこれまでの「区分記載請求書等保存方式」方法から、「品目ごとの適用税率と税額」を記載する方法へと変更しなければなりません。この「品目ごとの適用税率と税額」が記載された請求書のことをインボイス(適格請求書)と呼びます。仕入れ時にはこのインボイスを受取って保管し、売上の発生時に提出を求められた場合には、発行しなければなりません。

軽減税率の対象

お酒などのアルコール飲料と外食を除く飲料品や食料品、定期購読契約された週2回以上発行される新聞が、軽減税率の対象です。日用品や生活必需品、保険対象外の医薬品についても議論されましたが、対象外となりました。

【消費税8%のものの例】

ノンアルコールビールアルコール度数1度未満の飲料は飲料品に該当
みりん風味調味料
不可飲処置のされた料理酒
調味料として食料品に該当
出前やテイクアウト外食とみなされない
有料老人ホームの給食外食とみなされない

【消費税10%のものの例】

アルコール飲料アルコール度数1度以上は10%
みりん
不可飲処置のされていない料理酒
アルコール飲料と区分けが困難
イートイン外食に該当
ケータリング役務(サービス)の提供に該当
駅やコンビニで購入する
新聞
定期購読契約に基づかない

経過措置

消費税が引き上げられた2019年10月より前に契約し、納品が2019年10月以降の場合は経過措置があります。具体的には住宅の購入の契約を2019年10月より前に行い、引き渡しが2019年10月以の場合などです。

詳しくは以下のURLの記事で紹介しています。

消費税と地方消費税の違い

消費税は国に納める国税、地方消費税は都道府県や市区町村に納める地方税です。消費税は年金、医療費、介護、少子化対策に使われます。地方消費税はこれに加えて、都道府県や市区町村が行う社会保障施策全般に使われます。
消費税率10%のうち消費税率7.8%、地方消費税率2.2%、軽減税率の消費税率8%のうち消費税率6.24%、地方消費税率1.76%です。消費税と地方消費税はどちらも管轄の税務署で納付できます。
詳しくは以下のURLの記事で紹介しています。

引き上げの影響はまだ続く

本記事では消費税の概要と2019年の増税時の制度変更とその影響、今後予定されている変更などについて紹介しました。事業者の人は増税と軽減税率の導入に対応したばかりですが、2023年10月には適格請求書等保存方式(インボイス方式)が始まります。消費税を正しく理解して、これからの変化に必要な準備も進めておきましょう。


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