- 更新日 : 2024年8月8日
「区分記載請求書」とインボイス制度における「適格請求書」の違い
2023年10月からはインボイス制度が始まります。2019年10月から運用が開始された「区分記載請求書」とどのような違いがあるのでしょうか?「区分記載請求書」の書式はまったく使えないのでしょうか?
そのような疑問を解消し、正しい情報を得ていただくために、今回は「インボイス制度」を中心に「区分記載請求書等保存方式」との違いなども解説したいと思います。
目次
「区分記載請求書等保存方式」とは?
2019年10月から始まった複数税率に対応する請求書が「区分記載請求書等保存方式」です。
「区分記載請求書等保存方式」は、簡潔に言えば軽減税率制度導入に合わせて、それまでの請求書の記載および経理の方式を変えるものでした。
そして、2023年10月には、「適格請求書等保存方式(インボイス制度)」が始まります。「区分記載請求書等保存方式」はインボイス制度までの請求書保存形式ということになります。
区分記載請求書等保存方式で変わること
区分記載請求書等保存方式により、それ以前の請求書に「軽減税率対象品目である旨」と「税率ごとに合計した対価の額(税込)」の記載が追加で必要になりました。
具体的な記載項目としては、これまで通りの①~⑤があり、⑥と⑦が追加で必要です。
次の画像を例にすると、緑色の文字色の部分が新たに必要な追記事項となります。
引用:消費税軽減税率制度の手引き|国税庁、消費税軽減税率制度の手引き(P4)
当然ながら記帳などの経理処理も「区分経理」が必要となり、課税事業者においては、仕入税額控除を受けるための条件が、区分経理に対応した帳簿や請求書の保存となりました。
軽減税率対象商品を扱っていない場合、請求書については10%のみの記載となります。しかし、費用の記帳については区分経理が必要であり、申告書についても、軽減税率に対応した書式となっています。
2023年10月に始まるのは「適格請求書等保存方式(インボイス制度)」
2023年10月から導入される「適格請求書等保存方式」を、通称インボイス制度と呼びます。インボイス制度の特徴は、仕入税額控除のためには支払先からのインボイス(適格請求書)の保存が必要になることです。
インボイス(適格請求書)とは、適格請求書発行事業者の登録をした個人事業主や法人が発行できる請求書のことです。適格請求書発行事業者(以下、インボイス発行事業者という)になるためには、課税事業者も免税事業者もインボイス発行申請を行います。
特に、免税事業者がインボイス発行申請をする場合には、一定期間は特例的に課税選択届出書の提出が不要となっています。
参考:インボイス制度に関するQ&A目次一覧|国税庁
消費税の仕入税額控除制度における 適格請求書等保存方式に関するQ&A(問8参照)
適格請求書等保存方式では、請求書に次の画像の⑧「適格請求書発行事業者の登録番号」を記載することが大きな変更点です。
インボイス制度についてもう少し詳しく知りたい方は、次の記事を参考にしてみてください。
免税事業者がインボイス制度に困惑している理由
インボイス制度開始前においては、免税事業者は消費税の納付義務がないため、仮受消費税と仮払消費税の差額分が免税事業者の利益となっています。これは「益税」と呼ばれ、賛否両論が分かれているところです。
インボイス制度では、前述の通り、取引先から適格請求書をもらえないと仕入税額控除ができなくなり、控除できない分は自ら負担を被ることになります。そのため、取引相手として適格請求書を発行できない免税事業者は不利になるのではないか、とフリーランサーが困惑しているのです。
もちろん免税事業者のまま事業を営むことは可能ですが、発注してくれる取引先が仕入税額控除を受けられないと考えると、取引先との継続的な取引のために免税事業者からインボイス発行事業者になり、適格請求書発行事業者の登録をするフリーランサーが増えるのではないかと予想されます。
インボイス制度に向けての検討を!
2023年10月に導入される「適格請求書等保存方式(インボイス制度)」に向けて正しい情報を収集し、事業の方針をじっくりと検討してみてはいかがでしょうか。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
会計の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
発注書や注文書の保存期間と方法は?2023年の法改正も解説
発注書や注文書は国税関係書類に該当するため、一定期間の保存が義務付けられます。また、電子帳簿保存法の適用は任意で、これまで紙に印刷して保存する方法が広く用いられてきましたが、2022年1月から施行された電子帳簿保存法の改正により、一部は電子…
詳しくみる電子帳簿保存法改正後も紙保存の併用は可能?正しい保存方法も解説
電子帳簿保存法の改正により、2024年1月から電子取引により作成・受領してきた書類は紙で保存することはできなくなりました。しかし、改正後も、紙で作成・受領したものや自社内で完結するものは紙の保存と併用が可能です。 本記事では、電子帳簿保存法…
詳しくみる電子保存義務化が延期!2年の猶予期間(宥恕処置)を解説
令和3年3月に可決された「電子帳簿保存法」改正が令和4年1月1日より施行される予定でしたが、企業側の電子化への対応の遅れなどを理由として、2年間の猶予期間が設けられました。今回はそもそも「電子帳簿保存法」とは何か、施行によって変更される点は…
詳しくみる小規模事業者は改正電子帳簿保存法にどう対応すればいい?
1998年の創設から何度も改正が重ねられてきた電子帳簿保存法の現状はどうなっているのでしょうか?この記事では、2023年度改正における電子帳簿保存法対応のため、小規模事業者にはどのような取り組みが必要なのかを中心に解説します。また、その際の…
詳しくみる2024年1月の電子帳簿保存法改正で電子取引データの紙保存が廃止に!対応方法を解説
2024年1月に、電子帳簿保存法が改正されました。電子帳簿保存法は国税関係の帳簿や書類などの電子保存方法を定めた法律で、法人および個人事業主に適用されます。 本記事では改定の詳細や対応策、保存方法などを解説します。適用対象となる方は改定のポ…
詳しくみる電子帳簿保存法とは?2024年からの改正内容・対象書類を簡単に解説
電子帳簿保存法とは、紙で保存しなければならなかったものを一定の要件を満たして電子で保存できるようにする法制度のことです。 電子帳簿保存法は国税帳簿書類を対象としており、電子帳簿等保存、スキャナ保存、電子取引の3つの区分があります。また、20…
詳しくみる