• 更新日 : 2025年2月3日

区分記載請求書とは?インボイス制度の適格請求書との違いを解説

2023年10月からはインボイス制度が始まります。2019年10月から運用が開始された「区分記載請求書」とどのような違いがあるのでしょうか?「区分記載請求書」の書式はまったく使えないのでしょうか?

そのような疑問を解消し、正しい情報を得ていただくために、今回は「インボイス制度」を中心に「区分記載請求書等保存方式」との違いなども解説したいと思います。

区分記載請求書等保存方式とは

2019年10月から始まった複数税率に対応する請求書が「区分記載請求書等保存方式」です。

インボイス制度へ移行するまでの経過措置

「区分記載請求書等保存方式」は、簡潔に言えば軽減税率制度導入に合わせて、それまでの請求書の記載および経理の方式を変えるものでした。

2023年10月には、「適格請求書等保存方式(インボイス制度)」が始まります。つまり、「区分記載請求書等保存方式」は、従来の請求書の作成ルールからインボイス制度に移行するまでの経過措置ということです。

区分記載請求書等保存方式で変化したこと

「区分記載請求書等保存方式」により、それ以前の請求書に「軽減税率対象品目である旨」と「税率ごとに合計した対価の額(税込)」の記載が追加で必要になりました。

区分記載請求書に記載する内容

具体的な記載項目としては、これまで通りの①~⑤があり、⑥と⑦が追加で必要です。

区分記載請求書等保存方式で変わること

次の画像を例にすると、緑色の文字色の部分が新たに必要な追記事項となります。

区分記載請求書イメージ

引用:消費税軽減税率制度の手引き|国税庁

当然ながら記帳などの経理処理も「区分経理」が必要となり、課税事業者においては、仕入税額控除を受けるための条件が、区分経理に対応した帳簿や請求書の保存となりました。

軽減税率対象商品を扱っていない場合、請求書については10%のみの記載となります。しかし、費用の記帳については区分経理が必要であり、申告書についても、軽減税率に対応した書式となっています。

区分記載請求書が不要なケース

売上にかかる消費税額に対してみなし仕入れ率をかけ、控除対象となる仕入税額を計算する制度を「簡易課税制度」と呼びます。簡易課税制度を利用している事業者に関しては、区分記載請求書等保存方式による請求書の保存は求められません。

2023年10月に施行される適格請求書等保存方式(インボイス制度)とは

2023年10月から導入される「適格請求書等保存方式」を、通称インボイス制度と呼びます。インボイス制度の特徴は、仕入税額控除のためには支払先からのインボイス(適格請求書)の保存が必要になることです。

インボイス(適格請求書)とは、適格請求書発行事業者の登録をした個人事業主や法人が発行できる請求書のことです。適格請求書発行事業者(以下、インボイス発行事業者という)になるためには、課税事業者も免税事業者もインボイス発行申請を行います。

特に、免税事業者がインボイス発行申請をする場合には、一定期間は特例的に課税選択届出書の提出が不要となっています。

参考:インボイス制度に関するQ&A目次一覧|国税庁
消費税の仕入税額控除制度における 適格請求書等保存方式に関するQ&A(問8参照)

区分記載請求書と適格請求書の違い

適格請求書等保存方式では、請求書に次の画像の⑧「適格請求書発行事業者の登録番号」を記載することが大きな変更点です。

適格請求書等保存方式(インボイス制度)

インボイス制度についてもう少し詳しく知りたい方は、次の記事を参考にしてみてください。

適格請求書発行事業者への登録が必要

インボイス制度では、請求書に事業者登録番号を記載する必要があります。つまり、請求書を発行する側は、管轄の税務署長に登録申請書を提出しなければなりません。登録申請書はe-Taxなどで提出することも可能です。

登録事業者以外からの課税仕入れに関しては、原則として仕入税額控除が適用されません。買い手側が控除制度を適用するためにも、早めの登録が必要です。

適格請求書発行事業者に登録できないケース

免税事業者は、課税事業者とならなければ適格請求書発行事業者として登録することができません。また、免税事業者以外の事業者も、登録手続きを実施していない場合は制度に適した請求書を作成できず、買い手側が仕入れ税額控除の適用を受けられなくなります。

免税事業者がインボイス制度に困惑している理由

インボイス制度開始前においては、免税事業者は消費税の納付義務がないため、仮受消費税と仮払消費税の差額分が免税事業者の利益となっています。これは「益税」と呼ばれ、賛否両論が分かれているところです。

インボイス制度では、前述の通り、取引先から適格請求書をもらえないと仕入税額控除ができなくなり、控除できない分は自ら負担を被ることになります。そのため、取引相手として適格請求書を発行できない免税事業者は不利になるのではないかと困惑しているのです。

もちろん免税事業者のまま事業を営むことは可能ですが、発注してくれる取引先が仕入税額控除を受けられないと考えると、取引先との継続的な取引のために免税事業者からインボイス発行事業者になり、適格請求書発行事業者の登録をするフリーランサーが増えるのではないかと予想されます。

インボイス制度への対応を進めましょう

2023年10月1日に施行された「適格請求書等保存方式(インボイス制度)」に対応するためには、早めに準備をすることが大切です。自社システムで請求業務を行っている場合、システムの改修などが必要となり、コストや時間がかかってきます。そのような場合は、請求代行サービスを導入するのも一つの方法です。


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