• 更新日 : 2025年2月20日

期ずれとは?リスクや原因、修正方法をわかりやすく解説

期ずれとは、その年度に計上するべき売上・経費を、別の年度に計上してしまうことです。期ずれが発生すると税務調査で指摘を受け、加算税の支払い対象になることもあるため、十分な注意が必要です。本記事では、期ずれのリスクや原因、修正方法を解説します。期をまたぐ取引など、計上間違いが起こりやすい具体例も紹介します。

期ずれとは?

「期ずれ」とは、当年度に計上するべき売上や経費を、前年や翌年といった別の年度に計上してしまうことを指します。ビジネス上の取引では、一般的に「受注」→「生産」→「納品」→「請求書発行」→「入金」の流れで行われます。この流れの途中で決算日を迎えてしまうと、期ずれが発生してしまうのです。

たとえば、決算日が3月31日にもかかわらず、翌月4月の請求書締切日に合わせて売上を計上すると、売上の期ずれとなります。また、納品が完了していても請求書の処理が決算日をすぎてしまえば、期ずれに該当します。

期ずれが発生すると、正しい利益が計算されず、税務調査で指摘を受けることになるでしょう。決算を行う前に、当該売上や経費が当年度のものかどうか、または計上漏れが発生していないかどうかのチェックは必ず行ってください。

期ずれが発生する事例

期ずれは、企業の財務報告において重要な影響を与える可能性があります。本章では、売上と経費に関連して発生しうる期ずれの具体的な事例を紹介し、その対処方法について解説します。

売上の期ずれ

売上集計の締日を月の途中に設定している会社の場合、締日後に取引された売上が当年度に計上されないケースが発生します。たとえば、3月31日が決算日で毎月20日締めで売上を計上している場合、3月分の売上は2/21〜3/20で計上し、3/21〜4/20は翌年度の4月分として計上しやすいでしょう。しかし、これだと期ずれが発生してしまいます。

この場合は3/21〜3/31の取引は、会計上は当年度に該当するため、当年度の売上として計上するべきなのです。月末締めの会社であれば発生しにくいですが、月の途中を締日に設定している場合は注意しましょう。

経費の期ずれ

経費においても、期ずれが発生するケースがあります。期末までに受け取らなかった商品やサービスは翌年度分として計上しなくてはなりません。

また、経費の性質によって処理方法が異なるため、それぞれの状況に応じた適切な会計処理が必要です。正確な会計処理のためには、企業会計原則や各種税法の規定に従って処理するようにしましょう。

なぜ期ずれを発生させてはいけないのか

本章では、期ずれを発生させてはいけない理由と税務調査で重要視されるポイントについて解説します。

過少申告加算税がかかる

期ずれが発生すると、会計上の利益に誤差が生じるため、法人税が正しく計算されなくなってしまいます。

本来は当年度の売上もしくは翌年度の経費にもかかわらず、翌年度の売上や当年度の経費として計上する期ずれが起こると、法人税は本来の額より少なくなります。すると、法人税を過少申告したとみなされ、過少申告加算税および延滞税の支払い対象となってしまうのです。

過少申告課税の金額は、本来納めるべきだった追加で支払う税金の10%相当額となります。売上金額が大きいほど無駄な出費となるため、注意してください。

税務調査の指摘事項

一般的な税務調査では、税務署の職員がオフィスや店舗に訪問し、経理担当者や税理士に対して質問をする実地調査を行います。税務調査において、売上や経費で指摘されやすい主な項目は、以下のとおりです。

売上計上漏れはないか
期間のずれはないか
原価売上との対応関係にずれはないか
棚卸しは適切か
経費私的なものはないか
期間のずれはないか

上記のとおり税務調査において、期ずれは真っ先に注目され、指摘されやすい項目となるので注意しましょう。

予算計画への影響

企業は中長期的に達成したい売上目標を掲げ、それをいつまでにどれくらい達成するべきかという予算計画を立てます。目標に対して、必要な経費や設備投資を検討して予算を立てますが、定期的な見直しも必要です。

しかし、見直しをした時点で期ずれが発生していた場合、正確な売上を把握できていないことになります。それと同時に、費用の計上を誤っていると、間違った利益・利益率を認識してしまいます。「計画通りに進んでいると思っていたが、実は期ずれを起こしていて売上が全然達成していなかった」という事態に陥る可能性があるのです。そうなると予算計画に影響を与え、会社の成長にも影響が出てくるでしょう。

期ずれが発生する原因

本章では、期ずれが発生する原因について具体例を交えながら詳しく解説します。

会計年度をまたいだ取引を行った

発行月にばかり気をとられて、請求書に記載されている売買日や役務提供日に見落としがあると、売上や経費を計上する月を誤ってしまいます。これは売上だけでなく、経費の請求書でも言えることです。

とくに単日の取引ではなく、複数日にまたがる取引はミスが起きやすいので注意しましょう。たとえば、事務所の修繕工事をしてもらった際に、工事期間が「3/28~」とだけ書いてあった場合は、きちんといつ工事が終わったか確認する必要があります。「4/1」に工事が終わっているのであれば、役務の提供の完了した翌期に費用となります。

代金を前払いした

事業に必要な商品やサービスを数ヶ月単位で前払いして契約または購入し、そのうち翌期にまたがる費用を「前払費用」といいます。たとえば、まとめて支払ったオフィスの家賃や、事務機器のリース代が該当します。

前払費用が発生した際は「経過勘定」という費用の発生と、現金支払いのずれを調整する科目を使用してください。

たとえば、事務所を10月に賃借する際、向こう1年分の家賃(月額10万円、計120万円)を支払った場合は、以下のように処理します。

10月地代家賃120万円現預金120万円
3月前払費用60万円地代家賃60万円

当期の経費は、10月から3月分の60万円分となり、未経過分は翌期へ繰り延べます。しかし、経過勘定を用いず、本来なら来期の費用となるはずの分まですべて当期の費用としてしまうと、期ずれが起きてしまうのです。ただし、毎年継続して支払うものであれば、すべて当期の費用として会計処理することも認められています。

期ずれが発生した時は修正申告または更正の請求が必要

期ずれが発生した時は、修正申告または更正の請求を行います。過少申告加算税のような追徴課税を避けるためにも必要な対応です。

納税した金額が少なかった場合は、修正申告書を税務署へ提出して手続きを進めます。反対に、納税した金額が多かった場合は、更正の請求手続きが必要です。期ずれに気づいた時点で早急に処理できるようにしましょう。

会計年度をまたぐ場合は期ずれに注意しよう

期ずれは、3月と4月の間など、会計年度をまたぐ取引で発生しやすいです。売上集計の締日を月の途中にしている場合などには、とくに注意して処理しましょう。

期ずれが発生すると、法人税が正しく計算されません。法人税を過少申告したとみなされ余分な税金を支払うことになるケースもあるため、できるだけ速やかに修正申告をしてください。


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