- 更新日 : 2024年8月8日
リサイクル預託金とは?仕訳と勘定科目の解説
リサイクル預託金は、自動車を購入した時に支払う必要があるものです。2005年にスタートした制度で、まだ馴染みがないという人も中にはいるかもしれません。この記事では、リサイクル預託金が導入された経緯や消費税上の取り扱い、適切な勘定科目や仕訳例などの実例も紹介していきます。この記事を読んで、リサイクル預託金の理解に役立ててください。
リサイクル預託金とは
リサイクル預託金とは、新車や中古車を購入した時に発生する費用です。自動車はどれだけ長く乗ってもいずれは廃車となるものですが、廃車となった車を解体処理するのには費用がかかります。リサイクル預託金は、その費用を所有者があらかじめ払っておくものです。
リサイクル預託金の根拠となるのは、2005年にスタートした「自動車リサイクル法」です。車は鉄などのリサイクル可能な有用金属から作られており、そのうちのおよそ8割はリサイクル、その他は埋立処理とされてきました。しかし、廃棄費用が高騰して不法投棄が社会問題化し、廃車の適正処理を義務付ける方向に議論が進んだ結果、自動車リサイクル法が誕生したのです。自動車リサイクル法は、解体や廃車に携わる業者が適正に業務を果たしていくために作られたともいえます。
自動車リサイクル法においては、リサイクルにかかる費用は廃車前の所有者が負担するべきと考えられており、この原則は「排出者責任」とも言われます。リサイクル預託金は、新車や中古車を買ったタイミングで支払いますが、車の売却をする際にはそのほとんどの金額が返却され、手元に返ってきます。リサイクル費用を負担するのはあくまでも最終の所有者であるため、途中で手放した場合には返却される仕組みとなっていることがその理由です。
ここからは、リサイクル預託金の会計上の取り扱いについて見ていきたいと思います。
参考:公益財団法人 自動車リサイクル促進センター 自動車リサイクルシステム
リサイクル預託金の仕訳に使える勘定科目は?
リサイクル預託金は、新車購入時や中古車購入時、未預託の場合には車検時に支払うものです。支払いは1台につき1回のみとなります。廃車せずに自動車を売却する場合は、手数料などの一部を除いたほとんどの金額が返金され、次に購入した人が改めてリサイクル預託金を支払う仕組みです。
リサイクル預託金を仕訳する場合は、投資その他の資産に「リサイクル預託金」という勘定科目を新設するのが望ましいと考えられます。しかし、科目を作るのが難しい場合には長期前払費用としても問題ありません。リサイクル預託金はこのように、支払時に資産計上することになります。そのため、自動車を廃車するタイミングで費用処理を忘れないようにしてください。
なお、リサイクル預託金の明細を見てみると「資金管理料金」という項目があるのに気付くはずです。これはリサイクル預託金の管理のための事務手数料であり、預託金の支払時に「支払手数料」などを使って費用処理しておくのが適切です。
リサイクル預託金の仕訳例
実際に、リサイクル預託金の仕訳をどう行うか事例を見ていきましょう。まずは、新車を購入して廃車する事例です。
仕訳例)新車を購入し、リサイクル預託金として現金20,000円を支払った。なお、支払ったリサイクル料金のうち、資金管理料金は1,000円であった。
リサイクル預託金 | 19,000円 | 現金 | 20,000円 | 新車購入 |
支払手数料 | 1,000円 |
上記の自動車を廃車した。
支払手数料 | 19,000円 | リサイクル預託金 | 19,000円 | 廃車 |
次に、廃車まで自動車を保有せずに、譲渡した場合の仕訳例を紹介します。
仕訳例)上記の車を廃車せずに譲渡したため、リサイクル預託金の返金を受けた。
現金 | 19,000円 | リサイクル預託金 | 19,000円 | 自動車の譲渡 |
自動車を廃車前に譲渡する場合には、このリサイクル預託金も譲渡することになります。リサイクル預託金を減額する仕訳処理を行ってください。なお、消費税上は金銭債権の譲渡となるため非課税取引です。
リサイクル預託金の税務上の取扱
リサイクル預託金の明細に記載されたもののうち、シュレッダーダスト料金、エアバック類料金、フロン類料金、情報管理料金は、廃車時の課税取引として処理されるため、預託段階では消費税の対象外取引(不課税取引)です。一方、資金管理料金は支払い時の費用として処理するため、消費税上は支払時に課税取引として処理します。
自動車を廃車せずに譲渡する場合は、リサイクル預託金部分も合わせて譲渡すると考えます。リサイクル預託金は金銭債権であり、金銭債権の譲渡は非課税取引です。よって、非課税取引となることに留意してください。
リサイクル預託金は勘定科目を作るか長期前払費用で処理
リサイクル預託金は、廃車時に必要となるリサイクル費用を前もって支払っておくものです。投資その他の資産に勘定科目を作るのがベストですが、そうでない場合は、長期前払費用として計上しましょう。
また、明細に「資金管理料金」と記載された部分は事務手数料に相当するため、支払時に費用計上することにも注意してください。リサイクル預託金は、自動車の適正なリサイクルを推進するために必要なシステムです。会計処理も正しく行うよう心がけましょう。
よくある質問
リサイクル預託金とは?
将来的に廃車となり、解体するために必要な費用を前もって払っておくもの。根拠となる法律は自動車リサイクル法。詳しくはこちらをご覧ください。
リサイクル預託金の仕訳のポイントは?
資金管理料金は支払時に費用計上し、それ以外は長期前払費用として処理する。「リサイクル預託金」の勘定科目を作ることが望ましい。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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