• 更新日 : 2026年7月27日

IFRS第15号「顧客との契約から生じる収益」とは?5ステップをわかりやすく解説

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PointIFRS第15号と5ステップは何のために定められている?

顧客との契約から得る収益を、国際的な基準に基づいて認識・表示・開示するための基準です。

  • 国際比較や投資判断の精度を高める
  • 5ステップで認識のタイミングと金額を決める
  • 製品保証や本人代理人の判断には個別検討を要する

日本基準とは細部で取り扱いが分かれるため、対比して理解しておきましょう。

IFRS第15号は、顧客との契約から生じる収益を一貫したルールで会計処理するための国際財務報告基準です。複雑な取引や製品保証も対象に含まれるため、経理担当者は5ステップと適用範囲の整理が求められます。日本の収益認識基準との違いをふまえ、要点をわかりやすく整理します。

IFRS第15号「顧客との契約から生じる収益」とは?

IFRS第15号は、企業が顧客との契約から得る収益を、財務諸表にどのように計上・開示するかを定めた国際財務報告基準です。国際的な基準に基づいた収益認識のルールを設けることで、財務情報の比較可能性が高まる効果があります。

業種をまたいで適用される包括的な単一モデルである点が特徴で、IASB(国際会計基準審議会)とFASB(米国財務会計基準審議会)の共同プロジェクトとして2014年5月に公表されました。

IFRS第15号の目的

IFRS第15号は、顧客との契約で企業が約束した財やサービスの移転を、経済的実態にあわせて収益として認識できるようにすることを目的としています。

「企業の契約に基づく履行義務をどのタイミングでどの程度果たしたか」を判断軸として、その充足に応じて収益を計上するルールを統一的に設けています。

これにより、類似の取引で会計処理が分かれる事態を抑え、投資家やステークホルダーが企業の業績を比較・評価しやすくなります。

IFRS第15号の適用範囲

IFRS第15号は、企業が顧客へ財やサービスを提供して対価を得る取引全般に適用されます。

ただし、リース契約や保険契約、金融商品など、他のIFRS基準が優先される取引は対象外です。ロイヤリティやライセンス収入、サブスクリプション型の取引など多様な収益が枠組みに含まれます。

なお、「本人(プリンシパル)」と「代理人(エージェント)」の区分が重要となるため、取引形態に応じた判断が求められます。

参照:IFRS 15 Revenue from Contracts with Customers|IFRS Foundation

IFRS第15号の適用時期

IFRS第15号は、2018年1月1日以後に開始する事業年度から強制適用とされています。

IASBが2014年5月にIFRS第15号を公表した時点では2017年1月1日以後開始する事業年度からの適用とされていましたが、2015年に1年延期され、2018年1月1日以後開始する事業年度からの適用となりました。

日本ではIFRSを任意適用と位置づけており、IFRSをそのまま導入するかどうかは企業の判断に委ねられています。一方で、IFRS第15号をふまえた日本基準として企業会計基準第29号「収益認識に関する会計基準」が公表されており、2021年4月1日以後開始する連結会計年度・事業年度の期首から強制適用となっています。

参照:改正企業会計基準第29号「収益認識に関する会計基準」等の公表|企業会計基準委員会

IFRS第15号で対象となる収益とその他の収益の違い

IFRS第15号が対象とするのは、顧客との契約から生じる収益です。同じ「収益」でも、顧客との契約に基づかない取引や、他のIFRS基準が優先される取引は対象外となります。

対象外となる典型例には、固定資産の売却益や為替差益、利息・配当などの金融収益、保険契約・リース契約から生じる収益があります。これらはそれぞれIFRS第9号「金融商品」やIFRS第16号「リース」など、対応する基準に従って処理します。

実務では、まず取引が「顧客との契約から生じる収益」に該当するかを判定し、該当しない取引はそれぞれ適用される基準に従って処理することになります。たとえば、不動産の賃貸収益はIFRS第16号、配当収益はIFRS第9号の対象です。

IFRS第15号における収益認識の5ステップ

IFRS第15号では、収益認識のプロセスを「5ステップ」として定めています。ステップ1〜2で「収益認識の単位」を、ステップ3〜4で「いくら計上するか」を、ステップ5で「いつ計上するか」を判断する流れです。

各ステップの全体像は以下のとおりです。

ステップ 内容 決めること
ステップ1 顧客との契約を識別する 収益認識の対象となる契約を特定
ステップ2 契約における履行義務を識別する 認識単位(履行義務)を特定
ステップ3 取引価格を算定する 全体として計上する金額
ステップ4 取引価格を履行義務に配分する 履行義務ごとの計上金額
ステップ5 履行義務の充足時に収益を認識する 計上タイミング

ステップ1 顧客との契約を識別する

最初に、企業と顧客のあいだに会計処理の対象となる契約が成立しているかを判定します。

契約とは、企業と顧客のあいだで、財やサービスを提供することと、その対価を支払うことが法的に拘束力のある形で合意されている状態を指します。書面に限らず、口頭や慣習に基づく合意も含まれるため、契約書の有無だけで判断するわけではありません。

ただし、当事者の承認、権利と支払条件、商業的実質、回収可能性などの要件をすべて満たす必要があるため、契約金額や変更条件を正しく把握するには、極力契約内容を文書化しておくことが望ましいといえます。

ステップ2 契約における履行義務を識別する

次に、契約のなかで企業が顧客に対して提供することを約束した「履行義務」を洗い出します。

履行義務とは、契約で約束した区別可能な財・サービスを顧客に移転する義務のことです。たとえば、製品本体の販売だけでなく、初期セットアップや保守・アフターサービスが契約に含まれる場合、それぞれが独立した履行義務として識別される可能性があります。

これにより、複数の財やサービスが含まれる契約でも、要素ごとに別個の収益認識が行えるようになります。逆に、単独では顧客にとって便益がない要素は、別個の履行義務には該当しません。

ステップ3 取引価格を算定する

続いて、契約全体で企業が受け取ると見込まれる対価、すなわち「取引価格」を算出します。

取引価格は固定額だけでなく、販売リベートやボリュームディスカウントといった可変対価、現金以外の対価、顧客に支払う対価などを総合して見積もります。可変対価については、確度や過去実績をふまえて見積りを行い、後から大幅な戻入れが生じないよう制約を設けるのが原則です。

また、支払い条件が長期にわたる場合は、重要な金融要素を含むかを判定し、必要に応じて現在価値に割り引いて評価します。取引価格の見積りは、後の履行義務への配分にも影響します。

ステップ4 取引価格を契約の履行義務に配分する

取引価格が確定したら、ステップ2で識別した履行義務に配分します。

配分は、各履行義務に対応する財・サービスの「独立販売価格」を基準に行うのが原則です。独立販売価格とは、その財・サービスを単独で販売した場合の価格を指します。

独立販売価格を直接観察できない場合は、市場価格をふまえる方法、見積コストにマージンを上乗せする方法、残余アプローチなどを用いて合理的に見積もります。値引きがある場合は、原則として各履行義務に比例して配分しますが、特定の履行義務に紐づく値引きと判断できる場合は、その履行義務にのみ配分することもあります。

ステップ5 履行義務の充足時に収益を認識する

最後に、履行義務を充足したタイミング、もしくは充足するにつれて、収益を認識します。

ポイントとなるのは、財・サービスの「支配」が顧客に移転したかどうかです。一時点で支配が移転する場合は、その時点で一括して収益を認識します。一定の期間にわたって支配が移転する場合は、進捗度に応じて期間にわたり収益を認識します。

たとえば、商品の販売は商品が顧客に引き渡された一時点で収益を認識するのが一般的です。一方、ソフトウェアの保守サービスのように一定期間にわたって便益が提供される取引は、契約期間にわたって按分して認識します。判定には契約条件と実務上の管理方法が反映されるため、誤りのない記録とモニタリング体制が求められます。

IFRS第15号と日本の収益認識基準の違い

IFRS第15号と、日本の収益認識基準(企業会計基準第29号)は、5ステップという基本構造を共有しています。日本基準はIFRS第15号をふまえて整備されたため、認識・測定のロジックは大筋で共通しています。

一方で、注記事項、開示要件、表示科目、一部の取引慣行への配慮などには差異が残されており、海外取引が多い企業や、グループに海外子会社を含む企業ほど対比して理解しておく必要があります。

参照:改正企業会計基準第29号「収益認識に関する会計基準」等の公表|企業会計基準委員会

認識・測定における主な相違点

認識・測定のロジックは共通しているものの、特定の取引慣行への例外規定の有無で実務処理が分かれます。

日本基準では、出荷基準や代替的な取扱いが一部認められており、長年の取引慣行をふまえた処理が継続できる仕組みになっています。一方、IFRS第15号は単一モデルでの厳格な適用を求めるため、出荷基準のような実務慣行は原則として認められません。

可変対価の制約、本人・代理人の判定、ライセンス収益のタイミング判定などの論点では、運用上の判断材料がIFRS第15号のほうが詳細に示されている傾向があります。

表示・開示における主な相違点

表示と開示の要求水準には差があり、IFRS第15号のほうが詳細な情報の提供を求めます。

IFRS第15号では、顧客との契約から生じる収益の分解(収益のディスアグリゲーション)、契約残高、履行義務、重要な判断などについて、定量・定性の両面で広範な開示が求められます。日本基準も2020年改正で注記事項が整備されましたが、開示範囲はIFRS第15号と完全に一致するわけではありません。

海外投資家への情報発信や、グローバル比較を意識する企業は、日本基準で必要とされる開示に加えて、IFRS第15号の開示要件をふまえた追加情報の整備を検討する場面もあります。

IFRS第15号を適用するときの注意点

IFRS第15号は単一モデルとはいえ、製品保証、本人・代理人判断、契約変更といった論点では、契約内容の精査と判断が求められます。代表的な注意点を整理します。

製品保証が履行義務に該当するか判断する場面

製品保証は、品質保証にとどまるものか、追加のサービスを伴うものかで会計処理が分かれます。

法的義務として最低限の品質を保証するだけであれば、履行義務には該当せず、見込まれる修理コストを引当金として処理するのが原則です。

一方、延長保証や有料保証など、契約上の品質保証を超えるサービスを提供する場合は、独立した履行義務として識別し、取引価格の一部を保証部分に配分して、サービス提供期間にわたり収益を認識します。実務では、契約条件を精査して、保証がどの位置づけにあたるかを見極める作業が欠かせません。

本人・代理人の区分が必要となる取引

取引において自社が「本人」として財・サービスを提供しているのか、「代理人」として仲介しているのかで、計上方法が変わります。

本人と判断される場合は対価の総額で収益を認識し、代理人と判断される場合は手数料に相当するマージン部分のみを収益として計上します。判断の軸となるのは、財・サービスに対する「支配」を移転前に自社が有しているか、価格設定の裁量・在庫リスク・履行責任を負っているかなどです。

Eコマースのモールや、SaaSの再販など、ビジネスモデルが多様化するなかで、契約形態だけでは判断が難しい場合もあり、取引の実態を確認することが重要となる場面が増えています。

契約変更時の処理

契約変更があった場合は、変更内容に応じて「別個の契約」「既存契約の変更」のいずれかに振り分けて処理します。

追加される財・サービスが区別可能で、追加対価が独立販売価格を反映している場合は、変更部分を別個の契約として扱います。区別可能だが追加対価が独立販売価格を反映していない場合は、既存契約を解約して新契約に置き換える形で、残りの履行義務に取引価格を再配分します。区別可能でない場合は、既存契約の一部として扱い、累積影響を反映する処理になります。

長期にわたるシステム開発や継続的なサービス契約では、契約変更の発生頻度が高いため、変更を把握・分類・処理する社内プロセスの整備が必要となる場面もあります。

IFRS第15号の原文・日本語訳の入手方法

IFRS第15号の原文は、IFRS財団の公式サイトで公開されており、英語版の基準本文や適用指針、設例を参照できます。

日本語訳については、企業会計基準委員会(ASBJ)や財務会計基準機構、大手監査法人が翻訳・解説書を提供している場合があります。日本公認会計士協会のサイトでは、IFRS基準書の日本語訳の入手方法が整理されています。

新しい解釈やガイダンスが追加されることもあるため、定期的に公式情報をチェックしましょう。

参照:IFRS 15 Revenue from Contracts with Customers|IFRS Foundation
参照:IFRS/IFRIC資料(原文・日本語訳)|日本公認会計士協会

5ステップの理解で正確な収益認識を実現しよう

IFRS第15号は、企業が顧客との契約を通じて得る収益を実態にあわせて認識し、透明性の高い財務報告を行うための基準です。5ステップという統一的なフレームを使って、契約の識別から収益認識のタイミングまでを順序立てて判断します。

日本の収益認識基準とも基本構造を共有していますが、表示・開示や一部の取引慣行への対応には違いが残ります。製品保証や本人・代理人判断、契約変更などの実務論点では、契約内容を精査して個別に判断する場面もあります。

グローバル市場で信頼性のある財務情報を提供するには、IFRS第15号の5ステップをわかりやすく理解し、自社取引に正確に当てはめていく姿勢が求められます。最新の情報を常にチェックし、自社に合った収益認識の運用を整えていきましょう。

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