- 作成日 : 2024年12月3日
電子帳簿保存法では交通系ICカードの利用情報も保存対象? 保存方法も紹介
通勤や移動にあたって交通系ICカードの利用は広く浸透しています。そのため、業務に必要な支払いも交通系ICカードで行うことがあります。
経費を管理するにあたって、交通系ICカードの利用情報も重要な証憑です。一方で、電子帳簿保存法ではこれらの利用情報は保存対象となるのか疑問に思う方もいらっしゃるでしょう。
本記事では、電子帳簿保存法における交通系ICカードの保存の可否や保存方法、実務上のポイントについて解説します。
目次
電子帳簿保存法では交通系ICカードの利用情報も保存対象になる
交通系ICカードの取引情報を電子帳簿保存法で取り扱う場合、以下の方法で対応します。
スキャナ保存 | 券売機から領収書や利用履歴を受領し、スキャナ保存する |
---|---|
電子取引 | ICカード専用アプリより利用情報を参照する。そして、利用情報をスクリーンショットなどで撮り、電子取引の要件に沿って保存する |
また、電子データで保存するケースとしては、交通系ICカードの利用情報が会社の経費精算システムで管理されている場合もあげられます。経費精算システム自体が電子帳簿保存法に対応しているならば、より効率的に交通系ICカードの利用情報を電子データで管理できます。
仕事での移動に交通系ICカードを利用しているならば、取引情報も電子帳簿で扱えることを把握しておきましょう。
電子帳簿保存法における交通系ICカードに関するよくある質問
電子帳簿保存法で交通系ICカードを扱ううえでよくある質問を紹介します。これから、交通系ICカードを電子帳簿保存法に対応させていこうという方は、ぜひ参考にしてください。
交通系ICカードの支払いデータはどうやって手に入れるの?
交通系ICカードの利用明細データを取得するには、専用のアプリやシステムの利用が一般的です。多くの交通系ICカードでは、Webサイトや公式アプリを通じて利用履歴の確認や明細のダウンロードができるため、これらを活用して利用明細データを入手しましょう。
そして、利用明細データを電子帳簿保存法に則ったかたちで保管することで、法的要件も満たせます。
交通系ICカードでは細かい支払いもすべて領収書が必要なの?
交通系ICカードを使用した交通費は、インボイス制度の特例によって帳簿のみの保存で仕入税額控除が受けられます。ただし、この特例を受けるためには以下のような要件を満たす必要があります。
- 取引に関する情報および特例の対象となる旨を帳簿に記載する
- 一度に免除される費用の合計はひとりあたり3万円未満(税込み) など
このように、営業や訪問のために交通系ICカードが用いられた場合、取引に関する領収書や利用明細データの保存は必要ありません。
交通系ICカードを業務で利用する上での注意点
最後に交通系ICカードを業務で使用するうえで把握しておきたい注意点を紹介します。これらを誤ると虚偽申告や脱税にもつながるため、必ずおさえておきましょう。
私用の出費と仕事の出費を混同しないようにしよう
交通系ICカードを経費として申請するならば、申請した金額の中に私用の出費が含まれていないか確認しておきましょう。従業員個人のプライベートな出費が経費計上されていることが税務調査で発覚すると、追徴課税や罰金などが発生します。
そのため、従業員が使用する交通系ICカードについては、業務用とプライベート用の2種類所有するよう促すのもおすすめです。
チャージした費用ではなく使用した費用だけを計上しよう
交通系ICカードの多くは事前に現金をチャージし、チャージした分を利用できます。この時、仕事で使用した分だけを経費計上しましょう。もし、チャージした分の領収書で経費計上を行い、実際に使用した時の利用明細でも経費計上を行うと、経費の二重計上となってしまいます。
当然ながら、経費の二重計上は虚偽申告や脱税といった違反行為に該当します。税務署の調査によって経費の二重計上が発覚すると、追加徴税の支払いを要求されるかもしれません。
たとえ故意ではなく、単なるミスだったとしても、罰則は科せられるため「領収書を受領するのは利用時のみ」といった社内体制を構築し、対策を講じましょう。
電子帳簿保存法の要点をおさえて交通系ICカードの取引情報も管理しよう
電子帳簿保存法では、交通系ICカードの利用情報も保存対象となります。また、インボイス制度による特例を利用する場合は、交通費の領収書が不要になります。
一方で、この特例を受けるためには、適切な要件を満たす必要があるため、事前に確認しておきましょう。他にも、交通系ICカードを業務で利用する際には、私用と業務での利用を分けること、チャージ額ではなく実際に使用した金額のみを計上することなどが重要です。
これらのポイントをおさえておけば、交通費の記録や管理が効率化でき、電子帳簿保存法の要件を満たしながら経理業務をスムーズに進められるでしょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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