- 更新日 : 2025年2月19日
インプレストシステムの仕訳方法まとめ
インプレストシステムとは、小口現金制度のひとつです。1週間または1カ月という期間を決め、まとまった現金を各部署の小口現金係に支給します。日常業務で発生する経費を各部署が備えることで、会計処理を効率的に行える制度です。
本記事では、インプレストシステムの内容について説明し、現金支給時や支払い時、報告時、補給時という4つの場面についての仕組みを詳しく説明します。それぞれの場面における仕訳も紹介しましょう。
目次
インプレストシステムとは
企業の日常業務では、事務用品や交通費の精算など、さまざまな経費が発生します。少額な清算をそのたびに仕訳処理するのは手間がかかり、業務が滞ることにもなるでしょう。インプレストシステムはそのような不都合を回避し、会計業務を効率化するメリットがあります。
ここでは、インプレストシステムの仕組みについて紹介します。
インプレストシステムの仕組み
インプレストシステムとは、小口現金制度のひとつです。「定額資金前渡制度」とも呼ばれます。1週間〜1カ月程度の期間を決め、使用する金額を各部署の小口現金係に前渡しする制度です。
インプレストシステムが行われる仕組みを見てみましょう。
- 経理担当から小口現金係にお金を前渡しする
- 小口現金係はさまざまな支払いを行う
- 小口現金係から経理担当に報告をする
- 経理担当から小口現金係に、使用した分と同じ金額を補充する
1の前渡しは、小切手の振り出しで行われるのが通常です。小口現金係は小切手を金融機関で現金に換え、日々の支払いを行います。
小口現金係は支払いを行なったら小口現金出納帳に記載し、支払報告書をまとめます。一定期間が過ぎたら経理担当へ報告し、使った分だけの金額を補充するというのが、インプレストシステムの一連の流れです。
経理担当は各部署の報告を受けて支払われた内容を仕訳します。経理担当から補充された後の小口現金残高は、常に一定額に保たれているという状態です。
ちなみに、小口現金制度にはほかに「随時補給法」という管理方法があります。随時補給法とは、期間を定めず、各部署の現金が少なくなったら補充するという方法です。期限を決めて現金を管理するインプレストシステムのほうが、より優れた管理方法といえるでしょう。
インプレストシステム・現金支給時の仕訳と勘定科目
インプレストシステムで現金を支給したときは、「小口現金」の勘定科目で記帳します。前渡しするお金ですが、「前払金」の勘定科目にはなりません。前払金は外部との取引で使う勘定科目で、前払することにより何らかの権利が発生する場合です。社内における前渡しは権利が発生することはなく、小口現金で処理します。
経理担当が小口現金係に1週間分の小口現金5万円を小切手で支給した場合、仕訳は以下の通りです。
小口現金 | 50,000円 | 当座預金 | 50,000円 |
支給が現金の場合は、貸方の勘定科目が「現金」となります。
インプレストシステム・小口現金使用時の仕訳と勘定科目
月末や週末など、決められた時期に小口現金係から経理担当に支払報告を行います。報告を受けた経理担当は、支払いごとに適切な勘定科目で仕訳をします。
支払いは小口現金から行われているため、貸方に「小口現金」の勘定科目を記載しましょう。
文具を2,000円購入し、水道光熱費として5,000円支払い、社員の交通費に6,000円を精算した場合の仕訳は、以下の通りです。
事務用消耗品費 | 2,000円 | 小口現金 | 13,000円 |
水道光熱費 | 5,000円 | ー | ー |
旅費交通費 | 6,000円 | ー | ー |
インプレストシステム・現金補給時の仕訳と勘定科目
支払い報告を受けた小口現金係は、使用した金額を補充します。使用した金額13,000円について、同日に小切手を振り出して補給した場合の仕訳は以下の通りです。
最初の現金支給時と同じく、借方に小口現金を仕訳します。
小口現金 | 13,000円 | 当座預金 | 13,000円 |
小口現金係からの報告をまとめた仕訳と、補充する仕訳は小口現金が相殺されます。そのため、ひとつにまとめて以下のような仕訳をすることも可能です。
事務用消耗品費 | 2,000円 | 当座預金 | 13,000円 |
水道光熱費 | 5,000円 | ー | ー |
旅費交通費 | 6,000円 | ー | ー |
インプレストシステムは小口現金で管理する方法
インプレストシステムは小口現金制度のひとつで、期間を設けて現金を支給し、少額の支払いを管理する仕組みです。各部署がそのつど支払いの処理を行うという不便を回避し、業務の効率化を図ります。
支出した費用の仕訳は小口現金係から報告を受けた経理担当が行い、使った現金は報告後に補給されて一定額に保たれるのが特徴です。インプレストシステムを導入し、日々の会計業務を管理していきましょう。
よくある質問
インプレストシステムとは?
定額資金前渡法のことで、小口現金という勘定を使い日々の支出を管理する制度です。 詳しくはこちらをご覧ください。
インプレストシステムの仕訳に使える勘定科目は?
小口現金、現金、当座預金、支出した費用の勘定科目です。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
会計の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
商品保証引当金の意味や仕訳、製品保証引当金との関係
修理や返品交換などの商品保証は、問題となる事象が発生したときにのみ保証が行われます。必ずしも発生する性質ではないことから、これまでの商品保証を行った傾向をもとに、合理的に見積もれる発生額を「商品保証引当金」に計上します。 今回は、商品保証に…
詳しくみる賃貸保証料を仕訳する際の勘定科目は?計算方法を解説
賃貸保証料は物件を借りる際に、家賃が支払えない場合に備えて保証会社に対して拠出する費用です。保証会社が未払い家賃を立て替えてくれるので、万が一支払いが滞ったときでもトラブルなく物件利用を継続できます。 事業用の物件を借りた場合の賃貸保証料は…
詳しくみる貸借対照表でよく使われる勘定科目まとめ
貸借対照表は財務三表の一つで、決済日現在の自社の財産や負債が分かる表です。その基本的な構造は、以下の3部で成り立っています。 資産の部:決算日現在の財産 負債の部:決算日現在の負債 純資産の部:決算日現在の資産と負債の差額(正味財産) 本記…
詳しくみるシュレッダーの代金を仕訳する場合の勘定科目まとめ
シュレッダーの購入費は、消耗品費や工具器具備品、一括償却資産などの勘定科目で仕訳ができます。金額によって勘定科目が変わるので、仕訳をする際には注意が必要です。それぞれの勘定科目や仕訳例、法定耐用年数を紹介するので、ぜひ参考にしてください。 …
詳しくみる保険積立金とは?保険別に会計処理を解説!
保険積立金とは、生命保険や損害保険の保険料のうち、満期返戻金など貯蓄性がある部分の保険料を計上するための勘定科目です。貸借対照表の資産の部の投資その他資産として表示されます。 保険積立金とは 一般に、生命保険や損害保険には、死亡や傷害に備え…
詳しくみる洗替法(洗い替え方式)とは?切放法との違いや売買目的有価証券の仕訳例など徹底解説!
簿記で資産負債の帳簿価額(簿価)を評価計上する際の方式として「洗替法」「切放法」「差額補充法」があります。 売買目的有価証券や貸倒引当金(大企業では廃止)などを評価替えする際に用いる「洗替法」とはどのようなものか?について仕訳を例示しながら…
詳しくみる