- 更新日 : 2024年8月8日
医療費・病院代は経費にできる?仕訳に使う勘定科目は?
法人の代表者や個人事業主が病院代を負担した場合、その費用は経費に算入できるのでしょうか。判断のポイントは、その医療費は事業に必要だと考えられるかどうかです。原則として個人の病院代は医療費に含めることは不可ですが、従業員の健康診断に要した費用は医療費に入れられます。今回は医療費の仕訳や勘定科目について解説します。
医療費や病院代は法人の経費にできる?
診察代や薬代などの病院代は原則、経費に算入できません。個人で負担することが基本であり、事業に関係していると証明しにくいためです。
ただし従業員を雇用する法人の場合、例外的に経費に含められる医療費もあります。具体的には人間ドックや予防接種、健康診断に要した費用です。
「労働安全衛生法」では従業員を一人でも雇用する事業主に対して、年一回、健康診断の実施を義務付けています。必ず行わなければならないものなので、健康診断に要した費用は経費への算入が認められます。
同様に、人間ドックやインフルエンザの予防接種に要した費用も経費に含めることが可能です。
医療費控除が可能な医療費
医療費控除は、その年中に支払った本人および扶養親族の医療費が一定額を超えた場合に、算出した金額を所得から控除できる仕組みです。医療費控除の適用を受けるためには確定申告を行わなければなりません。
サラリーマンでも医療費控除を受けられますが、会社が代わりに手続きを取るわけではないため、自分で確定申告が必要です。年間の所得金額が200万円を超える場合、一年間に生じた医療費から10万円を差し引いた金額を所得額から控除できます。
医療費控除の対象となる医療費は、診療または治療の対価に限られます。健康増進や容貌を整える目的で支出した医療費は原則として控除の適用を受けられません。
▼医療費控除の対象となる病院代・医療費の具体例
- 医薬品の購入に要した対価(病気療養のためのものに限る。ビタミン剤等、健康増進を目的としたものは対象外)
- 病院や診療所への入院、介護老人保健施設、介護医療院、指定介護老人福祉施設、指定地域密着型介護老人福祉施設等への収容に要する人的費用への対価
- あんまマッサージ指圧師、柔道整復師等による施術の対価(ヒーリング、体調を整える等、療養以外が目的のものは対象外)
- 保健師、看護師、準看護師等に療養上の世話を依頼した際の対価(家政婦に付き添いを頼んだ際の世話に対する対価も対象。ただしお心付けは対象外)
- 介護保険制度で提供された施設・居宅サービスの自己負担額(居宅サービス・施設サービスは原則一割負担、ケアプランの作成費用は自己負担なし)
医療費や病院代の仕訳例
医療費や病院代を仕訳する場合、勘定科目には「福利厚生費」を使用します。健康診断にかかる費用は従業員の福利厚生に要する費用と考えられるためです。
▼仕訳例
従業員の健康診断料50,000円を会社が負担した
従業員が業務中にケガをしたため、治療費を会社が負担する場合もあります。この場合は経費には算入できませんが、会計処理は必要です。
通勤や業務中に生じたケガには労災が適用されるため、会社が支出した医療費は後で還付を受けられます。いったん「立替金」勘定で処理し、返金があった時点で振り替え仕訳を行いましょう。
▼仕訳例
従業員が業務中に上司から暴行を受け、その診療費用5,000円を会社が負担したケース
個人事業主が自身の医療費を支出した際の仕訳を紹介します。詳しくは後述しますが、法人同様、個人事業主個人の医療費は経費になりません。
経費にならないとしても医療費控除の対象になる場合があるため、会計処理は必要です。勘定科目には、プライベートの出資と事業用経費を区別するための勘定項目である「事業主貸」を使用します。
▼仕訳例
事業用資金から歯科治療の医療費5万円を捻出した場合
個人事業主は医療費や病院代を経費にできる?
個人事業主の場合でも、法人同様、医療費や病院代を経費にするのは原則不可能です。
ただし従業員を雇っている個人事業主は、すべての従業員の健康診断に要した費用を経費算入するのも認められています。法人の場合と同様、事業の運営に必要な費用と考えられるためです。
従業員全員を対象に人間ドックやインフルエンザの予防接種を行ったときも、その費用を経費に算入できます。一方で個人事業主本人の健康診断やインフルエンザの予防接種などの支払いは経費には含められません。
経費算入が難しい治療費も医療費控除の対象にはなるので、確定申告まで領収書を保管しておいた方がよいでしょう。
病院代は経費にはならないが医療費控除の対象になる場合がある
中小企業の経営者や個人事業主本人の病院代は原則、経費にはできません。個人に対する医療費は事業との関係性を証明するのが難しいからです。
例外的に、雇用する従業員に対する健康診断や人間ドック、インフルエンザの予防接種などに要した費用は医療費として経費算入が可能です。会計処理としては「福利厚生費」を用いて仕訳しましょう。
また経費にはならない医療費でも、医療費控除の対象になる可能性があります。医療費控除の適用を受ける場合は、確定申告が必要になることに注意してください。
よくある質問
医療費は法人の経費にできる?
個人的な医療費は事業との関係性を証明するのが難しいため、原則、経費には算入できません。詳しくはこちらをご覧ください。
医療費は個人事業主の経費にできる?
法人と同様、個人事業主の医療費も事業との関係性を証明するのが難しいため、原則として経費には算入できません。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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