• 作成日 : 2025年9月9日

税務調査は税理士に依頼するべき?メリットや注意点・選び方を解説

税務調査は、企業や個人の確定申告内容を調査するために実施されるものです。税務調査には、任意調査と強制調査の2種類があります。「税務調査の通知が来たけれど、どのように対応すればよいのか?」わからず、不安に思われる方もいるでしょう。

本記事では、税務調査を税理士に依頼する際のメリット・デメリットや、調査に強い税理士の選び方・探し方を解説します。

税務調査を円滑に進めるために、税理士だけでなく経営者自身が押さえておくべき注意点もまとめました。税務調査の準備を、スムーズに実施しましょう。

税務調査とは?

税務調査とは、確定申告の内容が正確かどうかを確認するために、税務署や国税局が実施する調査のことです。事業を営む法人や個人事業主だけでなく、確定申告が必要な一般の人も対象となります。

個人の確定申告の対象者は、下記のとおりです。

  • 個人事業主で48万円を超える事業所得がある人
  • 給与所得のほかに20万円を超える副業の所得がある人
  • 1年間の給与収入が2,000万円を超える人
  • 給与所得者で年末調整ができなかった人
  • 一定金額以上の公的年金を受給している人

税務調査の際に、書類が準備できていなかったり、不明瞭な説明をしたりすると、追徴課税のリスクがあります。税務調査は、税理士に準備や立ち会いを依頼するのがおすすめです。

税務調査の種類

税務調査にはいくつかの種類があり、調査の対象や方法によって特徴が異なります。ここでは、各調査の種類と内容についてわかりやすく解説します。

税務調査の種類は、下記の2つです。

  • 任意調査
  • 強制調査

詳しくみていきましょう。

任意調査

任意調査とは、税務署職員が納税者の協力を得て実施する調査のことです。通常は事前に電話や通知で連絡が入りますが、事前連絡がないこともあります。日程を調整したうえで、2〜3日ほどかけて、帳簿などの確認をするのが一般的です。

調査の当日は、会社や事務所で売上帳簿などを提示したり、税務調査官の質問に答えたりする必要があります。

なお、調査官には納税者に質問・検査の権限(質問検査権)があるため、任意といえど拒否することはほぼ不可能です。

強制調査

強制調査とは、国税局査察部が裁判所の令状にもとづき行う調査のことです。基本的に事前通知はなく、拒否もできません。

主に、巨額脱税の疑いがある場合の立件を目的とした、犯罪捜査の一種として実施されます。

調査では、売上帳簿などの資料が強制的に徴収されます。事業所だけでなく、社長の自宅や取引先にも同時に調査がおよぶこともあるため、注意が必要です。

税務調査を税理士に依頼する5つのメリット

税務調査は専門知識が求められる場面も多く、税理士に依頼することで対応がスムーズになります。ここでは、税理士に依頼することで得られる、具体的なメリットについて解説します。

1. 税務代理人として対応してもらえる

税務代理人とは、申告や申請、不服申立てなど税務手続きを本人に代わって行う専門家のことです。税理士だけが、税務代理人の権限をもっています。税理士以外が代理人になることは、法律で認められていません。

税理士と契約すると「税務代理権限証書」を税務署に提出でき、税務調査の対応を税理士に任せられます。

2. 必要書類の準備がしやすい

税務調査を税理士に依頼すると、必要書類や準備事項の確認、調査官が注目しそうなポイントの把握などを指導してもらえます。主な必要書類は、下記のとおりです。

税務調査では帳簿や請求書、領収書、見積書など、直近3〜7年分の資料が必要になります。税理士と相談しながら準備を進めることで、スムーズに対応できるでしょう。

3. 不当な調査・不要な追徴課税を回避できる

税務調査に詳しい税理士に立ち会いを依頼すると、調査官の指摘や要求が適正かどうか監視してもらえるメリットがあります。

不当な調査や無理な要求は、税法にもとづき拒否することが可能です。たとえば、調査官の法にもとづいていない無理な要求により、課税所得が増えたことに対して、税理士が正しくフォローをしてくれます。税理士が適切に説明・反論してくれることで、リスクを軽減できるでしょう。

納税者の立場を守るためにも、税理士の存在は大きいといえます。

4. 実地調査に立ち会ってもらえる

税理士がいれば、実地調査に立ち会い、専門的な質問への回答や助言を経営者に代わって任せられます。

税務調査官に対し、自分だけで対応すると、細かい質問への対応や心理的負担が大きくなりがちです。

税務代理行為は、原則として税理士のみが可能なため、立ち会いや主張も税理士以外の第三者には認められていません。自分だけでは不安な場合は、税理士に依頼すれば、安心して任せられます。

5. 税務調査後の修正がスムーズにできる

税務調査で申告内容に修正が必要と判明した場合、税理士に立ち会ってもらっていると修正手続きがスムーズに進みます。

問題点を認めて修正申告する際も、税理士に申告書の作成や提出を依頼できるため、納税者は税額の納付だけで対応可能です。

税務調査後の負担軽減や、手続きの正確性確保にも大きなメリットがあります。

税務調査を税理士に依頼する3つのデメリット

税務調査を税理士に依頼することで得られるメリットは多くありますが、費用負担や依頼範囲の制限などデメリットも存在します。

ここでは、注意点・デメリットについて解説します。

1. 費用・コストがかかる

税務調査を税理士に依頼する場合の主なデメリットは、費用がかかることです。

依頼する業務内容や、売上規模によっても費用相場は変動します。一般的には、売上が多いほど資料の量や調査の労力が増えるため、費用も高くなる傾向にあります。具体的な費用相場について、下記の表にまとめました。

内容費用
事前準備1日3万円〜6万円程度
税務調査の立ち会い1日で3万円〜6万円程度

2日で6万円〜12万円程度

修正申告15万円〜20万円程度

なお、売上が1億円を超える場合には、通常の相場を上回る費用が発生する可能性がある点に注意が必要です。

2. 税理士のスキルや経験によって差が出る

税理士に税務調査を依頼する際は、スキルや経験の差によって、対応が変わりやすい点に注意が必要です。

経験豊富な税理士なら安心ですが、なかには経験が浅い税理士もいます。税務調査の対応に不慣れな場合、税務署とのやり取りで不利になったり、譲歩しすぎる可能性もあります。

税理士を選ぶ際には、事前に調査対応の実績や経験を確認しておくことが重要です。

3. 税務処理の問題点に気づきにくい

税務調査をすべて税理士に任せてしまうと、自社の税務処理の問題点に気づかないまま進むリスクがあります。税理士の説明が不十分だと、調査後の修正内容に納得できない場合もあるでしょう。

税理士に依頼しつつも、自ら税務について学び、理解を深める姿勢をもつことが重要です。

税務調査に強い税理士の選び方・探し方

税務調査に対応できる税理士を選ぶことは、調査をスムーズに進めるうえで重要です。ここでは、強い税理士の選び方や探し方のポイントを解説します。

税務調査の経験・実績が多くある

税務調査を税理士に依頼する際は、立ち会いや税務署への申し立て経験が豊富な税理士を選ぶことが重要です。

法人税の税務調査は、毎年全体の約3%しか実施されないため、経験のない税理士も少なくありません。なかでも、国税庁出身の税理士は、税務調査官としての経験がある方も多いため、調査官の視点で対応してもらえます。

税務調査に強い税理士を探したい方は、会計ソフトのマネーフォワードの検索サービスをご活用ください。得意分野に「税務調査」を設定すれば、条件に合う税理士を探すことが可能です。

経営者の味方になってくれる

税務調査官の言いなりにならず、経営者の立場で助言やサポートしてくれる税理士を探すのがおすすめです。

税理士との信頼関係を築ければ、税務以外の相談もしやすくなります。

任意調査でも、調査官から威圧的な態度や不必要な資料を要求されることもあります。しかし、顧客の立場で適切に反論できる税理士なら、安心して任せられるでしょう。

交渉力が高い

交渉力のある税理士に依頼すれば、スムーズに税務調査の対応が可能です。誤りは認めつつも、節税や正当性は主張し、必要に応じて後日回答するなど適切な判断ができるようになります。

税務調査では、事実認定と税法解釈の違いを納税者と調査官が、納得できる形でまとめることが重要です。

交渉力が高い税理士は、調査を円滑に進め、必要以上の対立や調査の長期化による負担を最小限に抑えられます。

税務調査をスムーズに実施するために注意すべきポイント

税務調査を円滑に進めるには、事前準備が大切です。ここでは、調査をスムーズに実施するための注意点やポイントを解説します。

曖昧な返事・嘘などはつかないようにする

税務調査において、税務調査官からの質問には正直に答えることです。不明点や事実確認が必要な場合は、後日回答する旨を伝えれば問題ありません。

一方で、嘘や曖昧な返答だと、調査官に不信感を抱かせる可能性があるため注意が必要です。正確かつ誠実な対応が、調査を円滑に進めるためのポイントとなります。

必要書類はコピーを取っておく

税務調査に備え、必要書類は事前にコピーを取っておいてください。税務調査では、調査官が書類を一時的に預かる場合があるため、手元にないと業務に支障が出るものはコピーします。

コピーを保管しておけば、調査中もスムーズに業務を進められ、必要な情報の確認や対応が滞る心配もありません。

税務調査に関係ない話はしない

税務調査では、調査と無関係な話をすると疑念を招くおそれがあるため、注意が必要です。

調査官からの質問には、内容を理解したうえで的確に答えることが大切です。理解が不十分な場合は、確認しながら会話を進めます。誤解や余計な情報の提供を避けることで、スムーズかつ安全に調査対応できるでしょう。

調査官の意図を把握し、簡潔で正確な回答を心がけることがポイントです。

税務調査を税理士に依頼する場合のよくある質問

税務調査を税理士に依頼する際には、疑問点が多く生じます。ここでは、依頼時によくある質問とポイントをわかりやすく解説します。

税務調査になりやすい金額はいくらですか?

課税売上高が1,000万円を超えると税務調査に入りやすいといわれていますが、明確な基準はありません。課税売上高が1,000万円以下でも、税務調査の対象になることがあります。

消費税の納税義務が発生する金額が1,000万円のため、ひとつの目安とされています。

インボイス制度の導入により、売上規模に関係なく課税事業者を選ぶケースも増加傾向です。高収入でない場合でも、申告を怠ると問題となるため注意しましょう。

依頼してはいけない税理士の特徴はありますか?

依頼すべきでない税理士の特徴には、高圧的な態度、対応の遅さ、説明のわかりにくさなどがあります。このような税理士を選ぶと、確定申告や税務調査で不利益を被る可能性があるため注意が必要です。

税理士を選ぶ際は、事前に実績を確認したり、面談での印象を確かめたりしましょう。経営者の利益を第一に考えて、行動できる税理士を選ぶことが大切です。

税理士のミスで損害が生じることはある?

税理士のミスによって損害が生じた場合、税理士には損害賠償責任が生じます。具体的な損害には、過少申告や無申告に伴う追徴課税や、延滞税の発生などが含まれます。

税理士の誤りで過大申告し、還付が受けられなくなった場合も、還付不能額を損害として扱うことが可能です。

税務調査がアポなしで実施されるのは普通ですか?

税務調査には法律上、事前連絡の義務はありません。そのため、アポなしで実施されることもあります。

強制調査だけでなく、任意調査でも事前連絡なしで訪問されるケースがあります。アポなしの訪問に備えて、日頃から書類を整理しておくことが重要です。


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