• 更新日 : 2026年7月23日

税務調査は録音しても大丈夫?禁止の有無と注意点を解説

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Point税務調査で会話を録音してもよいのでしょうか?

禁じる法律はなく、同席して残す分には問題になりにくいといえます。

  • 自分が同席した会話は記録にあたる
  • 調査官は守秘義務を理由に制止する
  • 帳簿の提示を拒むと処分につながる

記録そのものより、提示を拒む姿勢が調査を長引かせます。目的を絞って落ち着いて臨みましょう。

税務調査の通知を受けて、調査官とのやり取りを録音してよいか迷う方もいるでしょう。録音を禁じる法律はなく、記録として残すこと自体は問題になりにくい一方、進め方を誤ると調査の心証に影響することもあります。

本記事では、録音の法的な位置づけや判例の考え方、注意点と代替策まで、税務調査に落ち着いて備えるための要点を整理します。

税務調査の録音は問題ない?

録音を直接禁止する法律はありません。自分が同席する場で会話を残す行為は、議事録を作るのと同じ記録にあたるためです。ただし、調査官が録音を理由に手続きを止める場面はあり、進め方には配慮がいります。

参照:質問検査権|国税庁

録音を禁止する法律はない

税務調査での録音を禁じる規定は、税法にも内部の通達にもありません。税務調査の根拠となる質問検査権は国税通則法74条の2から74条の6に定められ、納税者には調査に応じる受忍義務があります。

応じない場合の罰則は同法128条にありますが、対象は検査や提示を拒むことであって、録音そのものを罰する内容ではありません。

会話を書き起こして残すのと同じく、録音も記録の一つの手段と整理できます。実際、調査の場で議事録代わりにメモを取ること自体は当たり前に行われており、その延長として音声で残す方法を選んでも、それだけで違法と評価されることはありません。

自分が同席して録るのは記録、隠し録音は扱いが違う

自分が同席して会話を残すのは記録であり、盗聴にはあたりません。盗聴は、その場にいない第三者の会話をひそかに録ることを指します。自分が参加している会話を残すのは記録であり、性質が異なります。

一方で、自分がいない場所での無断録音は別の問題になりやすいため、録るのは自分が同席する場面にとどめるのが安全です。

自分が同席している場合、録音をあらかじめ告げる義務まではありません。とはいえ、ひとこと伝えておくほうが余計な警戒を招きにくく、調査も進めやすくなります。

録画についても明確に禁止する法律はありませんが、肖像や周囲の情報が映り込むため、録音以上に調査官との調整が必要になる場合があります。

調査官が録音を嫌がるのは守秘義務が理由

調査官が録音を避けたがる背景には、守秘義務への配慮があります。守秘義務は、調査で知った納税者の情報を外部に漏らさないという調査官側の義務です。納税者が自分の調査内容を残すこととは趣旨が異なり、納税者に守秘義務が及ぶわけではありません。

とはいえ、調査官が敏感になりやすいテーマである点はふまえ、無用な摩擦を避ける配慮はしておきたいところです。

録音が第三者へ流れることを懸念しているケースもあるため、記録はあくまで自分のために残すものだと伝えておくと、理解を得やすくなります。

税務調査の録音をめぐる判例・裁決は?

不利な扱いを受けるかどうかは、録音そのものではなく対応の仕方で分かれます。過去の裁決でも、争点になったのは録音への固執による帳簿の不提示でした。

参照:平成24年6月1日裁決|国税不服審判所

平成24年裁決の正しい読み方

平成24年の裁決は、録音そのものではなく帳簿を示さなかったことが取消の理由でした。この事案では、税理士がレコーダーの作動にこだわり、調査官の求めに応じて帳簿を提示しませんでした。その結果、帳簿の不提示が所得税法150条1項1号にあたるとして、青色申告の承認が取り消されています。録音したから取り消されたのではなく、調査に必要な帳簿を示さなかったことが問われた点を押さえておきたいところです。「録音=青色取消」と早合点すると、判断を誤りやすくなります。

裏を返せば、録音を続けることにこだわるより、まず調査に必要な帳簿を示し、記録は記録として淡々と残す姿勢のほうが安全といえます。

録音データの証拠能力は原則認められる

無断で録った会話でも、証拠としての価値は原則として認められています。過去の裁判例(東京高裁昭和52年7月15日判決)では、相手の同意なく録ったものでも、著しく反社会的な手段によらない限り証拠能力を認める判断が示されています。

税務調査の会話を残しただけであれば、これにあたるとは考えにくく、後の不服申立てや訴訟で資料として活かせる余地があります。

違法な調査では録音が認められたケースもある

調査側に違法があった事案では、録音や撮影がやむを得ないと判断された例もあります。調査官の対応に違法性が認められた京都地裁平成12年の裁判では、再発を防ぐために第三者の立会いや撮影・録音を求めることにやむを得ない面がある、と判断されました。この事案では納税者の側の主張が認められており、録音が常に否定されるわけではなく、状況によって評価が変わる点がうかがえます。

税務調査を録音するメリットは?

録音は、後から内容を確かめる客観的な材料になります。記憶だけに頼らず、やり取りを正確に残せると、調査後の対応にも落ち着いて備えやすくなります。

発言内容を正確に残せる

録音があれば、調査官の発言を後から正確にたどれます。専門用語ややり取りをすべて記憶に頼るのは難しく、時間が経つと内容も曖昧になりがちです。客観的な記録があれば、言った・言わないの行き違いが起きたときにも落ち着いて確認できます。

税務調査での指摘は、追徴課税や修正申告につながることもあり、その場のやり取りが後の判断を左右します。発言を正確に残しておけば、調査官がどの資料を根拠にどう指摘したのかを後から照合でき、必要に応じて税理士と一緒に妥当性を検討しやすくなります。

メモだけでは細かなニュアンスまで残しきれないため、音声と書面を併用すると記録の精度が高まり、認識のずれを防ぎやすくなります。

後から専門家に確認できる

記録を残しておけば、税理士や弁護士に共有して助言を求めやすくなります。指摘が妥当かどうかをその場で判断するのは難しく、曖昧なまま同意すると不利な結果になりやすいといえます。録音を共有できれば、専門家が発言を客観的に確かめ、対応の方向性を示しやすくなります。

税務調査の場では即答を求められることもありますが、判断に迷う指摘はいったん持ち帰り、確認してから回答しても差し支えありません。録音があれば、調査官がどの論点をどう説明したのかを正確に伝えられるため、専門家も状況を整理しやすくなります。

仮に調査官の説明に行き過ぎた点があった場合でも、記録が残っていれば、後の対応を冷静に検討する材料になります。

心理的に落ち着いて対応できる

後で確認できるという安心感が、冷静な受け答えにつながります。税務調査は普段の業務とは違う緊張感があり、思わず萎縮してしまうこともあります。記録が残るという前提があると、焦らず丁寧に答えやすくなり、不用意な発言も防ぎやすくなります。

緊張した状態では、よく理解しないまま指摘に同意してしまい、後で不利になることもあります。後から確認できるとわかっていれば、その場で無理に結論を出す必要がなくなり、わからない点は持ち帰る判断もしやすくなります。

落ち着いた受け答えは、調査官とのやり取りを円滑にし、結果として調査が長引きにくくなることにもつながります。

税務調査の録音にはどんな注意点がある?

録音には利点がある一方、進め方を誤ると調査がぎくしゃくしやすくなります。関係づくりや情報の管理、準備の負担まで、録音を始める前に押さえておきたい点を整理します。

調査官との関係がこじれやすい

録音の進め方によっては、調査の場の空気がこわばりやすくなります。記録が取られていると調査官が身構え、対応が慎重になることもあります。特に告げずに録ると心証を損ねやすいため、目的は調査を円滑に進めるための記録だと伝えておくと、無用な摩擦を避けやすくなります。

調査官は、録音された発言が後で問題視されることを警戒し、当たり障りのない対応に終始することもあります。これでは、こちらが知りたい説明を引き出しにくくなり、かえって調査が進みにくくなる場合もあります。

録音はあくまで記録のための手段であり、調査と対立するためのものではありません。強い姿勢で押し通そうとすると協力が得られにくくなるため、淡々と記録を残す姿勢にとどめるのが無難です。

もし録音を理由に手続きを止められたときは、録音を続けることにこだわらず、帳簿の提示を優先して調査を前に進めるほうが安全です。

録音データの情報漏えいに気をつける

録音には個人情報が含まれるため、扱いを誤ると漏えいの一因になります。内容が外部に流れると、信頼の低下やトラブルにつながりやすくなります。保存先や共有の範囲、アクセスの制限をあらかじめ決めておくことで、リスクを抑えやすくなります。

録音には、取引先名や売上の数字、家族や従業員に関する情報など、外部に出したくない内容が含まれることもあります。クラウドやメールで気軽に共有すると、意図せず広い範囲に届いてしまうおそれがあるため、共有する相手と方法は必要最小限にとどめます。

不要になった録音は適切に削除し、端末やアカウントのパスワード管理も見直しておくと、万一のときの被害を抑えやすくなります。

準備と後処理の手間を見込む

録音には、機器の準備やデータ整理の手間がかかります。聞き返しや文字起こしには時間がかかり、通常業務の合間では負担になりやすいといえます。どの範囲を残すかをあらかじめ決めておくと、後の整理がしやすくなります。

当日になって機器の不調に気づくと録り直しがきかないため、バッテリーや空き容量、録音アプリの動作は前日までに確かめておきましょう。雑音が入りやすい環境では、置き場所を工夫するだけでも聞き取りやすさが変わります。

長時間の録音をすべて聞き返すのは現実的ではないため、重要な部分にしぼって文字起こしをすると、後の活用が楽になります。残す場面を先に決めておくことで、準備も後処理も軽くなり、録音そのものが負担になりにくくなります。

税務調査の録音をうまく進めるには?

録音を役立てるには、準備と管理を整えておくことが大切です。機器の選び方から保存方法まで、手順を決めておくと負担になりにくくなります。

スマートフォンやICレコーダーで手軽に残す

スマートフォンやICレコーダーがあれば、やり取りを手軽に残せます。近年はスマートフォンの録音機能でも十分な音質が得られます。ICレコーダーは保存形式が安定している点が利点です。事前にテスト録音をして、通知音や雑音が入らないか確かめておくと安心です。

録画についても、同じように準備しておくと役立ちます。

録音する範囲を先に決める

どのやり取りを残すかを先に決めておくと、後の整理が楽になります。指摘や質問、回答など、後で確認したい部分に絞るのがおすすめです。雑談まで残すとデータが増え、不要な部分の整理に時間を取られやすくなります。日時や参加者を控えておくと、見返すときに役立ちます。

データを適切に保存・管理する

録音データには日付や場所を添えて、わかりやすく保存しておきましょう。本体だけでなく、パソコンやクラウドにもバックアップを取ると安心です。クラウドを使う場合は、セキュリティやアクセス権限を適切に設定して外部への流出を防ぎます。重要な部分は文字起こしを添えておくと、後で探しやすくなります。

録音以外にできる税務調査の備えは?

録音にこだわらなくても、税理士の立会いや帳簿の整備で調査のリスクは抑えられます。基本の備えを整えておくことが安心につながります。

参照:記帳や帳簿等の保存・青色申告|国税庁

税理士に同席してもらう

税理士が立ち会えば、専門的な観点から落ち着いて受け答えできます。調査の前に書類を一緒に確認し、指摘されやすい点を洗い出しておくことができます。やり取りで無理な要求があった場合も、代理人として意見を述べてもらえます。

通知を受けたら、まず顧問税理士に相談し、立会いを依頼できるか早めに確かめておくとよいでしょう。費用はかかりますが、想定外の負担を避けやすくなります。

帳簿・資料を整える

帳簿や領収書を整えておくと、調査をスムーズに進めやすくなります。調査官は領収書や請求書、通帳など経理の根拠となる資料を細かく確認します。私用と事業用の混同がないかも見られやすいため、説明できるよう整えておきましょう。

保存期間の目安は次のとおりです(電子データを含む)。

申告区分 対象 保存期間
青色 帳簿・現金預金取引等関係書類(前々年分の事業所得及び不動産所得の金額が300万円以下の方は、5年) 7年
青色 決算関係書類 7年
青色 その他の書類 5年
白色 法定帳簿(売上や経費を記帳したもの) 7年
白色 任意帳簿(法定帳簿以外の業務関連帳簿)・その他の書類 5年

※上記は個人事業主(所得税)の保存期間です。法人は会社法法人税法により保存期間が異なるため注意してください。

落ち着いて臨む心構えを持つ

わからないことは曖昧にせず、後から正確に答える姿勢が大切です。聞かれたこと以外を話しすぎない、感情的にならないといった落ち着いた対応が、誤解を防ぎます。事前に通知の内容や対象期間を確かめ、税理士と打ち合わせをしておくと、実務の準備も整います。

税務調査の録音は法的な位置づけを押さえて落ち着いて臨もう

税務調査の録音を禁じる法律はなく、自分が同席して残す分には問題になりにくいといえます。過去の裁決で問われたのも録音そのものではなく、帳簿を提示しなかった対応でした。

録音には発言を正確に残せる利点がある一方、進め方によっては調査官との関係や情報の管理に注意が必要です。録音だけにこだわらず、税理士の立会いや帳簿の整備といった基本の備えもあわせて整えておくことで、調査に落ち着いて臨みやすくなります。

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