- 更新日 : 2025年12月11日
受取利息とは?どんな勘定科目?計算方法や仕訳、消費税・源泉徴収税まで簡単に解説
お金を金融機関に預けたり、他者に貸し付けたりすると、対価として利息を受け取ることがあります。この受取利息について、会計処理や税金の計算で戸惑ったことはないでしょうか?
この記事では、受取利息(受取利子)の基本的な意味から、計算方法、消費税や源泉徴収などの税務処理、そして個人事業主と法人での仕訳方法まで簡単に解説します。
目次
受取利息とは?
受取利息とは、金融機関への預金や、会社の関係者(グループ会社、従業員、役員など)に対する貸付金について受け取ることができる利息のことです。
会計上は「収益」として扱われる勘定科目の一つです。
受取利息と受取利子の違いは?
「受取利息」と似た言葉に「受取利子」があります。「利子」と「利息」は、どちらも金銭の貸し借りに対する対価を指す点で、ほぼ同じ意味で使われます。
- 支払利息: お金を借りる側が、貸した側に元本に追加して支払うお金
- 受取利息: お金を貸した側が、元本に追加して受け取るお金
企業が預金などで金銭を受け取る場合、お金を貸した側の立場となるため、会計上は「受取利息」という勘定科目が一般的に使われます。
受取利息と受取配当金の違いは?
「受取利息」と「受取配当金」の最大の違いは、収益の確定性です。
- 受取利息: 予め約定により定められた利率で定期的に支払われるのが一般的です。
- 受取配当金: 株式の発行元(企業)の業績などに応じて支払われるため、金額が変動したり、支払われない場合もあります。
受取配当金は株式を保有することによって得られる利益の分配 であり、受取利息とは性質が異なるため、会計上は別の収益として区別して処理する必要があります。
受取利息の勘定科目と分類は?
受取利息は、預金利息、貸付金利息、受取割引料、有価証券利息などを処理する勘定科目です。
会計上、これらの収益は原則として「営業外収益」に分類されます。ただし、金融業など、金融収益が本業の売上に近い割合を占める会社の場合はこの限りではありません。
なお、決算書の損益計算書上では、受取利息、有価証券利息、受取配当金をまとめて「受取利息配当金」と表示することもあります。
受取利息に該当する項目は?
受取利息には、銀行の預貯金で得られる利息以外にも、以下のような項目が含まれます。
- 預金利息: 金融機関の普通預金や定期預金につく利息。
- 貸付金利息: グループ企業、取引先、従業員、役員など、社外や社内の相手への貸付金から受け取る利息。
- 有価証券利息: 国債や社債など、保有する債券から受け取る利息。
- 手形割引料: 保有する受取手形を支払期日前に金融機関などで現金化(割り引く)する際に受け取る割引料。
- 償還差益: 割引債(ゼロクーポン債)など、額面より低い価格で発行された債券が、満期(償還時)に額面金額で戻ってきた場合の差額。
受取利息はいつ計上する?
会計の原則(発生主義)では、収益は現金の入金時ではなく、それを受け取る権利が発生した時点で計上します。
受取利息も同様に、たとえ約定の利払日に実際の入金がなかった場合でも、決算日をまたぐ際などは、当期に受け取る権利が発生している利息額を「未収利息」として計上する必要があります。
受取利息の計算方法は?
受取利息の計算方法は、契約内容によって異なりますが 、大きく分けて「単利」と「複利」の2種類があります。
単利とは?
単利とは、最初の元本(預入金額)に対してのみ利息がつく計算方法です。計算期間中に得た利息は元本に組み入れられません。
例:A銀行の定期預金口座に100万円を預けた。利率は1%、預入期間は1年、利息計算方法は単利とする。
1年後の受取利息は10,000円となります。単利の場合、2年後も同様に1万円の受取利息が得られます。
複利とは?
複利とは、支払われた利息を元本に組み入れ、その合計額を新しい元本として利息を計算する方法です。
例:A銀行の定期預金口座に100万円を預けた。利率は1%、預入期間は1年、利息計算方法は半年複利とする。
- 半年後:100万円 × 1% × 6/12 = 5,000円
- 1年後:(100万円+5,000円) × 1% × 6/12 = 5,025円
1年後に得られる受取利息は、合計10,025円(=5,000円+5,025円)となります。
利息を受け取る側にとっては、単利よりも複利が有利であり、さらに複利の中でも利息を元本に組み入れる回数が多いほうが、多くの利息を得られます。
受取利息にかかる税金は?
受取利息には、消費税はかかりませんが、所得税などがかかります。
消費税の取り扱い
受取利息は、金銭の貸付に対する対価(利子)であり、消費税の課税対象にはなじまない取引として、消費税法上「非課税取引」に分類されます。 そのため、仕訳を行う際に消費税(仮受消費税など)を考慮する必要はありません。
源泉徴収(所得税・法人税)
預金利息などを受け取る際、私たちが受け取る金額は、すでに税金が差し引かれた後のものです。 正しい会計処理のためには、この源泉徴収の仕組みを理解しておく必要があります。
源泉徴収される税額の計算方法は、個人と法人で異なります。これは、平成28年1月より、法人に係る地方税利子割(5%)が廃止されたためです。
個人の場合
個人の受取利息には、合計20.315%が源泉徴収されます。
- 所得税(復興特別所得税含む): 15.315%
- 地方税利子割(住民税): 5%
これは納税が完結する「源泉分離課税」の対象であり、原則として確定申告の必要はありません。
法人の場合
法人の受取利息は、所得税(復興特別所得税含む)15.315%のみが源泉徴収されます。平成28年1月以降、地方税利子割(5%)は廃止されました。
受取利息の仕訳方法は?
受取利息の仕訳は、入金された手取り額だけを記帳する「純額主義」ではなく、源泉徴収された税額を明示する「総額主義」で記帳するのが原則です。
仕訳方法は、個人事業主と法人で処理が異なります。
個人事業の場合
個人事業主の場合、預金利息などは「利子所得」に区分され、事業の売上(事業所得)とは関係のない入金として扱われます。そのため、受取利息は「事業主借」の勘定科目を使い、源泉徴収された税金は「事業主貸」として処理します。
例:源泉前の受取利息250円、税金50円(所得税38円+地方税12円)、手取り200円の場合
| 借方 | 貸方 | 摘要 | ||
|---|---|---|---|---|
| 預金 | 200 | 事業主借 | 250 | 普通預金利息 |
| 事業主貸 | 50 | 所得税など | ||
預金利息などは源泉分離課税であり、源泉徴収の時点で納税が完了しているため、確定申告は不要です。
法人の場合
法人の場合、受取利息は本業以外の収益である「営業外収益」として計上されます。
源泉徴収された税金は、法人税の前払いとして「法人税等」(または「租税公課」「前払税金」など )の勘定科目で処理します。この税額は、確定申告の際に法人税額から控除することができます(所得税額控除)。
例:源泉前の受取利息236円、税金36円、手取り200円の場合
| 借方 | 貸方 | 摘要 | ||
|---|---|---|---|---|
| 預金 | 200 | 受取利息 | 236 | 普通預金利息 |
| 法人税等※ | 36 | 所得税など | ||
源泉徴収された税金には「法人税、住民税及び事業税」、「租税公課」勘定や「前払税金」勘定を利用する場合もあります。
受取利息に関してよくある質問
最後に、受取利息に関してよくある質問とその回答をまとめました。
受取利息は確定申告が必要ですか?
個人の場合、預金利息などは源泉分離課税の対象であるため、源泉徴収の時点で納税が完了しており、原則として確定申告の必要はありません。法人の場合は、「営業外収益」 として法人税の申告に含める必要があります。
参考:C1-1 法人税及び地方法人税の申告(法人税申告書別表等)|国税庁
受取利息に消費税はかかりますか?
いいえ、受取利息は消費税法上「非課税取引」に分類されるため、消費税はかかりません。
損益計算書の「受取利息配当金」とは何ですか?
決算書の損益計算書において、「受取利息」、「有価証券利息」、「受取配当金」などをまとめて表示するために使われる勘定科目です。
受取利息の源泉徴収を忘れずきちんと仕訳しましょう
受取利息(受取利子)とは、預金や貸付金などから得られる収益 であり、会計上は「営業外収益」 に分類されます。
受け取る際にはすでに税金が源泉徴収されていますが 、その税率や会計処理(仕訳)の方法は、個人事業主と法人で大きく異なります。
特に法人の場合は、源泉徴収された税額を正しく「法人税等」 として処理し、納付すべき法人税額から控除(所得税額控除) を受ける必要があります。金融機関からの通知書などで源泉徴収額をしっかり確認し 、適切な仕訳を行いましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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