- 更新日 : 2025年1月24日
個人事業主がふるさと納税を仕訳する場合の勘定科目は?
ふるさと納税は会社員の間で制度の活用がちょっとしたブームになっていますが、個人事業主にも活用できるものです。ふるさと納税を利用して確定申告で控除を受ける場合は、寄附金控除が受けられます。
ただし、経費には該当しないため、勘定科目や仕訳方法について正しく理解しておく必要があるでしょう。そこで今回は、ふるさと納税を利用した際の寄附金としての仕訳可否、返礼品を受け取った場合の仕訳方法などを解説します。
目次
個人事業主が事業用のクレジットカード等を用いてふるさと納税をした場合に仕訳で用いる勘定科目
個人事業主が事業用のクレジットカード等を用いてふるさと納税をした場合、納税する金額を経費としては扱えません。その代わり、一時的に事業のお金を家計に貸すものとする「事業主貸」の勘定科目として使います。
特に個人事業主は事業における資金と家計のお金の区別が難しく、事業用資金を家計のお金として使う場合が多くあります。「事業主貸」は家計のお金として使用した際、区別をしっかりつけられるようにする勘定科目です。また、事業主貸は会計年度中に精算することが前提です。
ふるさと納税をしたときの仕訳例は、以下の通りです。
【例 ふるさと納税として事業用のクレジットカードで普通預金から15万円を支払った】
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 事業主貸 | 150,000円 | 未払金 | 150,000円 |
また、ふるさと納税で支払った15万円を家計から事業用資金に現金で戻した場合の仕訳例は、次の通りです。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 現金 | 150,000円 | 事業主貸 | 150,000円 |
ふるさと納税は寄附金として仕訳できる?
ふるさと納税の制度は、自分が選んだ自治体へ寄附をすることで個人の所得税や住民税が還付または控除されるものであり、寄附金として経費計上の仕訳はできません。
返礼品が受け取れるため、寄附金制度と思っている人もいるかもしれませんが、お金を寄附してモノを受け取るための制度ではありません。ふるさと納税の返礼品は、あくまでも寄附をした自治体からの寄附金受領のお礼なのです。
このように、ふるさと納税は個人と自治体とのやりとりであるため、事業の必要経費として計上できないことを覚えておきましょう。
返礼品が届いた場合の仕訳は?
ふるさと納税の返礼品が届いた際の仕訳は、基本的に必要ありません。返礼品は個人の一時所得となり、事業所得や経費への影響はないと判断できます。
例えば、ふるさと納税で20万円を寄附し、そのうち6万円分を返礼品として受け取れるとしましょう。その6万円分は一時所得として課税対象になるのです。返礼品がどれぐらいの価格なのかについては、ふるさと納税を申請したサイトや業者の商品紹介に記載されているケースが多く、寄附金の3割相当が一般的となっています。
ただし、一時所得は年間で50万円を超えると課税の対象となるため申告が必要です。よって、自分がどれぐらいふるさと納税をしていて、返礼品を受け取っているかを確認しながら納税額を調整するとよいでしょう。
ふるさと納税の確定申告はどうすればいい?
ふるさと納税を利用して所得控除を受けるためには、基本的に確定申告が必要です。確定申告の時期になったら、寄附金受領証明書を確認のうえ確定申告書を記載して申告します。
確定申告は、ふるさと納税で寄附した翌年の定められた期限までに行う必要があります。手続きが面倒になり後回しにしてしまうと、申告期限が過ぎてしまう場合があるので注意しましょう。
ただし、ふるさと納税を申請した際に「ワンストップ特例制度」を利用すると、確定申告が不要となります。「ワンストップ特例制度」は、1年間の寄附先が5自治体以内の場合に利用できます。簡単な手続きで寄附金控除が受けられるため、ぜひ有効活用しましょう。
確定申告が完了すると、自己負担分の2,000円を引いた金額が控除されます。控除された金額は所得税と住民税に分けて差し引かれる仕組みです。
住民税の場合は、その年の1月1日から12月31日の1年間の所得に応じた納税金額を計算します。そのため、住民税の控除は翌年の納税分から減額する形で控除されます。
ふるさと納税の申請から確定申告までの流れを詳しく知りたい人は、以下のリンクにある記事の内容も参考にしてみてください。
ふるさと納税を正しく理解して活用しよう
ふるさと納税は寄附をすることで所得控除が受けられるだけでなく、返礼品を受け取れる場合もある制度のため、企業で働く人だけでなく、個人事業主にもおすすめです。
ただし、個人事業主は、事業資金と家計の区分けが曖昧になりやすいケースが多くあります。事業の資金から出金した場合、帳簿に仕訳する際には、事業主貸の勘定科目を利用するのを忘れないようにしましょう。また、返礼品を受け取った際の申告や、ワンストップ特例制度を受けるための条件について知っておくことで、より制度を上手く活用できるでしょう。
よくある質問
ふるさと納税の勘定科目は?
ふるさと納税は事業に関係ない個人的な支出になるため、事業資金で支払った時には「事業主貸」の勘定科目を用いて記帳します。 詳しくはこちらをご覧ください。
ふるさと納税は寄付金にできる?
個人事業主はふるさと納税を寄付金として費用計上できません。しかし、寄付金控除としての所得控除は可能です。 詳しくはこちらをご覧ください。
返礼品が届いた場合はどうする?
返礼品は一時所得に該当するため、事業所得や不動産所得などには一切の影響を与えず、仕訳の必要はありません。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
会計の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
仕掛品の意味や半製品との違い 棚卸資産での計上方法や読み方まで解説
製造業における工業簿記や商的工業簿記の決算では、仕掛品の計上は非常に大きな意味を持っています。 この記事では、仕掛品、半製品などの棚卸資産の意味やそれぞれの違い、計上方法などを仕訳とともに解説します。もちろん、それぞれの読み方も付しなが…
詳しくみる適格合併の仕訳や会計処理とは?具体例でわかりやすく解説
会社の合併は、組織再編やグループ経営の見直しなど、経営の大きな転換点にあたる場面で行われます。その中で「適格合併」は、税務上課税関係が発生しない合併方法として、実務でもよく活用されます。しかし、会計処理では、合併法人と被合併法人それぞれで異…
詳しくみる転リース取引とは?会計処理と仕訳の解説
さまざまなビジネスの方法がある中で、転リース取引を行っている事業者は少なくありません。しかし、転リース取引は、通常のリース取引と会計処理が異なります。そこで、転リース取引の概要や会計処理、仕訳について詳しく解説します。 転リース取引とは 転…
詳しくみる前受金の返金が発生した!仕訳方法をわかりやすく解説
商品の注文時などに「前受金」を受領することがありますが、注文や契約がキャンセルされると、前受金を返却しなければなりません。前受金の返金時には、どのような仕訳をすればよいのでしょうか。本記事では、前受金を返金したときの会計処理について、キャン…
詳しくみるファクタリングとは?仕組みや仕訳・勘定科目の解説
ファクタリングとは売掛債権を売却し、手数料を差し引いた代金を受け取ることです。入金のサイクルを短縮し、資金繰りを改善できます。ファクタリングには債権を売却するだけの「買取型」のほか、倒産等のリスクに備える「保証型」もあるのが特徴です。また、…
詳しくみる対照勘定法とは?仕訳から解説
対照勘定法は、実施された取引の内容を忘れないようにするための備忘記録として、特殊な仕訳を用いて帳簿に記録する方法です。この記事では、具体的にどのような仕訳を行うのか、対照勘定法の概要や対照勘定法の仕訳例について、わかりやすく解説します。 対…
詳しくみる