- 更新日 : 2025年12月11日
勘定科目「支払手数料」とは?雑費との違いや仕訳、消費税などを個人事業主向けに解説
支払手数料は、会計処理において使用頻度が高い勘定科目の一つです。多くの取引先を持つ場合、毎月一定額を支払手数料として計上することも多いでしょう。
この記事では、支払手数料の定義、該当する費用の具体例、間違いやすい他の勘定科目との違い、具体的な仕訳例、消費税の区分について詳しく解説します。
目次
支払手数料とは?
支払手数料とは、取引に関して発生する手数料や費用、報酬などを管理するための勘定科目です。
具体的には、銀行の振込手数料や仲介料などが該当します。会計上は、売上に直接対応する原価ではなく、間接的な経費である「一般管理費」として分類されます。
支払手数料として計上できる主な費用は?
支払手数料として処理できる費用は多岐にわたります。代表的な例は以下の通りです。
- 銀行の振込手数料
- 代引手数料
- 各種証明書の発行手数料(行政機関以外)
- 仲介料
- 事務手数料
- 登録手数料
- 解約手数料 など
このほか、不動産業界における礼金(原則20万円未満)やルームクリーニング料なども、一般管理費として支払手数料に含まれることがあります。このように、支払手数料に該当するかは、その内容によって判断されます。
支払手数料と混同しやすい勘定科目は?
支払手数料を正しく使うには、他の類似した勘定科目との違いを理解することが重要です。特に「販売手数料」「支払報酬」「雑費」「租税公課」は混同しやすいため、違いを整理しましょう。
販売手数料との違いは?
販売手数料は、支払手数料ではなく「販売促進費」として扱います。
手数料という名称がついていますが、商品を代理店を通じて販売する際に支払う報奨金など、売上に関わる費用を含みます。支払手数料と間違えやすいですが、直接の売上にかかる経費は販売促進費で処理することが推奨されます。
支払報酬との違いは?
専門家への報酬は「支払報酬」として仕訳し、支払手数料には含めません。弁護士、税理士、司法書士、社会保険労務士のほか、ライターやデザイナーなどの専門家に対する報酬の支払いがこれに該当します。
支払報酬のうち、所得税法204条に該当する報酬については源泉徴収の対象となるため、別に仕訳を行います。もし報酬を支払手数料として扱ってしまうと、支払手数料の金額が大きくなり、本来把握したい振込手数料などの内訳が分かりにくくなります。支払いの性格が異なる両者を区別するために、勘定科目が分かれているともいえるでしょう。
参考:No.2792 源泉徴収が必要な報酬・料金等とは|国税庁
雑費との違いは?
雑費は、額が小さく、他の勘定科目に含まれない経費に使う勘定科目です。
定期的に生じる費用ではなく、稀に発生する費用を雑費として扱うケースが多いでしょう。ただし、不定期に発生する費用をすべて雑費として扱えるわけではなく、あくまでも経営に対しての重要度や影響度が低い費用に対して使われます。
- ごみ処理代
- クリーニング代
- 一時的なレンタル代
- 引越し代
- 安全協力費 など
実務上、雑費はいくらまでという明確な法律上の基準はありません。
雑費とは別に支払手数料が存在する理由は、支払手数料に含まれる費用が、経営や納税に影響するためです。雑費として扱う金額が多い場合は、税務調査などで精査される可能性があることや、経営状況を正しく判断するためにも、支払手数料は雑費と明確に分けて慎重に管理しましょう。
租税公課との違いは?
行政機関に対して支払う手数料や税金は「租税公課」という勘定科目で仕訳を行います。
- 印鑑証明書の発行手数料
- 住民票の発行手数料
- その他公共サービスに対する手数料
- 地方公共団体や同業者組合に対する会費や組合費
また、手数料以外にも租税の対象になるものは次のとおりです。
- 登録免許税
- 印紙税
- 固定資産税
- 不動産取得税
- 事業税
- 事業所税
- 都市計画税
- 自動車税
- 消費税
同じ手数料という名称でも、行政機関(=租税公課)と民間金融機関(=支払手数料)への支払いは分けて考えることで、いずれで扱うべきか判断しやすくなるでしょう。
支払手数料の仕訳は?
支払手数料は「費用」の勘定科目であるため、発生時には仕訳帳の借方に記入します。ここでは代表的な3パターンの仕訳例を紹介します。
振込手数料(自社負担)の仕訳
売掛金の入金時に振込手数料を自社で負担する場合、手数料分を「支払手数料」として費用計上します。
例:売掛金150,000円が入金、振込手数料の550円を自社負担した場合
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 普通預金 | 149,450円 | 売掛金 | 150,000円 |
| 支払手数料 | 550円 | ||
買掛金の支払時に振込手数料を自社で負担する場合も同様です。
例:買掛金150,000円を支払い、振込手数料の550円を自社負担した場合
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 買掛金 | 150,000円 | 普通預金 | 150,550円 |
| 支払手数料 | 550円 | ||
振込手数料(相手負担)の仕訳
振込手数料を相手方が負担する場合、自社側では手数料の仕訳は発生しません。
例:売掛金150,000円が入金、振込手数料の550円は相手負担の場合
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 普通預金 | 150,000円 | 売掛金 | 150,000円 |
買掛金に対する振込手数料が相手負担の場合は、次のように記帳します。
例:買掛金150,000円を支払い、振込手数料の550円は相手負担の場合
| 借方 | 借方 | ||
|---|---|---|---|
| 買掛金 | 150,000円 | 普通預金 | 150,000円 |
販売仲介手数料の仕訳
不動産売買の仲介手数料は、経費として認められます。
不動産を売却した場合は「支払手数料」として仕訳します。
例:不動産の売却に関する仲介手数料として15万円を現金で渡した場合
| 借方 | 借方 | ||
|---|---|---|---|
| 支払手数料 | 150,000円 | 普通預金 | 165,000円 |
| 仮払消費税等 | 15,000円 | ||
一方、不動産を購入した場合の仲介手数料は、土地や建物など資産の取得価額に含める必要があるため注意しましょう。
支払手数料と消費税(税区分)は?
支払手数料の消費税区分は、原則として「課税取引」に該当し、仕入税額控除の対象となります。
仕入税額控除とは、消費税の納付額を計算する際、売上げに係る消費税額から仕入れなどの経費に係る消費税額を控除できる制度です。
ただし、例外として「非課税取引」など消費税がかからないものもあるため注意が必要です。例えば、行政機関に支払う証明書発行手数料(多くは「租税公課」で処理)などは非課税の対象となります。
個人事業主の支払手数料は確定申告で経費に計上できる
個人事業主も、事業で発生した支払手数料を経費として計上できます。
確定申告の際、白色申告の場合は収支内訳書、青色申告の場合は青色申告決算書の経費欄に、年間で集計した支払手数料の合計金額を記入します。日々の記帳処理で正確に仕訳しておくことが、スムーズな確定申告につながります。
支払手数料のルールを正しく理解しよう
支払手数料は使用頻度が高い一方、他の勘定科目と混同しやすい科目です。
健全な経営状況の把握や正確な納税申告のため、ルールを正しく理解することが重要です。すべての手数料が支払手数料になるわけではなく、専門家への報酬は「支払報酬」、行政への手数料は「租税公課」など、内容に応じて適切に仕訳しましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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