- 更新日 : 2024年8月8日
勘定科目『支払手数料』とは?仕訳や税区分を解説
数ある勘定科目の中でも、比較的使用頻度が高いものが「支払手数料」です。多くの取引先を持つ会社では、毎月相当額の金額を支払手数料として計上していることでしょう。そこで本記事では、支払手数料として経費化できる費用や仕訳例、税区分などについて詳しく解説します。
目次
支払手数料とは
支払手数料とは会社を経営するうえで発生する、取引に関する手数料や費用や、報酬などの支払いのことです。そして、その支払いを集計、管理するための勘定科目を指します。
支払手数料は一般管理費として分類される手数料です。また、これに似た名称の販売手数料は、販売のために要した経費であり、支払手数料とは別で管理します。
支払手数料は直接的な販売に関係する経費ではなく、間接的な経費が含まれるものだと理解しておきましょう。また、支払手数料は基本的に消費税の課税対象です。
ただし、海外企業との取引においては、課税対象外になるため注意しましょう。
支払手数料にできる経費
支払手数料として処理が可能な費用の幅は広く、代表例は以下の通りです。
- 銀行の振込手数料
- 代引き手数料
- 各種証明書の発行手数料
- 仲介料
- 事務手数料
- 登録手数料
- 解約手数料
など
この他にも不動産業界では、礼金やルームクリーニング料なども、一般管理費として支払手数料に含まれます。ただし、礼金は原則20万円未満とすることが基本です。
また、手数料という名称であっても、販売手数料などの売上に関わる費用は、支払手数料ではなく「販売促進費」として扱います。なお、弁護士や税理士、司法書士、社会保険労務士などへの費用は、支払手数料には含まれません。
支払手数料を用いた仕訳の例
支払手数料を用いた仕訳を「振込手数料(自社負担)」「振込手数料(相手負担)」「販売仲介手数料の仕訳」の3パターンに分けて解説します。それぞれの仕訳方法について、具体的にみていきましょう。
振込手数料(自社負担)の仕訳
売掛金に対する振込手数料が自社負担の場合、振込金額から手数料が差し引かれた金額が入金されます。この際、支払手数料の勘定科目を使って記帳し、自社の費用として扱います。
【売掛金150,000円が入金、振込手数料の550円を自社負担】
また、買掛金に対する振込手数料が自社負担となるケースでは、次のように記帳します。
【買掛金150,000円を支払い、振込手数料の550円を自社負担】
振込手数料(相手負担)の仕訳
売掛金に対する振込手数料が相手負担になる場合は、自社側は手数料を必要とせず、支払手数料に振込手数料は計上しません。
【売掛金150,000円が入金、振込手数料の550円は相手負担】
また、買掛金に対する振込手数料が相手負担の場合は、次のように記帳します。
【買掛金150,000円を支払い、振込手数料の550円は相手負担】
販売仲介手数料の仕訳
不動産の売買契約が成立した際、支払い義務が発生する仲介手数料は、税金ではなく経費として認められ、売却の場合は支払手数料の勘定科目を使って仕訳を行います。一方、購入した場合は「土地」や「建物」の勘定科目で仕訳を行う必要があるため注意しましょう。
【不動産の売却に関する仲介手数料として15万円を現金で渡した】
支払手数料と間違いやすい経費とは
支払手数料を使う際のポイントとして「雑費との使い分け」「支払報酬との違い」「行政機関への支払手数料」には注意が必要です。いずれも勘違いをしやすいポイントだといえるため、改めて整理し、正しく理解をしておきましょう。
雑費との使い分け
「雑費」とは額が小さく、他の勘定科目に含まれない経費に対して使う勘定科目です。定期的に生じる費用ではなく、稀に発生する費用を雑費として扱うケースが多いでしょう。
ただし、不定期に発生する費用を、すべて雑費として扱えるわけではありません。あくまでも、経営に対しての重要度や影響度が低い費用に対して雑費は使われます。雑費として扱える費用の例は、次のとおりです。
- ごみ処理代
- クリーニング代
- 一時的なレンタル代
- 引越し代
- 安全協力費
など
雑費とは別に支払手数料が存在する理由は、支払手数料に含まれる費用が、経営や納税に影響するためです。なお、雑費として扱う金額が多い場合は、税務調査などで際精査される可能性があることや、経営状況を正しく判断するためにも慎重に管理しましょう。
支払報酬との違い
弁護士や税理士、司法書士、社会保険労務士のほか、ライターやデザイナーなどの専門家に対する報酬の支払いは、銀行への手数料などとは異なり源泉徴収の対象となるため、支払報酬として仕訳を行います。
報酬を支払手数料として扱う場合は、支払手数料の金額が大きくなり、振込手数料の把握が難しくなります。よって、支払いの性格が異なる両者を区別するために、支払報酬料と支払報酬が分かれているともいえるでしょう。
行政機関への支払手数料
行政機関に対して支払う各種支払手数料は「租税公課」という勘定科目で仕訳を行います。行政機関への支払手数料の例は次のとおりです。
- 印鑑証明書の発行手数料
- 住民票の発行手数料
- その他公共サービスに対する手数料
- 地方公共団体や同業者組合に対する会費や組合費
など
また、手数料以外にも租税の対象になるものは次のとおりです。
- 登録免許税
- 印紙税
- 固定資産税
- 不動産取得税
- 事業税
- 事業所税
- 都市計画税
- 自動車税
- 消費税
同じ手数料でも、行政機関と民間金融機関への支払いは分けて考えることで、租税公課と支払手数料のいずれで扱うべきか判断しやすくなるでしょう。
販売手数料
販売手数料は、商品を代理店を通じて販売する際に支払う報奨金を含みます。この手数料は直接的な売上を目的とした費用であるため、「販売促進費」として計上されます。支払手数料と間違えやすい点がありますが、直接の売上にかかる経費は「販売促進費」で処理することが推奨されます。
支払手数料の税区分
支払手数料における消費税区分は、課税取引に該当します。よって、仕入税額控除の対象としなければなりません。
仕入税額控除とは、生産や流通の度に支払い費用に対して二重、三重に税がかからないようにするための制度です。
消費税の納付は、課税期間中の売上げに係る消費税額から、同期間中の課税仕入れなどに係る消費税額を控除することで相殺されます。ただし、証明書発行手数料は非課税取引の対象になるため注意が必要です。
使用頻度の多い支払手数料ルールを正しく守ろう
勘定科目を正しく理解し、ルールに沿った形で扱うことは、健全な会社経営を行ううえで重要なポイントです。今回紹介した支払手数料は、他の勘定科目に比べても使用頻度が高く、また間違えやすい点でもあります。
すべての手数料が支払手数料として扱えるわけではなく、特定の条件に該当する費用のみが支払手数料として計上可能です。仕訳のルールを守って処理できるよう、理解を深めておきましょう。
よくある質問
支払手数料とは?
支払手数料とは、会社の経営や取引によって生じる、手数料や手間賃のことです。また、その支払いを管理するための勘定科目を指します。詳しくはこちらをご覧ください。
支払手数料と雑費の違いは?
「雑費」は、少額で他の勘定科目に属さない経費に使う勘定科目です。定期的に生じる費用ではなく、稀に発生する費用を雑費として扱うケースが多いです。詳しくはこちらをご覧ください。
支払手数料の税区分は?
支払手数料の税区分は課税取引に該当し、仕入税額控除の対象です。ただし、証明書発行手数料は非課税取引となるため注意しましょう。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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