- 更新日 : 2026年1月15日
国民年金基金に入ってはいけない?損益分岐点やデメリットを徹底解説
将来の年金受取額を増やそうと考えている個人事業主やフリーランスにとって、「国民年金基金には入ってはいけない」という評判は無視できない懸念材料ですね。
結論をお伝えすると、国民年金基金は「インフレ(物価上昇)に弱い」という弱点があるため、資産運用の観点だけで見れば不利になるケースがあります。しかし、支払った掛金が全額控除される節税メリットがあるため、所得が高い層にとっては、実質的な利回りが大幅にプラスになる確実な手段でもあります。
本記事では、なぜ「入ってはいけない」と言われるのか、その根拠と損益分岐点、iDeCoとの違いを詳しく解説します。
目次
国民年金基金に入ってはいけないと言われる3つの理由
国民年金基金への加入を慎重にすべきと言われる主な理由は、物価変動への対応力不足と、資金の流動性が低い点にあります。これらを理解せずに加入すると、将来のライフプラン変更に対応できなくなる恐れがあります。
物価スライドがないためインフレリスクに弱い
国民年金基金のデメリットとして、将来受け取る年金額があらかじめ決まっている「確定給付型」であることがあげられます。もし物価が上がった場合は、実質的な価値が下がってしまいます。
公的な国民年金や厚生年金は、物価や賃金の上昇に合わせて支給額が調整される「物価スライド制」を採用しています。しかし、国民年金基金はこの仕組みがありません。
例えば、現在契約して将来「月額3万円」もらえる予定だとします。30年後に物価が2倍になっていた場合、その時の「3万円」の価値は現在の「1万5千円」程度の実質価値しか持ちません。
世の中のインフレが進んだ場合、将来受け取れる年金の実質的な価値が目減りしてしまうため、「インフレ対策としては不十分」と指摘されるのです。
一度加入すると任意脱退できない(資金拘束)
一度国民年金基金の加入手続きを行うと、原則として60歳になるまで途中でやめることができません。
国民年金基金は、老後の保障を目的とした公的制度であるため、加入員の自己都合による脱退は認められていません。
「事業資金が必要になった」「生活費が苦しい」といった理由でも解約して現金化することは不可能です。掛金を減らす(減口)ことはできますが、最低でも1口の掛金は払い続ける必要があります。
手元の現金を厚くしておきたい事業者にとっては、この資金拘束が大きなリスクとなります。
参照:自由に脱退したり、基金を移動したりすることができますか?|国民年金基金連合会
iDeCo(イデコ)の方が期待利回りが高い
資産を増やすという点において、iDeCo(個人型確定拠出年金)や新NISAでの運用と比較すると、国民年金基金の予定利率は低く設定されています。
現在の国民年金基金の予定利率は1.5%(平成26年4月以降加入の場合)です。
一方、iDeCoを使って全世界株式や米国株式のインデックスファンドで長期運用を行った場合、過去の実績ベースでは年利3〜5%以上のリターンを期待できるケースが多くあります。
「インフレに負けない資産形成」を第一優先にするならば、固定利率の国民年金基金よりも、運用益が非課税になるiDeCoやNISAを選ぶべきという意見が主流です。
国民年金基金の損得をシミュレーション
「入ってはいけない」と言われる一方で、長生きすれば確実に得をするのが年金制度です。掛金の総額に対して、受け取る年金の累計額がプラスに転じる(元が取れる)のは、受給開始からおよそ15年後が目安です。
損益分岐点は「受給開始から約15年〜16年」
国民年金基金を65歳から受給開始した場合、80歳〜81歳頃に受け取り総額が掛金総額を上回ります。日本人の平均寿命(男性約81歳、女性約87歳)を考慮すれば、十分に到達可能な年齢です。
さらに、ここには「税金の控除(節税額)」を含めていません。掛金支払い時の節税メリットを加味すると、実質的な自己負担額は大幅に下がるため、実際の損益分岐点はさらに早くなります。税率が高い人であれば、受給開始から10年未満で実質的な元が取れる計算になることも珍しくありません。
【損益分岐点の目安】
| 受給開始年齢 | 元が取れる年齢の目安 | 備考 |
|---|---|---|
| 65歳支給開始 | 80歳〜81歳 | 平均寿命(男性約81歳、女性約87歳)と比較して到達可能な範囲 |
| 60歳支給開始 | 75歳〜76歳 | 比較的早い段階で元が取れる |
早期に死亡した場合のリスクと保証期間
年金受給前、あるいは受給開始直後に亡くなった場合でも、保証期間付きのタイプを選んでいれば遺族に一時金が支払われます。
国民年金基金の1口目(終身年金A型)には、15年間の保証期間があります。
- 年金受給前に死亡した場合:
掛金総額に近い額、またはそれ以上が遺族へ一時金として支給されます。 - 保証期間内に死亡した場合:
残りの期間に対応する年金原資が遺族へ一時金として支払われます。
ただし、保証期間のないB型を選んでいる場合は、支払われた一時金が掛金総額を下回るケースがあるため、プラン選択には注意が必要です。
iDeCoや新NISAと国民年金基金の徹底比較
国民年金基金かiDeCoか、新NISAか、どちらに入ればいいのか、という疑問もあるでしょう。安全性重視なら国民年金基金、収益性重視ならiDeCo、流動性重視なら新NISAという使い分けが基本です。国民年金基金は「死ぬまでもらえる終身年金」であり、長生きリスクに備える保険的な意味合いが強い制度と言えます。
以下の表で違いを確認しましょう。
| 項目 | 国民年金基金 | iDeCo (個人型確定拠出年金) | 新NISA (つみたて投資枠等) |
|---|---|---|---|
| 主な目的 | 老後の「終身年金」確保 | 老後資金の「運用」形成 | 中長期の資産形成・運用 |
| 受取期間 | 一生涯(終身) ※A・B型 | 一括または有期(5年〜20年など) | 一括または自由に取り崩し |
| 利回り | 固定(予定利率1.5%) | 変動(運用実績による) | 変動(運用実績による) |
| インフレ対応 | △ 弱い(固定額) | ○ 強い (運用次第) | ○ 強い (運用次第) |
| 所得控除 | ○ 全額控除 | ○ 全額控除 | × なし |
| 途中解約 | × 不可 | × 不可 (60歳まで) | ○ いつでも可能 |
併用する場合の限度額と最適解
国民年金基金とiDeCoは併用が可能ですが、掛金の合計額には「月額68,000円」という上限があります。
この枠をどう配分するかがポイントです。
例えば、「月3万円を国民年金基金で終身年金のベースを作り、残りの3万8千円をiDeCoで積極運用する」といった組み合わせが、リスク分散の観点からおすすめです。
「国民年金基金に入ってはいけない」と極端に避けるのではなく、iDeCoの変動リスクをカバーするための「安定資産」として国民年金基金を一部組み入れる戦略は有効です。
国民年金基金に加入すべき人・メリットが大きいケース
課税所得が高い個人事業主や、50歳以上で安全性を最優先したい方は加入すべきです。なぜなら、高所得者にとっては「節税額」がインフレリスクによる目減りを補います。50代以上にとっては暴落リスクのない「確定利回り」が老後直前の資産防衛として機能するからです。
節税効果を最大化したい高所得の個人事業主
課税所得が高いフリーランスや経営者にとって、国民年金基金の掛金が「全額社会保険料控除」になるメリットは計り知れません。
例えば、課税所得が500万円(所得税率20%+住民税10%=約30%)の人が、月額68,000円(年額816,000円)を国民年金基金に支払ったとします。
- 年間の節税額: 約24万円
- 30年間の節税総額: 約720万円
これだけの税金が安くなるのであれば、多少のインフレリスクがあったとしても、実質的な利回りは非常に高くなります。支払う税金を減らしつつ、将来の自分への仕送りを行える点は、経営者にとって合理的な選択です。
50歳以上で安全確実に受給額を増やしたい人
50歳以上の方にとって、iDeCoやNISAでの長期運用(20年以上)を行う時間は限られています。運用期間が短いと、暴落時に回復を待てず元本割れするリスクが高まります。
国民年金基金であれば、加入時点で将来の受取額が「確定」します。
50歳から60歳までの10年間、ラストスパートで老後資金を積み増したい場合、市場変動リスクを負わずに、節税メリットを受けながら確実に年金額を上乗せできる本制度は、非常に相性が良いと言えます。
障害・遺族年金の上乗せが欲しい人
あまり知られていませんが、国民年金基金に加入中に万が一のことがあった場合、遺族一時金等の保障があります。
国民年金(基礎年金)だけでは遺族への保障が心もとないと感じる場合、掛け捨ての生命保険の代わりに、貯蓄性のある国民年金基金を活用するという考え方もできます。
国民年金基金の加入条件は?
日本に住んでいる20歳以上60歳未満の自営業者とその家族、開業医や弁護士、芸術家などの自由業、学生などの国民年金の第1号被保険者および60歳以上65歳未満の方で、自主的に国民年金に加入している方々が入ることができます。
- 厚生年金保険や共済組合に加入している会社員等(国民年金の第2号被保険者)
- 厚生年金保険や共済組合に加入している方の被扶養配偶者の方(国民年金の第3号被保険者)
- 国民年金の第1号被保険者でも国民年金の保険料を免除(一部免除・学生納付特例・若年者納付猶予を含む)している方
- 国民年金の第1号被保険者でも農業者年金の被保険者の方
- 付加年金に加入している方
国民年金基金の加入・運用に関するよくある疑問(Q&A)
国民年金基金についてよくある質問について、簡潔に回答します。
無職や配偶者は加入できる?
国民年金の第1号被保険者であれば、現在無職であっても加入は可能です。
ただし、国民年金本体の保険料を免除・猶予されている場合は加入できません。また、会社員の配偶者(第3号被保険者)は加入対象外です。
無職の期間中に無理をして加入すると、その後の支払いが負担になり「払えない」という事態に陥る恐れがあるため注意が必要です。
国民年金基金は一口いくら?
掛金は月額68,000円を上限として、一口数千円程度から設定可能です。
- 1口目の掛金: 年齢と性別、選択する型によって異なりますが、概ね月額7,000円〜1万円程度が目安です。
- 2口目以降: 数百円〜数千円単位で細かく追加できます。
また、4月から翌年3月までの1年分を前納すると0.1か月分の掛金が割引されるメリットもあるため、資金に余裕がある際は活用しましょう。
国民年金基金は安全資金としての貯蓄方法
国民年金基金は、自営業者やフリーランスが任意で加入できる年金制度です。国民年金の支給のみで暮らす老後の不安を解消できるとともに、掛け金は全額が所得控除の対象となるので、節税効果もあります。ただ、物価スライド制に対応していないというデメリットがあります。
将来の備えと、現在の節税効果を考慮に入れて、検討してみましょう。手続きなどの詳細は国民年金基金のホームページで確認できます。
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