- 更新日 : 2024年8月8日
源泉徴収票を退職者に渡す際の注意点
退職手当や退職一時金などを支払った会社は、 退職者に対し、退職後1ヵ月以内に「退職所得の源泉徴収票」と「特別徴収票」を交付します。税法上、退職所得は給与とは別の方法で算出され、「退職所得の受給に関する申告書」の提出を受けている場合と受けていない場合とでは、源泉徴収の方法が異なります。
退職所得とは
退職所得とは会社から支払われる退職金など、退職する際にもらうお金について言います。生命保険会社または信託会社と適格退職年金契約に基づいて契約している場合には、これらの会社からも退職一時金を受け取ることがありますが、これも「退職所得」にみなされます。
「退職所得」は所得税の課税対象ですが他の収入とは区別して源泉徴収税額が計算されます。
退職所得は「退職時に受け取った収入金額」から「退職所得控除額」を差し引いた分の半額となります。
なお、退職した者が年金契約によって受け取った退職一時金は「退職時に受け取った収入金額」に含まれますが、本人が支払った掛金や保険料を差し引いた残高を退職所得の収入金額とします。
1/2の適用がない退職所得について
平成25年以降、勤続年数が5年以下の法人の取締役や執行役、理事、監査役、会計参与並びにこれら以外の者で法人の経営に従事している一定の者が受ける退職金のうち、勤続年数に応じた退職金を受け取った分は1/2の適用がなくなりました。
そのため、「退職時に受け取った収入金額」から「退職所得控除額」を差し引いた数値が「退職所得」となります。
退職所得控除額の計算方法
退職所得の計算の際に使用する「退職所得控除額」は、勤続年数が20年を超えるかどうかで計算方法が異なります。
・勤続年数が20年以下の場合
「退職所得控除額」は40万円×勤続年数となり、80万円以下の場合は80万円となります。
・勤続年数が20年を超える場合、
「退職所得控除額」は70万円×(勤続年数–20年)+ 800万円となります。
なお、退職した直接的な理由が「障がい者になったこと」である場合、以上の計算式で求められた金額に100万円が上乗せされます。
また、同じ年の間に複数カ所の雇用主から退職金を受け取る場合や、以前に退職金を受け取ったことがある場合には控除額が異なることがあります。
「退職所得の受給に関する申告書」とは
「退職所得の受給に関する申告書」とは、退職金を受け取る者が源泉徴収義務者である会社に提出する書面です。申込書を受け取った会社は、退職金を受ける者の退職所得を他の所得と分けて所得税額を源泉徴収します。
「退職所得の受給に関する申告書」の提出を怠ると、源泉徴収の際に20%の税率(平成25年1月1日以降、退職金を受け取る場合は20.42%)が退職金にかけられ、確定申告をして所得税額を自分で精算することになりますので気をつけてください。
なお、会社が受け取った「退職所得の受給に関する申告書」は税務署に提出する必要はありませんが、税務署から提出を求められることもあるので大切に保管しておきましょう。
退職所得の源泉徴収票
給与所得の源泉徴収の場合、会社は1年間に支払われた給与や社会保険料、生命保険料などの控除額、年末調整で最終的に決定した源泉徴収税額が記された源泉徴収票を従業員に対し交付します。
一方、退職所得の場合、会社は、その年に支払ったすべての退職金や一時恩給について「退職所得の源泉徴収票」と「特別徴収票」を作成し、退職金や一時恩給などを受け取った者が退職して1カ月以内に必ず本人に交付しなければなりません。
また、退職金や一時恩給などを受け取った者が法人の役員である場合、「退職所得の源泉徴収票」の1部を税務署に、「特別徴収票」の1部を退職者が1月1日時点で在住する市町村に、受給者が退職してから1カ月以内に提出する必要があります。
なお、本人が死亡したことが理由で退職手当を支払った場合は、これらの書類を提出する必要はありませんが、相続税法の規定による「退職手当金等受給者別支払調書」を提出することになっています。
まとめ
退職所得は源泉徴収税額の計算や書類についても通常の所得とは分ける必要があります。人事給与担当の方は正しく理解するように心がけてください。
よくある質問
退職所得とは?
会社から支払われる退職金など、退職する際にもらうお金のことです。詳しくはこちらをご覧ください。
退職所得の計算方法は?
「退職所得 = (「収入金額」–「退職所得控除額」)× 1/2」の式で表されます。詳しくはこちらをご覧ください。
「退職所得の受給に関する申告書」とは?
退職金を受け取る者が源泉徴収義務者である会社に提出する書面のことです。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
会計の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
役員報酬を確実に損金扱いするための3つの注意点
法人会計において、金額の大きさからも特に重要度が高いものの1つとして「役員報酬」と「役員退職金」が挙げられます。 いずれも金額が決して少なくない額であるため、きちんと手続きを踏まなかったばかりに、経費として認められない(=損金不算入)といっ…
詳しくみる固定資産評価証明書はどのようなときに必要?
固定資産税の課税のために土地や家屋などの資産につけられる価格を、固定資産税評価額といいます。 固定資産税評価額は固定資産税の納税通知書に添付されている課税明細書で確認できますが、公的機関への届け出には固定資産評価証明書が必要になる場合があり…
詳しくみる法人税減税の影響とは?日本の国際競争力と減税の関係
近年、法人税減税実施とその効果について、さまざまな論議がされています。法人税減税の主な目的は、海外企業の日本誘致を促進し、日本企業の国際競争力を高めることです。 この効果によって日本経済全体の活性化を図ることが期待されています。 ではなぜ、…
詳しくみる法人住民税とは?計算方法や納付時期、納付方法を解説
法人住民税とは、事業所のある自治体に納める地方税です。個人の住民税と同じく、都道府県民税と市町村民税に分かれています。計算方法やほかの税金との違い、納付時期についてまとめました。また、実際にどの程度の税額になるのか、具体的なケースで説明しま…
詳しくみる収入印紙の取り扱いに注意!印紙税を納める際に気をつけたい3つのこと
「印紙税」や「収入印紙」と聞いて、すぐにピンとくる方はどのくらいいらっしゃるでしょうか? 「領収書で必要になるもの」くらいしか思い当たらない方も少なくないのではないでしょうか。たしかに印紙税は、日常生活では領収書発行の際に目にすることがほと…
詳しくみる経費は領収書なしで認められるか?領収書がない場合の対処法
事業に関係する支出であれば、確定申告をする際に税務上の費用として処理することができます。費用として処理するために必要となるのが、その支出を証明する証拠。一般的に領収書と呼ばれるものがこれにあたります。レシートと呼ばれる会計明細がプリントされ…
詳しくみる