• 更新日 : 2021年6月10日

繰延資産とは?償却方法や仕訳例をわかりやすく解説

繰延資産とは?償却方法や仕訳例をわかりやすく解説

費用でありながら資産のような性質を持つものを繰延資産と言います。一時的な出費であるものの支出効果は長期にわたって継続し、数年をかけて費用化することが認められています。

繰延資産を計上すると貸借対照表へ記載され、法人税計算へも影響を与えます。種類や償却方法などを理解し、正しい会計処理ができるようになりましょう。

繰延資産とは

すでに発生・支払いが済んでいる支出のうち、年度をまたいで費用化することが認められるものを繰延資産と言います。出費は一時的であるものの、長期にわたって継続的して効果を得ることが可能な支出です。資産として計上し、数年をかけて償却することで費用化します。

繰延資産は貸借対照表の貸方の、固定資産、流動資産の下に記載されます。

貸借対照表

資産の部
 流動資産



 固定資産


 繰延資産
負債の部
 流動負債

 固定負債
純資産の部
 株主資本
合計合計

繰延資産の分類

繰延資産には会計上の繰延資産と、税法上の繰延資産があります。考え方の違い、それぞれの種類を理解しましょう。

会計上の繰延資産

会社の会計処理は企業会計原則をはじめとする多くの会計基準に基づいて行われています。会計基準に準拠し、会社会計として行うことが認められている繰延資産が会計上の繰延資産です。以下の5種類があります。

創立費
会社設立のために支出した費用
事務所の契約費用、設立に関わった使用人に対する給料、定款作成費、創立総会に関する費用など

開業費
開業準備にかかった費用
土地や建物等の賃借料広告宣伝費など

株式発行費
株式の交付のために支出した費用
株式募集の広告費、金融機関・証券会社の取扱手数料、目論見書や株券などの印刷費、変更登記の登録免許税など

社債発行費
社債発行のために支出した費用
社債募集の広告費、金融機関・証券会社の取扱手数料、目論見書や社債債券などの印刷費、変更登記の登録免許税など

開発費
新技術や新経営組織の採用、資源の開発、市場の開拓等のために支出した費用、生産能率の向上または生産計画の変更などによって設備の大規模な配置換えを行った場合の費用など

税法上の繰延資産

税法上の繰延資産とは、税法で計上が認められている繰延資産のことです。会計上の繰延資産5種類に加え、その他として5種類のものがあります。

  • 自己が便益を受ける公共的施設や共同的施設の設置あるいは改良のための費用
  • 資産を賃借するか使用するために必要な権利金、立ちのき料その他の費用
  • 役務の提供を受けるために必要な権利金その他の費用
  • 製品等の広告宣伝の用に供する資産を贈与したことにより生ずる費用
  • その他の便益を受けるために必要とされる費用

繰延資産の仕訳

創立費1,000,000円についての仕訳と償却額の計算は、以下のようになります。

・繰延資産として計上せず、一括償却する場合

借方貸方
創立費 1,000,000現金 1,000,000

・繰延資産に計上し、5年間で均等償却する場合
1会計年度の償却額
1,000,000 ÷ (12 × 5) × 5 = 200,000
(繰延資産は月割で償却額を計算します)

借方貸方
創立費償却 200,000創立費 200,000

繰延資産の償却

繰延資産は定められた方法で償却する必要があります。それぞれの償却期間は以下の通りです。

創立費   5年

開業費   5年

開発費   5年

株式交付費  3年

社債等発行費 社債償還期間

繰延資産の償却は同一金額を償却額とする定額法か、任意の時点で償却できる任意償却で行います。定額法の場合は償却期間の月数で各会計年度の償却額を計算します。社債等発行費のみ利息法を用いて、社債償還期間(新株予約権発行費は定額法で3年間)で償却します。

税法上でその他のものとして認められている繰延資産は、それぞれについて細かく定められています。通達などで確認しながら、正しく処理する必要があります。

繰延資産のチェックポイント

繰延資産は貸借対照表上に資産として計上されているだけで、実質的に何かが存在しているわけではありません。すでに発生している支出について、費用化を先延ばしているだけの価値のない資産という捉え方もできます。あまりにも多額の繰延資産計上は正確な会計処理とは言えないので、注意が必要です。

適切な繰延資産計上ができているかどうかは、貸借対照表の他の資産、損益計算書の各費用と比較することでチェックできます。金額の大小を比べ、繰延資産額が大きすぎないかを確認しましょう。償却中の繰延資産について正しく計算されているかも、合わせてチェックしましょう。

繰延資産の性質を理解し、正しく処理しよう

貸借対照表の資産の部に記載されるものの、繰延資産に資産としての価値はありません。長期にわたって有用であることから年度をまたいで償却することが認められている、費用計上の先延ばしのような性質を持つ資産です。
繰延資産は計上できる内容、償却期間・方法が定められていて、適正に取り扱うことが必要です。仕訳や償却額の計算などを理解し、正しく会計処理できるようになりましょう。

繰延資産についてより詳しい情報を知りたい方は以下のサイトをご参照ください
国税庁|繰延資産

よくある質問

繰延資産とは?

すでに発生・支払いが済んでいる支出のうち、年度をまたいで費用化することが認められるもののことです。詳しくはこちらをご覧ください。

繰延資産の分類は?

会社会計として行うことが認められている会計上の繰延資産と、税法で計上が認められている税法上の繰延資産があります。詳しくはこちらをご覧ください。

繰延資産を計上する際のポイントは?

貸借対照表の他の資産、損益計算書の各費用と比較することで、繰延資産額が大きすぎないかチェックすることです。詳しくはこちらをご覧ください。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談していただくなど、ご自身の判断でご利用ください。

資産の関連記事

新着記事