- 更新日 : 2025年2月20日
法定調書とは?知っておきたい法定調書の基礎知識
「法定調書」と聞いてどのようなものをイメージするでしょうか。
法律に定められた書面だということは言葉からわかると思いますが、どのような書面なのかといわれるとピンとこない方も多いはず。
しかし、実は意外と目にしている書類です。今回は、法定調書とは何かについて解説していきます。
目次
法定調書とは
法定調書とは、所得税法や法人税法上などに提出することが定められている資料のことで、多くの種類があります。法定調書の提出は義務となっており、提出先は税務署です。
法定調書は、お金の支払いについて報告することにより適正な課税を実現しようとするもので、脱税や所得隠しなどの防止にもつながります。
法定調書は何に使われるのか?
たとえば、A社がBさんに100万円の報酬を払ったとします。そうすると、A社はBさんに100万円の報酬を払ったとする支払調書を税務署に提出します。
このとき、Bさんが100万円の事業所得があったと確定申告すれば、両者の数値は一致し適正に申告されたものであることがわかります。
ところが、Bさんが確定申告をしない、または100万円より少なく申告した場合、支払調書の内容と一致しないので、どちらかが間違っていることになります。
そうすると、税務署としては、「お尋ね」という問い合わせの文書を送付するか、あるいは、税務調査をして確認することになります。
つまり、支払調書があるおかげで脱税を防ぐことができる仕組みになっているわけです。
「お尋ね」にしろ、税務調査にしろ、あまり嬉しいものではありません。そのような負担を減らすためにも、確定申告は間違えないよう提出しましょう。
法定調書の種類と提出義務者
所得税法等で規定されている法定調書は令和6年9月現在では63種類あります。全部を紹介することはできませんので、主な法定調書についてみていきましょう。
1.給与所得の源泉徴収票
会社員やアルバイトをしたことがある人なら、次にあるような給与所得の源泉徴収票をもらったことがあると思います。給与を支払う者は必ず作成しなければならないものです。
引用:給与所得の源泉徴収票|国税庁、「給与所得の源泉徴収票」
提出義務者
「給与所得の源泉徴収票」を提出するのは、給与を支払った側、つまり会社や事業主です。ただし、税務署に提出しなければならないのは、次のような場合です。年末調整の有無によっても、提出の範囲が変わるため注意が必要です。
年末調整の有無 | 受給者の例 | 源泉徴収票を提出する範囲 | |
---|---|---|---|
あり | 法人の役員 | その年の給与等支払額が150万円超となる場合 | |
弁護士、司法書士、税理士等 | その年の給与等支払額が250万円超となる場合 | ||
上記以外 | その年の給与等支払額が500万円超となる場合 | ||
なし | 扶養控除申告書を提出した人 | 退職した人等 | その年の給与等支払額が250万円超となる場合 ほか |
主たる給与が2,000万円超 | すべて | ||
上記以外 | その年の給与等支払額が50万円超となる場合 |
参考:令和6年分 給与所得の源泉徴収票等の法定調書の作成と提出の手引|国税庁、「法定調書の作成と提出の手引」
2.報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書
フリーのデザイナーやライターなどは、デザイン料や原稿料として報酬を受けることもよくあります。このような場合に作成されるのが、「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」です。
提出義務者
「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」の提出義務者は、外交員報酬、税理士報酬などの報酬、料金、契約金及び賞金の支払いをする人です。
提出する範囲の例示は、次のようなものです。
受給者の例 | 支払調書を提出する範囲 | |
---|---|---|
外交員、集金人、プロボクサー等 | その年の支払合計が50万円超となる場合 | |
バー、キャバレー等のホステス等 | ||
広告宣伝のための賞金 | ||
社会保険診療報酬支払基金が支払う診療報酬 | その年の支払合計が50万円超となる場合 (公立病院等に支払う場合を除く) | |
馬主が受ける競馬の賞金 | その年に75万円超となる支払があった場合 | |
プロ野球選手等が受ける報酬等 | その年の支払合計が5万円超となる場合 | |
上記以外 |
参考:令和6年分 給与所得の源泉徴収票等の法定調書の作成と提出の手引|国税庁、「法定調書の作成と提出の手引」
提出期限
これらの法定調書は、原則として翌年1月31日が提出期限となっています。つまり、年内のいずれかの日に支払いがなされたならば、翌年1月31日までに税務署に提出しなければなりません。
法定調書は翌年の1月31日までに税務署へ提出する
法定調書の提出範囲に該当したものは、提出義務者の所轄税務署へ翌年の1月31日までに提出します。法定調書は、所得税法等により税務署への提出が義務付けられ、提出にあたっては「給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表」も添付して提出します。
なお、給与支払者においては、「給与支払報告書・特別徴収票」の提出も求められ、これらの提出先は各市区町村です。
近年は、法定調書の提出もe-Taxが主流となっています。「給与所得の源泉徴収票」をe-Taxで提出することにより、例えば従業員が医療費控除のための確定申告をする場合などに、マイナポータルサイトと連携をすると給与情報を自動で取得できます。
提出した法定調書は保管が必要?
提出した法定調書は、7年間の保存が求められます。その保存期間において、税務署長から提出を求められた場合には提出する必要があります。
給与所得の源泉徴収票
給与支払者(提出義務者)は、源泉徴収票作成のために先に「源泉徴収簿」を作成しますが、この源泉徴収簿は帳簿となるため、7年間の保存義務があります。源泉徴収簿として、源泉徴収票に係る情報を残しておけば、従業員からの源泉徴収票の再発行依頼にも対応することができます。
源泉徴収票そのものは、本人と市区町村役場、税務署にそれぞれ提出するため、紙では残らない仕組みです。したがって、各所に提出した給与所得の源泉徴収票の控えを作成して保管する必要はありません。
また、所得税法施行規則第76条の3によると、従業員から提出のあった源泉徴収に係る申告書等も同様に7年間の保存義務があります。
報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書
給与支払者(提出義務者)が作成した支払調書の控えについては、保管が義務づけられていません。
しかしながら、支払調書を後で確認できるように「支払調書の控え」を保管することに特に差支えはありません。ただし、マイナンバーが掲載されているときは、一定の保管が求められます。保管するにしても、源泉徴収簿同様に考えるのがよいでしょう。
身近な法定調書について理解しておこう!
法定調書は意外にも身近にあるものだということがわかって頂けたかと思います。
今回紹介したもの以外にも、退職金を支払ったときに作成する「退職所得の源泉徴収票」、利子を支払ったときに作成する「利子等の支払調書」、生命保険金を支払ったときに作成する「生命保険契約等の一時金の支払調書」、不動産賃貸に関する「不動産の使用料等の支払調書」など、納税者間における透明性確保のために種々の法定調書があります。
よくある質問
法定調書とは?
所得税法や相続税法上などに、提出することが定められている資料のことです。詳しくはこちらをご覧ください。
支払調書のメリットは?
脱税を防ぐことができます。詳しくはこちらをご覧ください。
法定調書の種類は何種類ある?
所得税法等で規定されている法定調書は59種類あります。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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