- 作成日 : 2025年11月6日
財務会計システムとは?機能からメリット・デメリット、選び方のポイントまで徹底解説
財務会計システムとは、企業の財務諸表を作成し、経営状態を正確に把握するための基幹システムです。日々の取引入力から決算業務までを自動化し、バックオフィス業務を大幅に効率化します。
この記事では、財務会計システムの基本的な役割から、導入によるメリット・デメリット、さらには自社に最適な会計ソフトを選ぶための具体的なポイントまでを網羅的に解説します。経理システムの導入を検討している担当者の方は、ぜひご一読ください。
目次
財務会計システムとは?
財務会計システムとは、企業の経済活動を記録・計算・整理し、貸借対照表(B/S)や損益計算書(P/L)といった財務諸表を作成するための一連の仕組みを実行するシステムを指します。これは、より広義な「会計システム」の一種であり、主として外部への公式な報告に用いられますが、その情報は内部の経営判断にも広く活用されます。
会計システムの中の財務会計の位置づけ
そもそも「会計システム」とは、企業のお金の流れを管理する仕組み全般を指し、その目的によって大きく2種類に分類されます。
本記事で扱う「財務会計システム」とは、この「財務会計」の業務を効率化するための専用システムです。
会計システムについては、以下の記事で詳しく紹介しています。
財務会計システムの基本的な役割
財務会計システムの最も基本的な役割は「制度会計」に基づいた正確な情報開示です。会計処理は、主に会社法(会社計算規則)や企業会計原則に則って行われます。上場企業など特定の企業は、さらに金融商品取引法に基づく開示も求められます。
具体的には、日々の仕訳入力、総勘定元帳の作成、試算表の作成、そして最終的な決算書の作成まで、一連の会計業務をコンピュータシステムで処理します。これにより、手作業によるミスを防ぎ、迅速かつ正確な決算を実現します。近年では、電子帳簿保存法やインボイス制度(適格請求書等保存方式)といった法改正への対応も重要な役割となっています。
財務会計システムと財務システムの違い
財務会計システムは「財務システム」としばしば混同されますが、両者の最も大きな違いは、報告の対象となる利用者(外部か内部か)と目的にあり、扱う情報の時間軸(過去か未来か)も重要な相違点です。
| 項目 | 財務会計システム | 財務システム |
|---|---|---|
| 主な目的 | 過去の取引を正確に記録し、外部へ報告すること | 会計データ等をもとに、未来の資金を計画・戦略立案すること |
| 情報の時間軸 | 過去 | 未来 |
| 主な機能 | 仕訳入力、帳簿作成、決算書作成 | 資金繰り計画、予算実績管理、財務分析 |
| 主な利用者 | 経理担当者 | 財務担当者、経営層 |
このように、「財務会計システム」が過去の実績を固めるための守りのシステムだとすれば、「財務システム」は未来の成長に向けた攻めのシステムと位置づけることができます。
財務会計と管理会計の違い
財務会計と管理会計の最も大きな違いは、誰に・何のために報告するか、つまり報告の対象者と目的です。
- 財務会計:株主や金融機関といった社外の利害関係者に対し、法律のルールに則って経営成績を報告することが目的です。
- 管理会計:経営者や役員といった社内の人間が、経営判断に役立てることを目的とし、フォーマットは自由です(例:部門別採算、製品別原価など)。
高性能な財務会計システムやERPは、財務会計の機能に加え、この管理会計に役立つ分析・レポート機能を豊富に備えていることが多くあります。
財務会計と管理会計の違いについては、以下の記事でも詳しく紹介しています。
財務会計システムを導入するメリットは?
多くの企業で財務会計システムの導入が進む背景には、経理業務の効率化や迅速な経営判断へのニーズがあります。人手不足が深刻化する中で、定型業務を自動化し、より付加価値の高い業務へリソースをシフトさせる必要性が高まっています。以下、メリットをそれぞれみていきましょう。
メリット1. 経理業務の圧倒的な効率化と自動化
最大のメリットは、手作業で行っていた業務を自動化できる点にあります。
銀行口座やクレジットカードの取引明細を自動で取り込んで仕訳を提案する機能や、請求書の発行から入金消込までを自動化する機能などにより、日々の入力作業が大幅に削減されます。これにより、担当者は単純作業から解放され、より戦略的な業務に集中できるようになります。事前のマスタ整備や運用体制を整えることで、月次決算の早期化といった効果を最大限に引き出せます。
メリット2. 経営状況のリアルタイムな可視化
財務会計システムを導入することで、最新の経営数値をほぼリアルタイムに把握できるようになります(※銀行口座とのデータ同期など、処理によっては数時間〜1日程度のタイムラグが生じる場合があります)。
従来のExcel(エクセル)管理などでは、データが分散し、集計に時間がかかるため、経営者が最新の業績を把握できるのは月次決算後になりがちでした。しかし、システムを導入すれば、売上や利益、資金繰りの状況などがダッシュボードで常に可視化されるため、経営者は市場の変化に対して迅速かつ的確な意思決定を下すことが可能になります。
メリット3. 内部統制の強化とヒューマンエラーの防止
システムによる業務プロセスの標準化は、内部統制の強化と人為的ミスの防止に大きく貢献します。適切な業務設計と運用を組み合わせることで、その効果は一層高まります。
誰がいつ、どのような操作を行ったかのログ(監査証跡)が記録されるため、不正を抑止する効果があります。また、仕訳の自動化や入力規則の設定により、勘定科目の選択ミスや入力漏れといったヒューマンエラーを未然に防ぎ、会計情報の正確性と信頼性を高めることができます。
メリット4. 法改正や税制改正への迅速な対応
財務会計システムは、消費税率の変更やインボイス制度、電子帳簿保存法といった頻繁な法改正に迅速に対応します。
自社で法改正の情報を収集し、Excelの計算式や業務フローを都度変更するのは大変な労力ですが、クラウド型のシステムではベンダーが法改正に対応するため、自社の運用ルールや各種設定を合わせて見直すことで、常に最新の法令に準拠した業務体制をスムーズに構築できます。これにより、法令違反のリスクを低減し、コンプライアンスを維持できます。
財務会計システムを導入するデメリット(注意点)は?
財務会計システムの導入には多くのメリットがある一方で、コストの発生や、導入時の業務負荷といったデメリットも存在します。導入を成功させるためには、これらのデメリットを事前に理解し、対策を講じることが不可欠です。
デメリット1. 導入・運用コストの発生
当然ながら、システムの導入には初期費用や月額利用料といったコストがかかります。高機能なERPやオンプレミス型(自社サーバーにインストールするタイプ)のシステムは、数百万円以上の初期投資が必要になることもあります。また、クラウド型(SaaS型とも呼ばれる)であっても、利用するユーザー数や機能に応じて月々のランニングコストが発生します。費用対効果を慎重に見極めることが重要です。
デメリット2. システム移行に伴う業務負荷
新しいシステムへの移行期には、一時的に担当者の業務負荷が増大します。具体的には、以下のような作業が必要になります。
- 初期設定:勘定科目や取引先マスタなどの登録
- データ移行:旧システムやExcelからのデータ移行
- 操作研修:新しいシステムの操作方法の習得
- 業務フローの見直し:新システムに合わせた業務プロセスの再構築
導入をスムーズに進めるためには、十分な準備期間を確保し、導入支援サービスなどを活用することも有効です。
デメリット3. 自社に合わないシステムを選んでしまうリスク
最も避けたいのが、自社の業務フローや企業規模に合わないシステムを導入してしまうことです。「多機能だが使いこなせない」「必要な機能が足りない」「操作が複雑で逆に非効率になった」といった事態に陥る可能性があります。このような失敗を防ぐためには、後述する「選び方のポイント」を参考に、複数のシステムを比較検討し、自社の課題を解決できる最適な製品を慎重に選定する必要があります。
財務会計システムに搭載されている機能は?
財務会計システムには、日々の経理業務を効率化する基本機能から、経営分析や意思決定を支援する応用機能まで、多彩な機能が搭載されています。
日常的な経理業務を支える基本機能
多くの財務会計システムに共通して搭載されている、中核となる機能です。
| 機能分類 | 主な機能内容 |
|---|---|
| 帳簿・伝票管理 | 仕訳入力、総勘定元帳、補助元帳、試算表の作成、振替伝票の作成など |
| 債権管理(売掛金管理) | 請求書の発行、入金管理、売掛金の消込、与信管理など |
| 債務管理(買掛金管理) | 支払依頼、支払予定表の作成、買掛金の消込、総合振込データの作成など |
| 経費精算 | 交通費や出張費などの経費申請・承認、仕訳の自動作成、法人カード連携など |
| 決算 | 決算整理仕訳、減価償却費の計算、各種決算書(B/S, P/L, C/F等)の作成 |
経営判断に役立つ応用機能
より高機能なシステムやERPには、経営の可視化や迅速な意思決定を支援する機能が含まれます。
| 機能分類 | 主な機能内容 |
|---|---|
| 予算管理 | 予算の編成、実績との比較分析(予実管理)、着地見込みの予測など |
| 管理会計・財務分析 | 部門別・プロジェクト別損益管理、キャッシュ・フロー計算書、各種経営指標の分析レポート |
| 固定資産管理 | 固定資産台帳の作成、減価償却計算、資産の除却・売却処理、償却資産申告書の作成 |
| 外部システム連携 | 販売管理システム、給与計算システム、銀行システムとのAPI連携によるデータ自動取込 |
| 資金繰り管理 | 資金繰り表の作成、将来の入出金予測、手元資金のシミュレーション |
自社に最適な財務会計システムを選ぶポイントは?
自社に最適な財務会計システムを選ぶためには、導入目的を明確にし、ポイントをおさえて段階的なステップで比較検討することが成功のカギとなります。以下の5つのステップで進めることをお勧めします。
ステップ1. 導入目的と課題を明確にする
まずは「なぜシステムを導入するのか」を具体的に定義します。「月次決算を3日早めたい」「請求書発行のミスをゼロにしたい」「リアルタイムで部門別損益を見たい」など、解決したい課題や達成したい目標をリストアップしましょう。この目的が、後のシステム選定の重要な判断基準となります。
ステップ2. 企業の規模や業種に合っているか確認する
次に、自社の規模や業種に特化した機能があるかを確認します。例えば、中小企業であればシンプルでコストを抑えたクラウド会計が適しているかもしれません。一方、上場企業や多角経営を行う大企業であれば、内部統制機能や連結決算機能を持つERPが必要になります。
また、建設業向けの工事原価管理機能や、小売業向けのPOSレジ連携機能など、業種特有の要件も考慮しましょう。
ステップ3. 提供形態(クラウドかオンプレミスか)を比較検討する
システムの提供形態は、大きく分けて「クラウド型」と「オンプレミス型」の2つがあります。それぞれのメリット・デメリットを理解し、自社の方針に合った方を選びましょう。
【提供形態の特徴】
| 項目 | クラウド型(SaaS) | オンプレミス型 |
|---|---|---|
| 導入コスト | 低い(初期費用無料の場合も) | 高い(サーバー・ライセンス購入費) |
| 運用コスト | 月額・年額の利用料 | サーバー維持費、保守人件費 |
| 導入スピード | 早い(契約後すぐ利用可能) | 時間がかかる(構築・設定が必要) |
| カスタマイズ性 | 低い(標準機能の範囲内) | 高い(自社仕様に柔軟に開発可能) |
| 保守・管理 | ベンダー側で実施(法改正対応も) | 自社で実施 |
| アクセス性 | 場所を問わず利用可能 | 原則として社内ネットワークから(※VPN等を利用し、外部から安全にアクセスすることも可能) |
ステップ4. セキュリティ対策とサポート体制をチェックする
会計情報は企業の最重要機密の一つです。そのため、堅牢なセキュリティ対策が施されているかは必ず確認すべきポイントです。
データの暗号化、IPアドレス制限、二段階認証などの機能に加え、ISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)認証などを取得しているかどうかも信頼性の指標になります。また、導入時やトラブル発生時に迅速に対応してくれるサポート体制の充実度も、安心して利用するために不可欠な要素です。
ステップ5. 他のシステムとの連携性(API連携など)を確認する
最後に、現在利用している他のシステムとスムーズに連携できるかを確認します。例えば、販売管理システムから売上データを、給与計算システムから人件費データを自動で取り込めれば、二重入力の手間がなくなり、業務はさらに効率化されます。API(Application Programming Interface)連携が豊富に用意されているシステムは、将来的な拡張性も高く、おすすめです。
財務会計システムの導入で、経営基盤を強化しよう
本記事では、財務会計システムの基礎知識から導入のメリット・デメリット、そして自社に最適なシステムの選び方までを解説しました。
財務会計システムは、単なる経理業務の効率化ツールではありません。企業の成長を支える重要な経営基盤であり、自社の目的や活用体制と的確に組み合わせることで、その効果を最大限に高めることができます。自社の未来を共に創るパートナーとなるような最適なシステムを選びましょう。
日々の入力作業を効率化し、リアルタイムで経営状況を把握したい方には「マネーフォワード クラウド会計」もおすすめです。 銀行口座やクレジットカードとの連携による取引データの自動取得と、AIによる仕訳提案機能を搭載しており、手作業を最小限に抑えることで経理業務の負担を軽減します。いつでも最新の経営数値をダッシュボードで確認できるため、迅速な意思決定にもつながります。
特長や料金などは、下記ページに詳しく記載していますので、ぜひ参考にしてください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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