• 作成日 : 2025年9月9日

月次決算は税理士に依頼するべき?メリットや注意点・費用などを解説

「自社で月次決算を実施したいけれど、人的リソースが足りない」「個人事業主なので、一人で月次決算を行うのは難しい」と、悩んでいる方もいらっしゃるでしょう。

本記事では、月次決算を税理士に依頼する際のメリット・デメリットや注意点を詳しく解説します。依頼にかかる費用や業務範囲の目安に加え、依頼後に確認すべき数字や避けるべき税理士の特徴など、よくある質問もまとめました。

適切な税理士選びと、効率的な月次決算の進め方をサポートします。

そもそも月次決算とは?

月次決算とは、毎月実施する決算業務のことです。基本的に、年次決算とほぼ同様の会計処理をします。

月ごとの損益や資産の状況を把握でき、経営判断に必要な情報をタイムリーに得られるのがメリットです。ただし、法律上の義務はなく、各企業の判断で運用されています。

一方、年次決算は事業年度ごとに必ず実施するものです。財務諸表を作成し、株主総会終了後には公告することが会社法で義務づけられています。

年次決算は、対外的に企業の経営状況を示す「財務会計」です。対して、月次決算は経営者が方針を決めるための「管理会計」として位置づけられています。

月次決算を税理士に依頼する3つのメリット

月次決算を税理士に依頼することで、正確な会計処理や経営状況の早期把握が可能になります。ここでは、月次決算を税理士に依頼する、具体的なメリットを解説します。

1.コア業務に集中できる

月次決算を税理士に任せることで、従業員は本来の業務(コア業務)に集中できます。帳簿管理や経費精算、税務処理など、専門性の高い業務は税理士に任せるのがおすすめです。

経営者自身も事務作業から解放され、意思決定に力を注げるため、生産性の向上につながります。

また、税理士のアドバイスを得ることで、経営指標を正確に把握でき、スピーディーな判断が可能となります。業務効率の改善に加え、時間と心の余裕を得られる点も大きなメリットです。

2.節税対策が可能になる

税理士に月次決算を依頼すると、専門的な知識を活かした正確かつ迅速な節税対策が可能になります。税理士は税制改正にも精通していることが多く、効率的で誤りの少ない申告や節税プランを提案できます。

企業の業種や規模を踏まえて、一般的な節税方法だけでなく業界特化型の戦略を練ることも可能です。

中小企業の場合でも、経費処理の最適化や控除の活用など、実践的なアドバイスを受けられます。

3.資金繰りの計画が立てやすい

月次決算を税理士に依頼すると、毎月の収支や資金の流れを正確に把握できます。

事前に税負担を予測できることで、資金繰りの計画が立てやすくなるのが特徴です。結果的に、経営の安定性も高まります。

また、専門家による適切な節税対策を取り入れることで、キャッシュフローの改善にもつながります。無理のない資金計画を策定でき、安心して事業運営を進められる点が大きなメリットです。

月次決算を税理士に依頼する3つのデメリット・注意点

月次決算を税理士に依頼する際には、メリットだけでなく費用面や依頼方法による注意点も存在します。ここでは、デメリットや注意点をまとめました。

1.費用がかかる

税理士に月次決算を依頼すると、専門的な業務であるため費用がかかる点がデメリットです。継続的に依頼する場合、年間を通じてコストがかかります。

会社の規模や業務内容によって作業量が増えれば、費用も高くなる可能性があるでしょう。

月次顧問料と決算料が別々に設定されている場合もあるため、契約前に料金体系をしっかり確認することが重要です。

コストを抑えるには、重要度の高い業務だけを税理士に任せ、簡易な処理は社内で対応する方法も有効です。

2.自社にノウハウが蓄積されない

月次決算を税理士に全面的に任せると、自社に会計知識や実務ノウハウが蓄積されにくいという課題があります。

そのため、担当者の異動や税理士との契約終了といった状況に直面した際、社内で十分に対応できない可能性があります。

月次決算を税理士に依頼する場合も、自社で会計処理を理解できる人材を育成したり、将来的に経理を担える担当者を確保したりする取り組みが必要です。

3.コミュニケーションコストが増える

月次決算を税理士に依頼する場合、帳簿内容の確認や取引の説明など頻繁なやり取りが必要となります。そのため、コミュニケーションコストが増える点には、注意が必要です。

認識の齟齬を防ぐために、共有や確認に時間がかかることもあります。

また税理士事務所の繁忙期や担当者の都合によっては、資料提出後の対応が遅れ、フィードバックに時間を要するケースもあります。

月次決算を税理士に依頼する場合の費用はどれくらい?

月次決算型の顧問料は、一般的に月額3万〜6万円程度とされています。会社の規模や面談頻度、依頼する業務内容によって金額は変動します。

月額顧問料に加えて決算申告料が発生したり、記帳代行や給与計算、年末調整などの追加費用がかかったりする場合もあるでしょう。

税理士に月次決算を依頼する場合は、契約前に業務範囲や追加費用の有無、対応スピードを確認することが大切です。

月次顧問契約で税理士に任せられること

月次顧問契約で税理士に依頼できる業務には、下記のようなものが挙げられます。

  • 月次決算報告
  • 会計処理・税務処理
  • 経営上の問題点の発見と改善策提案
  • 経理事務
  • 決算対策
  • 決算分析レポートの作成
  • 経理におけるパソコンやExcelの使い方指導
  • 法人の電子申告・電子納税対応

さらに、税理士によっては資金調達やM&Aなどの特殊業務もサポート可能です。これにより、事業の拡大や発展に役立てられます。

月次決算の主なスケジュール・流れ

ここでは、月次決算の基本的なスケジュールや手順を解説します。一般的な、業務の流れを把握しておきましょう。

1. 現金・預金の残高を確認する

月次決算では、まず会社の現金や通帳、ネットバンキングの入出金明細をもとに月末残高を確認します。

残高が帳簿上の現金預金勘定と一致しているか照合し、差異があれば原因を特定して、正確な残高を帳簿に記入してください。

2. 資産を棚卸する

月次棚卸を実施する場合は月末時点の製品や商品、材料、仕掛品などの在庫をカウントしましょう。在庫数が、帳簿残高と一致しているかどうかを確認します。

棚卸が半年または年1回の場合は、商品の入出庫記録をもとに月末残高を正しく帳簿に記入します。

3. 仮払金と仮受金を振り替える

当月に処理した仮払金や、確定済みの仮受金を帳簿に振り替え、入金や支払いの漏れがないかを確認します。これにより、正確な月末残高の把握と帳簿の整合性が保たれます。

4. 経過勘定を計上する

当月に支払いや受取がないものは、未払費用未収収益として経過勘定に計上します。なかでも、請求書の未払処理は漏れやすいため注意が必要です。

あらかじめ、対象項目や計上基準を設定しておくことで、月次決算の処理を迅速に進められます。

5. 引当金を計上する

年間の賞与や退職金の引当金を年次決算で計上する場合、月次決算では当月分の負担額を計上します。

年間費用を見積もり、1年分を12分割した金額を毎月の費用として帳簿に反映させます。

6. 減価償却費・その他の費用を計上する

減価償却対象の固定資産がある場合、年間の減価償却費を月割で計上します。

また、年払い費用や数か月ごとの支払い費用も、月次決算では月割で処理しましょう。対象となる費用には、下記のようなものが挙げられます。

月割で計上することにより、正しい期間損益計算を行うことができます。

7. 月次決算書を作成する

月次決算では、法的に必須の書類は定められていません。

そのため企業ごとに必要な資料を作成し、経営状況を把握したり今後の意思決定に役立てたりします。作成する書類には、下記のようなものが挙げられます。

自社で必要なものを選択して、作成してください。

8. 月次業績報告資料を作成する

月次決算書を作成した後は、経営層へ報告します。前月との比較資料を用意し、急な増減があれば原因を分析して共有します。

数値の変動理由や会社の現状を明確に伝えることで、経営判断や計画策定に活用できるでしょう。

月次決算を税理士に依頼した後、確認すべき数字

ここでは、税理士に月次決算を依頼した後に、確認すべき主要な数字やポイントを解説します。経営判断に活かす方法を、まとめました。

売上や仕入、給料、外注費などは正確かどうか

税理士に月次決算を依頼する場合でも、迅速に確認作業を実施する必要があります。効率を上げるためには、すべての項目を同じ精度で処理するのではなく、重要度に応じて優先順位をつけるのがおすすめです。

たとえば売上や仕入、給与、外注費などは金額も多額となるため、優先して正確な処理かの確認が必要です。一方で、保険料や水道光熱費のように毎月の変動が少ないものは、簡易処理で問題ありません。

経営判断に影響しない項目は、月次処理を省略することも可能です。

前期実績や予算と比較する

税理士に月次決算を依頼した後は、前期実績や予算と比較して分析することが重要です。

数字の確認には「ロジックチェック」と「ストーリーチェック」の2つの視点が有効です。

ロジックチェックでは、売上や費用の入力ミスなど数値の正確性を確認します。一方、ストーリーチェックでは、増減の理由や背景を明確に説明できることが重要です。

たとえば、売掛金の増加が特定取引先の入金遅延によるものというように、説明できるかを確認します。

各項目の増減の理由を分析する

月次決算では、各項目の増減理由を細かく分析することが大切です。

たとえば、広告宣伝費が増加した場合、月単位であれば「展示会の開催によるもの」等と具体的に把握できます。

年次決算では、1年分をまとめて分析するため、原因の特定が遅れやすくなります。そのため、月次決算を活用してタイムリーに経営状況を把握し、迅速な判断材料として活用することが重要です。

月次決算を税理士に依頼する場合のよくある質問

ここでは、月次決算を税理士に依頼する際によくある疑問や質問を整理しました。依頼前に知っておくべきポイントを、わかりやすく解説します。

選んではいけない税理士の特徴はありますか?

選んではいけない税理士の特徴として、下記のようなものが挙げられます。

  • ミスが多い
  • 約束を破る
  • 専門用語や難しい言葉ばかりを使う
  • 高圧的な態度
  • 的外れなアドバイス
  • 仕事が完了するまで請求額が決まらない
  • 不要な生命保険への加入を勧めてくる

とくに、ミスが多い税理士は避けるべきです。税務書類の記載や計算の誤りは、税務署からの指摘や追徴課税の原因となり、企業に大きな負担を与えます。

また、手続き上のミスは会社の信用にも影響するため、信頼できる税理士を慎重に選びましょう。

税理士の紹介料は違法ですか?

税理士紹介や紹介手数料の支払いは、違法ではありません。基本的に手数料は、紹介を受けた企業や個人ではなく、税理士側が負担します。

違法との誤解が広まった背景には、下記の税理士法の条文解釈の誤りがあります。

(非税理士に対する名義貸しの禁止)

第三十七条の二 税理士は、第五十二条又は第五十三条第一項から第三項までの規定に違反する者に自己の名義を利用させてはならない。

引用:e-Gov「税理士法 第52条、第53条」

「非税理士との提携禁止」により業務斡旋を受けられないと誤解されがちです。しかし、実際には税理士法第52条・53条に違反する斡旋の場合に限定されており、正当な紹介であれば違法にはなりません。

たとえば、知り合いから税理士を紹介してもらったケースは問題ありません。一方で、税理士が他者の作成した確定申告書等に署名をする、いわゆる名義貸しは禁止されています。

適切な税理士を探す方法はありますか?

自社に合う税理士を探す方法には、下記のようなものがあります。

  • インターネット検索
  • 知人・同業者から紹介
  • 税理士紹介会社を利用する
  • 金融機関(銀行・信用金庫)から紹介
  • 商工会議所・経営者団体などに相談
  • 異業種交流会・勉強会で知り合う
  • 税理士会の名簿・紹介制度を利用する
  • 会計ソフトが提携する「公認税理士」を利用
  • 自力で飛び込み問い合わせ

会計ソフトのマネーフォワードでは、税理士紹介サービスを提供しています。都道府県や得意業種ごとに、自社に合った税理士を見つけられるのが特徴です。このようなサービスを活用することで、スムーズに税理士を探せます。

探し方によって、かかる時間や費用、見つかる税理士の特徴が異なるため、自社の状況や重視したいポイントに応じて最適な方法を選ぶことが重要です。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

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