• 作成日 : 2025年10月6日

税務調査に必要な準備とは?書類一覧や対応のポイントを徹底解説

税務調査は、法人や個人事業主にとって避けて通れない可能性のあるイベントです。

突然の通知に慌てないためには、事前準備が欠かせません。

とくに帳簿や証憑類の整理が不十分だと余計な疑念を招き、指摘事項が増えてしまうリスクもあります。

本記事では、税務調査の概要から、準備しておくべき書類一覧、当日の対応ポイントまでを解説します。

事前に確認しておけば、落ち着いて調査に臨めるはずですので、ぜひチェックしてみてください。

税務調査とは

税務調査とは、法人や個人事業主がおこなった申告内容に誤りがないかを確認するための仕組みです。

基本的には税務署や国税局から事前に連絡が入り、数日間にわたって帳簿や領収書などが調べられます。

一方で「マルサ」が実施する強制調査は、脱税の疑いが強い一部のケースに限られます。

事前連絡なしで実施される強制調査は、通常の中小企業や個人事業主に対してはおこなわれません。

悪質な脱税が疑われる一部のケースを除けば、一般的な税務調査の多くは、事前通知のある任意調査です。

調査が終了すると、その日のうちに口頭でおおまかな指摘内容が伝えられます。

その後、正式な通知書類は通常1週間から3か月以内に届くのが一般的な流れです。

複雑な取引や確認事項が多い場合はさらに長引く可能性があるため、結果通知が遅いからといって必ずしも問題があるわけではありません。

基本的な税務調査の流れを理解しておけば、必要以上に身構える必要はないと言えます。

税務調査で準備しておくべき書類6つ

税務調査に備えて準備すべき書類は、大きく6種類に分けられます。

申告書や帳簿のような基本的な資料から、売上・経費を裏付ける証憑、従業員や資産に関する記録まで幅広く確認されます。

① 申告関係書類

税務調査でまず確認されるのが、申告関係の書類です。

法人であれば法人税消費税の申告書、さらに源泉所得税の納付書などを調査対象年度ごとに揃えておく必要があります。

申告関係書類は年度ごとにファイルにまとめ、提出時期がわかるよう時系列順に整理しておくと調査官が確認しやすくなります。

とくに源泉所得税の納付書は忘れがちな項目のひとつであり、給与や報酬を支払っている場合には必須の書類です。

個人事業主の場合は法人税は不要で、所得税の確定申告書と消費税申告書が中心となります。

青色申告をしている場合には、青色申告決算書も合わせて準備しておきましょう。

申告関係の書類は調査の土台となるため、不備があると調査全体が長引く原因になりかねません。

普段から毎年の申告書をきちんと保管しておくと、スムーズな対応につながります。

② 帳簿関係書類

税務調査では、日々の取引を記録した帳簿の提出を求められます。

具体的には、総勘定元帳仕訳帳現金出納帳などの基本帳簿が必須で、加えて売掛帳・買掛帳、固定資産台帳といった補助簿も確認対象です。

帳簿類は申告内容の裏付け資料であり、金額の整合性や取引の流れを追うために欠かせません。

最近では会計ソフトを利用して記帳する事業者も多く、調査官からはデータの検索や出力を求められるケースがあります。

そのため、取引先名や日付、金額などでスムーズに検索できるか、事前にテストしておくと安心です。

電子データをその場ですぐ提示できる体制を整えておくと調査が短時間で済みます。

帳簿の整理状況は調査官の印象にもつながるので、日頃から正確に記録し、整理しておきましょう。

③ 売上・仕入・経費関係書類

売上や仕入、経費に関する書類は、税務調査でとくに重視される項目です。

契約書、納品書請求書、領収書といった基本的な証憑は必ず揃えておきましょう。

売上・仕入・経費関係書類は取引の実在性や金額の妥当性を確認するために使われるため、ファイルごとに分類し、取引の流れが追えるよう整理しておく必要があります。

とくに決算期の前後におこなわれた取引は重点的に調べられる項目で、翌期初めの資料もチェック対象です。

売上や仕入をどの期に計上すべきかは誤解が生じやすいため、決算期前後の取引は、納品日や請求日などを証憑で説明できるよう準備しておきましょう。

また、外注費や仕入に関しては、棚卸データとの整合性も確認されます。

在庫の計上漏れや二重計上がないかを丁寧にチェックしておくと、余計な指摘を防げます。

④ 人件費・給与関連資料

人件費や給与に関する資料も、税務調査で必ず確認されるポイントです。

例としては、給与台帳や源泉徴収簿、扶養控除申告書などで、従業員ごとの支払い内容や税額計算の根拠を示す資料が挙げられます。

あわせて、社会保険料算定基礎届や住民税特別徴収通知書といった書類も調査対象に含まれます。

タイムカードや雇用契約書で人件費と実態に食い違いがないかを確認することもあるので、従業員の勤務実態を示せる資料を揃えておきましょう。

また、個人事業主の場合は、従業員を雇っていなければ給与台帳や源泉徴収簿の準備は不要です。

ただし、外注先に業務を委託している場合には、個人事業主も支払い調書や請求書などで支払い内容を説明できるようにしておくと安心です。

⑤ 棚卸・資産関係書類

商品や資産の状況を確認するため、棚卸や資産に関する資料も準備しておく必要があります。

棚卸表は清書した資料だけでなく、元のメモなど原始記録も保管しておき、決算期末の在庫数や評価額が帳簿と一致しているか確認できるようにしておきましょう。

さらに、不動産や設備、車両を購入している場合には、売買契約書や領収書も提出を求められます。

売買契約書や領収書は購入にかかった費用や資金の流れを裏付けるための資料であり、金額の妥当性を判断する根拠のひとつです。

また、保険証券やリース契約書、減価償却計算書なども調査対象となる場合があり、資産や負債の適切な処理を確認するために活用されます。

普段から契約書や計算書類をまとめて管理しておけば、調査当日に慌てず対応できるでしょう。

⑥ その他の社内資料・電子データ

事業の概要や経営体制がわかる資料や電子データも必要です。

法人の場合は会社案内のパンフレットや経歴書、役員や従業員の体制を示す資料を揃えておくと、調査官が事業の全体像を把握しやすくなります。

また、役員報酬や退職金に関する議事録、重要な契約書類も提示を求められるケースでは、経費処理や役員報酬の妥当性を確認する際の参考として使用されます。

さらに、会計ソフトのバックアップデータやクラウド上の保存データも欠かせないため、USBやクラウドの両方で用意しておくと安心です。

個人事業主の場合は、会社案内や議事録は不要で、その代わりに開業届や業務内容を説明できるメモ、主要な取引先リストなどを準備しておくとスムーズです。

税務調査における準備のポイント

税務調査では、書類の準備に加えて「どう整理するか」「誰が対応するか」といった段取りも重要です。

ここでは調査を円滑に進めるための3つのポイントを紹介します。

書類の整理・点検をする

税務調査では、必要な書類を揃えるだけでなく、調査官が確認しやすいように整理しておきましょう。

申告書類や帳簿、契約書などは種類ごとにファイルやバインダーでまとめ、見たい資料がすぐ取り出せる状態にしておくとスムーズです。

整理が不十分だと、調査に時間がかかり不要な疑念を持たれる可能性があります。

近年は会計ソフトでの管理が一般的になっており、調査官から取引日や金額、取引先などで検索を依頼されるケースも少なくありません。

操作が不安な場合は、事前に出力した資料を日付順や取引先別にまとめておくと安心です。

さらに、原本の紛失や汚損に備えてコピーを作成しておけば、税務署側からコピーの提出依頼があった際にも柔軟に対応できます。

日常的に書類を整理・点検する習慣を持っておけば、調査当日に慌てず、スムーズに対応できるでしょう。

調査当日の打ち合わせをする

税務調査当日は、限られた時間で効率的にやり取りする必要があるため、誰が調査官の質問に答えるのかを事前に決めておきましょう。

社長、経理担当者、顧問税理士など、役割を事前に整理しておけば当日の対応に余裕をもって臨めます。

とくに社長が直接答えるべき経営方針や主要取引の背景などと、経理担当が答える帳簿上の処理内容は切り分けておくとスムーズです。

また、調査官からの想定質問をリスト化し、主要な取引や処理の根拠を確認しておけば、答えに詰まる場面を防げます。

複数人がそれぞれ異なる答えをしてしまうと、不信感を招くおそれがあるため、窓口を一本化する意識も重要です。

事前打ち合わせによって、落ち着いて調査に臨む体制を整えられます。

不明点は税理士に事前相談をする

税務調査では、過去の取引や会計処理の細かい部分まで確認される可能性があります。

担当者だけではすぐに答えられないケースも多いため、あらかじめ税理士に相談しておくと安心です。

税理士に事前に調査内容を想定してもらい、税務処理の根拠や判断理由を整理しておくと、調査官にも納得感のある説明ができます。

調査当日も税理士が同席していれば、専門的な質問にも迅速に対応でき、事業者側の心理的な負担も軽減されます。

調査を円滑に進めるためには、普段から顧問税理士と密に連携し、必要なサポートを受けられる関係を築いておきましょう。

税務調査準備に関するよくある質問

税務調査の準備では、通知の時期や対象期間、修正申告の扱いなど、不安に思う点が少なくありません。

ここでは、実際の調査対応で多くの方が不安に思う代表的な質問を取り上げて解説します。

税務調査の準備期間はどれくらい?

税務調査は、一般的に実地調査の2週間前ごろに税務署から連絡が入るケースが多いとされています。

とはいえ、法律で通知の時期が決まっているわけではないため、実際には「いつ来るのか」ははっきりわかりません。

数日前に突然案内が届く場合もあれば、ごくまれに通知なしで実施される場合もあります。

通知から当日までの期間は短いため、帳簿や証憑が多い事業者の場合、直前の準備だけでは間に合わない可能性があります。

普段から申告書や領収書などを整理しておき、通知が来てもすぐに書類を取り出せる体制を整えておきましょう。

税務調査は過去何年分が対象になる?

原則として税務調査の対象となるのは過去3年分の資料で、重加算税の対象になるような悪質なケースでは最長7年分まで遡って確認されます。

帳簿や証憑類は法律で7年間の保存義務が課されているため、調査では古い契約書や請求書などを求められる可能性もあります。

場合によってはさらに過去の取引まで整合性を確認されるケースもあるので、直近の資料だけでなく、7年分を保管・整理しておくのが安全です。

普段から書類を年度ごとにまとめておけば、必要な資料をすぐに提示でき、調査もスムーズに進みます。

修正申告は事前に済ませたほうがよい?

申告内容に明らかな誤りがある場合は、税務調査が始まる前の自主的な修正申告が望ましい対応です。

自主的に修正すれば、過少申告加算税などのペナルティが軽減される可能性があります。

一方で、調査が始まってから指摘を受けて修正した場合は、加算税の負担が重くなるケースも少なくありません。

ただし、誤りかどうか判断がつかないまま修正してしまうと、かえって混乱を招く場合があります。

そのため、修正の必要性やタイミングに迷ったら、税理士に相談して判断を仰ぐのが安心です。

専門家の助言を得て正しく対応すれば、余計なリスクを避けられます。


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