- 作成日 : 2025年9月3日
経理の記帳とは?業務の基本と効率的なやり方を初心者にもわかりやすく
経理の記帳は、会社のすべてのお金の動きを記録する、経理担当者の基本的な業務です。日々の通帳記帳や領収書の整理も、この大切な作業の一部となります。記帳のやり方がわからなかったり、作業を怠ったりすると、法人税等の確定申告で困るだけでなく、会社の信頼にも影響しかねません。この記事では、会社の経理担当者向けに記帳とは何か、帳簿の付け方の基本から効率化のコツまで、わかりやすく解説します。
目次
経理の記帳とは?
経理が行う記帳とは、会社で発生するすべてのお金の動きや取引を、会計ルールに従って帳簿に記録していく一連の業務を指します。なぜこの地道な作業が会社の基本となるのか、その理由と役割をみていきましょう。
記帳業務は会社の全取引を帳簿に記録する仕事
経理担当者が行う記帳業務は、日々の売上や仕入、経費の支払いといった取引の一つひとつを、証拠書類(請求書や領収書など)にもとづいて帳簿へ記録していくことです。この記録が、会社の決算書や法人としての確定申告書の元となる、すべての会計情報の源泉となります。
記帳の根拠となる会計ルールと関連する法律
経理の記帳は、一般に公正妥当と認められたルールに従う必要があります。その中心となる考え方が「企業会計原則」です。これには、すべての取引を正しい手順で記録しなければならないという「正規の簿記の原則」などが含まれており、経理の記帳の基本となっています。 また、記帳は以下のような法律によっても義務付けられています。
会社法
株式会社などの法人は、会社法にもとづき、会計帳簿を作成し、10年間保存することが定められています。これは、会社の財産や損益の状況を明らかにするためです。
出典:会社法 第四百三十二条(会計帳簿の作成及び保存)|e-Gov法令検索
法人税法
税務署は、法人税法にもとづいて税額を計算します。そのため、企業は取引を記録した帳簿や書類を原則7年間保存する義務があります。
消費税法
とくにインボイス制度開始後は、消費税の仕入税額控除を受けるために、ルールに則った請求書の保存と、それにもとづく記帳が求められます。
なぜ経理は正確な記帳をしなくてはならないのか
経理部門が法律やルールに則って正確な記帳を行うことには、大きく2つの目的があります。一つは「外部への報告」のためです。株主や金融機関、税務署といった利害関係者に対し、法人税の申告などを通じて会社の財産や損益の状況を正しく報告する義務があり、その大元となるのが帳簿だからです。
もう一つの理由は「内部での経営管理」のためです。正確な帳簿は、経営陣が会社の現状を数字で把握し、予算管理や将来の経営戦略を立てる上で、なくてはならない情報となります。
経理の記帳をしないとどうなる?(法的・経営的リスク)
もし、記帳を正しく行わなかったり、怠ったりすると、会社はさまざまなリスクを負うことになります。法的な面では、正しい納税ができないため、追徴課税や延滞税といったペナルティを課されるおそれがあります。法人の青色申告の承認が取り消されることもあるでしょう。経営的な面では、金融機関からの融資が受けにくくなることや、自社の経営状態がわからず、気づいたときには手遅れになる、といった事態に陥るかもしれません。
経理の記帳の基本的なやり方と日々の流れ
経理担当者の記帳業務は、日々の地道な作業の積み重ねです。ここでは、一般的な一日の業務の流れと、とくに間違いやすいポイントの処理方法について解説します。
経理担当者の一日の流れ(証憑の収集から入力まで)
記帳業務は、まず取引の証拠となる書類(証憑:しょうひょう)を集めることから始まります。営業担当者が使ったレシートや、取引先から届いた請求書やデータなどを収集し、内容が正しいかを確認します。その後、会計ソフトなどを使って、各取引を仕訳入力していくのが基本的な流れです。
「通帳記帳」とインターネットバンキング取引の処理方法
銀行取引の記帳は、ひと昔前までは定期的に通帳へ印字(通帳記帳)し、その内容を帳簿に転記していました。現在では、インターネットバンキングの取引明細データをCSVファイルなどでダウンロードし、会計ソフトに直接取り込む方法が主流です。これにより、手入力の手間とミスを大幅に削減できるようになりました。
現金取引と小口現金の記帳の仕方
会社に置いてある現金(小口現金)から、交通費や備品代などを支払うこともあります。この場合、支払いのたびに領収書と引き換えに「出金伝票」を作成し、それにもとづいて記帳を行います。そして、帳簿上の現金残高と、実際の現金残高が一致するかを定期的に確認することが大切です。
経理の記帳で扱う主な帳簿の種類
経理の記帳で使う「帳簿」には、法律で作成が義務付けられているものと、任意で作成するものがあります。会社の取引内容を正確に記録するため、それぞれが大切な役割を担っています。
会社の根幹となる「主要簿」
主要簿は、すべての取引を記録する中心的な帳簿です。これがないと決算書が作れないため、会社法で作成が義務付けられています。
より詳細を記入する「補助簿」
補助簿は、主要簿の内容をより詳しく記録するための補助的な帳簿です。こちらの作成は任意ですが、事業内容に合わせて用意すると、お金や取引の管理がぐっと楽になります。会社や事業の状況に応じて、必要なものを選択して作成しましょう。
経理担当者が知っておきたい記帳の方式
経理担当者として仕事をする上では、帳簿の付け方のルールである「簿記」の基本的な考え方を理解しておくことが求められます。主に2つの方式があります。
基礎となる「単式簿記」の考え方
単式簿記は、お小遣い帳のように、一つの側面からお金の動きを記録するシンプルな方法です。たとえば「交通費として現金500円を支払った」という事実のみを記録します。会社の会計では通常使われませんが、簿記の基本的な考え方として知っておくとよいでしょう。
企業の正式なルール「複式簿記」の仕組み
複式簿記は、すべての会社で採用されている正式な記帳ルールです。一つの取引を「原因」と「結果」など、複数の側面から捉えて記録します。たとえば「交通費が500円発生した(原因)結果、現金が500円減少した(結果)」というように記録することで、お金の動きとその理由を同時に把握できます。この仕組みにより、帳簿の正確性を保ち、貸借対照表や損益計算書といった財務諸表を作成することができます。
経理の記帳でよくある間違いと防止策
日々の記帳業務では、注意していても思わぬ間違いが起こることがあります。よくある失敗例とその対策を知っておくことで、ミスを未然に防ぎ、手戻りの少ないスムーズな業務を目指しましょう。
勘定科目の選択ミス
経費の内容に合わない勘定科目を選んでしまうのは、よくある間違いです。これを防ぐには、社内で勘定科目のルールブックを作成し、誰が処理しても同じ仕訳になるように標準化することが有効です。
日付や金額の入力ミス
単純なタイプミスですが、桁を一つ間違えるだけで大きな影響が出ます。会計ソフトの導入で自動取込を進めるほか、手入力の際は入力後に必ず証憑と画面を見比べて再確認する、二重チェックの体制を作るなどの対策が考えられます。
現金残高が合わない(現金過不足)
小口現金を扱っている場合に起こりがちなのが、帳簿上の残高と実際の現金が合わない問題です。これを防ぐには、現金の出し入れがある都度記帳し、一日の終わりに必ず残高を確認する「日次締め」を徹底することが基本となります。
消費税の計上ミス(課税・非課税の混同など)
とくにインボイス制度導入後は、消費税の扱いがより複雑になっています。課税・非課税・不課税の区別や、軽減税率の対象品目などを正しく理解しておくことが求められます。不明な点は、国税庁の資料を確認したり、顧問税理士に相談したりする習慣が大切です。
経理の記帳業務を効率化するためのポイント
日々の記帳業務は、やり方を工夫することで、より効率的に、そして正確に進めることができます。ここでは、経理部門全体の生産性を上げるための3つのポイントを紹介します。
会計ソフトの導入とクラウド化を進める
まだExcelなどで記帳管理をしている場合、会計ソフトの導入を検討しましょう。とくにクラウド型の会計ソフトは、銀行取引やクレジットカードの明細を自動で取り込み、仕訳を提案してくれる機能があります。これにより、入力作業が大幅に削減されます。また、複数人で同時にアクセスできるため、在宅勤務など多様な働き方にも対応しやすくなります。
経費精算システムや法人カードを活用する
従業員の経費精算は、申請する側も承認する側も手間がかかる業務の一つです。経費精算システムを導入すれば、申請から承認、支払いまでの流れが電子化され、仕訳も自動で作成されるため、経理担当者の負担を大きく減らせます。また、法人カードを従業員に持たせることで、利用明細がデータで連携され、立替払いの手間もなくなります。
定期的な月次決算で業務を平準化する
年に一度、決算期末にまとめて記帳や整理を行うのではなく、毎月決算を行う「月次決算」の体制を整えることをおすすめします。毎月帳簿を締めることで、早期に間違いを発見できるだけでなく、期末に作業が集中するのを防ぎ、業務量を平準化できます。これは、年に一度の法人税申告に向けた準備をスムーズに進めることにもつながります。
経理の記帳に必要なスキルと関連資格
経理の記帳業務を正確かつスムーズに行うためには、一定のスキルや知識が求められます。ここでは、業務レベルに応じて求められるスキルと、キャリアアップに役立つ関連資格について解説します。
日常的な記帳業務で求められるスキル
日々の記帳業務をこなす上では、まず簿記3級程度の知識があるとよいでしょう。これは、複式簿記の基本的な仕組みや勘定科目を理解し、仕訳ができるレベルです。また、会計ソフトを操作するための基本的なPCスキルや、数字の正確性を担保するための集中力、細かい点に気づく注意力も大切になります。
月次決算や年次決算を担当するためのスキル
月次決算や年次決算まで担当するレベルになると、簿記2級程度の知識が求められます。商業簿記に加えて工業簿記の知識も含まれるため、製造業など、より複雑な会計処理にも対応できるようになります。減価償却や引当金といった、決算整理仕訳に関する深い理解も必要です。
経理のキャリアアップに役立つ関連資格
記帳業務からさらにステップアップし、経理の専門家としてキャリアを築いていく上では、以下のような資格が役立ちます。
- FASS検定(経理・財務スキル検定):
経理・財務分野における実務知識とスキルを客観的に測定する検定です。自身のスキルレベルを把握するのに役立ちます。 - 給与計算実務能力検定:
給与計算に関する専門知識や実務能力を証明する資格です。人事・労務領域にも関わる経理担当者にはとくに有効です。 - 税理士・公認会計士:
これらは経理・会計分野における最上位の国家資格です。取得すれば、税務や監査の専門家として、より高度な業務に携わることができます。
正確で効率的な経理の記帳が会社の信頼を築く
経理部門が行う記帳は、データ入力作業ではありません。それは、会社の活動を数字という共通言語で記録し、社内外の関係者への説明責任を果たすための、きわめて重要な業務です。日々の正確な記帳の積み重ねが、適正な税務申告を可能にし、金融機関からの信頼を得て、そして経営陣が的確な意思決定を下すのに役立ちます。
クラウド会計ソフトなどの便利なツールも活用しながら、自社の記帳業務のやり方を見直し、会社を支えるより戦略的な経理部門を目指してみてはいかがでしょうか。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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