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  3. 外注費と給与の判定は契約書があれば大丈夫?税務調査のポイントを解説
  • 作成日 : 2025年4月30日

外注費と給与の判定は契約書があれば大丈夫?税務調査のポイントを解説

監修:岡 和恵 (税理士 / CFP)

外注費と給与は、契約書が違うから大丈夫、と思っていませんか?契約書で「業務委託」と書かれていても、働き方の実態によっては「給与」と判断される場合があります。税務調査では外注費と給与の区別が重要なチェックポイントです。判断を誤ると追徴課税などのリスクを招くこともあります。この記事では、外注費と給与の違い、税務調査でのチェックポイント、仕訳の方法、インボイス制度との関係などを、具体的な事例を交えてわかりやすく解説します。

目次

  • なぜ外注費と給与の区別が重要なのか?
  • 外注費と給与の基本的な違い
  • 税務調査での外注費と給与の判定ポイント
    • 1. 代わりの人が仕事できるか
    • 2. 時間や場所の指定があるか
    • 3. 指示や監督があるか
    • 4. 報酬の支払いタイミング
    • 5. 使う道具や設備は誰が用意するか
  • 外注費を給与と判定された際のリスク
    • 源泉所得税が徴収される
    • 消費税の仕入税額控除が使えなくなる
    • 追徴課税がかかるおそれ
    • 社会保険料の未加入が指摘される
    • 税務署からの信頼を失う
  • 外注費と給与の判断に迷うケースと対策
  • 外注費と給与の違いを正しく見分けよう

なぜ外注費と給与の区別が重要なのか?

多くの会社では「業務委託契約書」や「請負契約書」があれば、外注費として問題ないと考えているかもしれません。たしかにこうした契約書は、仕事を依頼したという事実を示す上で大事な書類です。しかし、税務署が外注費か給与かを判断するときには、契約書の書き方だけを見ているわけではありません。実際にどのような働き方をしていたのか、仕事の進め方や報酬の支払い方など、「実態」がどうだったかが重要視されます。たとえ書面上は「業務委託契約」となっていても、働いている人が会社から指示を受けて決められた時間に勤務していたような場合には、それは「給与」とみなされる可能性があります。

このように、契約書の有無だけで外注費として扱えるとは限りません。税務上の区別は、書類と実際の働き方が一致していることが前提になります。契約内容と現場での運用にずれがあると、それが問題視されるおそれがあるのです。外注費として会計処理するためには、実務上でも契約内容に沿った働き方が行われているかどうかの確認が欠かせません。

外注費と給与の基本的な違い

外注費と給与は、どちらも仕事に対して支払われるお金ですが、その仕組みや取り扱いは異なります。

給与とは、会社と従業員が「雇用契約」を結び、その契約に基づいて働いたことに対して支払われる報酬のことです。会社は、毎月決まった日に給与を支払い、その中から所得税や社会保険料、住民税などを差し引いて支払う義務があります。給与は「労働時間」や「出勤日数」に応じて計算され、労働の対価として給与が支払われるのが一般的です。また、給与には消費税はかかりません。(不課税取引)

外注費とは、会社が外部のフリーランスや個人事業主、あるいは他の会社に仕事を依頼し、その仕事の成果に対して支払う報酬です。この場合は「業務委託契約」や「請負契約」といった形で契約が交わされ、依頼された側は会社の指示に従うのではなく、自分の裁量や責任において仕事を進めます。仕事の進め方や時間の使い方は基本的に自由で、あらかじめ決められた成果物やサービスの納品等が報酬の支払い条件となります。

外注費には原則として消費税がかかります。また、外注先がインボイス(適格請求書)を発行する事業者であれば、会社側はその消費税分について「仕入税額控除」を受けられます。つまり、消費税を支払った分を売上に係る消費税から差し引ける仕組みです。

このように、給与と外注費は、契約の内容、働き方、報酬の支払い方法、消費税の有無といった点で根本的に違います。税務署は、こうした違いをしっかり確認し、「実際の働き方」が給与に近いのか、外注に近いのかを見て判断します。そのため、見た目の契約内容だけでなく、実態に即した区別がされているかどうかが非常に重要になります。

税務調査での外注費と給与の判定ポイント

税務調査では、外注費と給与の区分について、国税庁が公表している以下の5つの判断基準を中心に、様々な点がチェックされます。

1. 代わりの人が仕事できるか

外注であれば、依頼された人が都合が悪い場合、別の人が代わって仕事をしても差し支えないとされています。これは外注先が自らの責任で業務を遂行できる立場にあるからです。給与であれば、本人が出社して働くことが前提です。

2. 時間や場所の指定があるか

外注の場合、働く時間や場所についての拘束は基本的にない場合が多いと言えます。成果物を納品すればよいため、勤務時間の管理は行われないのが一般的です。給与では出勤時間や勤務場所が明確に決められており、遅刻や早退なども管理対象になります。

3. 指示や監督があるか

外注は原則として委託元である会社とは独立した立場にあり、仕事の進め方や手順は自ら決定します。報酬を支払う会社側が詳細な指示や監督を行うことは原則として想定されていません。これに対し、給与では上司からの指示や進捗確認など、日常的な管理のもとで業務を進めることになります。

4. 報酬の支払いタイミング

外注費は、納品や業務完了など、契約に基づいた「成果」に対して報酬が支払われます。例えば、業務完了が請求要件となる請負契約においては業務が完了しない場合は、原則として報酬は発生しません。一方で、給与は、労働時間や出勤日数に応じて定期的に支払われ、成果に関係なく報酬が発生します。

5. 使う道具や設備は誰が用意するか

外注先は業務を独立して行う立場のため、自身でパソコンや工具、消耗品などを準備するのが一般的です。これに対して給与の場合は、会社が必要な道具や設備を用意し、従業員がそれを使って業務を行うスタイルが基本です。

これらの違いをまとめたものが以下の表です。

項目外注費給与
契約形態業務委託契約(請負契約、委任契約、準委任契約)雇用契約
指揮監督原則としてなしあり
時間的拘束原則としてなしあり
代替性原則として可能原則として不可
未完成時の報酬原則としてなし(請負契約)原則としてあり
材料・用具受注者負担が原則支払者(会社)が提供
消費税課税仕入れ不課税
源泉徴収法人への支払いは原則不要、個人への支払いは特定の報酬のみ必要原則として必要
社会保険加入義務なし加入義務あり
請求書発行される原則としてなし

これらの要素は、一つひとつが決定的な証拠になるわけではなく、総合的に判断される点に注意が必要です。契約書では業務委託とされていても、実態が給与に近ければ「給与」と認定されることがあります。日常の運用や管理方法を含めて、契約の内容と実際の働き方が一致しているかを常に確認しておくことが求められます。

外注費を給与と判定された際のリスク

外注費として処理していた支払いが、税務署から給与であると判断された場合、企業にはさまざまなリスクが発生します。

源泉所得税が徴収される

外注費として処理していた支払いが給与と判断されると、本来差し引くべきだった源泉所得税の徴収漏れが指摘されます。過去の分をまとめて支払う必要があるほか、延滞税や不納付加算税といったペナルティも発生します。源泉徴収票の再発行手続きも発生する他、従業員においては確定申告(期限後申告等として)で調整する必要もあります。

消費税の仕入税額控除が使えなくなる

給与は消費税の課税対象外です。もし外注費として消費税の仕入税額控除を適用していた場合、それが認められなくなり、控除した分の消費税をあとから納める必要が出てきます。(修正申告)

追徴課税がかかるおそれ

年間で大きな外注費を計上していた場合、そのすべてが給与と判断されると、所得税または法人税・消費税などとともに延滞税・加算税を含めて相当規模の負担が発生するケースもあります。資金繰りにも影響する可能性があります。

社会保険料の未加入が指摘される

給与と判断されると、従業員として社会保険に加入させる必要があったと見なされます。過去にさかのぼって未納分の社会保険料の支払いを求められることがあり、こちらも企業の負担となります。

税務署からの信頼を失う

一度「給与として扱うべきだった」と指摘されると、場合によっては税務署からの信用が下がり、以降の税務調査が厳しくなる傾向も考えられます。帳簿の整備や契約管理に対する審査も細かくなる可能性があります。

外注費と給与の判断に迷うケースと対策

外注費と給与の判断が難しいケースは少なくありません。たとえば、以前は従業員として雇用していた人を、退職後に外注として業務委託契約を結ぶケースでは、契約が変わったとしても、実際の働き方が従業員と変わらない場合には、税務上「給与」と判断されるおそれがあります。

また、契約書では業務委託となっていても、実際には会社が仕事の内容や時間を細かく管理しているようなケースもあります。特定の企業からの仕事しか受けていない「専属外注」のような働き方も、会社の指揮命令を受けるなどの事実があれば給与に近いと判断されることがあります。

ほかにも、建設業における一人親方への支払いや、運送業でのドライバー業務など、業種によって判断が分かれやすい事例もあります。

こうした判断に迷うケースでは、以下のような対策をとっておくことが大切です。

  1. 契約書で業務範囲や成果物等を明確に定義する:請負契約においては労働時間に対する報酬ではなく、完成した成果物に対して支払う内容であることを記載します。
  2. 従業員の服務規定のような拘束を避ける:勤務場所、勤務時間等の詳細な指定による従業員の服務規程のようなルールを設けないようにします。
  3. 業務の進め方を外注先の裁量に任せる:作業の手順や方法について、企業が細かく指示しないように事前に業務内容を確認します。
  4. 業務に必要な材料や工具は原則として外注先が用意する:企業側が提供する場合は、その理由を明記できるようにしておきます。
  5. 報酬は契約書のとおり、成果物やサービス・プロジェクト等の完了に基づいて支払う:契約内容の要件に沿ったタイミングで報酬等を支払うようにします。
  6. 外注先から請求書を発行してもらう:外注費として処理するには、必ず請求書をもらうようにします。契約の形式としては、注文書・注文請書等によるケースもあります。
  7. 外注先を従業員と同じように扱ったりしない:外注先は独立した事業者として接する必要があります。
  8. 外注化の理由を明確にしておく:その仕事をなぜ社内で行わずに外注したのかを第三者に説明できるようにしておきます。
  9. 税理士に相談する:判断が難しいときは、専門家に相談するのがよいでしょう。

こうした点を意識しておけば、外注費と給与をより正確に判断でき、税務上のリスクも避けやすくなります。

外注費と給与の違いを正しく見分けよう

契約書に「業務委託」と記載されていても、実際の働き方によっては給与と判断されることがあります。形式だけでなく実態をもとに税務署は判断するため、誤った処理をしていれば追徴課税や社会保険料の遡及請求につながるおそれがあります。外注費と給与の判断に迷う場合は、税務署や経験のある税理士に相談しましょう。

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  • 監修:岡 和恵 (税理士 / CFP)

    大学卒業後、教職と専業主婦を経てシステム会社に入社。経理や会計システム開発に携わり、税理士・FP資格(CFP)を取得。
    2019年税理士事務所開業後は、個人・法人の税務全般に幅広く対応。ERP技術者としてのIT知見を活かしたサポートに自信があり、個人事業主の確定申告から法人の決算までトータルで支える。現在は実務の傍ら執筆や監修も手掛け、会計・税務のあらゆる側面からクライアントに併走している。ビジネステンプレート集の監修も担当。

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