- 更新日 : 2025年4月23日
5月決算の理由は?メリットやおすすめの事業者、決算月の決め方を解説
会社の決算月は、事業主が自由に決定できるものです。本記事では、なかでも5月決算がおすすめの事業者やその理由について紹介します。
あわせて、決算月の決め方や決算月はいつがいいのか、決算月を変更する方法などについてもまとめたので、ぜひ参考にしてください。
目次 [非表示にする]
5月決算がおすすめな事業者とその理由
決算日とは、企業の事業年度の最終日のことを指します。通常は月末に設定されることが多いため、その月を決算月と呼ぶことが多いです。決算日を決算期と呼ぶこともあります。
会社の決算月は、事業主が自由に決定することが可能です。法人を設立する際、決算日を決めます。企業には1年以内の任意の期間で区切り、収支をまとめて関係者に報告する決算を行う必要があります。この区切った期間が、事業年度です。
自由に決められる決算月ですが、5月決算がおすすめの理由には、以下の2点が挙げられます。
- 節税対策を検討しやすい
- 確定申告時期に、税理士に相談しやすい
それぞれ以下で、詳しく見ていきましょう。
節税対策を検討しやすい
1つめの理由として、節税対策を検討しやすいことが挙げられます。夏が繁忙期の業種であれば、5月決算は年間の売上が見込みやすくなるでしょう。
たとえば、アイスクリーム専門店などは7〜8月の夏が繁忙期となり、年間売上の大半が計上されるのが年度初めです。それにより、法人税の見込みもたてやすく、年度末にゆとりをもって節税対策を検討できるようになります。
確定申告時期に、税理士に相談しやすい
2つめの理由には、確定申告時期に税理士に相談しやすいことが挙げられます。5月決算の法人の場合、確定申告の期限は7月です。
7月は税理士の主要な税務業務が少ないため、税理士と比較的時間をかけて申告の相談ができるでしょう。
決算月の決め方は?
決算月は、期間が1年を超えなければ事業主が自由に決められます。ここでは、決算月を決める際の押さえておきたいポイントを紹介します。
主なポイントは、以下の4つです。
- 支出の多い時期を避ける
- 売上が多い月を年度初めに設定する
- 納税義務免除期間を最大化する
- 社内の人的リソースを考慮する
それぞれ詳しく見ていきましょう。
支出の多い時期を避ける
決算月を決めるときは、支出の多い時期を避けるようにするとよいでしょう。その際に重要なのが、資金繰りからの逆算です。
5月末を決算期末とすると、7月末に法人税や地方税、消費税などの税金を納める必要があります。仕入代金の支払いやボーナスの支給など、現金が不足する時期に納付期限が重なると、資金繰りが悪化する恐れがあります。
そのため、支出があまりなく、会社の資金が潤沢になっている時期が支払いになるように意識して決算月を決めることも大切です。
売上が多い月を年度初めに設定する
節税を考慮するのであれば、決算月を決めるときには、売上が多い月を年度初めにするのも一つの手です。
売上が多い時期を年度初めに設定できれば、その事業年度の利益予測も容易になります。この場合、売上のピークを過ぎてから節税の対策を練ることが可能です。
事業者の中には、季節による売上変動が大きい業態もあるでしょう。観光産業やレジャーでは、夏の売上が多くなる傾向にあるため、その場合には、決算書の見栄えを考えて売上が多い9月を決算月にするといったことが考えられるでしょう。
納税義務免除期間を最大化する
消費税の課税を減らすうえでは、消費税の免税期間を考慮して決算月を決めることも大切です。資本金1,000万円未満の会社の場合は、開業してから最初の2期目まで消費税納税が免除されます。ただし、免税期間が2年間というわけではなく2事業年度であることは理解しておきましょう。
免除期間を長くする方法は、会社設立月からもっとも遠い時期を決算月にすることです。たとえば、1月設立の場合は12月、4月設立であれば翌年3月にすれば、1期目を1年間に設定できます。もし、10月に開業して3月を決算月にした場合、1事業年度目の免税期間は6ヶ月間しかありません。
そのため、1期目が12ヶ月になるように決算月を設定して、消費税免税を最大限受けられるようにするとよいでしょう。
なお、インボイス制度のもと課税事業者になることを選択した場合、免税期間はなくなるため、免税期間を考慮した決算月の設定は不要です。
社内の人的リソースを考慮する
決算月を決める際には、社内の人的リソースも考慮する必要があります。業務の繁忙期と決算処理業務が重なると、事業に支障をきたしてしまうこともあるためです。
法人税の申告期限は、決算期末から2ヶ月間です。その間、決算の処理業務に追われることになるでしょう。
そのため、あらかじめ繁忙期がわかっている会社であれば、繁忙期を避けて決算月を設定する方法も有効です。
また、繁忙期と決算期が重なると利益予測が立てにくく、利益が予想外に増えて納税額が増えたり、逆に利益が予想外に低く納税額が減ったりとすることもあり得ます。その場合、節税対策を事前に行う余裕がなく、利益の回復を図る余裕もなくなるでしょう。
決算期から2ヶ月は決算処理で忙しくなるため、繁忙期とかぶらないようにするのがおすすめです。
法人の決算が多いのは3月・9月・12月
決算月の決定は会社設立時に行いますが、決算月については企業の判断に委ねられています。実際には、何月を決算月にしている法人が多いのでしょうか?
国税庁が公表している令和4年度(2022年度)の「決算期別の普通法人数」によると、圧倒的に3月決算(518,960)の法人が多く、次いで9月(316,889)、12月(304,878)決算の法人が多くなっています。
決算月に関して詳細を知りたい人は、次の記事が参考になります。
決算月を変更する方法
決算月をいつに設定するかで、事業主にとっての影響も変わります。では、決算月は変更できるのでしょうか?
決算月は変更可能です。決算月を変更する際に必要な手続きは次のとおりです。
- 定款を変更する
- 税務署等へ異動届を提出する
まず、決算月を変更する際には定款を変更する必要があります。決算月が変わるということは、会社の事業年度が変わるということです。多くの会社では、事業年度を定款に記載しているため、決算月を変えるためには定款も変更しなければなりません。
また、株式会社の場合、定款を変更するには、原則として株主総会での特別決議が必要です。特別決議後に株主総会の議事録を作成して、変更内容を定款へ反映させます。その際、会社設立時のような公証役場での定款認証は必要ありません。
合同会社において定款に記載した事項を変更するためには、原則として全社員による決議と承認が必要です。
株主総会の特別決議を経て、定款の事業年度を変更したら、所轄の税務署や都道府県税事務所、市区町村役場に異動届出書を提出しましょう。届出書とあわせて、定款の写しや株主総会の議事録などの提出を求められることがあるため、注意が必要です。
5月決算は夏が繁忙期の企業におすすめ
会社の決算月は、事業主が自由に決定できるものです。ただし、決算月を決める際には、支出の多い時期を避け、売上が多い月を年度初めに設定するといったようなポイントを押さえておく必要があります。
節税対策を検討しやすく、確定申告時期に税理士に相談しやすいといったメリットがある5月決算は、夏が繁忙期の企業におすすめです。決算月は、事業内容によっては会社に大きな影響を与えます。もし、決算月を変更したいと思った場合は、本記事で解説した内容を参考にして、変更してみてください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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