- 更新日 : 2025年2月19日
旅費交通費とは?交通費との違いや仕訳の解説
業務上で発生する従業員の移動にともなう費用は、「旅費交通費」や「交通費」といった勘定科目を使って仕訳を行います。旅費交通費と交通費にはどのような違いがあり、具体的にどのような費用を指すのでしょうか。この記事では、旅費交通費と交通費の違いのほか、それぞれの内容、旅費交通費の仕訳や税務上の取扱いについて解説していきます。
旅費交通費とは
旅費交通費とは、移動や出張などにかかった旅費や交通費を指します。広い範囲の費用や手当が旅費交通費に区分されます。
出張費
次のように、出張にかかった移動費や宿泊費、出張手当は、旅費規程(出張手当)などの社内規程等を作成し、その規程に基づき支出している場合は旅費交通費で計上します。
- 新幹線乗車料
- 航空券代
- タクシー代
- レンタカー代
- 宿泊費
- 出張手当 など
海外渡航費
海外渡航に関わる移動費や宿泊費、出張手当なども、旅費規程等に基づき旅費交通費に区分されます。ただし、損金算入できるのは業務上必要と認められる部分についてのみです。海外渡航時に同伴する親族の渡航費用など、私的な要素を含む分は旅費交通費ではなく、給与などに該当します。
- 航空券代
- タクシー代
- 電車代
- 宿泊費
- 出張手当 など
転勤費用
転勤者に支給される支度金など、業務上の必要性があるものに関しては、旅費交通費に含められます。
交通費とは
交通費は、通勤や移動などでかかった移動費をいいます。
通勤費
従業員の居住地から勤務地までの移動に必要な費用を通勤費といい、経理上は交通費として処理をします。
- 通勤区間の定期券代
- 通勤区間のバス代
- 自家用車で通勤する場合などの通勤手当 など
移動費
勤務地から近隣の取引先へ公共交通機関を使って移動した場合など、業務上必要な移動にかかった費用を移動費といい、交通費の勘定科目を用いて処理します。
- 電車代
- バス代
- タクシー代
- 新幹線乗車料
- 航空券代
- 駐車場代 など
旅費交通費と交通費の違い
旅費交通費と交通費を区分して経理する場合、旅費交通費に含まれるのは出張や海外渡航など遠方への移動に関する旅費や移動費です。交通費には、通勤費や取引先への移動など日常的に発生する移動のための費用が含まれます。
なお、旅費交通費と交通費を分けず、「旅費交通費」としてまとめて会計処理を行うこともあります。この場合は、交通費に含まれるものも合わせて旅費交通費に計上します。
旅費交通費の仕訳例
旅費交通費と交通費の違いでも説明したように、会社によって、旅費交通費と交通費を区分して会計処理をする場合と、旅費交通費にまとめて会計処理する場合があります。ここでは、旅費交通費としてまとめて処理するケースで、旅費交通費に関わる仕訳例をいくつか取り上げます。
(仕訳例1)従業員の通勤に関わる区間の定期券代10,000円/1ヶ月分を普通預金より支払った。
従業員の通勤による定期券代1ヶ月分 (A-B区間) |
仕訳例1のように、「交通費」を区分しない場合は、通勤にかかる費用も旅費交通費とします。
(仕訳例2)従業員の現場立ち合いのための出張にともない、ホテルを予約し、宿泊代として20,000円を会社のクレジットカードで支払った。
現場立ち合いのための出張にともなう宿泊費 (○○ホテル) |
(仕訳例3)従業員の出張に関して、会社規定により、出張手当として5日分の5,000円を現金で支給した。
出張手当5日分 (8/5~8/10の現場立ち合いのための出張分) |
仕訳例2や仕訳例3のように、出張に関わる費用は、実費の宿泊費や移動費だけでなく、手当分も旅費交通費として処理します。
(仕訳例4)従業員の出張にともない、仮払金50,000円を現金で支給した。
出張にともなう仮払い (8/5~8/10の現場立ち合いのため) |
(仕訳例5)従業員が出張から帰り経費の内訳が明らかになったため、仮払金の精算を行った。なお、内訳は、移動費40,000円、取引先へのお土産代5,000円であった。
出張にともなう仮払い (8/5~8/10の現場立ち合いのため) | ||||
仕訳例4や仕訳例5は、出張旅費や交通費として概算分を支給した場合の仕訳です。一旦、仮払金として処理し、金額が確定したのちに旅費交通費などの費用に計上します。
旅費交通費の税務上の取扱い
旅費交通費のうち、従業員や役員に支給した宿泊費や出張旅費、出張手当について、通常必要と認められる範囲は、消費税の取扱い上、課税仕入れとなります。
ただし、課税仕入れは国内の出張や転勤などに関わる費用に限られます。海外渡航のための出張旅費や渡航先の宿泊費などは原則として除外されますので注意しましょう。
また、従業員などに支給する通勤費については一定額まで所得税が非課税となり、源泉徴収所得税の計算の対象とはなりません。
出張などに要した旅費や移動費は旅費交通費で処理
通勤や日常的な業務上の移動を「交通費」、出張や転勤などの移動旅費を「旅費交通費」に分けて会計処理を行うこともありますが、会社によっては「旅費交通費」勘定に統合して処理を行います。まとめて処理する場合は、通勤手当や出張手当なども旅費交通費として問題ありません。この記事でも紹介した仕訳例を参考に、基本的な仕訳のパターンを押さえておきましょう。
よくある質問
旅費交通費とは?
業務上必要な移動などにかかる旅費や交通費のことをいいます。詳しくはこちらをご覧ください。
旅費交通費と交通費の違いは?
旅費交通費と交通費を区分して経理する場合、旅費交通費は遠方の移動に関わる移動費や旅費、交通費は近場の日常的な移動に関わる移動費で区分します。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
会計の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
しめ縄などの正月飾りを経費にする時の仕訳に使う勘定科目まとめ
しめ縄や門松などの正月飾りは、事業所のために購入したものであれば経費として計上できます。仕訳をするときは、消耗品費や雑費などの勘定科目を使うことが一般的です。具体的な例を提示して、仕訳の仕方について説明します。 正月飾りの仕訳に使える勘定科…
詳しくみる神社への支出は経費?祈祷や賽銭の仕訳と勘定科目を解説
商売繁盛を目的として法人が神社に祈祷を行ってもらった際にかかる初穂料や玉串料などは経費として計上できます。しかし、個人事業主では経費にするのは難しいとされています。 初穂料や玉串料、賽銭などを経費とする場合に、勘定科目や仕分けはどうすれば良…
詳しくみる机を購入した際の勘定科目は?仕訳方法も解説
会社の事務所で机を購入した場合、経費として仕訳することが可能です。そこで本記事では、机を購入した際に利用する簿記上の勘定科目と仕訳方法などを解説します。他の事務用品にも応用できる内容であるため、会社の経理・会計担当者の方はぜひ参考にしてくだ…
詳しくみる会計における「のれん」とは?償却や減損方法を仕訳まで解説
「のれん」とは企業のブランド的価値のことで、会計上では企業の時価評価純資産と買収価額の差額として表記されます。のれんとは何か、また、のれんを償却するメリットやデメリット、減損処理の際の仕訳の方法、注意点について紹介するので、経理処理の参考に…
詳しくみる雑収入とは?雑所得や事業所得との違い、仕訳例をわかりやすく解説
個人でも法人でも、よく使う勘定科目に「雑収入」があります。この雑収入とはどのようなときに使う勘定科目なのでしょうか。また、個人の場合は似たようなものに「雑所得」があり、混同されることもあります。 そこで、ここでは雑収入の概要や他の所得との違…
詳しくみる資本連結の考え方や仕訳を基本から解説
実質的な支配関係がある会社を企業グループとし、ひとつの組織体として行う決算を連結決算といいます。連結決算では、投資と資本の相殺消去など一連の処理である資本連結を行い、企業グループ全体における正しい財務状態を表すことができます。この記事では、…
詳しくみる