- 更新日 : 2024年8月8日
研修費を経費にする場合の勘定科目と仕訳例まとめ
講習やセミナーなど、仕事の研修に関わる費用を研修費といいます。研修に関わる費用を支出した場合、どのような勘定科目で処理するのが適切なのでしょうか。研修費用で使われる勘定科目と仕訳例、研修費用を経費に計上できないケースについて解説します。
目次
研修費とは?
研修費とは、従業員の研修に関連する費用のことをいいます。基本的には、仕事に直接的に必要な知識や技術を身につけるための研修、あるいは仕事に直接的に必要な免許や資格を取得するための費用のことです。通常、従業員の給与など利益になるものについての費用は「給与」として処理することになりますが、業務を遂行する上で必要と認められる研修費については給与として処理する必要はありません。研修などにかかった費用は、「研修費」などの経費として計上できます。
研修費に該当する内容には、たとえば以下のようなものがあります。
- 接客やマナーに関する講習会の費用
- 免許や資格取得に必要な講習会の費用
- セミナーの受講費用
- 教育訓練の費用
- 研修に使用するテキスト代
研修費用を仕訳する場合の勘定科目
研修費用を処理する場合の勘定科目にはどのようなものがあるのでしょうか。勘定科目ごとに概要を解説するとともに、仕訳例を取り上げます。
研修費
研修費(研修採用費)は、業務上必要なスキルや技能を従業員などに修得させるために要した研修費用を表します。研修に関連する費用全般を「研修費」に計上することもできますので、研修費用がそれなりにあり、研修関連の費用(研修のテキスト代や準備にかかった費用など)をまとめて管理したいときに適した勘定科目です。
(仕訳例)従業員が参加した講習会の費用5万円を現金で支払った。
福利厚生費
従業員や従業員の家族に対する、給与や賞与とは別に設けられた実質的な報酬を福利厚生といいます。福利厚生の代表的な例は、社宅手当や家族手当です。一般的に福利厚生として認識されることの多い健康保険料や厚生年金保険料は、法的に会社が折半することが決められているものですので、会計上は福利厚生費ではなく「法定福利費」で処理します。
「福利厚生費」として処理できるのは賃金ではない報酬であり、全従業員を対象にした社会通念上妥当と考えられるものです。また、会社が任意に支出したものをいいます。
研修費用のうち「福利厚生費」として処理するものは、資格手当など、従業員が任意で行うスキルアップに対する費用で、全従業員を対象にした手当などです。
(仕訳例)資格取得費用として従業員に現金1万円を支給した(支給した資格取得費用は、支給要件に該当すれば従業員の誰でも受け取れるものである)。
新聞図書費
新聞図書費とは、事業に必要な書籍や雑誌、新聞などを購入したときに要した費用を表し、一部の研修費用については新聞図書費として処理できます。基本的には従業員が使用することを目的にしたものですので、経営者や個人事業主が個人的なスキルアップのために購入した書籍などは含まれません。
新聞図書費にできるのは、研修で必要なテキスト代、従業員のスキル向上などを目的として購入した書籍代などです。
ただし、これらは新聞図書費として処理できる一方で「研修費」としても処理できますので、会計管理上何を重視したいかで使い分けると良いでしょう。研修費全般で管理したいときは「研修費」が向いていますが、研修費とテキスト代を分けて管理したい場合は「新聞図書費」での処理が向いています。
(仕訳例)従業員の研修に必要なテキスト50冊分の代金10万円を現金で支払った。
前払費用
前払費用は、サービスの提供がまだ行われていないものについて、先に支払いを済ませた場合に使用する勘定科目です。まだ費用になっていない勘定科目を表し、費用として計上するまで一時的に資産科目として管理します。
研修費用に関連して「前払費用」での処理が必要になるケースは、複数回に及ぶセミナー受講費などを先払いした場合です。研修の内容によっては1日で終了せず、数日から数ヶ月などの期間にわたりカリキュラムが組まれるようなものもあります。
この場合、当期中にすべての研修が終了すればすべて経費に計上することになるため、前払費用での処理は必要ありません。しかし、事業年度をまたいで翌期以降にも継続して開催される研修について、すでに費用を負担しているような場合は、前払費用の勘定科目を使って処理します。
(仕訳例1)従業員の研修のための費用50万円を現金で支払った。研修は当期から翌期にかけて5ヶ月間行われるものである。
(仕訳例2)決算の時期が来たので、前払費用のうち当期負担分を研修費に振替えた。なお、研修期間全5ヶ月のうち、今期の研修期間は3ヶ月間であった。
上の仕訳例のように、原則は前払費用として一旦計上し、決算時に当期の費用にする分を「前払費用」から「研修費」に振替えます。ただし、実務上は支払いの時点で費用に計上し、決算時に未消費分を前払費用に振替える処理を採用しているところも多いです。
雑費
雑費は、いずれの勘定科目にも属さない費用で、重要性の低いものを処理するときに使用します。研修費用は、研修費などで処理できますので、通常は雑費を使用することはありません。雑費で処理するのは、年間の研修費が少額で、かつ重要性に乏しい場合です。
たとえば、個人事業主が業務上必要な数千円の書籍を1冊だけ購入したなど、研修費の計上がほとんどなかった場合などがケースとしてあげられます。
ただし、雑費は、ほかの勘定科目と異なり、一目で何に使ったのかわからない勘定科目です。税務上も問題になることがありますので、研修費など別の科目で処理できそうな場合、そこまで少額でない場合は、別の勘定科目で処理することをおすすめします。
(仕訳例)業務上必要な書籍1冊の代金2,000円を現金で支払った。
研修費用を経費計上できないケースとは?
一般的には研修費用に該当するような内容であっても、事業に関係のない研修費用は経費計上できません。会社が負担した分に関しては、従業員の給与、あるいは役員の報酬に加算する形で処理します。従業員への対応についてはこのような処理で問題ありません。
問題は個人事業主の場合です。個人事業主も、さまざまな目的で資格取得やスキル向上のための研修に参加することがあるでしょう。この場合、事業に必要な資格や免許に関する研修費用は、もちろん経費計上が可能です。ほかに、研修を受けたり資格を取得したりすることなどによって請負単価が上がるような場合や、仕事の範囲が拡大するような場合は、経費に含めて処理できます。
しかし、研修を受講したり資格を取得したりしても、事業や仕事になんら影響がない場合は経費計上できませんので注意しましょう。
研修に付随する費用のうち、研修費として経費に計上できるもの
研修に付随する費用で、経費として計上できるものには以下のようなものがあります。
- 研修参加費用: 研修プログラムやセミナーの受講料など。
- 交通費: 研修会場までの交通費(電車代、バス代、航空券など)。
- 宿泊費: 研修に参加するための宿泊費用。
- 食事代: 研修期間中の食事代(一定の範囲内で認められる場合が多い)。
- 教材費: 研修で使用する教材や資料の費用。
- 通信費: 研修に関連する通信費(例:オンライン研修のインターネット接続費用)。
- その他の必要経費: 研修に関連して必要な費用(例:事前準備や後片付けにかかる費用など)。
ただし、具体的に経費として認められるかどうかは、企業の経費規定にも依るため、詳細は確認することをお勧めします。
研修費用の経費計上もさまざま
研修費用に関連する勘定科目と仕訳例についてご説明しました。一般的に研修に関わる費用全般は「研修費」で処理できますが、「福利厚生費」や「新聞図書費」などとして処理するケースもあります。会社の会計方針も関係してきますので、目的に適った会計処理を選択するようにしましょう。なお、研修費用に該当しそうなものであっても、事業に直接関係しないものなどは研修費として経費計上できません。特に、個人事業主の場合は経費計上できる範囲が狭まるので注意が必要です。
研修費と似たような勘定科目の仕訳解説
よくある質問
研修費とは?
基本的には、業務上必要なスキルや知識を従業員に修得させるために要した費用のことをいいます。詳しくはこちらをご覧ください。
研修費用に使える勘定科目は?
研修費、福利厚生費、新聞図書費、雑費が使えます。すでに支払いが済んだもので、事業年度をまたぐ研修などの場合は、一時的に前払費用で処理します。詳しくはこちらをご覧ください。
研修費用を経費にできないケースは?
事業に直接関係しない研修費用は経費にできません。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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