- 作成日 : 2025年10月6日
税務調査で修正申告が必要になったら?流れ・ペナルティ・対処法を解説
税務調査で「修正申告が必要です」と指摘されると、多くの方が「どんな手続きをすればいいのか」「延滞税や加算税でいくら払うのか」と不安を感じるものです。
とくに個人事業主や中小企業経営者にとっては、突然の税務署対応は大きな心理的負担になるでしょう。
結論から言えば、修正申告は指摘を放置せず、正しい手続きに沿った期限内の対応が重要です。
本記事では、国税庁の情報や税務実務に基づき、修正申告の流れ・必要書類・ペナルティの種類を整理し、よくある疑問にも答えます。
「自分がどのケースに当てはまるか」「どんな対応をすれば安心できるか」を明確にしておきましょう。
目次
税務調査における修正申告とは
修正申告とは、一度提出した確定申告に誤りがあった場合に、申告期限後に正しい内容で再度申告する手続きです。
とくに、申告した税額が本来より少なかった場合におこなうもので、不足していた税金を追加で納めなければなりません。
修正申告には、納税者が自ら誤りに気づいて自主的におこなうケースと、税務調査で申告漏れや経費の誤りを指摘された結果として提出するケースの二つがあります。
対象となるのは所得税や法人税、消費税など幅広く、税務調査前に自主的におこなえば過少申告加算税といったペナルティを軽減できます。
税務調査の場面では、調査官が帳簿や領収書を確認し、正しい税額を算定するよう求めるため、指摘を受けた内容に基づいて修正申告を提出するのが一般的です。
修正申告の必要がある場合、早めに対応すれば、結果として余計な負担の回避にもつながります。
修正申告が必要になるケース
修正申告は、申告内容に誤りがあると指摘された場合に必要です。
ここでは、税務調査で実際に発覚しやすい3つのケースを紹介します。
売上の漏れや経費の誤り
売上の一部を計上していなかった場合、税務調査で発覚すると修正申告を求められます。
現金売上や少額取引の申告漏れは、見落とされやすい一方で、調査官にとっては預金口座や取引先との照合で把握しやすい項目です。
実際には発生していない経費を計上したり、私的な支出を事業経費に含めたりするケースも修正対象です。
また、経費の水増しが意図的におこなわれた場合は、重加算税の対象として扱われ、通常よりも大きなペナルティを負います。
売上や経費の記録は正確さが求められるため、帳簿を整備し証憑を揃えておく意識が重要です。
日常的に記帳を徹底しておけば、税務調査での指摘を受ける可能性を下げられます。
領収書・帳簿不備による否認
領収書が残っていない支出や、帳簿の記録と整合しない取引は、経費として認められません。
記録が不十分な状態が続けば、事実を故意に隠す行為である「仮装・隠ぺい」とみなされる可能性があり、経費を否認されるだけでなく重加算税の対象となるおそれもあります。
経費の否認があれば課税所得が増えるため、修正申告を余儀なくされます。
とくに、請求書や仕訳帳を確認された際に見つかりやすいのが「期ズレ」です。
本来は来期に計上すべき経費を当期に含めてしまったり、逆に当期の売上を翌期に回してしまったりするケースは、税務調査で頻繁に指摘されます。
領収書・帳簿不備によるリスクを避けるには、領収書や請求書の保管を徹底し、帳簿の整合性を常にチェックしておく取り組みが大切です。
過去の申告誤りの発覚
税務調査では、直近の申告内容だけでなく数年前まで遡って確認される場合があります。
ケアレスミスや勘違いによる単純な誤りであっても、調査の過程で発覚すれば修正申告が必要です。
とくに、売上の計上漏れや経費の計上ミスは典型的な指摘事項であり、年度をまたいで繰り返されていた場合は注意が必要です。
もし納税者が自ら誤りに気づき、税務調査前に自主的に修正申告をおこなえば、過少申告加算税などのペナルティが軽減される仕組みも設けられています。
しかし、数年分の累積した誤りが一度に見つかると、多額の追徴課税につながるおそれがあるため、早めに確認しておきましょう。
過去の帳簿を定期的に振り返り、誤りがないか点検しておく姿勢が重要です。
修正申告の流れ
修正申告は決められた手順に沿って進める必要があります。
ここでは、修正申告の流れを「修正申告書の作成」「提出」「支払い」の3段階に分けて確認します。
修正申告書の作成
修正申告をおこなう際には、まず修正申告書を作成します。
修正申告書は、国税庁が定めた様式に従って記載し、訂正箇所や修正の理由、差額を明確にします。
たとえば売上漏れが判明した場合は、正しい金額を反映させ、経費の誤りであれば認められる範囲に訂正しましょう。
内容を曖昧にしたまま提出すると再度の修正を求められる可能性があるため、帳簿や領収書と突き合わせながら慎重に作成する取り組みが大切です。
事前に国税庁のホームページから様式をダウンロードしたり、e-Taxを利用した自動計算や入力チェックを活用したりして、記載ミスを防ぎましょう。
申告書の準備や記載内容の確認をしておけば、修正申告時に正確性をもって対応できます。
修正申告書の提出
作成した修正申告書は、所轄の税務署に提出します。
提出方法には、税務署窓口へ直接持参するほか、郵送やe-Taxによる提出も利用できます。
税務調査で指摘を受けた場合は、調査の終了後速やかに提出するのが原則です。
一方で、税務調査が始まる前に誤りに気づいた場合には、自主的な修正申告もできます。
自主的に修正申告をおこなう場合は、少なくとも調査開始予定日の一週間前までに提出しておくと安心です。
また、調査開始の通知が届く前に自ら修正申告を済ませれば、過少申告加算税は原則発生しません。
早めに動くことで、結果的に税負担を抑えられるケースがあります。
支払い
修正申告書を提出した後は、追徴された税金の支払いをおこないます。
追加税額の支払い方法は、金融機関窓口での納付のほか、「ダイレクト納付」と呼ばれるe-Taxを用いた口座振替も可能です。
また、延滞税や加算税がある場合など、支払いの内容はケースによって異なるため、事前に確認しておく意識が欠かせません。
とくに延滞税は支払い期限を過ぎた場合、完納日まで日ごとに加算される仕組みのため、対応が遅れるほど負担が増えてしまいます。
期限内に正しく納付を済ませておけば、負担やリスクを減らして対応を円滑に進められます。
修正申告の注意点3つ
修正申告をするときは、記載内容や支払い方法を誤ると余計な負担が生じるおそれがあります。
ここでは注意すべき3つのポイントを整理しておきましょう。
① 記載ミス・再修正のリスクを避ける
修正申告では、金額や控除の記載を誤ると再度修正申告をおこなう事態になりかねません。
二転三転の末、本来より税額が小さくなった場合には「更正の請求」が必要となり、余計な手間や時間を取られる可能性もあります。
たとえば税務署が誤って経費を否認し、修正申告を提出した後で誤りが判明したときも、更正の請求を通じて還付を受ける手続きが必要です。
再修正の負担を避けるためには、帳簿や証憑を照合しながら正確に作成する取り組みが欠かせません。
e-Taxの自動計算やチェック機能を利用すれば、計算ミスや記載漏れを防ぎやすくなります。
小さなミスであっても加算税や延滞税が余分に発生するおそれがあるため、提出前の丁寧な確認が不可欠です。
② ペナルティの内容を確認する
修正申告には「過少申告加算税」「重加算税」「延滞税」があり、それぞれの内容を理解していないと思わぬ負担につながるので注意が必要です。
過少申告加算税は、本来納めるべき税額より少なく申告していた場合に課されるもので、自主的に修正すれば軽減される場合もあります。
一方で、意図的に売上を隠すなどの不正があると「重加算税」として通常より重い税率が適用され、税負担が大きくなります。
また、納付が遅れれば延滞税が加算されるため、期限を守った支払いが不可欠です。
修正申告に伴うペナルティは状況によって異なるため、自身のケースがどれに当てはまるのかを把握し、早めに対応する意識が重要です。
③ 不安な場合は専門家に相談する
修正申告は法律や税制の知識を求められる場面が多く、自己判断だけで対応すると誤りや不利益につながる危険があります。
とくに税務調査に伴う修正申告は、調査官とのやり取りや書類の整合性確認など高度な対応を求められる場合があるため、専門家にサポートを依頼しておくと安心です。
税理士に依頼すれば、修正申告書の内容を正確に整えるだけでなく、税務署との交渉を代行してもらえるため、精神的な負担も軽減されます。
また、専門家の介入によって加算税や延滞税といったペナルティを最小限に抑えられる可能性も高まります。
自分だけで対応するよりも、余計なトラブルを回避しやすくなるため、不安を感じた時点で税理士への相談が望ましい選択肢と言えるでしょう。
修正申告に関するよくある質問
修正申告をめぐっては「税務調査の前にできるのか」「結果が出る時期」「拒否は可能か」など、多くの疑問が寄せられます。
ここでは修正申告に関するよくある質問を3つ解説します。
修正申告は税務調査前にできる?
税務調査の開始前に、自主的な修正申告は可能です。
自主的に修正申告をおこなう場合、原則として過少申告加算税や無申告加算税が免除、あるいは軽減される仕組みがあります。
調査官の指摘を待たずに自ら誤りを正す行動は、余計なペナルティを避ける大きな手段と言えます。
ただし、調査開始通知が届いた後の修正は対象外となり、加算税が課されるケースが一般的です。
誤りに気づいた場合は、すぐに対応する意識が肝心です。
帳簿や領収書を日頃から確認し、早期に修正できる体制を整えておけば、税務調査が入る前に余計な負担を回避できるでしょう。
税務調査の結果はいつわかる?
税務調査の結果が正式に通知されるまでの期間は、一般的に1週間から3ヶ月程度と言われています。
調査内容がシンプルであれば早く終わる一方、確認事項が多く複雑な場合には時間を要する場合も珍しくありません。
最終的な結果は「更正決定等をすべきと認められない旨の通知(是認通知書)」や「更正通知書」などの文書で伝えられ、追加納税の要否や修正申告の必要性が明確になります。
通知が遅いと感じても、調査官が裏付け資料を精査しているケースが多いため、慌てる必要はありません。
また、不安な場合は税務署への進捗確認も可能です。
調査の結果がわかるまでには日数がかかるケースがあることを理解し、冷静に対応しましょう。
修正申告を拒否できる?
税務調査で誤りを指摘された場合、納税者による修正申告の拒否自体は可能です。
ただし、そのままでは税金が確定しないため、税務署が更正処分をおこない、法令に基づいて正しい税額を強制的に決定します。
税務署の決定内容に納得できない場合は、「審査請求」や「再調査請求」といった制度を利用するケースも認められています。
また、修正申告を拒否して更正処分となった場合でも、過少申告による加算税や延滞税、重加算税といったペナルティは同様の扱いです。
さらに、故意に隠ぺいしたと判断されれば、税務調査の段階を超えて刑事責任の追及に発展する可能性があります。
任意調査だけでは把握できない場合、強制的な調査権限が用いられ、公訴が提起されるリスクが高まります。
修正申告の内容に納得できないときは、税理士などの専門家に相談し、リスクを踏まえて対応するのが安心です。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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