- 更新日 : 2024年8月8日
過払い金が返金された時の勘定科目は?仕訳方法も解説
過払いが発生して返金された場合、事例ごとに返金処理が必要です。その際使用する勘定科目は、過払いの内容により異なります。過払いが発生する原因は仕入代金を多く払いすぎた場合をはじめ、家賃や社会保険料の支払い、借入金の利息などです。
本記事では過払いへの対処法や使用する勘定科目を説明し、それぞれの仕訳についても解説します。
目次
過払い金が発生した際の対処法は?
過払い金とは、仕入れ先などに本来支払うべき金額よりも多く支払った金額のことです。過払金は返金を請求できますが、原則として最後の取引をした日から10年、または権利を行使できることを知ったときから5年で時効になります。
過払いが発生する原因はさまざまで、主に次のようなケースが挙げられます。
- 仕入れの処理間違い
- 取引のキャンセル・返品
- 借入金の利息や家賃・社会保険料・税金などを多く払いすぎた場合
過払い金は、業務の取引に関係するものと関係ないものとに分けられます。業務に関係するケースは仕入れの処理間違いや、あとから金額の変更があった場合などです。また、取引のキャンセルや返品をした場合にも過払いとして返金が発生します。
業務以外でも、過払いが起こるケースは少なくありません。利息制限法の上限金利を超えて利息を払いすぎていた場合や、所得税を多く納付していたといったケースが挙げられます。
それぞれ、返金を受けた際に適した勘定科目で処理しなければなりません。
返金を受けたときの会計処理については、以下の記事も参考にしてください。
過払い金が返金された時の勘定科目
業務の取引で過払いが発生した場合、過払い金の返金処理は2種類あります。過払いした金額を返金してもらう方法と、過払いの分を次回の取引で相殺する方法です。
それぞれの処理について、詳しくみていきましょう。
過払い金を返金してもらう場合
過払いが発生し、決算前に返金された場合は、取引の内容ごとに以下のように処理します。
過払いについて気付くのは時間が経過してからの場合も多く、決算後に発覚するケースも少なくありません。
その場合、本来より多く費用を計上していたことになり、その期間にかかる申告書について修正申告が必要になります。修正申告の処理については、あとの項目で説明します。
過払い金の金額分を次回の取引時に相殺する場合
過払いが仕入れ代金の場合で定期的に取引をしている取引先の場合、返金ではなく次回の仕入代金から差し引く対応をすることもあります。実質的に、次回分の仕入代金にかかる手付金を支払っているのと同様に考えてよいでしょう。
過払いに気づいたときに「前払金」または「前渡金」で資産計上し、次回の仕入時に仕入代金と相殺処理します。
過払い金が返金されたときの仕訳
ここでは過払いが発生して決算前に返金されたときの仕訳について、事例ごとに紹介します。
仕入れの過払い金を返金してもらう場合
仕入代金の過払いがあって返金された場合、「仮払金」の勘定科目を使います。
【事例】5万円の仕入れを行い、仕入代金を誤って5,000円多く入金していた。すぐに気づいて連絡したところ、後日返金してくれることになり、翌月に入金された。
(商品仕入時の仕訳)
(返金を受けたときの仕訳)
仕入れをキャンセルしたり返品したりする場合の仕訳は、以下のとおりです。
【事例】5万円の商品を仕入れたが、そのうちの5,000円分をキャンセルした。キャンセル分の金額は後日返金された。
(返金を受けたときの仕訳)
借入金の利息を返金された場合
2007〜2008年以前に契約した借入金の利息が利息制限法の上限金利を超えていたり、借入金を一括で返済したりした場合には、払い過ぎた利息が戻ってくる場合があります。利息が返金された場合は、以下のように仕訳しましょう。
【事例】長期の借入金を一括で返済し、払いすぎた利息3万円が普通預金に振り込まれた。
家賃の過払いを返金された場合
家賃を間違って多く支払い、すぐに返金された場合、地代家賃の勘定科目で処理します。
【事例】事務所の家賃13万円を支払う際、5,000円多く支払っていた。数日後に現金で返金された。
社会保険料の過払いを返金された場合
従業員の給与が下がって社会保険料額が変わることに気づかず、従前の金額で納付していた場合、本来よりも多く支払っていることになります。支払い後すぐに気づいて申告し、決算前に過払い分の還付を受けた場合は「未収金」の勘定科目で処理します。
【事例】社会保険料を実際よりも1万円多く納付し、後日還付金として返金を受けた。
(支払い時)
(返金時)
給与の過払いを返金された場合
給与を過払いして返金を受けたときは「仮払金」の勘定科目を使って処理します。
【事例】従業員の給与を1万円多く支給し、決算前に気づいて返金を受けた。
(給与支払い時)
(返金時)
所得税の過払いを返金された場合
所得税の過払いがあり、還付金を受けた場合、事業に関する収入ではないため「事業主借」で処理します。
【事例】税務署から所得税の還付金として、3万円が普通預金に入金された。
過払い金の金額分を次回の取引時に相殺する場合の仕訳
仕入れ金の過払いが発生し、次回の仕入れ時に相殺する場合は「前払金」の勘定科目で処理します。
【事例】仕入れで5,000円の過払いが発生し、次回の仕入れで相殺することにした。
(商品仕入時)
(次回仕入時)
次回の商品仕入れ時に「前払金」と相殺した。
前回過払い分を相殺 | ||||
決算後に過払い金を修正するには?
決算が確定した後に過払いに気づいた場合、原則として修正申告が必要です。ただし、金額が僅少で重要性が低い場合、過払い金の返金を受けた時点で費用のマイナス処理をすることで認められることもあります。まずは税務署に相談してみるとよいでしょう。
修正申告をする場合は、「更正の請求書」を税務署に提出します。更正を請求ができる期間は、原則として法定申告期限から5年以内です。気づいたらできるだけ早く申告しましょう。
決算修正については、以下の記事を参考にしてください。
過払いの処理はケースごとに対応しよう
過払いが発生して返金を受けたときは、ケースごとに適切な勘定科目による処理が必要です。仕入れ代金の場合、返金を受ける場合のほか翌月の仕入れ代金と相殺をするケースもあり、処理方法が異なるため注意しましょう。決算後に返金を受けた場合は、原則として修正申告が必要です。
過払いで返金を受けたときの処理は勘定科目に注意し、修正申告の場合は早めに対応しましょう。
よくある質問
過払い金が発生した場合の対処法は?
過払いの内容ごとに適した勘定科目で入金の仕訳をします。詳しくはこちらをご覧ください。
過払い金が返金されたときの勘定科目は?
過払いの内容によって異なり、仕入れの過払いの場合は「仮払金」を使います。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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