- 更新日 : 2026年1月15日
資本金とは?相場や税金への影響、企業ランキングを調査
会社設立時の資本金は、100万円から300万円の間で設定すると、税制メリットと対外的な信用のバランスが良い金額帯になります。資本金は単なる「会社の貯金」ではなく、消費税の免税期間や法人税率、銀行融資の審査に影響を与える重要な指標となります。
「とりあえず1,000万円」と決めてしまうと、思わぬ税金が発生することもあるため注意が必要です。
本記事では、中小企業の経営者や起業準備中の方に向け、損をしない資本金の決め方や相場、実務上のポイントを解説します。
目次
資本金とは?会社の元手となるお金
資本金とは、事業を円滑に進めるために経営者などの株主が出資した「運転資金(元手)」のことです。
これから事業を行うための準備金であるため、会社設立後はパソコンの購入や仕入れ、家賃の支払いなどに自由に使って問題ありません。
「資本金は法務局に預けてロックされるお金」と誤解されることがありますが、実際は会社の銀行口座にある事業資金そのものです。
借入金との違いと決算書上の扱い
資本金は「返済義務がない自分たちのお金」である点が、銀行などからの「借入金」とは異なります。
決算書(貸借対照表)において、資本金は「純資産の部」に記載されます。一方、借入金は将来返済する必要があるため「負債の部」に記載されます。純資産の比率が高いほど、財務体質が健全である(倒産しにくい)と評価されます。
資本金の最低金額は?
2006年に施行された会社法では、1円以上の資本金で会社設立が可能となりました。現在では、インターネットやIT技術の進歩によって事業形態が大きく様変わりし、比較的少ない事業資金で起業できるケースも増加しています。
会社法の施行前は、新たに会社を設立する場合「株式会社の場合には資本金1,000万円以上、有限会社の場合には300万円以上」を最低資本金額として準備する必要がありました。
個人事業主に資本金はあるのか?
個人事業主には、法的な意味での「資本金」という概念はありません。
代わりに「元入金(もといれきん)」という勘定科目を使用します。開業時に用意した資金や、事業用口座に入れた個人資産などがこれに該当します。法人化(法人成り)する際には、この元入金や新たな出資金をベースに、株式会社等の資本金を決定することになります。
資本金の相場はいくら?
中小企業の資本金の相場は、300万円前後がひとつの目安とされています。
2006年の会社法改正により、現在は資本金1円からでも会社設立が可能になりました。しかし、あまりに低すぎる資本金は融資や取引の面で不利になることがあるため、一定額を用意するケースが大半です。
最も多いのは、300万円~500万円
統計データによると、国内企業の資本金階級で最も割合が多いのは「300万円以上500万円未満」の層で、全体の約33%を占めています。 次いで多いのが「1,000万円以上3,000万円未満」の層(約32%)です。
一方で、「300万円未満」の企業は約11%にとどまります。このことから、多くの経営者が対外的な信用や当面の運転資金を考慮し、最低でも300万円程度の資本金を用意してスタートしている実態がうかがえます。
【資本金階級別企業数(全国)】
資本金額の階層別企業数(全国) 企業総数:1,746,142社
| 資本金階級 | 企業数(社) | 割合(%) |
|---|---|---|
| 300万円未満 | 202,929 | 11.6% |
| 300万円以上500万円未満 | 578,995 | 33.2% |
| 500万円以上1,000万円未満 | 254,152 | 14.6% |
| 1,000万円以上3,000万円未満 | 554,838 | 31.8% |
| 3,000万円以上5,000万円未満 | 72,755 | 4.2% |
| 5,000万円以上1億円未満 | 52,109 | 3.0% |
| 1億円以上3億円未満 | 17,483 | 1.0% |
| 3億円以上10億円未満 | 7,141 | 0.4% |
| 10億円以上50億円未満 | 3,564 | 0.2% |
| 50億円以上 | 2,176 | 0.1% |
1円起業のリスクと「1,000万円」の壁
資本金1円での設立は法的に可能ですが、資本金が少ない企業は少数派です。
会社設立直後は売上が入金されるまでのタイムラグがあります。資本金が数円しかない場合、設立登記直後の備品購入や交通費の支払いすらできず、すぐに「役員借入金(社長が会社にお金を貸す処理)」が発生し、会計処理が煩雑になるため、最低でも、創業から3ヶ月〜半年程度の運転資金分を資本金として設定するのが安全です。
また、「見栄えが良いから」と安易に1,000万円に設定するのは避けましょう。後述する消費税の免税メリットを受けられなくなるからです。
資本金の大きい企業ランキング
現在、国内で資本金の大きい企業の上位10社を順番に並べると下表の通りとなります。
| 順位 | 会社名 | 資本金(百万円) |
|---|---|---|
| 1 | 日本郵政 (株) | 3,500,000 |
| 2 | (株) ゆうちょ銀行 | 3,500,000 |
| 3 | (株) 三井住友フィナンシャルグループ | 2,345,960 |
| 4 | (株) みずほフィナンシャルグループ | 2,256,767 |
| 5 | (株) 三菱UFJフィナンシャル・グループ | 2,141,513 |
| 6 | 武田薬品工業 (株) | 1,694,685 |
| 7 | 東京電力ホールディングス (株) | 1,400,975 |
| 8 | NTT (株) | 937,950 |
| 9 | ソニーグループ (株) | 881,357 |
| 10 | 日本ペイントホールディングス (株) | 671,432 |
参考:資本金:株式ランキング|Yahoo!ファイナンス(2025年12月12日更新)
ランキングの上位5位までを占めているのは、日本郵政グループおよびメガバンクなどの金融機関です。金融業は企業への貸付や信用創造のために莫大な自己資本を必要とするため、他業種に比べて資本金が突出して高い傾向にあります。
6位以下には、製薬(武田薬品工業)、電力(東京電力HD)、通信(NTT)など、大規模な研究開発費やインフラ設備投資を要する企業がランクインしています。このように、資本金額の大きさは事業の性質や規模と一定の相関関係があることが分かります。
資本金額を決める3つの基準と税金への影響
資本金額を決定する際は、「消費税」「法人税」「許認可」の3つの要素を基準に逆算して考えます。
特に節税面では、資本金の額が1円違うだけで数百万円の納税額の差が生まれることもあるため、慎重な検討が必要です。
消費税:1,000万円未満で免税メリットを狙う
資本金を1,000万円「未満」に設定することで、原則として設立1期目と2期目の消費税の納税義務が免除されます。
資本金が1,000万円以上の場合、設立初年度から消費税の課税事業者となり、納税義務が発生します。創業期の資金繰りを助けるため、多くの企業が1,000万円未満で資本金を設定します。
法人税・住民税:1億円以下で税率優遇を受ける
資本金を1億円以下の中小法人に設定することで、法人税や法人住民税において軽減税率の適用対象となります。 日本の税制では、中小企業の経営支援を目的として、資本金の規模に応じた優遇措置が設けられています。
【法人税の軽減税率】
所得金額のうち、年800万円以下の部分について税率が大幅に引き下げられます。
- 年800万円以下の部分:税率 15%(本来の税率は19%)
- 年800万円超の部分:税率 23.2%
【法人住民税の優遇】
法人住民税は、法人税額を基準とする「法人税割」と、資本金額等で決まる「均等割」で構成されています。 資本金1億円以下で法人税の軽減措置が適用されると、法人税額自体が少なくなるため、それを基に計算される「法人税割」の負担も自然と軽減される仕組みになっています。
なお、資本金が1億円を超える大企業や、一定の大企業の子会社などは、資本金が1億円以下であっても原則としてこれらの軽減税率の対象外となります。節税効果を最大化するためには、資本金を1億円以下に収めることが一つの基準となります。
許認可:業種に必要な最低金額を確認する
事業を行うために国の許認可が必要な業種では、要件として「最低資本金額(財産的基礎)」が定められている場合があります。
以下の業種で創業する場合は、節税よりも許可要件を満たすことを優先しなければなりません。
- 一般建設業許可:自己資本が500万円以上あること
- 一般労働者派遣事業:基準資産額が2,000万円以上あること
- 有料職業紹介事業:基準資産額が500万円以上あること
- 旅行業(第3種):基準資産額が300万円以上あること
参照:許可の要件|国土交通省
資本金の役割とは?
資本金は、会社の「体力」や「本気度」を表す役割があります。
近年はWebサイトで資本金額を確認する取引先も多く、金額が極端に低いと「ペーパーカンパニーではないか?」「すぐに倒産するのではないか?」といった懸念を抱かれるリスクがあります。
金融機関の融資審査で見られるポイント
創業融資を受ける際、資本金額(自己資金)は審査の可否に影響します。
日本政策金融公庫などの金融機関は、「自己資金の額」を審査基準として設けています。例えば、総事業費が1,000万円の場合、そのうちの10〜30%程度を自己資金(資本金)として用意できるかどうかが重視されます。「自分でお金を貯めてリスクを取っている経営者」であるかどうかが、返済能力の信用につながるからです。
取引先からの信用度調査
大手企業と新規取引を行う際、与信調査(帝国データバンクなど)の項目の一つとして資本金がチェックされます。
資本金が大きければ必ず信用されるわけではありませんが、資本金があまりに少額(例:10万円など)の場合、与信限度額が低く設定されたり、取引自体を断られたりするケースもゼロではありません。ターゲットとする顧客層や取引規模に見合った資本金を設定することが、ビジネスの機会損失を防ぎます。
資本金の増資・減資を行うメリット・デメリット
資本金は会社設立後でも、増やしたり(増資)減らしたり(減資)することができます。経営状況の変化に合わせて資本金を調整するのは有効な財務戦略となりますが、それぞれコストやリスクも伴います。
【増資】資本金を増やして財務基盤の強化
増資とは、新株を発行するなどして資本金を増やすことです。
メリット
財務基盤を強化できる
資本金が増えることによって決算書上の純資産が大きくなり、自己資本比率も高まるため、企業の財務基盤を強化することができます。
信用性が増す
資本金が大きくなることによって他社や金融機関からの信用性が増します。そのため融資を受けやすくなったり、より大口の取引が入ったりするなどの恩恵を受けられる可能性があるでしょう。
デメリット
既存株主にとって不利益となる
新たに株式を発行して増資を行うと、一株あたりの利益や議決権の割合が小さくなるなど、既存株主に対して不利益をもたらす可能性があります。
税務上の優遇措置が受けられなくなる
消費税や法人税における優遇措置の要件である資本金額を超過すると、増資後の税負担が増加する可能性があります。
【減資】資本金を減らして節税対策
減資とは、資本金の額を減少させる手続きです。会社のお金が減るわけではなく、会計上の「資本金」の数字を減らし、その分を「その他資本剰余金」へ振り替える処理などが一般的です。
メリット
「欠損」との相殺ができる
経営状況が芳しくない場合、過去に発生した赤字は「欠損」(マイナスの繰越利益剰余金)として決算書にも表記されるため、融資を受ける際などに悪影響を及ぼし、ますます経営環境が悪化しやすくなります。そのような状況において、減資によって取り崩した資本金と欠損を相殺することで、決算書自体の見栄えを良くすることができます。
税務上の優遇措置が受けられるようになる
増資のデメリットの2つ目と対応しますが、税務上の優遇措置を受けるために減資を行うケースも存在します。特に、資本金1億円を超える大法人が減資によって1億円以下とした場合には、法人税率が下がるなどさまざまなメリットを享受することができます。
デメリット
減資を行う最大のデメリットは、信用度の低下でしょう。単に資本金額が減少するだけでなく、赤字が続く中で決算書の見栄えを良くするために行うなど、第三者へマイナスの印象を与えてしまうことも少なくありません。
資本金と資本準備金の違いと使い分け
資本準備金とは、出資された金額のうち「資本金に計上しなかったお金」のことです。
会社法においては、株主から払い込まれた金額のうち2分の1までであれば、資本金ではなく資本準備金として計上することが認められています。
例:株主から1,000万円の出資を受けた場合
| 普通預金 | 10,000,000 | 資本金 | 5,000,000 |
| 資本準備金 | 5,000,000 |
パターンA:全額を資本金とする(資本金1,000万円)
パターンB:半分を資本準備金とする(資本金500万円、資本準備金500万円)
会社設立時に資本準備金を活用するメリット
会社設立時にあえて資本準備金を活用し、資本金額を抑えることにはメリットがあります。
資本金額を抑え、税務上の優遇措置を受けるため
上記の例の場合、パターンAでは資本金1,000万円となり消費税課税事業者となりますが、パターンBなら資本金500万円となるため、消費税免税事業者(インボイス未登録の場合)となることができます。
超過する部分を資本準備金として計上することによって、優遇措置の対象に留まることができるケースがあります。
取り崩しが簡単であるため
資本準備金は資本金よりも取り崩しの手続きが簡便であるため、将来的な赤字補填や配当原資として柔軟に活用しやすいという特徴もあります。
資本金は登記を行う必要があるため、増資や減資を行うたびに株主総会を開き、その都度、登記手続きを行わなければなりません。
会社設立時の資本金払込み手順
実際に会社を設立する際、資本金はどのように扱えばよいのでしょうか。まだ法人口座ができていない段階での作業となるため、手順を誤らないよう注意しましょう。
- 発起人の個人の銀行口座を用意する
新設する会社の法人口座はまだ存在しないため、発起人(代表者)個人の通帳を使用します。 - 資本金を「振込」または「預け入れ」する
定款の作成日以降に、決めた資本金の全額を口座に入金します。既存の残高があってもそれは認められず、新たに「日付」と「金額」が記帳されるアクションが必要です。また、振込人名義が表示されるように振り込むことで、誰が出資したかが明確になります。 - 通帳のコピーをとる
入金が完了したら、以下の3ページ分のコピーをとります。- 通帳の表紙
- 表紙の裏面(支店名や口座番号が記載されたページ)
- 資本金の入金が記帳された明細ページ
- 払込証明書を作成し、綴じる
「払込証明書」を作成し、通帳のコピーと合わせてホッチキスで留めます。これが会社設立登記の際の添付書類となります。
自社に合った資本金額を見極めることが重要
新会社法では資本金を自由に設定できるため、かえって資本金をいくらに設定すべきか悩むことも少なくありません。許認可の申請や税金計算に与える影響も考慮した上で、まずは自社を経営するために必要な事業資金を算出することから始めると良いでしょう。
それでも判断が難しい場合は、税理士などの専門家にご相談ください。
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資本金とは?
経営者や、そのほかの株主から受けた出資金額の合計のことをいいます。詳しくはこちらをご覧ください。
資本金の平均額は?
全体の約9割を資本金3,000万円未満の法人が占め、平均は300万円程度であるといわれています。詳しくはこちらをご覧ください。
資本金と資本準備金の違いは?
出資を受けた金額の2分の1までは資本準備金として計上でき、資本準備金は簡単に取り崩しができるだけでなく、資本金として計上しないことにより税負担軽減が期待できます。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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