- 更新日 : 2024年8月8日
印鑑証明を取得したときの仕訳と勘定科目まとめ
印鑑登録を証明する書類として、法人の場合も個人事業主の場合も事業上、印鑑証明の取得が必要になることがあります。印鑑証明を取得した場合、どのような勘定科目で処理するべきなのでしょうか。この記事では、印鑑証明を取得したときに使える勘定科目を、仕訳例を交えて解説していきます。
印鑑証明を取得したときの勘定科目
印鑑証明(印鑑証明書・印鑑登録証明書)とは、公的に登録した印鑑を証明するための書類です。事業においては、重要な契約を結ぶ際などに印鑑証明の提示が必要になることがあります。特に法人の場合、印鑑が登録されていることは会社が実在していることを示すため、印鑑証明の重要度は高いといえます。
ほかにも、土地や建物を売却して所有権が移転する場合など、所有権の移転をともなう契約に同意し虚偽でないことを証明するために、印鑑証明が必要になるケースもあります。
印鑑証明の取得場所は法人と個人で異なり、法人の場合は法務局、個人事業主の場合は市区町村役場などです。印鑑登録も、印鑑証明の取得場所で行うことができます。
それでは、印鑑証明を事業上取得することになったとき、どのような勘定科目を使って仕訳するべきなのでしょうか。印鑑証明を取得したときに使える勘定科目には、以下のようなものがあります。
租税公課で仕訳する
租税公課とは、国税や地方税(租税)または、国や地方公共団体の賦課金(公課)を支払ったときに使用する勘定科目です。たとえば以下のような支出を租税公課で処理します。
- 固定資産税
- 自動車税
- 登録免許税
- 印紙税
- 延滞税
など
以上のように、租税公課は租税と公課に分類される支出を広くカバーした勘定科目です。印鑑証明を取得したときの手数料は、法務局または地方公共団体に支払うものですから、租税公課で処理するのが一般的です。
(仕訳例)印鑑証明1通の取得にあたり手数料450円を現金で支払った。
租税公課 | 450円 | 現金 | 450円 |
支払手数料で仕訳する
支払手数料は、取引で生じた手数料などを管理するための勘定科目です。例として、以下のような支出が支払手数料に区分されます。
- 不動産会社へ支払う仲介手数料
- 銀行の振込手数料
- 登録手数料
など
印鑑証明を取得する対価として法務局や地方公共団体にお金を支払ったととらえれば、印鑑証明の取得費用も支払手数料と考えることができます。そのため、租税公課や雑費以外に支払手数料として計上することも可能です。
(仕訳例)印鑑証明1通の取得にあたり手数料450円を現金で支払った。
支払手数料 | 450円 | 現金 | 450円 |
雑費で仕訳する
雑費とはどの勘定科目にも当てはまらないような内容で、重要性が低い支出を計上するために使用する勘定科目です。印鑑証明の取得にかかる費用は法人の場合で1通あたり450円、オンライン請求だと390~410円となっています。個人が市役所などで取得する場合も1通あたり300円程度と、1通あたりの支出は少額です。金額的な面で、印鑑証明の重要性は低いといえるでしょう。
また事業内容にもよりますが、印鑑証明を事業で使用するケースは多くなく、年に数回、あるいは数年に1回というケースもあります。このように取得の頻度が高くない場合、経常的に発生する租税公課にあえて含める必要はなく、雑費の勘定科目を使えます。
ただし、雑費にはそのほかの支出も含むため、むやみやたらに雑費で計上してしまうと金額が大きくなり、使用用途が分かりにくくなってしまいます。そのため、印鑑証明の取得がほとんど発生しないようなケースに適しているでしょう。
(仕訳例)印鑑証明1通の取得にあたり手数料450円を現金で支払った。
雑費 | 450円 | 現金 | 450円 |
消費税の取扱い
印鑑証明の取得は非課税となり、消費税は課されません。これは、消費税の非課税取引である「国等が行う一定の事務に係る役務の提供」に該当するためです。一定の事務とは、登記や登録、証明などの事務のことで、役務の提供とはサービスの提供を意味します。印鑑証明はこのような一定の事務に該当し、印鑑証明の取得というサービスの提供を受けるため、非課税となります。
ここで注意したいのは、会計ソフト上で設定されている消費税の扱いです。租税公課など消費税が課されないことが多い取引に関しては、標準で非課税設定になっていることが多いですが、支払手数料や雑費に関しては、特に設定しない限り課税仕入のままになっています。支払手数料や雑費の科目を使いたいときは、補助科目を作成した上で、消費税の設定を適切に変更しておきましょう。
なお、消費税の申告が必要ない免税事業者については、会計ソフト上の消費税の設定について深く考える必要はありません。
印鑑証明の取得費用は租税公課などで処理する
印鑑証明を取得する際に支払った手数料は、租税公課で処理するのが一般的です。そのほか重要度などに合わせて、支払手数料や雑費でも処理できます。ただし支払手数料や雑費で書類する場合は、会計ソフトの消費税の区分設定が課税仕入のままになっている可能性があるため注意しましょう。また、印鑑証明の取得に要する費用は非課税です。
よくある質問
印鑑証明とは?
印鑑の登録を公的に証明する書類です。詳しくはこちらをご覧ください。
印鑑証明の取得で使える勘定科目は?
租税公課のほか、支払手数料や雑費が使えます。詳しくはこちらをご覧ください。
印鑑証明の取得費用は非課税?
印鑑証明の取得で発生する手数料は非課税で、支払手数料や雑費で仕訳をするときは会計ソフト上の消費税の設定に気をつけましょう。 詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
会計の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
経費で落とせる自動車税 経理処理のやり方を徹底解説!
車を所有していると、毎年5月に郵送されてくるのが自動車税の納税通知書。年に1回、忘れた頃に届くので、税負担に気が重くなってしまう方も多いでしょう。 ところで、事業で車を使っている場合には、自動車税を経費で落とせるのをご存じでしょうか?本記事…
詳しくみる火災保険は経費にできる?仕訳と勘定科目の解説
万が一の備えとして加入する人が多い火災保険。火災保険は事業に必要な物件の保険料に限り、経費算入が可能です。反対に自宅のような事業と無関係の物件にかけた保険料は経費算入が認められません。今回は火災保険で経費にできるケース・できないケース、仕訳…
詳しくみる慶弔費の経理処理の方法
事業を行ううえで、祝儀や香典など慶弔費の支出は欠かせないものです。このような慶弔費は、取引先など社外に対するものと従業員や役員に対するものの二通りがありますが、それぞれ経理処理の方法に違いがあります。 ここでは、慶弔費の経理処理の方法につい…
詳しくみるキャッシュバックをされたとき・したときの仕訳を解説
法人カードを利用した際にキャッシュバックを受けた場合、「雑収入」という勘定科目を用いて会計処理することが一般的です。一方、自社がキャッシュバックした際には、「販売促進費」や「広告宣伝費」といった勘定科目で処理します。 本記事では、キャッシュ…
詳しくみる減損損失とは?計算方法や会計処理の方法、認識と測定や財務諸表への影響を解説
減損損失とは、企業が行った固定資産などの投資額と将来キャッシュフローを比べたとき、損が出ている場合の損失額のことです。投資の失敗は、投資家などの外部関係者に影響を与えるため、財務諸表などにその損失額を反映させる必要があります。ここでは減損損…
詳しくみる社債利息とはどんな勘定科目?仕訳から解説
社債利息は、会社が発行した社債の利息などに関する勘定科目です。社債利息に関連してどのような会計処理が必要になるのか、社債利息に関連のある仕訳や社債利息の税率、社債利息の納税方法について解説します。 社債利息とは 社債利息とは、会社が発行した…
詳しくみる