• 更新日 : 2025年11月12日

リース取引の消費税の取り扱いは?種類別の会計処理や仕訳、インボイス制度対応まで解説

リース取引における消費税の扱いは、経理処理の中でも特に間違いやすく、複雑なポイントの一つです。契約の種類によって消費税を控除するタイミングが異なり、インボイス制度の導入によって新たな対応も求められています。

この記事では、リース料にかかる消費税の基本的な考え方から、ファイナンス・リースやオペレーティング・リースといった契約による会計処理の違い、具体的な仕訳例、そしてインボイス制度導入後の変更点までわかりやすく解説します。

リース取引の消費税の取り扱いは?

まずは、なぜリース料に消費税がかかるのか、その基本的な仕組みと、例外的に非課税となるケースについて解説します。

リース取引は原則として消費税の課税対象

リース取引は、消費税法上「資産の譲渡」又は「資産の貸付け」等に区分されます。所有権移転ファイナンス・リース等は「資産の譲渡」、所有権移転外ファイナンス・リースやオペレーティング・リースは原則「資産の貸付け」として課税対象です。

理由は、消費税法において、国内で事業者が事業として対価を得て行う「資産の譲渡」「資産の貸付け」「役務の提供」が課税対象と定められているためです。リース会社が顧客にコピー機や社用車といった資産を貸し出し、対価としてリース料を受け取る行為は、「資産の貸付け」に該当します。

私たちが店舗で商品を購入する際に消費税を支払うのと同じように、リースというサービスを利用する対価にも消費税が課されます。事業者は、支払ったリース料に含まれる消費税額を「課税仕入れ」として計上し、納付する消費税額から差し引く「仕入税額控除」が可能です。

リース取引で消費税が非課税になるケース

一方で、土地のリース(賃貸借)や住宅用建物の貸付けなど、一部の取引は消費税が非課税となります。これは、消費税法で社会政策的な配慮などから課税対象とならない「非課税取引」として具体的に定められているためです。

社宅目的でアパートを賃借する場合でも、契約・用途が「住宅の貸付け」として明らかであれば非課税となります。ただし、業種や貸付期間、契約形態などによって課税関係が変わるため、個別契約の確認が必要です。

リース取引の種類による会計処理の違いは?

リースの消費税処理を理解する上で最も重要なのは、契約の種類によって消費税を控除するタイミングが異なるという点です。

リース取引の種類会計処理税務上の消費税処理
(仕入税額控除)
所有権移転ファイナンス・リース売買処理リース開始時に一括で控除
所有権移転外ファイナンス・リース
  • 原則:売買処理
  • 例外:賃貸借処理(中小企業等)
  • 原則:リース開始時に一括で控除
  • 例外:会計上賃貸借処理をしている場合はリース料支払時に分割で控除することも可能
オペレーティング・リース賃貸借処理リース料支払時に分割で控除

所有権移転ファイナンス・リース取引の会計処理

所有権移転ファイナンス・リース取引では、リース資産の引き渡しを受けた時点で、リース料総額に含まれる消費税の全額を一度に仕入税額控除します。

所有権移転ファイナンス・リースは、契約満了後に所有権が借手に移転するなど、実質的に分割払いで資産を購入したのと同様の経済的実態を持つ取引です。そのため、税務上も資産の「売買」があったものとして扱われます。この取引では、リース期間の開始時にリース料総額の現在価値もしくは見積現金購入価額を「リース資産」と「リース債務」として計上し、同時に消費税総額も「仮払消費税等」として仕入税額控除の対象とします。これにより、資産の引き渡しを受けた事業年度に消費税額の全額を控除することが可能です。

所有権移転外ファイナンス・リース取引の会計処理

所有権移転外ファイナンス・リース取引においても原則としてリース資産の引き渡しを受けた時点で、リース料総額に含まれる消費税の全額を一度に仕入税額控除します。ただし会計上賃貸借処理を行なっている場合は、毎月のリース料を支払う都度、その支払額に含まれる消費税額を分割して仕入税額控除することも認められます。

所有権移転外ファイナンス・リースにおいても資産の「売買」があったものとして扱われるため、消費税の処理は所有権移転ファイナンス・リースと同様です。ただし、中小企業等は賃貸借処理をすることも認められており、その場合はリース料を支払う都度、分割控除することも認められます。例えば、月額55,000円(うち消費税5,000円)のリース料であれば、毎月の支払い時に5,000円分の消費税を課税仕入れとして計上します。

オペレーティング・リース取引の会計処理

オペレーティング・リース取引では、通常の賃貸借契約と同様に、毎月のリース料支払時にその都度、消費税を仕入税額控除します。

オペレーティング・リースは、ファイナンス・リースの要件を満たさない短期的なリース契約などを指し、税務上も会計上も単純な資産のレンタル(賃貸借)として扱われます。支払ったリース料は「リース料」や「賃借料」などの費用勘定で処理し、その支払額に含まれる消費税を月々の課税仕入れとして計上します。経理処理が最もシンプルなリース形態です。

リース取引の具体的な仕訳方法

ここでは、リース契約の種類に応じた具体的な仕訳方法を、代表的な2つのケースで見ていきましょう。

所有権移転外ファイナンス・リースの仕訳方法

中小企業で多く採用される賃貸借処理では、支払ったリース料を費用として計上し、同時に消費税を仮払消費税として処理します。

例:月額リース料55,000円(本体価格50,000円、消費税5,000円)を普通預金から支払った場合

借方貸方
リース料50,000円普通預金55,000円
仮払消費税等5,000円

このように、毎月の支払いに応じて費用と消費税を計上していく、シンプルで分かりやすい方法です。

所有権移転ファイナンス・リースの仕訳方法

実質的な資産購入とみなされる売買処理では、契約開始時にリース料総額を資産と負債に計上し、消費税も一括で計上します。

例:リース料総額3,300,000円(本体価格3,000,000円、消費税300,000円)の機械をリース契約した場合(説明の簡便化のため、利子はないものとします)

<契約開始時の仕訳>

借方貸方
リース資産3,000,000円リース債務3,300,000円
仮払消費税等300,000円

<月々のリース料支払時の仕訳>

借方貸方
リース債務55,000円普通預金55,000円

この方法では、契約時に消費税を一括で計上し、その後は負債であるリース債務を返済していく形で処理します。また、計上したリース資産は固定資産として減価償却の対象となります。

インボイス制度によるリースの消費税対応の変更点

2023年10月1日に開始されたインボイス制度(正式名称:適格請求書等保存方式)により、リース取引を含む課税仕入れの仕入税額控除の要件が変更されました。

リース会社からのインボイス保存が仕入税額控除の要件に

インボイス制度では、適用税率や消費税額などが記載された「適格請求書」の保存が、仕入税額控除を行うための必須要件となりました。これはリース取引においても例外ではありません。受け取ったインボイスに、リース会社の登録番号などが正確に記載されているかを確認し、定められた期間保存してください。もしリース会社がインボイス発行事業者でない場合、原則としてその取引にかかる消費税の仕入税額控除はできなくなるため、契約前の確認が極めて重要です。

インボイスの交付方法は一括?分割?

インボイスの交付方法は、リース会社の方針により、取引開始時に一括で発行される場合と、月々分割で発行される場合があります。リース期間が長期にわたる場合、契約時にリース料総額を記載したインボイスを一度だけ発行するケースや、毎月の請求書をインボイスとして発行するケースがあります。どちらの形式で交付されるのかを事前にリース会社に確認し、社内の経理フローを整備しておくことが重要です。一括で交付された場合は、紛失しないよう厳重に管理しましょう。

リースの消費税に関してよくある質問(FAQ)

最後に、リースの消費税に関してよくある質問をQ&A形式で解説します。

リース料に消費税が二重課税されることはある?

原則として、リース料に消費税が二重課税されることはありません。

二重課税と誤解されやすいのが、リース料に固定資産税相当額や保険料相当額が含まれているケースです。これらの費用はそもそも消費税の課税対象外(不課税)でありますが、リース会社がいったん負担して、それをリース料に上乗せしていると言えます。リース料は課税取引であり、それの計算根拠が固定資産税や保険料であったとしても課税取引となり、二重課税されているわけではありません。

リースとレンタルの消費税の扱いに違いはある?

どちらも「資産の貸付け」として消費税の課税対象ですが、会計処理の考え方が異なります。

レンタルは1年以内の短期契約が前提であり、会計処理は必ず賃貸借処理となります。一方、リースは契約期間や内容によって、実質的な資産の売買とみなされ売買処理が適用される場合があるという点が大きな違いです。

リースの消費税の要点を押さえて適切な経理を

本記事では、リース取引と消費税の関係について、基本的な考え方から契約種類別の会計処理、インボイス制度への対応までを解説しました。

リース料の消費税は、原則として仕入税額控除の対象ですが、その計上タイミングは契約形態によって大きく異なります。自社のリース契約がどの種類に該当するのかを正確に把握し、インボイス制度の要件も満たしながら、適切な税務処理を行いましょう。


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