• 更新日 : 2024年8月8日

発注書や注文書の保管期間は?個人や法人の年数、保存しないリスクも解説

注文書や発注書は、税法で定められた国税関係書類のため、法律に基づいた期間の保管が義務付けられています。そのため、法人では原則7年、個人事業主では原則5年という保管期間を守る必要があります。この期間は残業代計算の根拠となる勤怠記録の保管期間(労働基準法)とは異なるため注意が必要です。

企業の担当者は、煩雑な書類管理に加え、2024年1月から本格始動した電子帳簿保存法への対応という実務的な課題に直面しており、正確な知識が求められます。

この記事では、法人・個人事業主別の注文書の保管期間、法的根拠、保管していない場合のリスク、そして最新の電子帳簿保存法に対応した保存方法まで、わかりやすく解説します。

発注書や注文書の保存期間は?

発注書や注文書を含む国税関係帳簿書類については、一般に法人は原則7年(欠損金関係は最大10年)、個人事業主は原則5年の保存義務があります。

法人の場合:原則7年、最大10年

法人は、帳簿や帳簿にかかわる取引関連の書類について、確定申告書の提出期限の翌日から7年保存することが定められています。ただし、青色申告法人で欠損金(赤字)が生じた事業年度、または青色申告書を提出しなかった事業年度で災害損失欠損金が生じた場合には、その事業年度の注文書を10年間保管しなければなりません。これは、欠損金を翌事業年度以降に繰り越して、将来の法人税額を減らす「繰越控除」の制度が10年間適用されるためです。

また、会社法では会計帳簿および事業に関する重要書類を10年間保管するよう定めています。注文書がこれに該当するかはケースバイケースですが、税法上の期間より長い会社法の期間に合わせて、一律10年間保管するとより安全といえるでしょう。

参照:会社法 第四百三十二条(会計帳簿の作成及び保存)|e-Gov法令検索

個人事業主の場合:原則5年、消費税納税事業者なら7年

個人事業主については、所得税法により注文書や発注書などの書類を5年保存することが義務付けられています。これは、青色申告・白色申告のどちらであっても同じです。

ただし、消費税の課税事業者である個人事業主は注意が必要です。消費税法では、仕入税額控除の適用を受けるための証憑書類を7年間保管することが義務付けられています。そのため、前々年の課税売上高が1,000万円を超えるなどして消費税の納税義務がある場合は、注文書も7年間保管する必要があります。

また、赤字で所得税の確定申告を行わなかった事業年度の注文書や発注書も保存義務の対象になりますので注意しましょう。

参照:No.6621 帳簿の記載事項と保存|国税庁

(起算日)保管期間はいつから数える?

保管期間の数え始め(起算日)は、その事業年度の確定申告書の提出期限の翌日からカウントを開始します。書類を作成したり受け取ったりした日ではありません。

例えば、3月31日決算の法人の場合、2024年4月1日から2025年3月31日までの事業年度に関する注文書は、確定申告の提出期限である2025年5月31日の翌日、つまり2025年6月1日から7年間(または10年間)保管することになります。

発注書や注文書を保管していないリスクとは?

貸借対照表損益計算書などの計算書類、帳簿や事業に関する重要書類は、会社法において10年の保存期間が定められていますが、発注書や注文書はそれ以外の書類と考えますので、先に説明した法人税法上の保存期間7年(青色申告の事業年度に欠損金が出た場合などは10年)を気にしていれば問題ないです。

会社法の場合は違反すると過料に処される可能性がありますが、法人税法上の保存義務を守らなくても罰則はありません。

ただ、罰則はないものの、規則違反時のペナルティとして青色申告者の承認を取り消されることがあります。とくに2024年1月からは電子取引データの電子保存が完全義務化され、電子メールやWebダウンロード等で授受した注文書は紙保存に代えられません。

また、発注書や注文書などが適切に保存されていないと取引の証明ができませんので、法人税や所得税、消費税の計算において内容が否認される可能性があります。規定されている保存期間は守って書類を保存するようにしましょう。

発注書や注文書の保存方法とは?

2024年1月1日より、電子帳簿保存法が改正され、保存方法のルールが変更されました。受け取った注文書の形式に応じて、正しい方法で保存しなければなりません。

形式保存方法ポイント
電子データ
(PDF形式、電子取引)
電子データのまま保存データを紙に出力しての保存は不可。
紙(郵送、手渡しなど)紙のまま保存 または スキャンして電子保存どちらかの方法を選択可能。

電子データで受け取った場合(電子取引)

メールの添付ファイルや、WebサイトからダウンロードしたPDF形式の注文書など、電子的に授受した取引情報(電子取引)は、電子データのまま保存することが義務化されています。紙に印刷してファイリングする方法は、原則として認められません。

電子取引によるデータの保存方法としては、やり取りしたシステム上での保存、PDFファイルなどでの保存、画面のスクリーンショットによる保存、などがあります。いずれの方法を採用するにしても、以下の保存要件を満たさなくてはなりません。

電子データで保存する際は、以下の要件を満たす必要があります。

  • 真実性の確保
    タイムスタンプを付与する、訂正・削除の履歴が残るシステムを利用する、などの措置をとる。
  • 可視性の確保
    取引年月日、取引金額、取引先で検索できるようにする。ディスプレイやプリンタ等を備え付け、速やかに出力できるようにしておく。

参照:電子帳簿保存法が改正されました|国税庁

紙で受け取った場合(スキャナ保存)

郵送や手渡しで受け取った紙の注文書は、スキャナーで読み取って電子データとして保存する「スキャナ保存」が認められています。スキャナ保存を行うことで、書類の保管スペースを削減し、検索性を高めることが可能です。

スキャナ保存を行う場合も、電子取引と同様に真実性や可視性の確保に関する要件を満たす必要があります。

紙のまま保管する場合のファイリング術

従来どおり、紙のまま保管することももちろん可能です。紙で保管する場合、法律上の細かなルールはありませんが、税務調査などで提示を求められた際に、すぐに見つけ出せるように整理しておくことが肝心です。

  • 取引先別ファイリング:取引先ごとにファイルを分け、時系列に並べる。
  • 月別ファイリング:月ごとにファイルを分け、その中で取引先順や日付順に並べる。

どちらの方法でも、インデックスを付けたり、背表紙に年度や取引先名を明記したりすることで、検索性が向上します。

保管期間が過ぎた発注書や注文書の正しい破棄方法は?

法律で定められた保管期間を経過した注文書は、破棄することができます。しかし、情報漏洩のリスクを避けるため、適切な方法で処分しなければなりません。

紙の書類の廃棄方法

紙の注文書には、取引先の情報や金額など、重要な情報が含まれています。そのままゴミ箱に捨てるのではなく、機密性を保ったまま処分しましょう。

  • シュレッダー
    オフィス用のシュレッダーで細かく裁断する。復元が困難なマイクロカット方式がより安全です。
  • 溶解処理
    専門の業者に依頼し、書類を箱ごと溶かしてリサイクルする方法。大量の書類を安全かつ効率的に処分できます。

電子データの削除方法と注意点

電子データの場合、パソコンのゴミ箱を空にするだけでは、完全に削除されたことにはなりません。専用のソフトを使えば復元できてしまう可能性があります。

サーバーやクラウドストレージ上のデータを削除する際は、サービスの利用規約やデータ管理ポリシーを確認しましょう。完全に削除するための機能が提供されている場合もあります。電子データを破棄する際は、誤って必要なデータまで消してしまわないよう、バックアップを確認するなど、慎重な作業が求められます。

電子帳簿保存法の改正点と対応は?

電子帳簿保存法は、社会全体のデジタル化を推進するために、これまでも何度か改正されてきました。特に2022年1月の改正では保存要件が大きく見直され、2024年1月からの完全義務化に向けた基盤となりました。

2024年1月から電子取引データの電子保存が義務化

2024年1月1日以降は、すべての事業者が電子取引データを要件に従って電子保存しなければなりません。

最大のポイントは、「電子取引で授受したデータの電子保存の義務化」です。_
※ここでいう「電子取引データ」とは、メール添付のPDF、クラウド請求システム、EDI取引、Webダウンロード形式のデータなど、電子的に授受したすべての取引情報を指します。

2023年12月31日までは、やむを得ない事情がある場合に紙での保存を認める「宥恕(ゆうじょ)措置」がありましたが、この措置は終了しました。

発注書と注文書はケースごとに保存方法を把握しておこう

注文書の保管期間は、法人で原則7年(最大10年)、個人事業主では原則5年(消費税課税事業者は7年)です。この期間は、確定申告提出期限の翌日から起算されます。保管義務を怠ると、追徴課税や青色申告の取り消しといった深刻なリスクを招きかねません。

特に2024年からは電子帳簿保存法への対応が本格化し、電子取引で受け取った注文書は電子データのまま保存することが義務付けられました。紙での保存やスキャナ保存も含め、自社に合った管理体制を早期に構築することが重要です。
自社の取引形態に応じて「電子取引」「スキャナ保存」「紙保存」の3分類で管理ルールを明確にし、社内規程(事務処理規程等)を整備しておくことは、税務調査対応でも重要です。

また、注文書の適切な保管は、法律を守るだけでなく、企業の内部統制を強化し、業務の効率化を進める上でも大きな意味を持ちます。この機会に、社内の書類管理方法を見直してみてはいかがでしょうか。

よくある質問

発注書や注文書の保存期間は?

法人の場合は7年(青色申告をした事業年度で欠損金が生じた場合などは10年)、事業や不動産の貸付を行う個人は5年保存しておかなくてはなりません。詳しくはこちらをご覧ください。

発注書や注文書の保存方法は?

紙の原本を保存する方法、原本をスキャンして電子保存する方法、電子データで授受したデータを電子保存する方法があります。詳しくはこちらをご覧ください。


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