- 更新日 : 2025年2月20日
年商と年収の違いとは?中小企業が信頼できる取引先を見分けるために
メディアで企業の規模を表す際によく用いられる「年商」ですが、これが何を意味するかはご存知でしょうか。
年商が1億円を超えているからといって、必ずしもその企業がそれだけの利益をあげているとは限りません。今回は、「年商」の意味と「年収」との違い、さらには年商以外にも企業の信用を表す財務的な安全性をご紹介していきます。
年商と年収の違いとは?
まず、「年商」についての意味ですが、年間を通してのその事業の売上のことを年商と言います。つまり、「年商1億円の企業」といえば、年間の売上が1億円の企業ということになります。
しかし、企業の売上だけでは、その企業が利益をあげていて、信用できる企業かどうかは判断できません。売上は何十億とあがっていても赤字の企業も存在するのも事実です。
それに対して、年商とよく混同されるのが年収です。年収については、年間を通してのその人の所得です。個人事業主の場合は、その事業の利益に相当する所得金額であり、中小企業の経営者の場合は、役員報酬の年間合計額です。中小企業の役員報酬についても、企業の利益の金額と連動して設定されることが多いことから、年商と比較して年収の方が企業の実態を表す数字であると言えるかもしれません。
年商だけでは不十分! 信用できる企業の見分け方とは
先述した通り、年商については企業の売上を表すだけのものです。したがって、年商ばかりを誇張する企業には注意が必要です。いくら年商が高くても、それはあくまでも売上規模が大きいだけであって、信用できる企業とは言えません。
では、取引する上で、信用できる企業とはどのような企業でしょうか。どのような数字を確認する必要があるのでしょうか。こちらについて財務分析の安全性という考え方から見ていきます。
中小企業の取引について、最も避けなければならないことの一つは、キャッシュの入金が遅れることです。サービスや商品を提供したにもかかわらず、その代金が期日になっても入ってこないという状況は、自社の資金繰りに大きな影響を与えます。
財務分析の安全性分析は、その重要な「キャッシュの支払能力」を重視して企業の安全性を分析します。安全性分析に用いられる指標のうち、特に重視されるのが自己資本比率です。
自己資本比率(%) = 自己資本(純資産) / 総資本(純資産+負債) × 100
自己資本比率とは、その企業の総資本のうち、どれくらいの割合が自己資本であるのかを表す指標です。すなわち、現状の資産(現預金・設備など)の源泉は自己資本(資本金として出資した金額と、企業活動によって得た利益)であるのか、あるいは他人資本(銀行からの借入など)であるかを表しています。
例えば、銀行からの借入が多くて自己資本比率が低い企業は、その借入条件の変更などがあった場合にキャッシュが回らなくなってしまう事態に陥る可能性があります。
すなわち、自己資本比率が低い企業というのは他人資本によって大きく影響されるケースも考えられるため、安全性が低いということになります。
そういった面も含めて、この自己資本比率というのは高いほど安全な企業だと言えます。業種や企業形態などによっても異なりますが、一般的には50%以上が優良な企業であり、10%未満の場合は安定性のない企業だと言われています。
その他にも、安全性分析には「流動比率」や「固定比率」など、さまざまな指標があり、そのような指標から総合的に企業の安全性を判断することになります。(安全性分析についてより詳しく知りたい方はこちらから)
もちろん、このような指標については、その企業の財務諸表(損益計算書や貸借対照表)を確認しなければ正確には分かりません。基本的には上場企業でない限りは財務諸表を公開していることはほとんどありませんので、取引先の企業について調べたとしても数値は分かりません。
この安全性分析の概念を意識しておくことで、取引先の企業の状況について、年商などのあいまいな指標だけではなく、キャッシュの支払能力という概念から信用できる企業なのかを判断しようとします。あるいは、逆に取引先や銀行などから信用されるために、自社の財務的な安全性を高めることの重要性についても気付くことになるでしょう。
財務的な安全性を高めることで、銀行からの融資が受けられるだけではなく、これまでよりも大きな仕事や継続的な案件を得られるチャンスにつながるかもしれません。
まとめ
最後に、今回のポイントについてまとめておきましょう。
・年商というのは、その事業の年間での「売上高」であり、利益の金額とは異なる
・信用できる企業を見分ける一つの手段として、安全性分析がある
・安全性分析に用いられる指標を意識して改善することは、自社の信用を高める上で有効である
信用できる企業を見分けることは難しいことですが、「年商」などの一つの要素で企業を見るのではなく、今回紹介した安全性分析も含めて、財務的な観点から総合的に判断することが重要です。
関連記事
・中小企業の何割が黒字企業? 中小企業が生き残るために必要なこと
・中小企業向けの会計ルールを知っておこう
・数字で読み解く! 日本の中小企業の状態とは
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
会計の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
経理の「年収1000万円求人」が増加 稼げる経理が持つスキルとは
年功序列型の賃金制度が廃れ始め、結果を出す人が稼げる時代へとシフトしている昨今。特に、実力主義が受け入れられている転職市場では、求人の給与格差が広がっているそうです。 定量的な結果が出やすい「営業職」や専門的な知識が求められる「コンサルタン…
詳しくみる工業簿記と商業簿記の違いを解説!難易度やおすすめの勉強方法も
製造業などでは、製造原価計算のため工業簿記を使用します。生産現場を持つ製造業における収益最大化・コスト管理に工業簿記は欠かせません。工業簿記では商業簿記にはなかった考え方もあり、特に「原価」というものの考え方がよく理解できます。この記事では…
詳しくみる出張の稟議書の書き方は?テンプレートや例文でポイントが分かる!
出張の稟議書とは、出張に際して日程や予算の承認を得るために作成する書類です。日時や交通手段は最適か、経費は予算の範囲内かがチェックされます。 本記事では、出張の稟議書を作成するケースや書き方、例文を紹介します。出張の稟議書作成に活用できるテ…
詳しくみる山形で経理代行サービスを依頼するには?費用・依頼先や対応範囲を解説
山形県で経理代行サービスをお探しですか?この記事では、山形県で経理代行サービスを利用する際の料金相場やメリット、サービスの主な対応範囲、自社に最適なサービスの選び方などを解説します。後継者問題や人手不足の解決、事業集中を実現しましょう。 山…
詳しくみる建設業の工事完了報告書とは?書き方やテンプレートを紹介
工事完了報告書とは、主に建設業者が工事の完了を報告する書類です。契約どおりに進んだことを確認する目的で、元請けなどから提出を求められることがあります。 雛形やテンプレートを活用すれば、工事完了報告書の作成も簡単です。本記事では、工事完了報告…
詳しくみる業務効率化につながる自動化48例!失敗を防ぐコツも解説
日々の業務効率化を進める中で、「今のやり方のままでは、これ以上の改善は難しい」と感じてはいませんか。人手不足や生産性の向上が課題となる中、業務効率化の次のステップとして「自動化」が注目されています。これは、今ある手順を速くするだけでなく、作…
詳しくみる