- 更新日 : 2025年5月7日
株式交換の仕訳とは?親会社・子会社の会計処理をわかりやすく解説
株式交換は会社同士の株式をやり取りして、親会社・子会社の関係を作るM&A手法です。現金を使わずに他社を買収できるメリットがありますが、仕訳や税務上の扱いに独特のルールがあります。
本記事では、株式交換の仕訳や会計処理について、親会社・子会社それぞれの立場からわかりやすく解説します。メリット・デメリット、適格・非適格の税務区分、仕訳例、消費税の扱い、のれんの処理方法まで幅広くカバーしますので、ぜひ参考にしてください。
目次
株式交換の仕訳とは?
株式交換とは、ある会社(将来の親会社)が他社(将来の子会社)の発行済株式をすべて取得し、その見返りに親会社の株式を子会社の株主に交付することで、両社を完全親子関係にする手法です。
簡単にいうと、「会社の株式同士を交換することで完全親会社・完全子会社(100%子会社)の関係を作る」M&Aの方法です。合併と異なり子会社となる企業は解散せずそのまま存続しますが、株主が親会社に入れ替わる形になります。
株式交換では現金のやり取りは発生せず、親会社の株式(自社株)を対価として用います。そのため通常の売買と仕訳が異なります。株式交換後は親会社が子会社株式を取得しますが、親会社以外の当事者(子会社や両社の株主)は基本的に仕訳を行わないケースが多い点も特徴です。要するに、帳簿上の記録が主に必要になるのは親会社側です。
株式交換のメリット・デメリット
株式交換は「現金不要でスピーディーに100%子会社化できる」という大きな利点がある一方、「親会社株主の持分変化」や「現金取得できない」などのデメリットもあります。
- 株式交換の主なメリット
親会社は自社の株式を渡すだけで会社を買収できるため、資金の負担が軽くなります。手続きが整えば一度に全株式を取得でき、迅速に100%子会社にすることも可能です。子会社の事業や名前をそのまま残せる点も安心です。売り手側も親会社の株式を受け取ることでグループに関わり続けられます。さらに、条件を満たせば税金の負担を先送りにできる制度もあります。 - 株式交換の主なデメリット
親会社が新たに株式を発行すると、もともとの株主の持株比率が下がるおそれがあります。子会社側の株主は現金を得られず、株式のままだとすぐにお金に変えるのが難しい場合もあります。また、子会社のすべての資産や負債も引き継ぐことになるため、不要な借金などを抱えるリスクもあります。さらに、株式の交換比率を決めるためには専門的な評価が必要で、費用や手続きの手間もかかります。
株式交換の種類(適格株式交換・非適格株式交換)
株式交換は、税務上「適格」と「非適格」の2つに分かれます。適格株式交換になるかどうかは、一定の条件を満たしているかによって変わります。
適格株式交換
親会社の株式だけを対価に使い、完全子会社化や事業の継続がある場合など、条件を満たせば「適格株式交換」となります。この場合、子会社や子会社の旧株主にはその時点で税金がかかりません。
非適格株式交換
条件を満たさない場合は「非適格」となり、通常の株式譲渡と同じように扱われます。子会社側では、当該株式交換等直前に有する時価評価資産の評価損益が益金の額または損金の額に算入されます。
子会社の株主における株式交換の法人税の扱い
完全親法人株式等のみが交付される場合、子会社の株主はその子会社株式を簿価で譲渡したものとされるため、完全子法人株式の譲渡損益を繰り延べることとなります。
完全親法人株式等のみが交付される場合以外の場合においては、子会社の株主はその子会社株式を時価で譲渡したものとされます。実務上は受け取る対価(親会社株式や現金等)の時価で譲渡したとされ、子会社株式の簿価を上回る場合は譲渡益が発生し、税金が課されます。
子会社の株主における株式交換の消費税の扱い
株式交換そのものには消費税はかかりません。株式の譲渡は消費税法上「有価証券の譲渡」に該当するため非課税取引扱いとなります。したがって株式交換を行っても消費税額そのものは直接には発生しません。ただし、非課税取引があることで決算時の課税売上割合に影響が出る場合があります。株式譲渡額の5%が非課税売上高として計上されるため、場合によっては仕入れにかかった消費税の控除割合が減り、納税する消費税額が増えることがあります。特に課税売上割合95%未満の企業では注意が必要です。とはいえ、基本的に株式交換自体は消費税非課税なので、日々の仕訳では消費税の計上は不要です。
株式交換の仕訳・会計処理のルール
株式交換では、会計上と税務上のルールをそれぞれ理解することが大切です。
会計上の区分
株式交換は企業結合の一種で、「誰が誰を取得したか」によって処理方法が異なります。「取得」と「共通支配下の取引」の2つの処理方法があります。
- 取得として扱う場合:親会社が外部の会社を買収し、子会社とする形です。連結財務諸表上、子会社の資産・負債を時価で評価し、差額があれば「のれん」として資産に計上します。
- 共通支配下の取引として扱う場合:既に子会社株式の50%超を有する場合において、完全子会社とするために実施される株式交換。連結財務諸表上、のれんは発生しません。
税務上の区分
税務では「適格」と「非適格」に分かれます。
- 適格株式交換では、子会社や株主に譲渡益課税がなく、特別な税務調整も発生しません。資産も簿価で引き継がれます。
- 非適格株式交換では、子会社の資産を時価で評価し、評価益がある場合は益金に算入されるため法人税がかかります。また、対価が親会社株式のみの場合を除き、子会社の株主も譲渡益課税の対象となります。
適格かどうかで税金の有無が変わるため、計画段階での確認が欠かせません。
例えば子会社が帳簿価額1,000万円・時価1,500万円の土地を持っていた場合、非適格株式交換では以下のような仕訳で差額500万円を利益計上します(評価益に法人税が課されます)。
例:子会社が土地の含み益を計上する仕訳(非適格株式交換の場合)
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
土地(評価替え) | 500万円 | 固定資産評価益(収益) | 500万円 |
このように、非適格の場合は子会社において含み損益を計上する処理が発生します。一般的には会計上の仕訳は計上せず、税務上の別表調整として益金に算入されます。
また、対価が親会社株式のみの場合を除き、子会社の株主(売り手側)も、持っていた子会社株式を時価で手放し親会社株式を取得した形になるため、自社の帳簿で有価証券の売却益または売却損を計上する仕訳が発生します。簿価と時価の差額を益金または損金に計上し、その年度の課税所得に含める必要があります。
【完全親会社】株式交換の仕訳・会計処理方法
株式交換では親会社が中心的な役割を果たし、自社の株式を交付して子会社株式を取得します。親会社が行う仕訳では、主に以下のような勘定科目が登場します。
- 子会社株式: 親会社が取得した子会社(完全子会社)の株式を表す資産の科目です。いわゆる投資勘定で、親会社の資産として計上します。
- 資本金: 親会社が新株発行して対価を支払う場合に増加する資本の科目です。新株発行により払い込まれた額のうち、資本金に組み入れる部分を示します。
- 資本剰余金(資本余剰金): 資本金以外に計上される払い込み額の科目です。株式発行時、払い込まれた金額のうち資本金に入れなかった分は原則この資本剰余金に計上されます。
- 自己株式: 親会社が保有している自社の株式です。過去に自社株買いした株式などが該当し、貸借対照表上は純資産のマイナス(自己株式△)として扱われます。株式交換では、新株発行の代わりに親会社が自己株式を交付するケースもあります。その場合、この自己株式勘定が減少する仕訳となります。
親会社の具体的な仕訳例をいくつかのケース別に見てみましょう。
ケース1:親会社が新株を発行して子会社株主に交付する場合(一般的な株式交換)
親会社が自社の新株を発行してグループ外の会社の全株式を取得して子会社化したときの仕訳です。借方には取得した「子会社株式」、貸方には発行した株式に対応する資本の増加を計上します。増加する株主資本は「資本金」と「資本剰余金」に分けるのが通常です。例えば親会社が時価1,000万円分の株式を発行し、子会社株式を取得した場合、次のような仕訳になります。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
子会社株式 | 1,000万円 | 資本金 | 500万円 |
資本剰余金 | 500万円 |
親会社は子会社株式という資産を1,000万円で取得しました。一方で、同額だけ株式を発行しています。発行した株式のうち500万円を資本金に組み入れ、残り500万円を資本剰余金としています。結果として貸借が一致し、子会社株式1,000万円の取得と引き換えに株主資本(資本金+資本剰余金)が合計1,000万円増加したことになります。なお、この段階では子会社株式の取得価額1,000万円と子会社の純資産(公正価値)との差額は親会社の個別財務諸表上では表面化しません(差額はのれんとしては計上されません)。のれんは連結決算で初めて認識される点に注意してください。
ケース2:親会社が自己株式を交付する場合(自己株式の処分)
親会社が新株発行ではなく、以前取得して保有していた自己株式を利用して子会社株式を取得するケースです。現金を用意せずに済むため実務上よく行われます。この場合、親会社の貸借対照表上は自己株式(純資産のマイナス項目)の減少として処理されます。例えば親会社が帳簿価額1,000万円(時価も1,000万円とする)で保有する自己株式を子会社株主に交付し、子会社株式1,200万円分を取得したとします。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
子会社株式 | 1,000万円 | 自己株式 | 1,000万円 |
親会社は1,000万円分の自己株式を引き渡したのと引き換えに、子会社株式1,000万円が親会社の資産として計上されました。今回のケースでは資本金の増加はなく、親会社の総株数も変わりません(持っていた自社株を渡しただけ)。結果として、親会社の株主資本は増減しませんが、純資産のマイナス項目である自己株式が減り子会社株式という資産が増えています。
自己株式処分差額の扱い: もし自己株式の帳簿価額と子会社株式の取得価額(=交付した自己株式の時価)が異なる場合、その差額は資本剰余金で調整します。例えば親会社が帳簿価額800万円の自己株式(時価1,000万円)を使って、子会社株式を取得したケースでは次のような仕訳になります。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
子会社株式 | 1,000万円 | 自己株式 | 800万円 |
資本剰余金 | 200万円 |
子会社株式1,000万円取得に対して、自己株式を帳簿価額800万円減少させ、差額200万円を資本剰余金に計上します。この200万円は親会社にとって自己株式処分による株主資本の増加であり、利益ではないためP/L(損益計算書)には計上しません。その他資本剰余金として株主資本に組み入れる処理となります。逆に自己株式の帳簿価額のほうが高かった場合(例えば自己株式の帳簿価額が1,200万円で時価が1,000万円の場合)、不足分200万円は資本剰余金の減少として処理されます。いずれにせよ、自己株式の処分差額は損益ではなく資本取引として扱われます。
ケース3:無対価株式交換(対価を伴わない株式交換)の場合
稀なケースですが、無対価株式交換についても触れておきます。同一グループ内の再編などで、親会社となる企業の株主と子会社となる企業の株主が実質的に同一である場合、親会社は子会社株主に新株を交付しなくても100%子会社化が成立することがあります。つまり対価を支払わずに子会社株式を取得するケースがあり、これを無対価株式交換と呼びます。この場合の会計処理には会社計算規則でも会計基準でも明確な規定がありません。無対価株式交換を行う場合は、公認会計士などの専門家に会計処理をご相談ください。
なお、無対価であっても、税制適格要件(完全支配関係の継続など)を満たせば適格株式交換と認められます。
【完全親会社の株主】株式交換の仕訳・会計処理方法
親会社の株主は、株式交換で新株が発行されても保有株数が変わらないため、帳簿上の仕訳は不要です。取引の当事者ではないため、納税義務も生じません。
ただし、新株発行によって持株比率が下がることで、株式の価値や配当への影響が出ることがあります。仕訳は不要ですが、株主として比率の変動に注意しておくことが大切です。
【完全子会社】株式交換の仕訳・会計処理方法
株式交換で子会社になっても、会社の中の資産や負債は動かないため、通常は仕訳不要です。株主が変わるだけで、帳簿はそのままで問題ありません。特に適格株式交換なら、会計・税務処理も発生しません。
ただし、以下のような場合は仕訳が必要になることもあります。
- 自己株式の処分: 子会社が自己株式を保有している場合、株式交換の前に自己株式を消却するのが一般的です。
- 非適格株式交換: 税務上、子会社の資産の時価評価が必要となり、評価損益が益金や損金に算入され、法人税等への影響が生じます。。
基本的には、子会社側は仕訳不要ですが、例外的なケースでは対応が求められます。
【完全子会社の株主】株式交換の仕訳・会計処理方法
適格株式交換の場合、対価が親会社株式のみとなるため子会社株主の持つ株式は簿価で親会社に譲渡されたとみなされます。簡単に言えば「株式を入れ替えただけで、売ったことにはしない」という扱いです。この場合、子会社株式の帳簿価額をそのまま新たに取得した親会社株式に付け替える仕訳を行います。利益も損失も認識しません。仕訳例を示します。
例:子会社株主X社が、子会社株式(帳簿価額200万円)を親会社株式と交換した(適格)場合
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
親会社株式 | 200万円 | 子会社株式 | 200万円 |
X社は保有していた子会社株式を帳簿上から消し、新たに取得した親会社株式を同じ金額で計上しました。簿価200万円での入れ替えにすぎないため、貸借差額はなく、損益も発生しません。これによりX社の帳簿上、投資の対象が子会社から親会社に置き換わった形になります。適格株式交換であればこのように売却損益を認識しない処理となり、結果として税金も生じません(将来親会社株式を売却したときまで課税を繰り延べ)。
非適格株式交換(対価が親会社株式のみ)の場合: この場合は適格株式交換の場合と同じで、譲渡損益は発生しません。
非適格株式交換(対価が親会社株式のみでない)の場合: 対価が親会社株式のみでない非適格株式交換では、子会社株主は株式を売却し対価として親会社株式を買ったのと同じ扱いになります。したがって元の子会社株式の簿価と新たに受け取った親会社株式の時価との差額を売却益または売却損として認識する仕訳を行います。例を示します。
例:子会社株主Y社が、子会社株式(簿価300万円)を株式交換で手放し、親会社株式(時価500万円)を受け取った(非適格)場合
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
親会社株式 | 500万円 | 子会社株式 | 300万円 |
有価証券売却益(特別利益) | 200万円 |
Y社は帳簿から子会社株式300万円を消し、新たに親会社株式500万円を計上しました。差額の200万円は有価証券売却益として収益に計上されます。これは子会社株式を売却したことによる利益です。当然この200万円に対して法人税等の課税が発生します。逆に、もし親会社株式の時価のほうが低ければ売却損を計上することになります。その場合は (借)親会社株式○○ / (借)有価証券売却損○○ / (貸)子会社株式○○ という仕訳になり、損失として処理されます。いずれにせよ、対価が親会社株式のみでない非適格株式交換では株主にとって譲渡が完了したものと扱われるため、帳簿上も投資の清算を行うイメージです。
以上が子会社株主の仕訳処理です。簡潔にまとめると、適格株式交換もしくは対価が親会社株式のみの非適格株式交換なら「株式の入れ替え」(簿価引継ぎ)で利益・損失を計上せず、対価が親会社株式のみでない非適格株式交換なら「子会社株式を時価で売って、その資金で親会社株式を買った」として差額を利益か損失に計上するという違いになります。
基本的には対価をすべて株式で受け取ることが節税上重要と言えるでしょう。
株式交換でのれんはどう処理する?
株式交換に関連して発生し得る「のれん」(営業権)とは、M&Aで企業を買収した際に、支払った対価が被買収企業の純資産を上回った差額のことです。要するに「買収金額 − (買収先企業の資産−負債の正味)」の超過分であり、将来の利益獲得力やブランド価値に対して支払われたものと考えられます。
株式交換の場合、親会社の個別財務諸表上では、取得した子会社株式は支払った対価の金額で計上されます。例えば親会社が時価10億円分の新株を発行して子会社株式を株式交換で取得した場合、個別財務諸表上は子会社株式10億円と資本金等10億円が計上され、差額はありません。
この時点ではのれんは親会社の帳簿に現れないのです。ではのれんはどこで出てくるかというと、連結財務諸表を作成する際です。
親会社は連結決算において子会社を取り込む際に、子会社株式(投資額)と子会社の純資産を相殺消去します。その際、親会社が計上した子会社株式の金額と、子会社の純資産(時価評価後)の金額に差があれば、その差額が初めて「のれん」として計上されます。例えば、親会社が子会社株式取得に払った価値が12億円、子会社の純資産(時価評価)が10億円なら、連結財務諸表上2億円ののれんが計上されます。
日本基準では、一度計上したのれんは無形固定資産として計上し、規則的に償却していく必要があります。償却期間は「その効果の及ぶ期間」で最長20年とされていますが、実務上は5年〜10年程度の比較的短期間で償却するケースも多いです。償却方法は定額法(毎期同額償却)が一般的です。
償却の仕訳は通常、毎期末に以下のように行います。
例:のれん1,000万円を10年で償却の場合、毎年100万円ずつ償却
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
のれん償却費(販管費) | 100万円 | のれん | 100万円 |
のれん償却費として費用計上し、のれんの帳簿価額を毎期減らしていきます。償却期間中は利益が圧迫されますが、のれんは企業のブランド力や技術力、顧客ネットワークなどの見えない資産価値で、時間の経過とともに価値が変動する可能性があるため、規則的に費用化していくことが健全とされています。なお、国際財務報告基準(IFRS)ではのれんを償却せず減損テストのみで評価する方法が採られています。しかし日本企業の多くは日本基準を採用しているため、基本的にはのれんは償却する会社が多いです。
負ののれんの扱い: 支払った対価が取得企業の純資産より低かった場合、差額は負ののれんと呼ばれます。これは「安く買えた」ことによる利益であり、日本基準では発生時に特別利益として一括計上します。株式交換で負ののれんが発生するケースはあまり多くありませんが、業績不振企業を安値で子会社化したような場合には起こり得ます。
100%グループ内株式交換とのれん:共通支配下の取引の場合は、会計上はのれんは計上されません。例えば子会社が有する孫会社株式を親会社が直接保有する形に変えるための株式交換のように、グループ内で単に株式が移動しただけの場合は新たなのれんは生じません。この点も押さえておくと良いでしょう。
まとめると: 株式交換では親会社の個別財務諸表ではのれんは出ず、連結決算で初めてのれんが計上されることになります。発生したのれんは無形固定資産として計上して定期償却し、費用化していきます。中小企業で連結決算を作成しない場合、表面的にはのれんの処理は見えませんが、買収劇の裏側では「支払ったプレミアム」としてのれんが発生していることを認識しておきましょう。
以上、株式交換に関する仕訳・会計処理の各論点をすべて解説しました。それでは最後に、本記事の内容を簡単に振り返りましょう。
株式交換の仕訳・会計処理を正しく理解しよう
株式交換は現金を使わないM&A手法で、慣れないと戸惑うかもしれませんが、基本を押さえれば対応できます。
親会社では対価の出し方に応じて、資本金や自己株式などの仕訳が必要になります。一方、親会社の株主や子会社自身には、通常仕訳は発生しません。
子会社の株主は、適格株式交換や対価が親会社株式のみの非適格株式交換なら仕訳なし、対価が親会社株式のみでない非適格株式交換なら売却として利益や損失を計上します。また、連結決算でのれんが出る場合は償却が必要になります。
株式の譲渡は消費税の対象外ですが、課税売上割合に影響があり、納税額に影響することもあるため、税務面も事前に確認しておきましょう。不安なときは専門家のサポートを活用してください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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