- 更新日 : 2025年4月30日
定額小為替の仕訳とは?勘定科目や消費税の扱いを具体例つきで解説
定額小為替は、現在も公的書類の請求や少額の対外支払いなどで使われている送金方法です。金券としての性質を持ちつつ、購入時の手数料には消費税が課税されるなど、会計処理に迷いやすい点もあります。この記事では、定額小為替の購入・使用・受け取り時の仕訳方法を具体例つきでわかりやすく解説します。
目次
定額小為替とは?
定額小為替は、郵便局(ゆうちょ銀行)で発行されている定額の証書で、少額の送金に用いられます。普通郵便で送ることができるため、現金書留よりも安く・手軽に利用できる場合があります 。受取人は、証書を郵便局の窓口に提示することで、券面に記載された金額の現金を受け取れます。
定額小為替の利用場面
定額小為替は、さまざまな場面で利用されますが、特に多いのは戸籍謄本や住民票といった公的書類を郵送で請求する際の手数料の支払いです。たとえば遠方の役所に書類を請求する場合、現金ではなく定額小為替を同封して送ることが一般的です。
また、弁護士などの専門家が、クライアントの代わりに書類を郵送で請求する際にも利用されます。相続手続きの際に、複数の戸籍謄本等を取り寄せる必要が生じた場合、定額小為替が手数料の支払い手段として用いられます。
その他、固定資産評価証明書の郵送請求など、さまざまな行政手続きにおいて、手数料を支払う方法として定額小為替が利用可能です。
- 行政機関への手数料支払い;戸籍謄本、住民票等の公的書類を郵送で請求する際の手数料として。
- 各種証明書の発行手数料:固定資産評価証明書など、行政手続きに必要な証明書の発行手数料として。
定額小為替の種類と購入場所
定額小為替には、50円から1,000円まで、全部で12種類の金額が用意されています。
- 50円
- 100円
- 150円
- 200円
- 250円
- 300円
- 350円
- 400円
- 450円
- 500円
- 750円
- 1,000円
必要な金額がこれらのいずれかの金額と一致する場合は、その金額の定額小為替を1枚購入すれば済みますが、もし必要な金額がこれらの中にない場合は、複数の定額小為替を組み合わせて使用します。たとえば1,050円の手数料を支払う必要がある場合、1,000円の定額小為替と50円の定額小為替を1枚ずつ組み合わせて送る、といった使い方ができます。
購入は、ゆうちょ銀行または郵便局の貯金窓口で可能です。購入時には、送金金額に加えて、所定の発行手数料が発生します。
定額小為替の購入時の仕訳
定額小為替の額面金額は、通貨代用証券として会計上「現金」勘定で処理されます。一方、発行手数料は、サービスの対価として「支払手数料」勘定で費用処理されます。ただし、継続的に発生しない少額の手数料であるため、「雑費」勘定で処理されることもあるでしょう。
消費税の取り扱い
定額小為替の額面金額は、消費税の課税対象外(非課税取引)です。発行手数料は、郵便局のサービスに対する対価として課税対象(課税取引)となり、消費税率10%が適用されます。
定額小為替の購入の仕訳例
額面1,000円の定額小為替を、発行手数料200円(税込)とともに現金1,200円で支払った場合の仕訳
| 借方科目 | 貸方科目 | ||
|---|---|---|---|
| 現金 | 1,000円 | 現金 | 1,200円 |
| 支払手数料 | 182円 | ||
| 仮払消費税等 | 18円 | ||
定額小為替の再発行のため発行手数料のみを現金で支払った場合
再発行手数料200円(税込)を現金で支払った場合の仕訳例
| 借方科目 | 貸方科目 | ||
|---|---|---|---|
| 支払手数料 | 182円 | 現金 | 200円 |
| 仮払消費税等 | 18円 | ||
後日、定額小為替を使用する際に、額面金額1,000円を「現金」勘定から減らす処理を行います。
複数の定額小為替をまとめて購入
50円の定額小為替を10枚購入し、発行手数料が1枚あたり200円(税込)、合計2,000円だった場合の仕訳
| 借方科目 | 貸方科目 | ||
|---|---|---|---|
| 現金 | 500円 | 現金 | 2,500円 |
| 支払手数料 | 1,818円 | ||
| 仮払消費税等 | 182円 | ||
定額小為替の使用時の仕訳
定額小為替を使用した場合の仕訳は、その支払目的によって勘定科目が異なります。貸方には、購入時に「現金」として処理した定額小為替の減少を示すため、「現金」勘定を使用します。
定額小為替の使用時の仕訳例
例1:行政機関への手数料支払い
区役所で住民票発行手数料500円を定額小為替で支払った場合の仕訳
| 借方科目 | 貸方科目 | ||
|---|---|---|---|
| 租税公課 | 500円 | 現金 | 500円 |
例2:取引先への外注費支払い
取引先に1,000円分の定額小為替を郵送して手数料を支払った場合の仕訳
| 借方科目 | 貸方科目 | ||
|---|---|---|---|
| 支払手数料 | 1,000円 | 現金 | 1,000円 |
例3:複数の定額小為替での支払い
750円と300円の定額小為替で1,050円の手数料を支払った場合の仕訳
| 借方科目 | 貸方科目 | ||
|---|---|---|---|
| 支払手数料 | 1,050円 | 現金 | 1,050円 |
例4:年度末の未使用残高
年度末に未使用の定額小為替が3,000円分残っていた場合の仕訳
| 借方科目 | 貸方科目 | ||
|---|---|---|---|
| 仕訳なし | |||
定額小為替は現金のように利用できる通貨代用証券であるため勘定科目は現金です。購入時に現金で処理しているため、年度末に未使用の定額小為替が残っていたとしても、仕訳は必要ありません。
定額小為替の受け取り時の仕訳:売掛金回収など
取引先から定額小為替を受け取った場合は、現金を受け取ったと同様に「現金」勘定で処理し、資産の増加として認識します。
定額小為替を受け取った仕訳例
例:立替金の回収
立て替えた手数料の対価として、1,000円の定額小為替を受け取った場合の仕訳
| 借方科目 | 貸方科目 | ||
|---|---|---|---|
| 現金 | 1,000円 | 立替金 | 1,000円 |
【インボイス制度】定額小為替の発行手数料は消費税の対象
2023年10月1日から始まったインボイス制度では、仕入税額控除を行うには「適格請求書(インボイス)」の保存が必要です。
定額小為替の額面金額は、消費税がかからない「非課税取引」にあたるため、仕入税額控除の対象にはなりません。
一方、発行手数料は、「課税取引(10%)」になります。この部分の費用について仕入税額控除を受けるには、日本郵便が発行する「定額小為替金受領証書」を保存しておく必要があります。
日本郵便株式会社は適格請求書発行事業者として登録されていますが、不特定多数の利用者にサービスを提供しているため、交付される受領証書は適格簡易請求書の要件を満たしていれば、控除の対象となります。
定額小為替の仕訳のルールを押さえよう
定額小為替の仕訳は、金券としての特性と、手数料の課税処理の違いを理解することがポイントです。購入時は「現金」処理、手数料は「支払手数料」として仕訳し、消費税も正確に区分する必要があります。使用時・受領時の勘定科目は目的に応じて選びましょう。インボイス制度にも対応した帳票の保存を心がければ、税務上も安心です。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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