- 更新日 : 2025年2月20日
海外子会社からの配当の益金不算入とは?目的やメリット、会計処理を解説
海外子会社からの配当の益金不算入とは、配当金の95%相当額を益金に算入しない(非課税になる)制度です。日本国内の税務上の処理になります。本記事では、益金不算入の対象になる海外子会社や会計処理の方法、源泉税の取り扱いについて解説します。
目次
海外子会社からの配当の益金不算入とは?
海外子会社からの配当の益金不算入とは、一定の海外子会社から受領した配当金の額から5%相当額を控除した95%を益金不算入とする制度です。税務上の取り扱いとなり、会計上は収益に計上している金額を、税務上では益金(税務上の収益に相当するもの)になりません。
益金不算入となることで、海外子会社から配当を受けた親会社の法人税の課税所得を引き下げる効果があります。配当とは、株主に利益などを分配することです。海外子会社からの配当の益金不算入の制度は、国内に配当を留保させる目的で設けられました。
海外子会社からの配当の益金不算入のメリット
海外子会社からの配当の益金不算入には、二重課税の防止と日本国内への還流のメリットがあります。
二重課税を防ぐ
日本国内の親会社が海外子会社から受ける配当金に課税されると、二重課税の問題が生じます。親会社への配当は、海外子会社が所得に対した税金を支払った後、残りの利益に対して行われます。そのため、配当金が支払われる段階でも課税されると、海外子会社と日本の親会社は二重に課税されることになります。海外子会社の配当の益金不算入は、二重課税を防止する意味でも設けられている制度です。
海外子会社の利益を日本の事業に活用できる
海外子会社からの配当の益金不算入は、配当等の5%を控除した95%が対象です。益金に算入されるのは5%のみとも考えられるため、海外で得た利益を日本国内で還流できるメリットがあります。日本国内の設備投資などに効果的に回していくことができるでしょう。
海外子会社からの配当の益金不算入となる法人の要件
海外子会社からの配当の益金不算入の対象になるのは、以下に該当する外国法人の配当金です。
- 発行済株式等の25%超を保有している外国法人であること
- 配当等の支払い義務確定から6か月以上継続して保有していること
なお、外国子会社の配当の益金不算入の適用を受ける場合、外国源泉税(配当により外国に支払う源泉税)は損金不算入となります。
海外子会社からの配当の益金不算入となる具体例
簡単な事例から、海外子会社の配当の益金不算入額の計算について見ていきましょう。
(例)Y国にある海外子会社(資本比率80%・3年前から継続保有)から配当金300万円を受け取り、うち15万円はY国に納めた。金額表示はいずれも円換算後の金額である。
まず、資本比率25%以上、半年以上継続で保有していることから、海外子会社の配当の益金不算入の適用を受けられる外国法人であることがわかります。
配当金の額は300万円のため、この300万円について益金不算入を適用します。
285万円は益金不算入となるため、法人税の申告書などで調整を行います。なお、300万円×5%=15万円については益金不算入の対象にはならないため、調整は行いません。源泉税であるY国に納めた15万円は、損金不算入の調整が必要です。
海外子会社からの配当の益金不算入の会計処理
海外子会社から配当を受け取った場合の仕訳は、通常の配当金受取の仕訳と同様です。「受取配当金」の勘定科目を使って仕訳します。
(例)海外子会社A社から300万円の配当金を普通預金で受け取って15万円をY国に納めた場合
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
普通預金 | 2,850,000円 | 受取配当金 | 3,000,000円 |
租税公課 | 150,000円 |
海外子会社の配当の益金不算入の取り扱いは、税務上の取り扱いです。会計処理は上記の通りで、益金不算入の調整は法人税申告書などで行います。
海外子会社からの配当の益金不算入制度が適用とならない配当金
適用対象の海外子会社に該当する場合であっても、海外子会社の配当の益金不算入が適用できないケースがあります。みなし配当の場合や配当に関わる源泉税を損金に算入する場合です。
みなし配当の場合
みなし配当とは、法人税法に規定される実質的な配当のことです。剰余金の配当などには該当しませんが、税法上は配当と同じように取り扱います。みなし配当は、非適格合併、非分割型分割、非適格株式分配、資本の払い戻し、金融商品取引所以外での自己株式の取得などで生じるものです。出資先の資本金等の額について、交付対象の株式等に対応する部分を超えた金額をいいます。みなし配当も配当金と同じような扱いにはなりますが一部、益金不算入が適用できないことがあります。
損金に算入する場合
海外子会社の配当の益金不算入の適用を受ける場合、同じ配当に関わる源泉所得税の損金算入はできません。対象となる源泉所得税を損金に算入した場合、海外子会社の配当の益金不算入は適用できなくなります。
海外子会社からの配当には益金不算入の適用がある
一定の海外子会社からの配当については、税務上の措置として、益金不算入の適用があります。国内の親会社と海外子会社の会計や税務を円滑に進めるには、海外子会社の財務状況も含めて適切に管理することが重要です。連結会計に対応した会計システムを利用することで、海外子会社の財務状況をリアルタイムで監視できるようになります。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
会計の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
会計ソフトを導入しても税理士は不要にならない、その理由を解説
この記事では「確定申告が不安で税理士に依頼するかどうか悩んでいる方」、「税理士費用が高いと感じている方」に向け、会計ソフトを使えば税理士は不要になるかどうかを説明していきます。 帳簿から申告までの業務 日本国内で事業を行っている個人事業主ま…
詳しくみる国保計算を基本から理解するための3つのポイント
職場で社会保険に加入していない人や生活保護を受給していない人であれば加入が義務付けられている国民健康保険(以下、国保)。 ここではこの国保の保険料計算(以下、国保計算)の基本と、保険料がどんなもので構成されていて、どうして支払わなくてはなら…
詳しくみる請求書払いとは?支払いの流れやメリット・デメリット、導入時の注意点を解説
取引の際、どのような支払い方法を選択したらよいのか迷うことはないでしょうか。特に頻繁に取引する取引先の場合、品物やサービスをやり取りするたびに代金を支払ってもらう方法にすると、事務作業が大変になるという悩みも出てくるかもしれません。 今回は…
詳しくみる請求管理とは?業務内容や代金回収、請求管理システムの選び方も解説
経理や営業担当者は、取引先や金額、日付などを正確に把握して売掛金や未収入金を回収する必要があります。エクセルなどでも管理できますが、請求管理システムを利用すれば煩雑な請求管理業務をシンプルにすることができます。 今回は請求管理システムの導入…
詳しくみるサッカー界の「脱税ベストイレブン」!? 大会の裏でちらつく“お金の疑惑”
6月14日に開幕した、4年に1度のサッカーの祭典。日本代表は、初戦で強豪コロンビアを相手に見事勝利を収め、セネガルにも善戦。残す対戦相手はすでに予選敗退が決まっているポーランドで、日本は引き分け以上で決勝トーナメントへ進出します。 世間の熱…
詳しくみる貢献利益の意味と限界利益との違いや計算方法、損益分岐点の求め方
貢献利益とは、会社の経営状況を判断する重要な指標の1つです。広義には、限界利益と貢献利益は同じと考えられますが、狭義では限界利益と貢献利益の考え方は異なります。また、損益分岐点とも関係のある指標のため、どのようなものかを正しく理解しておく必…
詳しくみる