- 更新日 : 2025年5月15日
合同会社には決算公告の義務はない?あえて行うメリットや法定公告との違いも解説
決算公告とは、決算情報の開示を株式会社に義務付ける制度です。合同会社には決算公告の義務はありません。一方、義務化されていない合同会社であっても、決算公告を行うことで経営上のメリットを享受できる場合が存在します。
本記事では、合同会社が決算公告を行うメリットや法定公告との違いを詳しく解説します。
目次
合同会社には決算公告の義務がない
株式会社と異なり、合同会社には決算公告の義務がありません(会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律第28条)。
合同会社とは、会社の所有者たる出資者(社員)と経営者が同一の会社を指します。株式会社でいうところの「株主」と「経営者」がイコールであるのが合同会社の特徴です。そのため、合同会社では株式会社ほど株主保護は重視されません。
一方、合同会社の出資者(社員)は全員が「有限責任社員」であるため、株式会社と同様に債権者保護が重要視されます。決算公告の義務は課されていないものの、後述するような「法定公告」の中には、合同会社においても債権者保護を目的として義務化されているケースもあるため注意が必要です。
参考:e-Gov 会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律第二十八条
そもそも決算公告とは
「決算公告」とは、原則としてすべての株式会社が定時株主総会後に遅滞なく計算書類を公に知らせることを義務付ける公告(会社の重要決定事項を広く世間に情報開示する手段)を指します。
決算公告で開示が必要となる計算書類とは、毎年開催される定時株主総会において承認された貸借対照表(資本金5億円以上または負債200億円以上の大会社は貸借契約書および損益計算書)の内容、またはその要旨とされています(会社法第440条)。
決算公告の目的は、会社の決算情報を開示することで取引の安全を確保することです。特に株式会社においては、株主と債権者保護が重視されているため、会社法において決算公告が義務付けられています。
なお、適切な公告を怠った場合や不正な手段で公告を行った場合、100万円以下の罰金が課せられる旨、会社法において規定されているため注意しましょう(会社法第976条2号)。
参考:e-Gov 会社法第四百四十四条、e-Gov 会社法第九百七十六条二号
決算公告と法定公告の違い
法定公告とは、会社の合併や分割、資本金などの減少、解散など、法に基づき義務化されている会社の重要決定事項に関する公告を指します。法定公告のうち債権者保護手続きが必要となる場合、合同会社にも公告が義務付けられており、必ず「官報」への掲載が必要です。
一方、決算公告は会社の決算に関する情報開示を目的とした公告です。決算公告に代表されるような、債権者保護手続が不要な場合については、株式会社と異なり合同会社には公告の義務はありません。
合同会社があえて決算公告を行うメリット
決算公告の義務がない合同会社において、あえて決算公告を行うメリットは何なのでしょうか。ここでは、合同会社があえて決算公告を行うことの具体的なメリットを2つご紹介します。
情報開示により信用度がアップする
合同会社は2006年から導入された会社組織形態で、歴史が浅くまだ採用数も少ないため、株式会社と比較すると社会的信用度が低く見られがちです。
そのため、決算公告を通じて会社情報を積極的に開示することは、財務状況の安定性をアピールすることにつながり、対外的な信用を高める効果が期待できます。
会社の社会的信用度が向上すれば、取引の安全性の観点からも利害関係者との取引が円滑になるメリットがあります。
資金調達が円滑になる
上述したように、決算公告による経営状況の透明化は会社の社会的信用度の向上につながります。これは、資金調達の面でも有利に働くことが期待できるでしょう。
すなわち、決算情報が定期的に公に開示されることは、金融機関からみると会社の財務の健全性や事業の将来性を正しく測定する手段として評価され、信用力の向上に貢献するといえるでしょう。
金融機関からの信用力向上は、融資を受けやすい環境をもたらします。株式会社と異なり資金調達手段が限られる合同会社において、融資を受ける環境を日ごろから整えておくことは、安定経営にプラス効果を与えます。
公告の方法
公告方法は会社法第939条1項において、以下の3つのいずれかを定款で定める旨が規定されています。
- 官報に掲載する方法
- 時事に関する事項を掲載する日刊新聞紙に掲載する方法
- 電子公告による方法
仮に会社の定款において公告方法の定めがない場合、「官報」が自動的に選択されることとなります(会社法第 939 条4項)。
なお、公告方法を変更する場合には、会社の定款変更手続きが必要です。合同会社における定款変更には、社員全員の同意が必要となる点にもあらかじめ注意しましょう(会社法第637条)。
ここでは、3つの公告方法について解説します。
参考:e-Gov 会社法第九百三十九条一項、e-Gov 会社法第九百三十九条四項、e-Gov 会社法第六百三十七条
官報
官報とは国が発行する機関紙で、法律や政令の制定、改正情報や公告などが掲載されています。紙媒体を官報販売所で購入できるだけでなく、インターネットでの閲覧も可能です。
官報のメリットは、貸借対照表や損益計算書の要旨のみの掲載で足りる点と掲載申し込みの手続きが簡単である点です。一方、掲載費用がかかる点や掲載までに時間を要する点がデメリットといえるでしょう。
官報への公告の掲載方法や費用、掲載までの期間は以下を参考にしてください。
- 掲載方法:官報販売所の専用Webフォームから申し込み
- 掲載費用:7万円〜15万円前後
- 掲載までの期間:約2週間(10営業日程度)
日刊新聞紙
公告を日刊新聞紙へ掲載する場合、新聞社から掲載枠を購入します。日刊新聞紙とは、時事に関する事項を掲載する新聞のことで、全国紙、地方紙を問わず選択できます(スポーツ新聞は不可)。
日刊新聞紙のメリットは、官報と同様、貸借対照表や損益計算書の要旨のみの掲載で足りる点です。さらに、法定公告のうち債権者保護手続として必要な各債権者への催告が、官報と併用することで不要となる点です。一方のデメリットは、他の2つの公告方法と比較して掲載コストが高額となる点です。
日刊新聞紙への公告の掲載方法や費用、掲載までの期間は以下を参考にしてください。
- 掲載方法:新聞社や広告代理店へ申し込み
- 掲載費用:高額(数十万〜数百万円)
- 掲載までの期間:約1~2週間程度(各掲載紙による)
電子公告
電子公告とは、自社ホームページや外部の信用調査機関などのWebサイトへ公告を掲載する方法です。
電子公告の最大のメリットは、インターネット上で完結するため上述した2つの公告方法よりも、簡易的かつ低コストで掲載できる点です。さらに日刊新聞紙と同様に、法定公告のうち債権者保護手続として必要な各債権者への催告が、官報と併用することで不要となります。
一方で、電子公告には以下のような注意点があります。
<電子公告の注意点>
- 電子公告を選択する場合、定款に定めるだけでなくあらかじめ掲載先URLの登記が必要
- 法定公告を電子公告で行う場合、電子公告調査機関の調査とその調査費用が必要(決算公告の場合は不要)
- 官報や日刊新聞紙と異なり、電子公告では貸借対照表(大会社においては貸借対照表および損益計算書)の全文掲載が必須(要旨のみ掲載は不可)
- 公告掲載期間は、過去5年間分の継続掲載が必要
電子公告の掲載方法や費用、掲載までの期間は以下を参考にしてください。
- 掲載方法:電子公告用のウェブページを作成し、URLを法務局へ登記
- 掲載費用:原則不要(別途、サーバー代などや電子公告調査機関の調査費用が必要)
- 掲載までの期間:短期(自社で調整可能)
※「マネーフォワード クラウド会社設立」をご利用いただく場合、合同会社は官報が自動的に選択されます。
決算公告を行っている合同会社
本章では日本国内において合同会社の会社組織形態を採用し、官報などにおいて決算公告を行っている企業の例をご紹介します。
これまで合同会社は小規模で閉鎖的な会社形態と捉えられていましたが、近年では世界的な大企業の日本法人でも合同会社を選択するケースが増えています。
メルセデス・ベンツ日本合同会社
メルセデス・ベンツ日本合同会社は、ドイツの自動車メーカー「メルセデス・ベンツ」の日本法人です。
日本ヒューレット・パッカード合同会社
日本ヒューレット・パッカード合同会社は、hp(エイチピー)のブランドで知られるアメリカのコンピュータメーカー「ヒューレット・パッカード」の日本法人です。
合同会社が公告を行わなければいけないケース
毎年の決算公告が不要な合同会社ですが、公告が義務付けられている場合があります。
合同会社であっても公告が義務付けられるケースとは、法定公告のうち「債権者保護手続き」が必要となる場合です。さらに注意が必要なのは、債権者保護を目的として法定公告を行う場合には、定款においてどの公告方法を選択していたとしても、必ず「官報」による公告も必要とされる点です。
以下に債権者保護を目的とした法定公告が必要となるケースを解説します。
合併公告
合併公告とは、2社以上の複数会社がまとまって1つの会社になる「合併」の際に必要となる公告です。
合併には「吸収合併」と「新設合併」の2つの方式が存在します。債権者保護の観点から、いずれの場合も「官報」による公告が必須と定められています(会社法第789条2項、第799条2項、第810条2項)。
参考:e-Gov 会社法第七百八十九条二項、e-Gov 会社法第七百九十九条二項、e-Gov 会社法第八百十条二項
分割公告
分割公告とは、会社の全部またはその一部の事業を切り離し、別会社へ承継させる「会社分割」の際に必要となる公告です。
会社分割には、「吸収分割」と「新設分割」の2つの方式が存在します。また、2社以上の会社が事業を譲り渡す新設分割を「共同新設分割」と呼びます。吸収分割、新設分割、共同新設分割のいずれの場合も、債権者保護の観点から「官報」による公告が必須と定められています(会社法第2条29号および30号、第789条2項、第799条2項)。
参考:e-Gov 会社法第二条二十九号及び三十号、e-Gov 会社法第七百八十九条二項、e-Gov 会社法第七百九十九条二項
組織変更公告
組織変更(会社法第2条26号)とは、株式会社が合名会社、合資会社または合同会社となること、もしくは合名会社、合資会社または合同会社が株式会社となるような組織変更の際に必要な公告です。
組織変更の場合も、債権者保護手続きの一環として「官報」による公告が必須と定められています(会社法第779条2項)。
参考:e-Gov 会社法第二条二十六号、e-Gov 会社法第七百七十九条二項
資本金の額の減少公告
合同会社において出資の払い戻しや持分の払い戻しによる資本金の額の減少(減資)が行われる場合には、債権者保護手続きが必要です(会社法第627条)。
そのため、資本金の額の減少が行われる場合には、「官報」による公告が必須とされています(会社法第627条2項)。
参考:e-Gov 会社法第六百二十七条、e-Gov 会社法第六百二十七条二項
解散公告
解散公告とは、事業終了にともない会社の法人格を消滅させる会社の解散の際に必要となる公告です。解散決議が決定された後、会社の清算手続きが開始されますが、その手続きの一環として解散公告が必要とされています。
解散公告の場合、債権者保護の観点から「官報」による公告が必須と定められています(会社法第660条)。
決算公告のメリットを活用して社会的信頼性を高めよう
法制度において、合同会社には決算公告は義務付けられていません。また、手続きの手間や掲載コストが必要となるため、決算公告を実施していない会社が大多数であることは事実でしょう。
しかし、決算公告による積極的な情報開示は、財務状況の透明化を通じて会社の社会的信頼性を向上させる大きなメリットがあります。
例えば、利害関係者に対する信頼向上は新規取引獲得や取引の円滑化につながったり、金融機関からの信用力向上は資金調達に有利に働いたりするなど、経営上のメリットが大きい点は見逃せません。
特に社会的な認知度や信頼性が低く見られがちな合同会社にとって、決算公告による信頼性の向上は、経営にプラスの効果をもたらす有効な手段となるでしょう。
この記事をお読みの方におすすめのガイド4選
最後に、この記事をお読みの方によく活用いただいている人気の資料を紹介します。すべて無料ですので、ぜひお気軽にご活用ください。
電子帳簿保存法 徹底解説(2025年10月 最新版)
電子帳簿保存法は、1998年の制定以降、これまでに何度も改正を重ねてきました。特に直近数年は大きな改正が続いた上に、現在も国税庁による一問一答の追加・改定が続いており、常に最新情報の把握が必要です。
70P以上にわたるボリュームであることから、ダウンロードいただいた方から大好評をいただいている1冊です。
インボイス制度 徹底解説(2024/10 最新版)
インボイス制度は施行後もさまざまな実務論点が浮上し、国税庁によるQ&Aの追加・改訂が続いています。これを受けて、「結局どうすればいいのか、わからなくなってしまった」という疑問の声も多く聞かれるようになりました。
そこで、インボイス制度を改めて整理し、実務上の落とし穴や対応のヒントまで網羅的に解説した最新資料を作成しました。問題なく制度対応できているかの確認や、新人社員向けの教育用など、様々な用途にご活用いただける充実の資料です。
マネーフォワード クラウド会計Plus サービス資料
マネーフォワード クラウド会計Plusは、データの自動取得、自動仕訳、自動学習の3つの自動化で経理業務が効率化できる会計ソフトです。
仕訳承認フローや業務分担にあわせた詳細な権限設定が可能で、内部統制を強化したい企業におすすめです。
マネーフォワード クラウド経費 サービス資料
マネーフォワード クラウド経費を利用すると、申請者も承認者も経費精算処理の時間が削減でき、ペーパーレスでテレワークも可能に。
経理業務はチェック業務や仕訳連携・振込業務の効率化が実現でき、一連の流れがリモートで運用できます。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
会計の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
月次決算書とは?年次決算との違いやメリット・デメリットなどを解説
企業の経営状況をスピーディーに把握するには「月次決算書」の作成が大切です。しかし、月次決算書を作成したほうがよいのか、判断に悩んでいる方も多いでしょう。 本記事では、月次決算書とは…
詳しくみる決算修正の方法と注意点 – 前年度修正損益は必ず申告
当年度の決算書を作成する際、すでに確定している過年度の決算書に誤りが見つかる場合があります。 この記事では、決算修正(過年度修正)の具体的なやり方と、決算修正の結果によって生じる可…
詳しくみる決算賞与とは?通常賞与との違いや支給のメリット・デメリットを解説
社員への還元として、決算賞与の支給を検討している方も多いのではないでしょうか。決算賞与には、どのようなメリット・デメリットがあるでしょうか。決算賞与を支給する際には、利益額や設備投…
詳しくみる利益剰余金とは?仕訳例やマイナスになる理由をわかりやすく解説
経営や経理の上で「利益剰余金」という言葉を見聞きする人は少なくないでしょう。しかし、利益剰余金についてなんとなく理解しているけれども詳しくは分からない人、当期純利益との関係や仕訳に…
詳しくみる【予算計画の基礎】正しく経営するために予算計画を立てよう
事業計画を立てるうえで重要なのが予算計画です。予算とは、どのような目的で立てるものなのか、どの程度の頻度で見直していけばよいのかなどについて、気を付けたいポイントとあわせて解説しま…
詳しくみる資金収支計算書とは何か?おさえておくべき3つのポイント
「資金収支計算書」とは、社会福祉法人や学校法人が作成しなければならない財務諸表の1つです。 ここでは社会福祉法人に関する、 ・資金収支計算書の法的根拠 ・資金収支計算書の記載内容 …
詳しくみる会計の注目テーマ
- 勘定科目 消耗品費
- 国際会計基準(IFRS)
- 会計帳簿
- キャッシュフロー計算書
- 予実管理
- 損益計算書
- 減価償却
- 総勘定元帳
- 資金繰り表
- 連結決算
- 支払調書
- 経理
- 会計ソフト
- 貸借対照表
- 外注費
- 法人の節税
- 手形
- 損金
- 決算書
- 勘定科目 福利厚生
- 法人税申告書
- 財務諸表
- 勘定科目 修繕費
- 一括償却資産
- 勘定科目 地代家賃
- 原価計算
- 税理士
- 簡易課税
- 税務調査
- 売掛金
- 電子帳簿保存法
- 勘定科目
- 勘定科目 固定資産
- 勘定科目 交際費
- 勘定科目 税務
- 勘定科目 流動資産
- 勘定科目 業種別
- 勘定科目 収益
- 勘定科目 車両費
- 簿記
- 勘定科目 水道光熱費
- 資産除去債務
- 圧縮記帳
- 利益
- 前受金
- 固定資産
- 勘定科目 営業外収益
- 月次決算
- 勘定科目 広告宣伝費
- 益金
- 資産
- 勘定科目 人件費
- 予算管理
- 小口現金
- 資金繰り
- 会計システム
- 決算
- 未払金
- 労働分配率
- 飲食店
- 売上台帳
- 勘定科目 前払い
- 収支報告書
- 勘定科目 荷造運賃
- 勘定科目 支払手数料
- 消費税
- 借地権
- 中小企業
- 勘定科目 被服費
- 仕訳
- 会計の基本
- 勘定科目 仕入れ
- 経費精算
- 交通費
- 勘定科目 旅費交通費
- 電子取引
- 勘定科目 通信費
- 法人税
- 請求管理
- 勘定科目 諸会費
- 入金
- 消込
- 債権管理
- スキャナ保存
- 電子記録債権
- 入出金管理
- 与信管理
- 請求代行
- 財務会計
- オペレーティングリース
- 新リース会計
- 購買申請
- ファクタリング
- 償却資産
- リース取引



