- 更新日 : 2025年2月20日
中小企業は1人経理が多い?業務内容や効率化のポイントを解説
中小企業では、1人で業務をこなす「1人経理」が多く、経理担当者に業務負荷がかかります。中小企業が経理業務の効率化を図るには、エクセルや会計システムの活用、アウトソーシングが効果的です。本記事では、1人経理で起こるリスクや注意点、解決策について詳しく解説します。
目次
中小企業の経理の特徴
中小企業の経理業務は、大企業とは異なる特徴があります。
経理担当が1人の場合が多い
中小企業では、経理担当者が1人だけという状況が珍しくありません。平成27年に中小企業庁が発表した「平成26年度 中小企業における会計の実態調査について(中小会計要領の普及状況)」によると、中小企業のうち58.2%は経理・財務担当者が1名であると報告されています。
大企業に比べて、中小企業では経理のような間接業務に多くの人員を割く余裕がなく、人件費を抑えるために「1人経理」となるケースが一般的です。したがって、多岐にわたる経理業務を1人で担当せざるを得ず、経理担当者に大きな負担がかかる場合があります。
出典:中小企業庁|平成26年度 中小企業における会計の実態調査について(中小会計要領の普及状況)
1人あたりの業務範囲が広い
大企業では、複数の担当者が分担して行う業務を、中小企業では1人で担当しなければなりません。
複数の業務を1人が兼任する状況は、個人の経験や知識に依存する「属人化」が進むため、担当者が急に不在になった場合や退職した場合に、業務が滞るリスクが高まります。また、業務量の増加により、ミスが発生したり、業務が停滞したりする可能性もあるでしょう。
1人経理のリスクを軽減するためには、業務の効率化を図り、担当者の負担を減らす取り組みが重要です。
中小企業の経理の業務内容
経理担当者の業務は、日々の作業から年に一度の作業まで、多岐にわたります。本章では、経理担当者が行う主な業務内容を解説します。
日常業務
経理担当者が日々行う主な業務は、以下の通りです。
業務内容 | |
---|---|
現金出納管理 |
|
伝票管理 |
|
会計帳簿の記帳 |
|
仕入・売上の管理 |
|
請求書の発行 |
|
入金確認 |
|
預金管理 |
|
月次業務
経理担当者が毎月行う主な業務は、以下の通りです。
業務内容 | |
---|---|
経費精算 |
|
売上・仕入の仕訳入力 |
|
給与計算・支払 |
|
税金や保険料の計算・納付 | |
請求書の受領・支払 |
|
年次業務
経理担当者が毎年行う主な業務は、以下の通りです。
業務内容 | |
---|---|
年末調整 |
|
税金計算と納付 | |
固定資産の減価償却 |
|
決算整理仕訳 | |
棚卸 |
|
試算表の作成 |
|
決算書の作成 |
|
算定基礎届の作成 |
|
償却資産税の申告 |
|
法定調書の作成 |
|
中小企業における1人経理のリスク
中小企業における1人経理には、業務の不安定化や不正の発生など、さまざまなリスクが伴います。本章では、1人経理の具体的なリスクを解説します。
帳簿や書類のダブルチェックができない
経理業務では、記録や確認作業など、業務の多くで正確さが求められます。
経理担当者が複数いる場合、業務の分担や細分化を行える上、ダブルチェックが可能です。しかし、1人経理の場合、他者による確認がありません。単純な入力ミスや伝票の取り扱いミスが起きた際、ミスに気がつく人がいないため、最終的な決算に影響を与える可能性があるでしょう。
経営状況を把握する上で重要な決算業務に影響を与えるリスクがあるため、書類のダブルチェックができる体制を整えることが重要です。
業務が属人化する
業務が属人化すると、経理担当者1人しか業務内容や状況を把握できなくなり、さまざまな問題が生じます。属人化によるリスクは、以下の3つが考えられます。
- 担当者の不在時に経理業務が滞る
- 退職や長期休暇の際の引継ぎが困難
- 知識やノウハウが企業に蓄積されない
- 業務効率・業務品質が安定しない
業務が属人化すると、担当者が長期休暇を取得しづらくなったり、引継ぎが難しくなったりするケースがあります。また、業務効率や品質が担当者に依存するため、進捗管理や業務指導も難しくなるでしょう。
1人経理であっても、業務をマニュアル化し、他の従業員と共有することで、属人化のリスクを抑えられます。
経理担当者が不正を働いても気づかれない
経理業務は、企業の重要な資金を管理する仕事です。1人経理の場合、取引の記録や現金の取り扱いを独占的に行うため、不正行為が発生しても発覚しにくいリスクがあります。
たとえば、架空の経費を計上したり、会社の資金を私的に流用したりする不正が、他者の目に触れることなく行われるかもしれません。
不正リスクを低減するためには、定期的な監査の実施や、複数人によるチェック体制の導入が重要です。
中小企業の経理担当の注意点
中小企業の経理担当者は、多岐にわたる業務を1人で担当するため、特有の注意点があります。ポイントを意識することで、業務の効率化を図り、会社の財務状況を健全に保てるでしょう。本章では、中小企業の経理担当者がとくに注意すべき点を解説します。
税制優遇や法改正への対応を怠らない
経理には、会社法や法人税法などの法律を遵守する必要があります。法改正が行われた際には、最新の法令に基づいて経理業務を見直し、必要な変更を速やかに行うことが重要です。法令違反は、多額の罰金や追加納税を招くリスクがあるため、常に最新情報を確認し、適切な対応を怠らないようにしましょう。
また、税制優遇措置は、中小企業にとって財務的な負担を軽減するために重要です。減税や税額控除に加え、資産の減価償却に関する特例など、適切に活用することで経費を節約し、キャッシュフローを改善できます。
中小企業の税制優遇処置については、以下の資料を参考にしてみてください。
中小企業会計要領の導入を検討する
中小企業会計要領とは、中小企業向けに策定された会計ルールで、中小企業の実務に配慮してつくられています。
中小企業会計要領を導入することで、複雑な会計処理を簡略化できる上に、不正やミスを防ぐ効果も期待できるでしょう。また、中小企業会計要領に即した決算書を作成することで、決算書の信頼性や透明性が向上し、銀行からの融資が受けやすくなるといったメリットもあります。
さらに、決算書の信頼性が高まることで、経営者は自社の財務状況をより正確に把握できるようになり、経営判断の精度が向上します。
中小企業の経理を効率化するポイント
中小企業の経理担当者の負担を減らすには、業務の効率化が重要です。本章では、中小企業の経理業務を効率化する具体的な方法を解説します。
エクセルやスプレッドシートの関数やマクロを活用する
エクセルやGoogleスプレッドシートなどの表計算ソフトを活用し、経理業務の効率化を図りましょう。
たとえば、関数を活用することで、ミスが起こりやすい計算や見落としがちなデータ抽出を自動化できます。経理業務に役立つ関数として、以下の4つが挙げられます。
- SUM関数:指定した範囲内の数値を合計する
- COUNTIF:指定した範囲内の条件に合うデータの個数を数える
- VLOOKUP関数:指定した範囲から検索条件に合うデータを抽出し表示する
- IF関数:複数の指定した条件に基づき、条件に合うデータに応じて表示する
さらに、エクセルやGoogleスプレッドシートには、業務効率をさらに高める便利な機能が備わっています。以下の機能を活用することで、手作業による作業を減らし、ミスの防止や業務の効率化が期待できます。
- フィルター:条件に合うデータのみ表示する
- マクロ:自分が行った操作を記録し、次回から自動化する
- ピボットテーブル:大量のデータを分析・集計する
さまざまな便利機能を駆使することで、業務の効率化を進め、経理作業の負担を軽減しましょう。
会計システムを導入し業務を自動化する
経理業務を効率化するためには、会計システムの導入も有効な方法です。会計システムを利用することで、単純作業を自動化し、経理担当者は確認作業や社内コミュニケーションといった重要な業務に専念できるようになります。さらに、クラウド型の会計システムを導入すれば、インターネット環境があればどこからでもアクセスできるため、リモートワークにも対応可能です。
会計システムで行える主な業務は以下の通りです。
- 伝票入力
- 帳簿作成
- 自動仕分
- 決算書作成
- 固定資産管理
など
また、会計システムは一般的に、自動でアップデートされるため、最新の税制や法改正に素早く対応できるというメリットもあります。
アウトソーシングする
経理業務の一部をアウトソーシングすることも、業務効率化につながります。
給与計算や税務申告など、専門知識が必要な業務をアウトソーシングすることで、業務の正確性を高めつつ、経理担当者の負担を軽減できます。アウトソーシング先の専門家が最新の法令に基づいて処理を行うため、ミスや法令違反のリスクを減らせることもメリットです。また、第三者の目が入ることで、不正のリスクを防止する効果があります。
自社の状況に合わせて適切な業務を選び、アウトソーシングを検討しましょう。
中小企業の経理を効率化するには会計システムを導入しよう
中小企業の経理業務は、1人で幅広い業務を担当するケースが多く、効率化が求められます。また、法律や税制などのルールを遵守するため、専門知識も必要です。
エクセルの活用や会計システムの導入、アウトソーシングなど、自社にとって最適なツールを活用し、業務効率化を図りましょう。
とくに、会計システムは導入することで、単純作業を自動化し、最新の税制に対応できるというメリットがあります。効率的かつ正確な経理業務を実現させるため、ぜひ検討してみてください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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