- 更新日 : 2024年8月8日
飲食費(食事代)を経費にする際の仕訳と勘定科目まとめ
飲食費・飲食代は、どのような場面で発生したかによって勘定科目が異なります。例えば、従業員全員が参加できる新年会での飲食費は、福利厚生費の勘定科目が適当です。さまざまなケースを挙げ、それぞれに応じた勘定科目と仕訳例を解説するので、ぜひ参考にしてください。
飲食費・飲食代の勘定科目は?
飲食費・飲食代は「福利厚生費」や「会議費」「交際費」「旅費交通費」「取材費」「給与」「事業主貸」などの勘定科目が使えます。どのような場面で飲食をしたかによって、勘定科目を使い分けるようにしましょう。
なお飲食費・飲食代は、英語で「meal allowance」です。allowanceとは手当や引当金のことで、定期的に使う費用に関して用いることがあります。
福利厚生費
従業員を慰安する目的での飲食費は、「福利厚生費」の勘定科目が使えます。例えば、従業員全員が参加できる飲み会や新入社員の歓迎会、新年会、忘年会、プロジェクト終了の慰労会などは、いずれも従業員を慰安する目的で開催されるため、「福利厚生費」の勘定科目を使っての仕訳が可能です。
新年会で15万円かかり、現金で支払ったときの仕訳は以下のとおりです。
現金ではなくクレジットカードで支払いをした場合は、2回に分けて仕訳をします。1回目はクレジットカードで決済をしたタイミングです。貸方を「未払金」の勘定科目で仕訳をしましょう。
2回目はクレジットカードの利用料金が引き落とされたときです。貸方を「未払金」、クレジットカードの利用料金が普通預金口座から引き落とされる場合には、以下のように仕訳をします。
福利厚生費の詳しい説明については、以下の記事をご覧ください。
会議費
会議のための費用に関しては、「会議費」の勘定科目が使えます。例えば、会議のときに3万円分の弁当を購入したとしましょう。この飲食代は「会議費」として仕訳ができるので、現金で3万円を支払ったときは以下のように帳簿に記入します。
会議費についての詳しい説明は、次の記事をご覧ください。
打ち合わせの際の飲食費
会議ではなく、仕事関連の打ち合わせのために使った費用も、「会議費」の勘定科目を選ぶことが可能です。その際に飲食をした場合には、飲食にかかった代金を「会議費」の勘定科目を使って帳簿に記載しましょう。
例えばホテルのロビーでコーヒーを飲みながら打ち合わせをし、3,000円の代金を支払ったとします。この場合は、帳簿へ以下のように仕訳ができるでしょう。
5,000円以下の飲食費
1人あたりの飲食費が5,000円以下のときは、取引先をもてなす場合でも「接待交際費」や「交際費」ではなく「会議費」の勘定科目が選べます。
「接待交際費」や「交際費」は損金算入限度額が決まっているため、あまり出費が多いと経費計上できなくなる可能性があるでしょう。しかし「会議費」には損金算入限度額がなく、上限なく全額損金算入できるので、上手に活用すれば節税につながります。
ただし飲食の目的が取引先などの接待であることが条件です。従業員の飲食費は元々「接待交際費」ではなく「福利厚生費」の勘定科目を用いるので、1人あたりの飲食費が5,000円以下であっても「会議費」としては仕訳できません。
例えば取引先と一緒にランチを食べ、合計額が2万円とします。ランチに参加した人数が4人以上であれば1人あたりの飲食費が5,000円以下になるので、「接待交際費」や「交際費」の勘定科目で仕訳をしても良いですが、「会議費」の勘定科目を選ぶこともできるでしょう。
交際費
取引先を接待したときにかかった代金に関しては、通常「交際費」や「接待交際費」の勘定科目で仕訳をします。例えば取引先を夕食に招待し、3万円を支払ったときは以下のように帳簿に記入しましょう。
交際費について詳しくは以下の記事で紹介しています。経費計上する条件や節税方法も紹介しているので、ぜひご覧ください。
社外の人との飲食費
社外の人との飲食費は、基本的には「交際費」の勘定科目を使いますが、1人あたり5,000円以下であれば「会議費」の勘定科目を選択できます。
なおこの場合、自分以外のすべての人が社外の人である必要はありません。飲食をしたときに社外の人が1人でも参加していれば、社外の人との飲食費として考えられます。「交際費」や「会議費」などの勘定科目を用いましょう。
5,000円超の飲食費
1人あたりの代金が5,000円超になるときは「会議費」の勘定科目は使えません。社外の人が1人でも参加しているときは「接待費」や「接待交際費」の勘定科目を用いましょう。
社外の人が参加していない社内だけの集まりについては、「福利厚生費」の勘定科目を使って仕訳をします。ただし「福利厚生費」の勘定科目を使うときは全社員を対象としていることが条件となるため、社内の特定の人をもてなしたときは「交際費」の勘定科目を用いることが一般的です。
旅費交通費
出張の際の飲食費に関しては、「旅費交通費」の勘定科目を使って仕訳ができます。例えば、3人で出張に出掛け、現金で5,000円のランチ代を支払ったときは以下のように帳簿に記入しましょう。
旅費交通費とは何か、また、出張費とは何が異なるのかについては以下の記事を参照してください。
取材費
「取材費」とは新聞や雑誌、書籍などを出版するために取材をしたときに発生する費用のことです。喫茶店でインタビューした場合の飲食代、カフェ紹介のために食べたランチの代金などは「取材費」の勘定科目を用いることができます。
例えばあるカフェを雑誌に掲載するとしましょう。メニューを紹介するために注文した飲食費が3,000円だったとします。現金で支払ったときは、以下のように「取材費」の勘定科目での仕訳が可能です。
給与
すべての従業員が参加できないイベントなどでの飲食費に関して、会社側が負担した場合は、「給与」として仕訳ができるケースもあります。
例えば、従業員個人が参加したパーティーの費用を会社が負担したとしましょう。この場合は「給与」の勘定科目で仕訳ができます。パーティー代が7,000円かかり、会社がすべての費用を支払ったときは以下のように「給与」で仕訳をしましょう。
従業員ではなく役員に支払った飲食費に関しては、勘定科目が異なります。役員個人が参加したパーティー代を会社が支払った場合には、「役員報酬」の勘定科目を使いましょう。
なお「給与」として仕訳をする場合は、全額損金算入が可能です。一方「役員報酬」は事前に金額が決まっているなど要件を満たした場合のみ全額損金算入できます。ただし、いずれも支払われた側の従業員や役員は、その金額に応じた所得税を納付することが必要です。
事業主貸
個人事業主が、家計の経費を事業用の預貯金で支払う場合には、「事業主貸(じぎょうぬしかし)」の勘定科目を選択します。
「事業主貸」は必要経費とはならないので、経費計上はできません。例えば、家族の外食費2万円を事業用のクレジットカードで支払った場合は、以下のように借方を「事業主貸」、貸方を「未払金」として記入しましょう。
後日事業用クレジットカードの利用料金が引き落とされたときは、以下のように仕訳をしましょう。
「事業主貸」と「事業主借」の勘定科目については、次の記事で詳しく解説しています。個人事業主はチェックしておきましょう。
飲食費を経費にする場合の注意点
飲食費を経費として計上できるのは、その飲食が業務上必要なケースに限られます。そのため、プライベートで家族や友人と飲食した際の費用などは経費として計上できませんので、ご注意ください。
飲食費は、税務調査の際に疑われやすい経費の一つです。領収書やレシートには「誰と飲食をしたか」「どのような目的で飲食をしたか」を記載して保管しておきましょう。
勘定科目を正しく選択することも重要です。例えば、従業員のみが集まり1人あたり10,000円以上の飲食をして接待交際費で計上をした場合、取引先や顧客など接待すべき人がいないという理由から経費として認められないことがあります。この場合は前述の通り福利厚生費を使用するか、社内の人をもてなしたという意味で「交際費」として計上します。
飲食費の勘定科目について正しく理解しましょう
飲食費はどの場面で使ったかによって勘定科目が異なります。社外の人を1人以上含む集まりでの飲食費に関しては、5,000円以下か5,000円を超えるかによっても勘定科目が異なるので注意が必要です。
正しい勘定科目を使って仕訳をすると、帳簿が見やすく、会計が分かりやすくなります。同じシーンで使った飲食費に関しては、常に同じ勘定科目を使うことも大切です。飲食費に利用できる勘定科目を覚え、シチュエーションごとに正しく、そして節税につながるように仕訳をしていきましょう。
よくある質問
飲食費を「会議費」仕訳をする場合とは?
会議のときや打ち合わせのときの飲食費は「会議費」として仕訳ができます。また、社外の人との飲食費で1人あたりの代金が5,000円以下のときも「会議費」の勘定科目を使うことが可能です。詳しくはこちらをご覧ください。
「給与」や「役員報酬」で仕訳をする際の注意点は?
「給与」は全額損金算入だが、「役員報酬」は最初から金額が決まっているなど要件を満たしているときのみ全額損金算入できます。また「給与」や「役員報酬」の勘定科目で仕訳をした費用に関しては、従業員や役員は所得税の納付が必要です。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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